第9話 クレバー

「失礼します」

 応接室へ入ると、婦警さんが1人座っていた。

「桜井くんね、急にごめんね、座って」

「はい、失礼します」

「あ~っと、私はK警察署の花田です」

「K警察署?東京の刑事さんがと聞いたんですが?」

「あぁ…そうなんだけど…相良警部補…という刑事さんが来てるんだけど…私は交通課で、その…相良さんは校内を散歩するって…」

「散歩?」

「あぁいえ、巡回…調査…するって言うか…その」

「はぁ…まぁいいですけど、待つんでしょうか?」

「はい、あのすいません、探してきますんで、待ってていただけます?」

「はぁ…はい…でも、以前、話したことと同じですよ、ただ見つけたってだけですし、特に何かということも無いんですけど」

「いいんです。本人が聞きたいと言ってるんでそれで、じゃあ探してきますから、帰らないでくださいね、ねっ」


 しばらく待たされて、ドアの向こうから声が聴こえる。

「相良警部補、急いでください、もう大分待ってますから」

「大丈夫だよ、小学生なんて、オマエ家帰ってゲームするくらいしかないんだからさ」

「そんなことないですよ、塾とか色々あるんですよ」

「そうなの?こんな田舎に塾とかあるの?」


 ドアが開いて、着こんだスーツの中年が入ってきた。

 父親と同じ歳くらいだろうか、40手前って感じだ。

 父親と違うのは、スーツを着ていてもサラリーマンには見えないということだ。

「待たせてごめんね」

 さっきの婦警が刑事の後ろから謝る。

「いや~悪かったね、思いのほか大きいガッコだね」

「そうですか?都会の学校とは違うでしょ」

「ん?さぁね…行った事ないから、話聞かせてよ」

「そんな言い方…ごめんね」

 婦警が謝る。

「いいですよ…どうせゲームしかやることない田舎の小学生ですから」

「ほぅ…面白いねキミ」

 タバコに火を付けた刑事がニタッと笑った。

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