第101話 エイジ
「あくまで任意ということですか?」
「いや~、そうではないですよ、捜査ではないんです、いうなれば雑談程度にお付き合い願いたいと…そんなところなんですが」
「雑談」
「えぇ、捜査というには、この話は現実離れしすぎてましてね、報告なんかできやしない、単純に興味…というか、コレを預かった以上、責任と言ってもいいかもしれないんですが、正直、迷ってるわけでして…桜井、桜護でもない私が、ずっと迷い続けて先送りしてきた問題を勢いだけで断ち切っていいもなのかとね、あなたと話して少し考えたいのです」
「考える?」
「えぇ、刑事としても…人としても…どうすべきかを」
「敦のことですね」
黙って聞いていた花田の肩がビクッと揺れる。
恐る恐る相良と久実の顔を見る花田。
相良はいつもと変わらない、久実のほうは険しい表情で唇を噛み下を向いていた。
「はっきり申し上げるとですね」
頭を掻きながら相良が言い難そうに口を歪めながら言葉を続けた。
「なんと言えばいいのか、その犯罪にはならんのです、それは本人も自覚してましてね…そこは刑事の領分ではないのですが…」
「おっしゃりたいことは解ります」
「まぁ…人としては、やはり無視もできんのです」
「……はい…」
「桜井敦の行動は止めるだけでは、もう…彼は、その領域を逸脱してしまった」
「相良さん!!」
花田が声を荒げる。
「黙ってろ!!」
相良がそれ以上の声で花田を制する。
ビクッと花田の身体が強張る。
顔を抑えて泣きだす久実。
「鏡を割って、それでおしまいってわけにはいかないだろ…もう…」
コートのポケットに手を入れて、球をギリッと握りしめる相良、その表情は、何かを決意したように見えた。
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