第71話 レトリバーダンジョン

現在、首都ラブラから数日の場所にあるレトリバーのメインダンジョンにきている…



しかし、このダンジョンはヤバいです。


一階層から罠の数が半端ない。


狩人の神様のお膝元といえど、狩られる対象になった場合に、殺意ある罠がこんなにも厄介だとは…


罠感知と罠外しの連続でクタクタに成っている。


しかし、走り回れないキバさんがストレスがたまりウロウロしだして罠を発動させ、


ガス罠を踏んだがゴーレムには効かないのでシルバーさんとキャッキャと遊んでいる。


〈俺にはバッチリ効くからヒヤヒヤだよ?キバさん…〉


5階層と6階層の間のセーフティーエリアに着くまでにダウンしそうだ。


すると、キッド君が、


「ご主人様… 飛んで行きませんか?」


もう、罠外しでクタクタの俺は頭が回らず。


〈はい?…飛ぶ?〉


となっている。


見かねたキッド君が。


「ミレディとファルとシルバーチャリオットで空中を飛んで下り階段をめざせば罠を踏むことも無いです。」


と提案してくれた。


〈あっ!その手があった。〉


と、気がつき、


「サンキューキッド君。


皆集合、装備整えて飛んでいくよぉ」


と、シルバーさんにチャリオットを装備してキッド君の運転で俺とキバさんが乗り込み、ミレディさんとファルさんは単独飛行で下り階段を目指す。


〈早く飛んでおけば良かった。〉


あっという間にセーフティーエリアに着いたので、


「ここを今日のキャンプ地とする!」


と宣言して、少し早いが、もう寝る…




そして、次の日


全快した俺はゴーレムチームと6階層に降りてきた。


また、罠があるのか?


と使った罠感知には反応が無い。


おっ罠が無いラッキー!


正直飛ぶのは燃費が悪い、


三人がMPカードでフルチャージするから、頑張ってMPを濾しとらねばならない。


などと、考えていると〈あることに〉気づいた。


アレ?今までの階層で敵に逢っていない。


キッド君の万能サーチでこの階層に敵を複数感知している。


かわりに罠が全く見当たらない…

〈1階層から5階層は罠エリアだったのか?〉


まぁ、考えても仕方がないので、MPカードの補充がてら敵を蹴散らし10階層を目指す。


濾過ポイを

大きさ 1.5 メートル

持続時間 3時間

濾過膜A 指定枠 1 「固さ」

濾過膜b 指定枠 2 「MP」「スキル」

パッケージ あり


で、俺が濾しとり、ゴーレムチームが相談して「経験の指輪」を着けローテーションで止めを刺していく。


出てくる魔物が、


「茶色狼 レベル 50」

「索敵」「スタミナ」

群れで現れ後をつけまわす担当


「レッドウルフ レベル 55」

「加速」「噛みちぎり」

茶色狼に追い込まれた獲物に止めをさす


のように、敵も狩りをする者が多い


敵は厄介だが、「索敵」や「気配消し」や「忍び足」等の狩人に人気のスキルが多く手に入ったので、ウマウマである。


そして、10階層で驚く事があった。


ボスが居ないのである。


サーチしてもいない、暫く考えたが仕方ないので、転移陣に向かうと更に驚く事があった。


冒険者のパーティーが数チームキャンプをしていた。


俺はその中の一つに話かけた。


「すみません、皆さんは何をされておられるのですか?」


と丁寧な口調で聞いてみると、


「おぅ、坊主は高そうなゴーレムを護衛にして、お貴族様か?

オイラは礼儀正しい喋り方なんか知らないから許してくれよ。」


と、前置きして詳しい話をしてくれた。


ここの冒険者はボスアタックの順番待ちらしい。

俺たちが10階層でボスに遭遇しなかったのは他のチームがボスを討伐したあとだったからだ。

ボスは6時間程度でリポップするので、皆さんはここで待機しているのである。


なぜ、こんな事をしているかというと、このダンジョン独特な機能?のせいである、


まず、序盤の罠のみの「アスレチックエリア」をクリアした後の階層で出る魔物のスキルカードがランダムで一つボスから約1/3の確率でドロップするらしい。


この「ご褒美ドロップ」のおかげで、このダンジョンは賑わっているのだ。


〈ここのダンジョンマスターは上手なシステムを考えたな。〉


と感心した。


〈でも、俺は直接濾しとるから関係ないけど…〉


ちなみにこの階層では「索敵」と「気配消し」が人気だと言っていた。


「この階層では」


と言うことは…次のボスも生まれては殺されるを繰り返してるのかな?

お気の毒ですね。


人も多いし目立つから転移陣の登録をして下に向かおうとしたら、


順番待ちのチームから、


「よし!順番が来たぞぉ。

みんないくぞ、大地の女神様頼むぜ、

俺らにスキルカードを授けてくれ!」


と気合いをいれてボス部屋に向かっていった。


早くも〈大地の女神に祈ろうキャンペーン〉が利いているのを確認して、俺たちは下の階層に降りていく。


そして、


混み混みのセーフティーエリアから誰も居ないであろう中間のセーフティーエリアを目指し、

まさに「飛んでいった」




簡易風呂に入って眠り、


翌朝、元気に16階層に降りると、

草原エリアから本日のアタックを開始しする。


沢山の魔物が索敵にひっかかり、マップに赤い点が散りばめられる。


『ダーツキツツキ レベル52』

「必中」「追尾」


『トラッププラント レベル60』

「潜伏」「擬態」「締め付け」



う~ん、ある意味トラップフロアじゃないかな?


下手に踏み込めば隠れている草に巻き付かれて、キツツキにハチノスにされるヤバいフロアだった。


「こりゃ飛んでもキツツキの餌食だろうね。」


弱いけどチクチク痛そう


でも、「必中」「追尾」のスキルが欲しいので


ゴーレムチームに階段付近で待っててもらい


濾過


サイズ 1.5メートル 継続時間 2時間


濾過膜A 指定枠 1 「固さ」

濾過膜B 指定枠 2 「MP」「スキル」


パッケージ あり


発動!


と、俺は濾過ポイと盾を構えゴーレムチームに、


「キツツキが半分以下になったら合流してね。」


と、お願いして走り出し

まずは、草原の敵の赤い点が無い所に陣取り、


「アースウォール」

「アースウォール」

「アースウォール」


コの字にアースウォールを出して、


草むらにむけて土魔法のアースミサイルを打つ


岩石の砲弾が草むらに着弾し隠れていたトラッププラントがパニックになりツタを振り回した。


そのツタのヒュンヒュン空を切る音を聞きつけキツツキ達が集まりだす。


確実にロックオンされた俺は急いでアースウォールで囲まれた中に入り、


体の前に濾過ポイを立て、頭上に盾を構え壁を背にしてしゃがみ、

キツツキの襲来に備える。


左右と後ろに岩壁を配置し、

正面と頭上のみしか侵入口がない。


頭の上から

「カンカンカンカン」と甲高い音が響き、

正面からは柔らかくなり気を失ったキツツキがペチペチと体に当たる。


たまに濾過ポイの横をすり抜けたダーツキツツキが鎧の隙間をピンポイントに突き刺さりにくる。


〈地味に痛い…〉


突き刺さるキツツキを我慢しながら、音が止むまで耐えていると、しだいに音が落ち着き、

代わりに回りから爆発音が響きだす。


俺は、刺さったキツツキを引っこ抜き地面に叩きつける


「痛ったいんじゃ、ぶぉけぇ!!」


と怒鳴りつけて、うさを晴らしたあとで、スキルカード類をアイテムボックスに仕舞いトラッププラントを濾しとりに走る

気絶したキツツキはシルバーさんがパッシュん してくれている。


トラッププラントを10匹ほど濾しとり満足したので、濾過ポイを消しスキルカードを回収してから、メインウェポンのアルドはんどあっくすを振り回し殲滅した。


美味しいスキルを濾しとってからの殲滅を繰り返し20階層にたどり着いた。


「どうせ狩られてるからと」


サーチもせずに転移陣を目指す


すると目の前に銀色のデカい熊がリポップした。


タイミングが悪すぎる。


生まれたての三メートル級の熊は、本能のまま襲ってきた。


急な攻撃に吹っ飛ばされた俺は体制を立て直して武器をかまえた時には、ゴーレムチームに総攻撃を受けてパッシュん していた。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


と騒いでいるのは俺ではない、


他の順番待ちパーティーが、リポップした熊を倒しに入って来たのに、

パッシュんしてしまったのを目撃したからだ。


「おいおい!何てことするんすか?

四組も待ってやっと順番が来たんすよ!」


と、二十歳前後の弓使いが騒ぐ


「おい、止めないか。

入り口からのヤツが優先だ」


リーダーっぽい槍使いのリザードマンがいさめるが、


「でも、兄貴ぃ」


と、食い下がる弓使いに、


「でももクソもない!」


と叱るリーダーは、


俺の方に来て、


「すまない、ウチの者がマナー知らずで、「必中」のスキルを求めて一週間潜っていて今のがラストチャンスだったもので諦めきれなかったんだろう。


嫌な気分にさせて申し訳なかった。」


と俺に謝るリーダー…


まぁ、待ちに待った順番が不発は悔しいよね。


俺はアイテムボックスから「必中」のスキルカードをだして、


「俺らにはいらないスキルなので良ければ、待ち時間を棒に振らせたお詫びです。」


と、リーダーに渡した。


「それは受け取れない!」


とリーダーは言うが、


「兄貴!返しちゃうんですか?」


と、弓使いは食い下がる。


俺が、


「では、それは大地の女神様からの祝福です。

お礼は大地の女神様へお願いいたします。

では、先を急ぎますので。」


と、後ろ手に手を降り転移陣に向かう。

転移陣の登録が済めば急ぎ足で混雑しているセーフティーエリアを出ていき、

次の「アスレチックスエリア」に進む。


「ボスが一匹なのにあんなに人がいるから攻略組とご褒美ガチャ組で争いが起こるんだ。


一組しか入れない扉システムを採用してほしいよ。」


と悪態をつきながら25階層下のセーフティーエリアを目指し飛んで行く。

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