第70話 1月1日(日)初夢

「アリス…なぜソコにいるの?」

『解らない…滝の奥に人が見えた…差し伸べられた手を私は拒めなかった』

「滝?ナイアガラの滝」

『えぇ…束の間の浮遊の後、目覚めれば此処にいた』

「部屋…だね…」

『今は、少し解る、此処の存在が』

「話してくれる?」

『此処はターミナル…この宇宙に無数に存在する鏡の何枚かを管理するターミナル』

「管理?コントロールできるの?」

『今はまだ…』

「何を管理できるの?」

『肉体の移動…距離と時間を限りなく無にできる』

「なんのために鏡は存在するの?」

『遥か彼方から移動するには身体から意識を切り離す必要があった…気の遠くなるような時間を掛けて、鏡は宇宙に散り散りに撒かれ、管理する者が必要となった、身体を捨て意識を鏡に投影することで鏡は繋がっていく繋がった鏡を辿って、そのものは、この惑星に辿りついた…』

「鏡は…別の惑星から?」

『鏡は、この星にも撒かれた…この星に住まう者の意識を取りこんで人々は文化を分かち合った』

「文化…世界の文明は繋がるのか」

『しかし…この星に住まうものは更なる知恵を求め、宇宙そらへ手を伸ばした、それを拒ばまれ、鏡を残し、彼の地から来たものは去って行った…鏡は星から彼の地へ結ばれることは無くなったまま、意識を入れ替えながら捕りこみ続け、映ったものを無秩序に飛ばし続ける』

「無秩序…制御できないの?」

『できない…意識を置く部屋ですら歪んでいる…鏡は少しずつ歪んでいく…いずれ何も映さなくなる』

(バベルの伝説のような話だ…混乱とはよく言ったものだよ…)

「ありがとうアリス…また話せるよね」

『あなたが会いたいと願えば…私が会いたいと願えば…』


(まだ…知りたいことは沢山あるんだ…願い続けるさ)

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