第47話 12月28日(水)

 神社にはしばらく近づかないほうがいい。

 澤田のことは人並に興味を示していればいい。


「敦、じゃあ母さん行ってくるから」

「うん」

「澤田君、見つかるといいけど…」

「そうだね」


 母親は昼からPTAで決まったビラ配りに出かけた。

 探してますってヤツだ、同じ学年の各クラス委員長も駅前で先生とビラを配るらしい。

 ご苦労な事だ。

 日本になんていない…と思うけど。

 あるいは、この地球に、そういう次元ですらないかもしれない。

 それを考えると、ゾクゾクとワクワクが湧き上がってくる。

 アリスは多くを語らない。

 アリス自身も、自分がどういう状態なのか理解できていないのかもしれない。


 眠い…今夜はアリスに引っ張られているのかもしれない。


『子供を見たわ』

「アリス…男の子だった?」

『あなたくらいかしら』

「僕の同級生だ」

『そう…別の場所へ行ったわ…どこか解らないけど』

「別の場所?」

『違う場所…違う時…』

「生きているの?」

『たぶん…生きていけるかはわからない…でも私とは違う』

「移動しただけ?」

『少しズレただけ…彼は運がいいわ』

「運がいい?」

『また、あなたに会えると思うから』

「また会える?」

『交われる範囲で飛ばされただけだから…安心して』


 気怠い…とても疲れる。

 アリスと会うと目醒めは最悪だ。


 今日は特に…澤田は生きている?また会える?

 冗談じゃない。

 少しズレた時と場所…未来か…過去ってことか。

 また会える…それが一番困る。

 死んですらいない。


 やはり、もっと池のことを、鏡のことを知らなければならない。

 早まったんだ…身近な人間で試しすぎたんだ。

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