第56話 ケーキ

「甘いものはさ~」

「売れ残りが安かったので気にしないでください」

「気にしてるのは値段じゃあないんだよ…キミは話を聞かないね~」

 花田のパトカー、車内には甘いクリームの香りが充満している。

 クリスマスケーキが半額で売っていたので、不必要に購入したのだ花田が…。

「世界には食べたくても食べれない人達がいるんですよ」

「だからと言って、食べきれない程買うことが何の解決を産むんだい?」

「捨てることを防ぎます」

「それは…ケーキ屋しか喜ばない解決策だよ、花田巡査」

「そうでもありません、子供はケーキ好きです」

「食べるのかね~桜井敦は…食べなそうだよな~アイツ」

「子供はケーキが大好きです」


 パトカーを停めて、桜井敦を訪ねる。

「ソッチは任せるよ、俺は崇の方に会ってくる」

「任せる?どういうことです?」

「ん?いないかもしれないし…今は聞くことはない…かな…うん、ない」

「私は何をどうすれば?」

「ケーキあげればいいじゃない」

「なにを理由に?」

「食べられない子供もいるのよって話を添えて…だから持ってきましたって」

「わけが解りませんよ」

「そうだろうな、俺もさっき、わけがわからないな~って思ったもの…じゃあね」


 相良はコートの襟を立てて、店側へ回った。

「あ~すいません、邪魔じゃ無かったら…」

 開けっ放しの店、中には大きなストーブが置かれ、温かそうなオレンジの光が灯されている。

 手をストーブの方へ差し出して、店の中へ入って行く相良。

「邪魔…も何も勝手に入ってるじゃないか…アンタ」

「えぇ…寒いモノで…つい」

「夏でなくて良かったな、邪魔する理由がないだろう」

「いや~、夏なら、日差しがねとか言って入りますよ」


 チラっと相良を見た崇。

 目で丸い椅子代わりのオイル缶に座れと促す。

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