第99話 パペット

「桜井崇が自殺?」

 民宿で寝ていた相良の携帯に花田から報告が入ったのは朝7時を回った頃だった。

「で…その件で、県警に出頭命令が出たんですよ、私と相良さんに」

「あ~、ウロウロとしていたからね~当然といえば当然だ」

「もう、嫌ですよアタシ、今度はドコに配置換えされるんですか?」

「それは、俺の知るところじゃないがね~、面倒なことになったな~」

 浴衣のまま電気ストーブの前でしゃがみこんで頭を掻く相良。


 その日の午後、県警から派遣された刑事に事情聴取され、4時間後にやっと解放された。

「長かったね~、椅子に座りっぱなしで嫌になってきたよホント、同じ話を繰り返し繰り返し、いや~刑事が嫌われるわけを理解した気がする」

「立場が変わらないと解らない事ってありますよね」

「まったくだ」

「よかったですね」

「なにが?」

「手帳、ほとんどメモ取ってなくて」

「うん、俺、そういうタイプじゃないんだ」

「魔鏡とか書いてあったら頭オカシイと思われますもんね」

「そうだね~、いまだに信じられないからね~俺自身」

「私は信じてますよ」

「柔軟だよな、キミは」

「素直なんです」

「さて…ところで、死体はどうなった?」

「安置所のようですよ」

「解剖は?」

「さぁ?自殺断定ですからしないのでは?」

「ふ~ん、幸か不幸か…どっちだろ」

「腐らないんですかね?」

「だろうね…でなきゃ意味が無い、崇が自殺した意味がさ…」

「自殺っていうんですか?」

「どうゆうことだい?」

「だって知ってたんでしょ池のこと」

「だから明確な自殺なんじゃないの…知ってたんだから」

「どうするんです?」

「とりあえず、明日、久実に会うさ、どうせ火葬はソコでやるんだろ」

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