Return to Myself（龍神池2）

第1話 タイムラグ

　朽ちた神社に苔むした池がある。

　同じ市に住んでいる人すら知らない山奥、忘れ去られた山村の神社がＳＮＳを中心に話題にあがった。

『神社の池に水死体』

　それだけなら、今の日本では数日間ニュースになるだけ…。

　1ヶ月の間、ネットをざわつかせているのには、いくつかの要因がある。

　犯罪とは無縁の山村であったこと。

　水死体が若い外国人の女性であったこと。

　そして…その外国人女性が発見の前日、ナイアガラの滝で消息を絶った女性であったこと…。

　検視の結果、死因は溺死、死後7時間。発見時9:00頃なので深夜2:00頃に死亡したことになる。

　神社の池で発見されたが、体内から検出された水質はからは池の水は飲んでいないことが解っている。

　つまり…水死体は溺死後、この神社の池に放置されたことになる。

　ニューヨークから日本まで、直行便でも14時間。

　観光で訪れていたナイアガラの滝で消息が途絶えた女性が、日本で発見されたのである。

　発見時、遺体はうつ伏せで直径4ｍほどの池の中央に浮いていた。

　着衣に乱れはなく、襲われた形跡はない。

　所持品からイギリス国籍　アリス・シーカー27歳、友人3人と観光中に行方が分からなくなり、現地警察に通報されたのが、現地時間16:00、アリスの姿が見えなくなって1時間後の通報だという。

「つまり…」

「そうです。時差を考えるとナイアガラの滝で消息を絶った直後に死亡して…その７時間後に日本で遺棄されているのです」