第41話 隠し通路の先に有るモノ

ボス部屋から扉を抜けた先に

セーフティーエリアの 転送部屋 にある魔法陣の上に宝箱があった


先ほどの「ミミックでした」事件があるので、鑑定をかける。


「ダンジョンの宝箱」

「罠なし」

「鍵不要」


〈大丈夫みたいだな。〉


俺は安心して宝箱を開ける。


すると…


〈トンカチ?〉赤っぽいメタリックカラーの金槌が入っていた。


鑑定


「アダマンタイトの金槌」

(アダマンタイト製の金槌 ※鍛冶スキル向上 極み)


もぉ、技能神様の担当地域だからかな?

別に要らない鍛冶関係が多いな…


と、ボヤキながら金槌を手にとると、宝箱がフッと消えて、下の転移陣の模様全体があらわれた。


そして、転移陣が光り、俺の腕輪が答えるように光る。


転移陣と腕輪の光りが同時にゆっくり消えた。


「多分、いいんだよね?」


と、呟くが、誰も疑問に答えない…


「まぁ、いっか!」


と、アイテムボックスからキャンプセットを出して飯を食ってから寝た。



ダンジョン二日目


11階層に降りると、そこは、沼地だった。


学校のグラウンドほどの沼地に、

飛び石で、一本道があるだけの場所。


〈ただのぬかるみ〉、そんな印象だった。


いつものサーチをかける…


敵の反応が有るものの、

隠し通路や宝箱もない沼地だけの階層だった。


何もないから突っ切ろうと思うが、ふと、赤い点が自分に向かって来ているのに気づく、


しかし、肉眼では何もとらえられない。


試しに近くの石を投げてみるが、石は泥を跳ねあげただけで、

沈むわけでもなくソコにあり続けた。


〈たまたま浅い所なのか?〉


と、考えるが、判断に困る。


下手に近づいて〈底なしでした〉では話にならない。


考えてる間に赤い点がマップの中心に到達した。


バシャッ


と、勢い良く水面から手が生えた…


後ろに飛び退きながら鑑定をかける。


「泥の腕」という魔物らしい…


いつもの様に濾過ポイを被せるが、手応えがない。


〈起伏のある沼底に邪魔され上手く倒せない!?〉


膜は万物をすり抜けるが、枠や持ち手はそうではない

岩や沼底に引っ掛かり横にも振り抜けない。


ヤバイ!〈いつもの 〉が使えない…


火の魔法で、焼き固めてハンマーで壊すか?


いや、効率が悪い…


〈考えねば!〉


走りながら入り口の階段迄引き返し、相手を観察する。


腕は、俺を挑発するために色々なハンドサインをやってきた。


親指を下に向けるヤツ、


「来いよ。」とばかりにクイックイッと手招きをするヤツ。


そして、中指を立てるヤツや、中指を立てる者や、…中指を立てる野郎…


「てめぇら!ぶっ飛ばす!!」


ミスティルでもあの手つきが通じるのか?は、知らないが、俺がイラついたのは解ったらしく、

事あるごとに中指をおっ立てやがる。


〈やってやるよ。〉


俺はこの沼地いっぱいになる様に濾過ポイをひろげる。


向こう岸まで、

約百メートル、横幅はもっとある…


濾過ポイは、魔力1を追加すると、直径が10センチ伸びる。

百メートルなら魔力1,000追加でイケる。

具現化時間は魔力1を追加すると、

10分追加になるし、

一時間追加なら魔力6ですむ、


魔力1,006…


〈よし!十分足りる!〉


俺は出口に向かい手を伸ばし、


〈濾過スキル!〉


直径に魔力 1.000追加。

持続時間に魔力 6追加。


濾過膜A 指定枠 1 「濾過スキル保持者 アルド」

濾過膜B 指定枠 2 「石」 「害意有るもの」


パッケージなし、


発動!!


と、濾過スキルを使うと、


俺の手元から出口に向かい濾過ポイが伸びる。

重く無くて本当に良かった…


ソレを沼の上に置く。


濾過ポイの膜Bは石の通過を阻むため沼の上に留まる。

その濾過ポイの上を俺は、走り抜ける。


沼の中から魔物が飛び掛かろうとするが下面の濾過膜Bに、害意有るものを濾しとる様に指定してあるために、俺が居る濾過ポイの上面に出て来れない。


何かしらの魔法も武器も俺を害する為のものは通過出来ない…


俺はこのフロアをただただ走りぬけた。


安い挑発に乗るな!


タイムマシンの車でフューチャーをバックする映画で学んだ事だ。


「アバヨ。」


と、だけ言い残し階段を降りる。


階段は休憩する広い場所こそ無いが、セーフティーエリアだ、

階段に腰をかけて、アイテムボックスからMPカードをだして回復し、上の濾過ポイが消えるまで休憩をしてから下に向かう。


12階層も同じ、ただ魔物が違うだけ…サメである。

だがやることは同じ


このシリーズの階層は何も手に入らなくても良いと決めて、足早に突破した。


そして、


15階層と16階層の間の階段には、休憩出来る広場があり、キッチンセットを出して昼飯にした。


ダンジョンには五階毎に休憩エリアと、十階毎にボスが配置されているみたいだ…


ホットドッグを頬張り冷たいお茶で喉を潤す。


暫く食休みを挟んだのちに16階層へ降りると、


新たな階層は水辺のエリアだった。


小型の水性魔物が居るようだ…


サーチをかけると、隠し通路が有った。


行くべきか?止めとくべきか?迷う。


サブマップで確認すると通路の先に階段があるようだ…


〈近道かな?〉


正直な話し濾過ポイで水性魔物も対処が厳しい。


〈深場に逃げられたら手がだせないからね。〉


よし、隠されてるのには、訳があるはず!


〈隠し通路に行こう!〉


と、決めて、サブマップを頼りに隠し通路に向かうと、滝の裏に入り口を見つけた。


細い洞窟を進むと、下り階段がある。


ずんずんと、階段は緩やかにカーブしながらマダマダ続いている。


暫く下り続け、やっと開けた場所に出れた。


床にうっすら水の貯まっている、まるで水を抜いて掃除中のプールの様な場所。


サーチをかけると、赤い点が一つあるだけのフロア…


〈はぁ~〉とため息を吐きながら、


「隠しボスかな?」


と、呟く…


鑑定をかけると案の定、


「サンダーサラマンダー レベル100 」


と、出た。


〈うへぇ!いきなり100きたよ…さっきまで50から60だったのに…〉


「電撃」「電気無効」「放電」


しかも、ヤバいスキルだ…絶縁体の物なんて持ってないぞ。


このまま濡れた床に立っているのはよろしくない!


「アースウォール」


と焦って唱えて、俺は、足元に足場の壁をせり上がらせ、水から離れたその瞬間、


〈バシィ!〉


と、体に衝撃が走った…


完璧に水から離れた訳ではなかったようだ。

カスリヒットで、結構なダメージを食らった…


体長3メートル以上ある

軽トラサイズの馬鹿デカいサンショウウオが電気を纏いながら、ズリズリと這い寄る。


さっきのが放電だとしたら、電撃は接近攻撃になるのか?

遠くに居ても削られるし、近寄って濾過ポイで殺るにしても、キツめの一撃を食らうだろう。


作戦は、〈我慢の濾過ポイ アタック〉しかない。


俺は、アイテムボックスから10階層のオーク達から濾しとったHPカードを数枚出して準備を開始した。


濾過スキル


大きさ5メートル 持続時間30分


濾過膜A 指定枠 1 「電気」

濾過膜B 指定枠 2 「スキル」 「HP」


パッケージ あり


発動!


俺は、濾過膜Aの面を相手にむけて重ねて構え、

HPカードを数枚口に咥え歯を当てておく…


サンダーサラマンダーが射程に入るのを確認し

軽トラサイズのサンショウウオに向けて壁の上からジャンプした。


跳躍スキルを自分も習得しておくべきだったと後悔しながら落下し、


地面に待ち構えるサンショウウオが、グングンと近づく…


蝿叩きの要領でサンショウウオをポイで叩きつけるが、同時にものすごい痛みが身体を走る。


濾過膜で遮断されたとはいえ、電撃の大ダメージを食らった。


激しい痛みに歯を食いしばり同時に割れたカードからHPが流れ込む。


それと同時に生命力を濾し取られたサンショウウオの、


〈パッシュん〉


という、呆気ない最後の音がした。


ピロリン

ピロリン

ピロリン

ピロリン


ステータス変化の報告音が鳴り、


戦いの終了を知らせる…


バスケットボールサイズの魔石と、スキルカードとHPカードに、サンショウウオの皮を手に入れた。


アイテムボックスに皮と魔石等を入れて、


追加で跳躍のスキルカードを出す。


跳躍を五枚

電撃

電気無効

放電


を使用しスキルを獲得する。


〈思い立ったら即習得だ…〉


よし、これで水系と電気系は対応できるな…


よく分からないスキルでも有れば使えるタイミングが有るかもしれない…


そして、試しにジャンプもしてみた感想は、


「怖かった。」だった。


高所恐怖症になりそうな生身逆バンジー…


しかし、なぜか、あんなに跳ねれる自分に満足しながら下り階段を進む…


階段を下り切った場所は湿原エリアだった。


マップで確認すると、


20階層のボス部屋の筈だが、ここもボスエリアの、様な広い空間で、


物凄いスピードで、水しぶきを上げながら何かが泳ぐ?…いや!走ってくる。


鑑定すると、


「ウォーターバシリスク レベル70」


「水上歩行」「ウォーターカッター」「威嚇」


さっきの後だから弱く感じるで


濾過ポイをにぎり、足元の水に手を触れて、放電スキルを使用してみる…


すると、効果抜群でシビレる水トカゲに、膝下くらいの水位の湿原を進みトカゲに濾過ポイをかける。


〈パッシュん〉


呆気ない…


そして、


魔石とスキルカードを手に入れ、先の部屋に向かう。


先程の教訓もあり、部屋に向ながらウォーターカッターと水上歩行のスキルを獲得し、試しに湿原を歩いてみた。


〈水上歩行〉は、別にあのトカゲの様に必死に走らなくても使える良いスキルのようだ。


〈ウォーターカッター〉は、なんと魔力さえ続けばダンジョンの壁さえ穴が空く性能だった。


〈まともにやりあわなくて良かった。〉


と、今になって変な汗をかく…


生きている実感を味わいながら、到着した転移部屋には、また宝箱が有った。


鑑定の結果は、やはり安全だったので気楽に開ける。


そして、覗きこんだ宝箱に有ったのは、


「濾過スキル」


〈…?!いらん、いらん


なんで、濾過スキルやねん!〉


と文句を言いながらも、〈まぁ、しまっとこ〉と、

アイテムボックスにしまうと宝箱が消えて、転移陣が光る。腕輪も光る恒例行事だ。


〈今日はここまでにしよう。〉


と、自分に言って、キャンプセットを出して泥の様に寝た。

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