第67話 お願いアルド先生


じぃさんとおばぁ様

呼び方に差があるけど、文句は受付ない。

アルドです…


じぃさんとおばぁ様を部屋に招き、

秘密の練習を開始した。


「確認だけど、じぃさんは鑑定スキル持ってる?」


と聞く俺に、


「私の初期スキルが、鑑定だった。」


と答えるじぃさん


なら勝てる。


あとは、あいつをレベルアップすれば…


という事で、俺はアイテムボックスから

俺の初期スキルと同じ、ダンジョン産の「濾過」のスキルカードを取り出した。


〈まさかこんなタイミングで使う事になるとは…〉


と思いながら、


「じぃさんこのスキルカードは凄く貴重で、レベルが上がればポーションも思いのままになるスキルだ。


これを持つ者は、創薬は勿論。

使い方次第ではとんでもない…」


俺の言葉に、


「とんでもない…なんだ?」


と、とんでもない何かを想像し息を飲むじぃさんに、


「美味しいお茶をいれることができる。」


と発表する俺に


「はぁ…冗談か?」


と呆気に取られるじぃさん…


しかし、俺は、


「本気です…


レベルあげにも最適ですので、

カードを割ってスキルを獲得したら、

さっそくお茶にしましょう。」


と、まっすぐ目を見て告げる。


俺はテーブルにお茶セットと創薬セットをだし始めると、


「フルポーションを作るのか?」


と、期待するじぃさんに


「いいえ、創薬セットの簡易魔石コンロでお湯を沸かすだけです。


お湯が沸く間にスキルを取得して下さい。


使い方を教えます。」


と、お湯を沸かし始め、おばぁ様を席にエスコートして、


「少々お待ち下さい今から、〈弟子〉がお茶を入れますので。」


と言うとおばぁ様は、チラッとじぃさんを見た後


「フフフっ、楽しみに待たせて頂きます。」


と、ご機嫌である。


〈弟子〉と言われたじぃさんはキョトンとしている。


「フルポーションの秘伝は身内か弟子にしか教えていません!」


と俺が言うと、


「私は身内では?」


と、じぃさんが呟くので、


「パパさんとママさんが許すまでは、じぃさんは血が繋がった〈他人〉扱いです。


異論は有りませんよね。」


と、言ったら残念そうに、


「はい、師匠…」


と、返事をした。


思わずおばぁ様が、「プッ」と吹き出している。


〈ちょっと苛めすぎたかな?〉と思いつつ、


「創薬のレッスンの時以外は、ちゃんとアルドと読んで下さいよ。


おじぃちゃん。」


と俺がいうと、


じぃさんはホッとした顔で、


「わかったよ、アルド。」


と、言う。


しかし、


「今はレッスン中ですよ!」


と、食い気味に指摘したら、


おばぁ様が ツボったので、真面目なレッスンに移る。


じぃさんは〈濾過〉を取得して、俺から濾過ポイの使い方をを教えられ、


エルフの長い人生の中でも初めて妻にお茶を入れていた…


「あら、美味しい」


と、誉めるおばぁさまに弟子が気を良くしている。


何だか、調子に乗る弟子を見て対抗意識を持った俺は、


本気の濾過ポイで入れたお茶を出してやった。


おばぁ様は、


「まぁ! 凄く美味しい。」


と誉めてくれて、じぃさんは「ぐぬぬぬっ」と唸っていた。


「課題は、3ヶ月以内に「濾過」スキルをレベル3にするか、このレベルのお茶を出せるようになる。


このどちらかを課題にします。」


と俺が告げと


「心得ました…師匠。」


と真剣な顔をしてた。


だけど、濾過する工程を増やせばレベル1でもポーションの濃縮が可能なことは黙っておこう。


「あと、こっちの国でも薬用溶媒液が不足しているのなら、じぃさんの力でクズポーションや低級ポーションを集めてくれる?


薬師の一族で顔が利くでしょ?」


と、お願いしたら、


「御安い御用だ。

工房の倉庫にも有るし、他の工房にも声を掛けて集めておく…おきます。」


と答えてくれた。


〈うむ、宜しい!〉



正直コーバの街のポーション工場は俺が留守の間は屑ポーション置き場として使っているだけで生産力に不安がある。


まぁ、すでに数年分は作ったけどね…


エルフの国でもフルポーションと薬用溶媒液のリサイクルができたら戦争で死ぬ人が減るかも知れない、


まぁ、じぃさんにチャンスを与えるってことで、濾過スキルの大盤振る舞いをした訳だが…。


お茶で濾過ポイの練習をした後で、じぃさんが、


「一度でいいから先にフルポーションが出来るところが見たい」


とゴネたが、


「材料の在庫がない」とウソをついて逃げた。


作り方自体は簡単だから、下手に技術の有るじぃさんが自力で答えにたどり着いても…


面白くないからね…



と、いうイベントが有りながら、


今日から先生活動本格始動となりました。

まぁ、コートニー君で実際に経験しているから先生活動は問題ないだろう…


では、教室に入り点呼をとる。


「パントンさん」と呼ぶと、


「はい!」


と、軍隊並みのハキハキした返事のリザードマンの血を引くハイエルフのナイスガイなパントンさん。


「ソロさん」 と呼ぶと、


「は、はい…」


と、少し控えめな返事は、ハイエルフ三世で本人もどの種族が混ざっているかは解らないらしいが、兎に角美形な街の商店の三男、実は国の偉いさんから密かに〈議員に〉と、狙われている天才青年だ。


「アーシェさん」と呼ぶと、


「はい。」


と、凛とした声の返事は、シルフィーちゃんの姪っ子さんでイグニスお兄様の娘さん。

実は、テストでは一番早くテストを終わらせたうえに満点を採った才女である。


「そして、イグニスお兄様は…なんで、いるんですか?」


と、俺が聞くと、


「えー、私も〈はいっ!〉てやりたかったよ。」


といじけるイグニスお兄様に、


「授業の邪魔するんですか?」


と聞くと、


「いやいや、アルド君にお知らせとお願いにきました。


君の補佐をこの三人の中で誰か頼めないか相談したところ、


なんと、三人共が手を挙げて、

条件はほぼ一緒の良い人材の為に甲乙つけられないから、


もう、三人共補佐にしよう!


と成った…以上だ、宜しく頼む。」


と、お知らせと言う名の業務連絡を受けた。


まぁ、すぐに居なくなる俺の代役は多い方がいいから三人を補佐にした。


パントンさんには、基本の四則演算と帳簿などのテクニックを伝え、


ソロさんには、基本の四則演算と俺と商工会の間に入ってもらう予定だ。

ソロさんの、パパが商工会長なので丁度良かった…


アーシェさんは、元々学校の先生だったので、四則演算や筆算それに面積の求め方も教えて国の教育レベルをアップしてもらう予定になった。


いざ、始まった授業は、

三人の理解力も高く(九九)を一回の授業で理解した。

九九表を渡し試しに掛け算の筆算を教えてみたら、三人共にスラスラ解いた。


「今まで凄い数の足し算を繰り返し答えを求めたが、こんなに速く答えが出るのか!」


と驚く三人に、「馴れたらもっと速くなるよ。」と言うと、闘志を漲らせて九九表を暗記するために合唱しだした。


やってることは小学生みたいだが、この世界ではコレが最先端の学術になる。


「神の御技…か?」


と、驚きながら計算をする三人に


「学神様のお導きで貴方達は知恵の果実触れる機会を手にしました。

時間が有る時にでも学神様にお礼の祈りを捧げて下さいね。」


と言っておいた。


〈これで、エルフの王国の件で世話をかけさせたメリス様のお肌の調子が良くなるだろう…〉


午前中の授業が終わり

三人共に興奮状態のまま昼食を済ませ、

午後の会議に向かった。


街の商工会〈商人職人の会〉の建物に入り会議室に案内されると、三十人くらい集まっており、


ソロさんパパが議長を務めてくれて会議が始まった。


まずは、世界樹の国のメイン産業の確認と、問題点から会議を進める。


木材が多く手に入る土地柄か、木工品や、家具などが主要産業の一つだが、

輸送などの手段が乏しく、外の商会が買い付け来るまで待ちの姿勢になりこちらから攻めの戦略に出れないのが悩み。


鍛治の技術が乏しく木工の加工道具も外部から買い付けている。道具の手直しや、メンテナンスも街では手が回らず外部に依頼するため効率が悪い。


家具に使う釘や蝶番等の金具類の生産も街では出来れば尚良いが、鍛治師自体が少なくてどうしようもない。


と…

だが、そこさえ何とかなれば色々な状況が変わるはず…


という事で、作戦を考える。


まず、輸送の為の道と交通手段の確立から


板バネの揺れない荷馬車の作成と、


凸凹で草木の生い茂る進みにくい道の改善…


鉱石利用が少なく鉱物自体が街にあまり無い、


近くに鉱物が採れるダンジョンはあるがニーズがない鉱物を狙う冒険者が居ない。


との事だった


俺の手持ちでしのいで、ダメなら堀に行けば良いかな…


〈よし決めた!〉


俺は、ソロさんパパに今後の活動の流れの説明と、協力を皆さんにお願いした。


当面の鉱物は俺が出すので、鍛治が出来る職人と荷馬車をつくる。

荷台などの木材加工はベテランの親方が、沢山いるので問題ない。


道は世界樹の国に、魔法使いも沢山いるので、


風魔法で草刈をして、


土魔法で凸凹をアースホールと、ストーンフォールでならし


水魔法のアクアカーテンで道の両側を守り、

真ん中を火魔法で焼き固める作業を繰り返してもらう。


創薬が得意な者に俺がドドルじぃちゃんの工房で習った「魔力除去液」のレシピを渡して生産を依頼し、


木工が得意な工房に金具製造用の木型を作ってもらう。

なぜなら、火を使う鍛治はすぐには無理だがミスリルなら手先が器用なら

粘土細工のように出来る。

木型で形を整えてあとは、魔力を流せば高級ミスリル製金具の出来上がりとなる。


エルフ家具がまた一段と高級感が増すだろう…


それでは作戦開始ぃ~!

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