第92話 フォビドゥン
「大変だったんですよ相良さん」
自分がいかに引き伸ばしに苦労したか、運転しながら身振り手振りで話す花田。
(だから…交通課クビになるんだよ…)
面倒くさそうに返事をする相良。
「総じて、伸びたうどんを食っていただけに聞こえちゃうんだけど」
「うどんが伸びるくらい頑張ったのだと聞いてください」
「はいはい、ご苦労さん」
「それで、なにかあったんですか?」
「なにが?」
「部屋にですよ、まさか手ぶらじゃないでしょうね」
「部屋には何も無かった」
「はぁ~?」
「得たものはコレだ」
コートのポケットから銀色のビー玉を取り出して花田に見せる相良。
「でかめのパチンコ玉のために私は…私は頑張ったんですか?」
「ただのパチンコ玉じゃなさそうだよ」
「えぇ、大きいですものね」
花田の声に静かな怒りが混じる。
相良の掌で転がる銀の球をサッと取り上げて窓から捨てようとする花田。
「あっ!! ソレ捨てられないんだよ、大事な物だからさー説明するから!!」
「こんなビー玉の為に…私は、伸びきった、うどんを1本、1本すすったわけじゃない…クチャクチャ…クチャクチャ…小麦粉の味しかしなかった」
「だからさ~、その苦労の甲斐あって、コレを貰ってきたわけだ、いいから返して話を聞きなよ」
相良が経緯を話す。
「……ということで、コレは魔境と対成す秘密兵器ってわけだ」
「ホントなんですか? アルミのビー玉にしか見えませんが」
「調べてないけどさ…ほぼ完全な球形らしいよ」
「5個あるってことは…」
「鏡も5枚存在するのかもな」
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