第16話 12月20日(火)夢

 やたらと眠い…。

 あれから、こういう眠りに引っ張られるような夜には、大概、アリスの夢を視る。

 繋がっているのかもしれない、無意識ってヤツで。


「私は私を見ている…永遠に終わらない時間、1秒前の自分が、2秒前の自分を視ている…連なる自分の姿」

「アリス…そこは何処?」

「解らない…ずっと堕ちる感覚が続いている…ずっと堕ち続けている」

「どこから落ちたの?」

「落ちたの?私?堕ちているけど…」

「1秒後の自分も視える…きっと1秒後の私は2秒後の私を視ているのね…」

「アリス…また会える?」

「会えるわ、いつでも…私は、すべての時間に存在して、その何処にも固定されない、なぜこうなったかは解らないけど…」

「いつでも会えるの?」

「いつでも会えるわ夢の中でも…望めば、あの場所でも…でも、私がいる場所へは来れない…来てはいけない」

「行けないんだ」

「えぇ…ココには部屋がひとつしかない…誰かが住んでた部屋しかない」

「また会いに来るよアリス」

「もう目覚める時間ね…」


 目覚めると、悲しいような、寂しい気持ちになる。

 僕だけが、アリスが固定された瞬間に立ち会えたから、僕だけが意識を通わせられる。

「部屋はひとつしかない…」

 アリスは誰かと入れ変わったのだろうか?

 その部屋はアリスのための部屋なんだろうか?

 部屋はひとつしかない…誰かが以前に住んでいた…よく解らない。


 祖父の日記にある、池に浮かぶ外人、アリスと関係あるのだろう。

 もしかしたら、前に部屋に住んでいた人?


 まぁいい…次の雨を待てばいい。

 なにか解るはずさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る