第83話 1月1日(日)深夜

 箱の猫が消えた…。

 砂に変わった。


 やはりそうなのか。

 時間が経つと砂に変わるのだろうか…それとも、なにかの条件で砂に変わるのだろうか、それが解らない。

 いわゆる成仏という状態で読み取っているけど、それは当時の受け取り方で、実際は違う様な気がする。

 剥がれた意思が消滅したと解釈すればいいのだろうか。

 ただ解ることは完全に消滅した、つまり証拠能力を失ったということだ。

 僕に選べるのは、遺体の抜け殻を残すか、身体ごと別の場所へ飛ばすかの2択だけ、それだけでも充分なんだが、この先はそれでは困る。

 失踪になるか、原因不明の死体とするかで、処理は大きく異なる。

 困るのは、失踪となれば捜査の可能性も出てくる。

 突然死として死体があっても処理に困る。


 どっちにしても身の回りで何度も起きていいことではないのだ。

 まして身内となると尚更。


 人を殺すのは簡単だ、その死体を処理する方法さえあれば…よく聞く話だが、自分が、その悩みに直面するとは思わなかった。


 こうなると澤田は早まったかもしれない。

 同級生が冬休みに家出した…で済めば良かったのに、父親まで行方不明や突然死など起こしてしまっては、まして死体は処理できないというオカルト付きだ。

 叔母が味方だったなら、どんなに楽だっただろう。

 でもあの叔母は昔から僕と折りが悪い。


 色んなモノが足りない。

 知識も、それ以上に人も…役立たずばっかりだ。


 仲間はいらない…欲しいのは共犯者だ。

 どうすればいい…あの刑事、僕の味方になってくれないかな。

 そんな目はしていなかったな。


 あの目は…狩る側の目だった。

 僕は狩られやしない…絶対に…必ず後悔させてやる、僕にあんな目を向けたことを、必ずだ。

 利用して…最後に絶望させてやる。

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