第134話 シェア

「桜井敦は全てのリスクを回避したんだ」

「リスクですか」

「あぁ、追われるリスク、捕まるリスク、いやそのストレスから逃避行動に至るまで、犯罪者が疲弊する過程をすっ飛ばして、ココにいる」

「そうなりますね」

「アイツはね笑っているよ今…」

「時効を迎えて?」

「あの時点では時効はあったから?いや、違うな…俺に遭えるからかな」

「どういうことですか?」

「アイツにとっては昨日の今日なんだよ、俺達にとっては20年だけどさ」

「だから?」

「だから…面白くって仕方ないんだよ、悔しかっただろって笑いに来るのさ」

「そんな…自分から?」

「あぁ、探さなくてもいい、アイツはココに来る」

「今日?」

「いや、近いうちに…だから、しばらくは俺、街をブラブラしてればいいんだ」

「そんな根拠のない」

「根拠?オマエさん考え違いしちゃいけないよ、アイツは、アイツの中身は小学生のままなんだ、30前半になっていても、中身は、あの頃の桜井敦のまま、時間を経ていないということは成長していないということでもあるんだぜ」

「しかし…自分から会いにくるとは、少し飛躍してませんか?」

「賭けてもいい」

 花田にはニヤッと笑う相良の顔もまた、20年前と変わっていないように思えた。

「もし、また逃げられたら?」

「逃げないね、アイツが今、捕まって失う物は無い、せいぜい窃盗くらいだろ、それに大それた物は盗んじゃいない、ぶち込まれるようなことは無いさ」

「でも過去の手配書は破棄されたわけでは…」

「あぁ、でも意味が無い、問題はアイツがどうやって俺の前に現れるのか?それを待てばいいのさ」

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