第118話 ???

 池に飛び込んだはずだった。

 不思議な感覚だった。

 吸いこまれる様な、緩やかに運ばれる様な。

 急激に眠気が襲い、目が覚めると白いドコカで倒れていた。

 何も無いようで、辿るべき途だけは理解できる。

 道があるわけではないが、行く先は解る。

 僕は、視えない道を辿るように進んだ。

 途中、誰かの視線を感じることもあったが、姿は見えず、気のせいだったのかもしれない。

 僕は、何処へ行くのだろう?

 どこでもいい。

 どうせ、アソコにはもう何も無い。

 結局、知りたいことは何も知れないまま、だったら自分で試すしかない、それしか無かった。

 あの場所に相良がいなければ…決心はつかなかったかもしれない。

 戻れるとしても、戻らないだろう。

 僕は、僕のまま違うナニカになりたいと思う、思うから願い、そして此処にいるのだと信じる。

 この途の先は必ず、自分を変えるナニカに繋がっていると信じている。

 間違っていたんだ、平凡に生きるなんてことが何より難しいことだと今は理解できる。

 トラブルを避けることが、こんなに難しいとは思わなかった。

 トラブルは避けられない、平々凡々が奇跡だなんて思わなかったんだ。

 だから憧れたのかもしれない。


 でも諦めない。

 この途は僕が選んだ途じゃない、僕が歩むべき敷かれ用意されていた途なんだ。

 桜井の家に産まれた僕のための途。


 漠然と探していた場所へ繋がる途は此処で間違いはない。

 なぜなら、僕が歩いている途なのだから…。


 光が強くなってきた…意識が遠くなっていく…目が覚めれば、そこは…。


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