第119話 Stand as a tree…and see.
此処は時間の流れを感じない。
桜井の過去を嫌い、無視し続けきた俺が結局、最後は桜井の人柱になってしまった。
もう俺で終わりにしたい。
俺と入れ替えで出て行った女性は、その魂は逝くべきところに向かったはずだ。
科学的な事は解らない、超心理学あるいは神学とでもいうのだろうか、肉体と魂はいくつもの状態に分類されるらしい、俺のこの状態も、そのいくつかの分類のどれかに属しているのだろう。
こんな部屋、空間が存在しているとは、自分の身に降りかからないと解らないことばかりなのかもしれない、俺の知っていた世界は、いや人間が知ることのできる知識なんて、この宇宙から見れば、砂粒にも満たないのだろう。
体験しても説明すらできないのだから…。
身体を残してきたわけだが、それに意味があるのだろうか?
これを創造した生命体は、最後には身体に戻ることを前提に、このシステムを建造した、だが実際に戻った者はいたのだろうか?
今を捨てるってそういうことなんじゃないのか。
時の流れには逆らえない、後戻りは絶対にできない。
元の場所には戻れない、だから捨てるんじゃないのか。
違う世界で生きたいと思うものだろうか?
ココに在る本は、記録だ。
いや起きたことを知るための新聞のようなものだ。
ココにいながら置いて行かれない様に…戻っても困らないように、時代の変化を知識で知れということだ。
知れば知るほど、戻りたいとは思わなくなる。
俺のしたことは衝動的な感情の結果だったのだろうか?
妻は…いや、敦を思えば、こういう行動にも繋がろう…。
何日経った?
窓の外を歩く、敦が見える。
アチラからは見えないのだろう…敦、オマエは何処へ向かう?
俺がソレを知るのは何年先の事なのだろう。
いや、ココではそんな流れすら感じなくなるのか…いつか、俺の代わりが来るまで。
あの刑事は、いつかこの世界を閉ざしてくれるだろう。
あの男は躊躇わない。
自分が納得すれば、この世界を…。
過ぎた代物なのだ、こんな優しすぎるシステムは、人類には似つかわしくない。
殺し合いしかできない人類には…。
だから、向こう側から閉ざされたのだと、今なら解る。
敦…ソレを解れ。
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