第94話 領地を強くします
全体会議から三日経ち
フリューゲルさまとトンプソンさん、
ジェイムスおじさんとマリーおばさんと、ランチを楽しんでいます。
まぁ、いきなり呼ばれた皆さんは、緊張している様で、もしかしたら食事の味など解らないかも知れないのですが…
女性陣チームはグリフさんの大型馬車大地の女神号でメダリアの街に遊びに行っている…あの旅劇団の劇を観に行っているらしい。
〈自分達の話し観て恥ずかしくならないのかな?〉
などと考えるが、
まぁ、今はそれより、
「フリューゲル様、急に村長さんから町長さんになって大変じゃない?」
と心配した俺に
「村の皆が手伝ってくれるので問題は有りません。
ただ…」
と、口ごもるフリューゲル様に
「気になることはジャンジャン言ってよ。」
と俺が言うと、
「大変申し上げにくいのですが、カーンさんの広さでは街の人数が増えてしまい少々手狭になりました。
教会を別に致しましたが、それでも間に合わず…」
と申し訳なさそうに話すフリューゲル様。
だから居住区の国境の壁付近に大きな教会を建てたんだね。
バゼル神父が大地の女神像を祀ってくれているから一度顔を出さなきゃね。
うーん、新しく大きな役場とフリューゲル様の屋敷を建てよう。
「フリューゲル様、新しい役場の規模や場所をウチのダニエルさんと打ち合わせしてくれる?」
と俺がいうと、
頷くフリューゲル様…
俺は、食堂の端に控えているダニエルさんに、
「ダニエルさんはシルフィーさんと調整して大工チームの親方と話を進めて下さい。」
とお願いした。
つぎはジェイムスおじさん達に、
「マリーおばさん、ジャムありがとう。
明日の朝が楽しみだよ。」
と俺が言うと
「喜んで頂けて何よりですわ、領主様。」
と、マリーおばさんが言う。
「やめてよマリーおばさん。
俺は、いつまでも隣のアルドちゃんで居るつもりだからね。
じゃなきゃマリー姫っ呼ばなきゃならなくなるよ。」
と俺が言うと「まぁ、」と驚いてた。
流石に旦那がばらしたとは言えないので、
「あふれでる気品は隠せないからね。」
と、はぐらかしておいた。
俺は、ジェイムスさんに、
「で、ジェイムスさん、
豆の方はどうですか?育ちそうですか?」
と聞けば、
「私だけでは難しかったでしょうが、仲間に農家出身の者や、長年農家をしていた者が集まってくれて居るので、全て枯れること無く育っております。」
と報告してくれた。
「前にもお願いしたんだけど、
品種によっての育て方を第一に研究して欲しいくて、枯れてもまた豆セットをダンジョンショップで買ってくるから、怖がらずじゃんじゃん実験して、俺が欲しい豆の栽培が可能かを調べてください。」
とお願いした。
「心得ました。領主さま」
と答えるジェイムスおじさん
「だから、堅苦しい呼び方止めてよジェイムスおじさん、
なに、ジェイムスさんもアルド君でよろしく。」
と、頼むと、
「はっ!」と返事をするジェイムスさん…
だから堅いって。
そして、皆の緊張が少し解れた様なので、
「さてと、今までの報告はこのくらいにして、これからの話をしたいな。」
と俺が言ったのだが皆さんポカン顔をしている。
「バトラーお二人をお連れして、」
と俺が指示すると、
「畏まりました。」
と奥から「コーベーオ男爵夫妻」があらわれた。
益々ポカン顔の皆さんの中で、トンプソンだけが、理解した様子。
「アルド様もしや…?」
と聞いてくる、流石フリューゲル様の影の情報収集係だね「義賊のバンダナ」の件から不思議に思って、シルフィーちゃんに聞いたら元帝国の影の住人、情報収集のプロ集団の一人らしい。
〈ウチでも影の軍団作らないかな?
カッコいいやつ。〉
などと考えながら、
「はい、トンプソンさん多分当たりです。」
との俺の言葉で一筋の涙を流すトンプソンさんに益々キョロキョロするフリューゲル様
「えー、私の領地に国王陛下から任命権を子爵1に男爵2を頂いています。
準男爵は男爵以上領内の貴族の人数を超えない程度なら勝手にどうぞ。
となっています。
こちらの二人はリザードマンの国から我が領に〈稲作〉を伝え、広げる為に来てくれました。
本日のランチの卵のチャーハン (塩胡椒のみ)に使われていた米も作ってくれました。
彼らに男爵に成って頂きこの領地を盛り上げていただいています。」
と俺が紹介すると、ペコリと音がしそうな程お辞儀をする二人に釣られて皆さんがお辞儀をかえす。
「で、留守がちな俺に代わりこの領地を任せる仲間が欲しいので、
ジェイムスさんは子爵で
フリューゲルさまは男爵に
もう、トンプソンさんも準男爵になって貰いたいんですが、
どうでしょう?」
と俺が提案すると、
………。
あれ、反応がない?
急にジェイムスおじさんが、
「いやいや、アルド様。
このような死に損ないに、そのような大役は…。」
と言い出す。
「ジェイムスさん、まだ五十代でしょ?!
俺がガキな分貫禄がある方々に脇を固めてもらわないと!」
と俺が説得するが、
「いきなり子爵位とは…」
とジェイムスさんが尻込みしている…
「ジェイムスさんの人望で集まった元騎士団の方々をリーダーに治安維持と領地の守りを担って欲しいんです。
豆のついでで構いませんから。」
と俺が言うと、
「ハッハッハッハ!」と笑ったジェイムスさんは、
「豆のついでに騎士団とは、私は既に騎士団よりも重要な物を頼まれていたのですな。
マリー、いいかな?」
とマリーさんにお伺いを立てるジェイムスさんに、
笑顔で答えるマリーさん。
「アルドさま、この命尽きるまでお仕えさせていただきます。
つきましては、息子をアサダの街から呼び寄せたいのですが、宜しいでしょうか?」
と…
〈えっ息子いたんだ!知らなんだぁ~。〉
と驚くが
〈まぁ、アラフィフの仲良し夫婦、居たとしても不思議ではないかなぁ。〉
と納得した俺は、
「構いませんから気楽にやって下さい。
豆の栽培さえ成功したら、最悪工房で千を超えるゴーレム部隊でも作ればなんとか成るから、」
と俺が言ったらマリーさんが笑いながら、「神と事を構えようとする方は頼もしいわね。」と言って涙をためていた。
〈はい、ジェイムス子爵の誕生です。〉
「では、ジェイムスさん家名はどうします?」
と聞けば、
「ブルーベィルでお願いします。」
と即答した。
そして、それを聞いたフリューゲル様がガタリと立ち上がる。
〈何事?〉
と、俺が驚いていると、
「良いのか、武勇で大陸に名を馳せた、ジェイムス殿の家名や、マリー殿の家名を名乗らず、なぜマリー殿の母君の家名を選ばれた?」
と、慌てている。
すると、ジェイムスさんは、
「あの日、帝国最後の日に、
我々夫婦は夫婦にすらなれずに死ぬはずだった。
皇帝の家族が逃げ出す事は許されないあの戦場で、マリーの母上、カトリーナ様は、
〈この戦場で、皇帝の家族を守り抜いた貴方に褒美として、マリーを貴方に差し上げます。
そして、皇帝陛下を守り切れなかった貴方に罰を与えて、この瞬間から近衛騎士団長の任をとき一市民とします。
逃げなさい!〉
と、我々二人を命懸けで逃がしてくれました。
私の恩人の名を背負いたい…」
と涙をながしたジェイムスさんを見て
フリューゲル様も、
「私もこの領地の…いやアルド君の理想の為に力になりたい
頼めるかな?」
と言ってくれた。
俺は、
「頼むのは俺の方です。
領地の事はほぼ丸投げしてしまうかもしれませんが、種族に関係ない開けた、そして欲を云うと、そんじょそこらの武力にも屈しない領地にしたいんだ。」
と無茶を言ってみた
フリューゲル様は、
「ワッハッハ、これは本気を出さねばなりませんな。
トンプソンも準男爵に成るからには昔よりも本気に成らねばな、」
と笑い、
「はい」と答えるトンプソンさん…
俺は、
〈うんうん、引き受けてくれて良かった。〉
と安堵していた。
フリューゲル様は暫く考えて、
「ロルフ君も準男爵にしてしまってバリスタと弓の部隊を作ってはどうですか?」
と提案してくれた。
俺は、
「採用!バトラー、シルバーさんと愛妻号で丁重にお連れして。」
と指示をだした。
この日我が領に複数の貴族が生まれた。
ジェイムス・ブルーベィル子爵家
フリューゲル・アルフォンス男爵家
(マリーさんの弟でフリューゲル様の親友の名前を家名とした)
トンプソン・インフォーマント準男爵家
そして訳も解らず連れてこられたロルフ先生は、
ロルフ・D・トラップ準男爵家と、なった。
だいぶゴネたから、カッコいいミドルネームをあげて、どこかのDの一族みたいにしたらなんだか承諾してくれた。
狩人王にはならずに弓隊の隊長になってほしいものです。
よし!丸投げ体制がととのったし、
俺もやることやるかな!
そして、1ヶ月程経ち、
アルドニアに遠方からのお客さんが良く来る様になりました。
そろそろ観光にも乗り出すか悩むところですが…
まずは、神様のゴタゴタが先です。
各地の街から精霊結晶の装飾品等を運んで来てくれたのですが、
アサダの街から届けに来たのがジャックさんとエドさんの二名…
聞けばジャックさんは俺との商売が忘れられずアサダのシルフィー商会を引退していた父親のビーンさんに任せて、
建設中のシルフィー商会のアルドニア本店が完成後に店長不在になるメダリア仮本店の店長に就任してくれるそうだ。
シルフィーちゃんのお手伝いを頑張てね。
あと、メダリアのお店でミームちゃんも頑張ってるから立派な商人にしてあげてね。
とお願いしておいた。
そして、護衛のエドさんは独りでアサダに戻るのかな?と思ったら、
「アルド伯爵様、この度は我が父ジェイムスに格別の御引き立てを賜り、誠に有り難う御座います。」
と敬礼をする…
「えっ……えぇぇぇ!
エドさんは、お隣のお兄ちゃんなの?」
と俺が驚くと、
「はい、私も驚きました…伯爵様のご家族が…」
と話しているエドさんに、俺は、
「エドさん、エドさん
今まで通りアルドでいいよ。
喋り難いからね。」
と言ったら、
「うーん」と考えたエドさんは、
「間を取ってアルド様でいいかな?
俺もただの平民上がりの騎士団員だったから、子爵の息子など良く解らん。」
とエドさんが恥ずかしそうに話す。
〈いやいや、世が世ならば皇帝一族か、近衛騎士団長の息子だよ、エドさんは〉
と思いながらも、
「エドさん、俺なんか生粋の平民で子供なのに伯爵だよ、やってらんないよ。」
と二人して笑った。
〈また親っさんのポトフを一緒に食べたくなった…〉
よし、アルドニアに安くて旨い食堂区画をシルフィーちゃんにおねだりしちゃおう。
テナントを作って親っさんか親っさんの弟子を勧誘しちゃおうかな?…
と勝手な妄想をしながらエドさんとの話に花を咲かせていた。
エドさんは12歳の頃から辺境伯預かりで騎士団見習いとして頑張っていたらしい。
我が家が〈果ての村〉に来る少し前に村を出たので俺が隣の家の子供とは最近まで知らなかったそうだ。
〈まぁ、俺は30分前まで知らなかったのだがね…。〉
二人は俺に挨拶を済ましてそれぞれの目的地に行ってた。
俺の手元にジャックさんが、アサダの街で人脈に物を云わせて集めてくれた、〈コモンのゴーレムハート〉数個や金属類
それに祈りが籠った精霊結晶の腕輪が届けられたのをかわきりに、
翌日レトリバー合衆国の凄腕狩人のチーム十名がラドルさんの手紙を持ってやってきた。
祈りの籠った精霊結晶の首飾りと、〈念話〉のスキルカード二枚と〈コモンのゴーレムハート〉を複数とかなりの量のミスリルを届けてくれた。
シルフィーちゃんが適正価格で買い取りしてくれて、ゴーレム通信網…〈チャンネルアルド作戦〉の材料になる予定だ。
そして彼らはメダリアに拠点を置き約半年間メダル集めをやってくれるらしい。
「師匠の目を治してもらったお礼です!」
とやる気に満ちていた。
〈ラドルさんが大好きな弟子の方々だね…ラブラドルチームだ…〉
と、頼もしい助っ人の登場から、
また数日経ち、コーバと、王都の合同チームがお届け物を持ってきた。
流石はスキル屋さんがある王都、〈念話〉のスキルカードが十枚と〈記憶の水晶〉も一つそれに各種 (コモン・レア・スーパーレア) ゴーレムハートがお届けされたのだが…
運んできたコートニー君と算術を教えた数名が帰ろうとしない…?
「どうしたの?」と俺が聞くと、
「師匠、私も両親のいるこの街で働かせてください。
後ろの5名も師匠のお役に立ちたいと付いてまいりました。」
と、頭を下げてきた。
コートニー君達には学校の先生や文官のかたわら我が領地の魔法師団として頑張って貰う事にした。
その後もタンパさんが、ジーク様からマイステアに手紙が来て、議員さんに
「お前の工房の関係者だろ?」
とドルルさんが丸投げされたのをタンパさんが丸投げされたと〈記憶の水晶〉やら〈スーパーレアのゴーレムハート〉や〈念話〉のスキルカードと、最近冒険者が熱心に祈る大地の女神像の精霊結晶の腕輪をとどけてくれた。
タンパさんはお届けが終わると
「親っさんどこっスか?」
と聞いてきたので、
話を聞けば、ドドルじぃちゃんの助手としてこの街が落ち着くまで帰って来るなと、送り出されたらしい。
〈有難い、じぃちゃんも巻き込み動いている「チャンネルアルド作戦」の人手が増えたのはありがたい。〉
バトラーに任せて案内してもらい、じぃちゃんと合流してもらった。
その数日後に、リザードマンの戦士が十名やってきた。届け物は精霊結晶のアンクレットと鉱石類だった。
そして彼らはメダル集めを手伝ってくれるのだが、メダル集めの代金はいらないし素材の売却で衣食住をまかなうので、
国王を倒した〈床技〉を教えてほしいです。
「床上手アルドさま」
と頭を下げる、リザードマン達…。
〈いや、聞こえがわるいから〈寝技〉とか〈固め技〉とか〈絞め技〉に変えようね。
嫁取り伯爵が床上手って、いやらしい響きすぎるからね。
お願いだから…。〉
と、心底思った。
〈リーダーのリザードマンさんに「記録」のスキルを渡して、一通り技を見せればあとは自己研鑽でモノにするだろうから了解した。〉
そして、
最後に来てくれたのが〈世界樹の国チーム〉でした。
アーシェさんとソロさんと弟子のエルフが三名
それぞれアーシェさん・ソロさん・そして仕事で来れなかったパントンさんの弟子の人らしい。
五人は俺の領地で修行をしたいらしい。
アーシェさんと弟子さんはコートニー君チームに合流してもらった。
〈結婚相手がいなければコートニー君を紹介すると言ってたからね…〉
ソロさんとソロさんの弟子さんはシルフィー商会預かりとしてもらった。
パントンさんの弟子はフリューゲル様の補佐をお願いして様子をみる事にした。
届け物にはミスリル以外の希少金属が沢山有った。
我が領地に人と物が沢山集まっている…
あと、足りない物はメダルを集めて購入するとして…
シルフィー商会が買い取り金が足りなくなるといけないから俺は俺で、作戦のかたわら金策を考えねば。
どうすっぺかな?
などと、考えていたのだが…甘かった…
在る晴れた日の朝…魔族の〈ベルガー〉さんからミレディに念話が届く…
本国の過激派を押さえきれず、
派閥の一部が旧帝国に集結して、アルドニアに攻め込む予定であるが、
新たに〈近日中に勇者を送る〉との神託が届けられ守る為に止めれ無かった
との連絡…
戦争なのか…急になぜ?
クソ主神が動いているのも気にくわない…
あの、小者は、
〈俺が使命をクリアして焦っているな…〉
いい加減にしてくれ…
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