第100話 フレイム

「久実さん…お兄さん、崇さんの件でーちょっと…」

「えぇ、どうぞ」

 花田は火葬場に務める妹『久実』と彼女の職場で会っていた。

「お休みされないのですか?」

「はい、自分の手で送ってあげたいので式、当日も勤務することに…」

「燃えないから」

 花田が久実の目を真っ直ぐ見据えて言葉を遮る。

「……」

 視線を逸らし、下を見る久実。

「なんとなく解っているんじゃないですか?崇さんの遺体が…」

「だからなんです!!」

 今度は久実が花田の言葉を遮り、一呼吸おいて話し出す。

「それが、それが桜護の血を引く私たちの…」

「崇さんが池に入ったのは桜護だからじゃないですよね、きっと…」

「それは…」

「敦くんのため」

「違います!! 敦のせい…です…」

「せい?」

「桜井が、池の秘密を受け継ぐのは、自らの歴史と負の遺産たる鏡を見守るため、決して私的に利用させないため」

「とは言えないんじゃないですか?」

 喫煙スペースからヒョコッと顔を出した相良。

 久実のほうへ歩きながらポケットから例の球を取り出す。

「これを御存知ですか?」

「なんでしょう?知りませんが…」

「コレは、崇さんが私に預けた物でしてね…なんでも鏡を破壊できる球なんだそうです、限りなく完全な球体、現代の技術では到底造れない代物だそうで、反射率ほぼ100%の鏡と対を成す物と私は考えてます」

「そんなものを兄が?」

「受け継ぐらしいですね、歴史と一緒に…」

「私は知りませんでした」

「えぇ、そうでしょう、あっ、申し遅れました、私、相良と言います」

「相良さん…兄から聞いてます」

「そうですか、まぁ、少しお話を伺わせてください、捜査ではないので強制はできませんけど、それでもお願いしたい」

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