第10話 12月20日(火)応接室
「へぇ~、で池に向かったら死体があったと…」
僕は、簡単に発見までの経緯を刑事に話した。
「随分と淀みなく話すもんだね、感心するよ」
「別に…何度も同じ話をしているから慣れただけです、たぶん」
「いやいや…何度も話しているとさ、矛盾や脚色が出て来るもんなんだわ、キミの話は調書通りでね、驚いたんだ、判を付いたみたいにさ矛盾が無い」
「それがなにか?変ですか?」
「いんや…あまりに変化が無いから嘘に聞こえちゃう」
「相良警部補!!」
花田巡査が慌てて制止する。
「うん、まぁ大丈夫だよ、信じるよ、聞きたいのはココからなんだ」
「はい」
「すぐに死体だと解ったんだね、なぜ?」
「なぜ?って…うつ伏せに浮いてて身動きしてなかったから」
「そうじゃないんだ、死体ってさ見ないじゃない、刑事の俺だってなかなか見ないんだよ、キミの話だとさ、あっ死体が浮いてるって聞こえちゃう」
「変ですか?」
「普通は人だと認識するまで時間が掛かるもんらしいんだよ、俺も第一発見者になったことないからさ、解らないんだけどね」
「はぁ」
「ふぅん…あんまり驚いてないんだね?」
「えぇまぁ…なんというか、あまりに現実離れしていて逆に冷静になったというか」
「達観してるね~、いや感心するよ、俺なんて未だに死体を見に行くんだと思うとさ気が滅入るんだけどね」
「他に話すことは無いんですけど」
「ん…そうだね」
「帰っていいですか?家に帰ってゲームしたいんで」
「ハハハハ、根に持つねキミ、いいよ、ありがとさん」
僕は応接室を出た。わざと礼などしなかった。
(なんだ、あの刑事…)
他の記者や警察は、僕に気を使って接していたのに、あの刑事は!!
無性に腹が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます