第74話 改めて運が無い事を知る
60階層の転移陣部屋で宝箱開封大会を実施している、
41階層からゴーレムチームのヤル気スイッチをオンにしてしまい、時間短縮の為に攻略中の安全地帯以外の宝箱はアイテムボックスにしまいキャンプ時に開封する事に決まった。
1日で20階層分進み、現在、目の前に七つの宝箱がある。
俺のトレジャーハンターのスキルで宝箱の罠を外して1人一つ選び、
「ドキドキ、第1回宝箱開封大会!を開催します。」
と、開会の宣言をすると、
「いぇーい、パチパチパチパチぃ。」
と、ゴーレムチームもノリノリだ。
「では、キッド君から順番に開けていきましょう。」
と俺がキッドくんを指名した。
すると、
「では、開けます。」
緊張しながら、1つ選んだキッド君がゆっくり宝箱を開けて中身を掲げる。
鑑定 「ポイズンポーション ×6」
「うーん、これが基準となります。暫定一位です。」
と、俺が告げるが、キッド君は少し残念そうだ。
「続きまして、キバさん」
と、俺がキバさんを指名すると、
尻尾を振りながら鼻でクイっと器用に宝箱を開ける。
中身を鑑定 「麻痺ナイフ」
「同じデバフ系のなら何回もつかえるナイフが上かな?」
皆が頷き〈異議なし〉となり麻痺ナイフが一位に踊り出た。
「三番目シルバーさん」
との俺の指名を待って、シルバーさんが前足でコンと蓋をあけた。
中身を鑑定 「嗅覚のスキルカード」
〈うーんどうかなぁ〉と悩む俺は、
「ナイフが上と思う人、手を上げてっ」
と多数決をはじめてみた。
ミレディさん、キッド君、ファルさんの三票が入る…
俺が、
「シルバーさんは今回のみ投票権が無いため賛成多数でナイフが暫定一位を守りました。」
しょんぼりなシルバーさん…残念でした。
「では、四番目ファルさん」
と、俺の指名とともに蓋をつかみ羽ばたいて、箱を開けた。
鑑定 「ミスリルインゴット×1」
〈ナイフかなぁ?〉と唸っていると、
ゴーレムチームは頷き、ファルさんは早くもガッカリしている。
「それでは、五番目ミレディさん」
との俺の指名で勢いよく開けて中身を掲げる。
鑑定 「幸せの指輪」
運気プラス20 の指輪
〈最高やないかい!暫定一位でいいかな?〉
と考える俺に、ゴーレムチームも頷く。
「暫定一位はミレディさんの幸せの指輪です。」
と宣言すると、
ミレディさんは、〈えっへん〉と胸を張っている。
「では、最後は俺です。」
宝箱をあける…
鑑定 「ポーション×6 キュアポーション×2」
………ダメだこりゃ…数は有るけど……勝負にも成らない…
己の運の無さを改めて痛感し凹むが、
「優勝は、ミレディさんの幸せの指輪です。」
と、俺は結果発表をして、
「パチパチパチパチぃ」
とゴーレムチームもミレディさんを祝福している。
「では、残った宝箱を開けてみます。
じゃじゃあーん 眼鏡?」
宝箱の中の眼鏡に鑑定をかけると、
『目利きの眼鏡 商品鑑定が出来る』
と…商人にしか使えない鑑定スキルの〈商品鑑定〉だ…
凄いじゃねーか!!
〈こっちならば良い勝負に成ったのに…〉
と、少し悔しく思うが…俺は、〈グッ〉と堪えて、
「では、一位のミレディさんは、幸せの指輪と何かこの中で欲しいモノを一つ貰えます。
何を貰いますか?」
と聞くと、ミレディさんがモジモジしながら。
「ダーリンからの〈キス〉デス!」
と言いだした。
「いや、宝箱の中身で…」
と、やんわり訂正を求める俺に、
「ワタシの〈一番の宝物のマスター〉が欲しいけどキスで我慢するのデス。」
と、くねくねする。
他のゴーレムチームが〈やんや、やんや〉と囃す中、
俺は、ミレディさんのほっぺに「ぷちゅ」っとしてやった。
「きゃぁー!幸せデスわぁー!!」
まぁ、喜んで頂けたのなら良かったです…
次の日の朝
鼻歌を歌いながら朝食を作るミレディさんを眺めていた。
〈朝からご機嫌で何よりです。〉
その日のゴーレムチームもノリノリで、
61階層から攻略を開始した。
昨夜の麻痺ナイフをキッド君に渡して、キバさんと二人で〈麻痺らせコンビ〉が駆け回り、シルバーさんとミレディさんが回収班として現場と俺の所を往復する。
ファルグランさんは俺の濾過ポイに麻痺してる魔物を放り込んでから パッシュん する役目である。
殲滅したあと採決と宝箱を回収を行う。
これを繰り返し66階層にきたが、5階層ぶち抜きボスエリアだ。
ファルさんとキッド君のサーチコンビをミレディさんの念話でサポートして、ボスフロアの敵を鑑定していく。
「アルド様
『シルバーワイバーン レベル 95』
「飛行」「魔法反射」「麻痺噛みつき
」「麻痺爪」
が三匹います。」
と、ファルさんから報告が入る。
俺が、
「スキル欲しいけど、いける?」
と聞いたら、
「任せるのデス!」
と、盗聴娘がヤル気を出している。
「ダーリンはここで濾過スキルを出して待っているデス!」
と言ってボスの群れに飛んで行った。
大丈夫かいな?
と心配してたら、
「ダーリンのキッスで、百人力です。
駄目そうなら新しいキッスで元気百倍になるデスよ。
ご心配なくデス。」
と念話を飛ばしてきた。
では任せてみますか…
「みんはなミレディさんのサポートをお願い。
シルバーさんは俺を乗せて。」
と指示をだし、
濾過ポイの用意をする。
濾過
サイズ 七メートル
継続時間 二時間
濾過膜A 指定枠1 「固さ」
濾過膜B 指定枠2 「MP」「スキル」
パッケージ あり
発動!
シルバーさんに乗って濾過ポイを構え下の階層に移動する。
下の様子を伺うが、ミレディさんが、
魔槌メイルブレイカーでシルバーワイバーンをボコボコにしている。
〈死んじゃう、死んじゃうから…〉
と、心配していると、
「一匹ずつイクデスよぉ。」
と言ってフラフラになったシルバーワイバーンを投げつけてきた。
空間で濾しとり墜ちていくワイバーンは
地上組が パッシュん さしていく。
「次のデス!」
と、聞こえるのと同時に飛んでくるワイバーンの残りも濾しとった。
濾過ポイを消してカードを回収していたら
「ダーリン、頑張ったデス」
と言いながら空から盗聴天使娘が舞い降りてきて、
俺に抱きつき
「誉めて欲しいデス」
と、甘えてきたので抱きしめ返して耳元で、
「良く頑張りました…エライぞ。」
と誉めておいたら、
いきなり空中に舞い上がり、
「うぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉ!」
と、ホントに元気百倍に成っていた。
〈囁くぐらいで元気百倍ならば、どこぞのパン職人のおじさんよりもお安いご用だ…〉
70階層に下りるとキバさんも尻尾を振りながらお腹を見せていた。
〈甘えてるのね…いいぜぇ!〉
「よぉぉぉし、よし、よしぃぃぃ!」
と俺は、キバさんをワシャワシャしてやった…
…なんで後ろにゴーレムチームの皆さんが並んでいらっしゃるので?
と列に並ぶゴーレム達を見れば、
〈撫でてオーラ〉を出しながら、ウキウキしながら待っている…
〈まぁ、撫で撫でくらいやりますよ、〉
皆頑張ってくれてるからね。
楽しくて頼もしい仲間だな…
早く踏破して夢を叶えてあげなきゃね…
そして、
撫で撫で大会も終わり、71階層にやってきた。
昨晩、チューと囁きで興奮したミレディさんが、シルフィーちゃんに念話を飛ばし〈自慢〉という名の報告をして、弁明をする羽目になりましたが、
おおむね順調にダンジョンを進んでおります。
サーチをして殲滅を繰り返し、
時折、「俺要るのかな、コレ?」
と考えながらボーッと進む…、
まぁ、ゴーレムチームのレベルも順調にアップしているし、メインダンジョンの踏破難易度に大きな差は無いらしく、安定して倒せる敵が続いている…
そう、この時俺は油断していた…
このダンジョンが罠の見本市の様なダンジョンだと忘れていたのだ。
今で無かったからコレからも無いと…
サーチで指定しないと出てこない項目、
「転移陣」だ。
そう、俺は罠感知だけでは表示されない〈強制転移陣の罠〉を踏んでしまったのだった。
ミレディさんが念話で、
「大丈夫デスか?」
と焦っていたので、
「大丈夫だが、知らない所に飛ばされた。
キッド君に転移陣のサーチも罠サーチの項目に追加して、サーチをやり直してから進んでほしい。
俺は俺で最下層目指すから、
スキル選別ないから影から狙い打ちで殲滅してね、危ない事はしないようにね!
罠に注意して。
皆気をつけて!」
と言って念話を終わらせた。
普通のパーティーなら1人引き剥がすだけで瓦解するが、ゴーレムチームなら問題ない、むしろ大問題なのは俺が「1人ぼっち」というヤバい状況な事だ。
それを何とかするために、状況確認に全力を注ぐ…結果…そこは、深い森だった。
兎に角広くて天井が高い、五階層ぶち抜きのボスエリアより高く感じる。
たぶん〈転移トラップ〉の先が平和な空間とは考えにくい。
アイテムボックスのリストから使えそうな物を出していく。
「結界 レベルMAX」のスキルカード
「探索」のスキルカード…?
いつの間に?
確かに流れ作業でスキル回収してたけど…
「鑑定 レベルMAX」 ある
「マップ レベルMAX」 ある
「索敵 レベルMAX」 ある
「記録 レベル ー」 ある
「探索 レベル ー」 あった。
つまり、〈お帰り 複合スキル『神々の知恵』大先生!!〉なのである!!
あぁ、心強い。
指定した物を探せる、「万能サーチ」がふたたび俺の元に戻ってきた。
結界も取得して、いよいよ動き始める。
「罠」「転移陣」「宝箱」「隠し通路」「モンスターハウス」「敵」
指定してはマップ確認の繰り返す…
〈簡易サーチ〉よりも正確で広範囲な〈万能サーチ〉で解ったのは、宝箱も隠し通路もない森のエリアだが、大きな赤い点と転移陣のマークがその点の側にあっただけである。
隠れボスか…致死性の高いトラップか…
どちらにせよあまり喜ばしくない配置のサーチ結果だ。
階段はなく転移陣だけだが、そばに敵とは…
〈影に潜って調査してみるかな?〉
と、チャプンと影に沈み影からか影に移動してみる
ピロリン
とお知らせが鳴り、
急に流れるようにスムーズに影の中を動けるようになった。
「飛び影」のスキルになったようだ…
俺は森の樹々の影を進み、赤い点の場所までたどり着くと、
そこには、白い山のような狼か眠っており、前足がチョンと乗った半球体の中には転移陣があった。
…倒さないと使えない…だろうね…
白い山のような狼に鑑定をかける
『神獣 フェンリル』
…!
ヤバい!ヤバい!!
名前もだけど鑑定が上手く出来ないヤツは、レベル上位者…。
つまり俺のレベル236より上のレベルだと言うことだ。
パパさん、ママさん。
先立つかも知れない不孝をお許しください。
だって不幸なことに飛ばされた先に神獣様がお休みになっておられるもので…。
神獣…?
神様の獣…。
もしかして戦わなくていいのでは?
一応神様のお使いだし…
神様の復活も目指してるし…
身内?的なノリで行けるんじゃない?
そんな事を考えていたら。
「誰だ?隠れてこそこそしているのは、匂いで解るぞ。
出てこい!!」
と、神獣さまがお目覚めになってしまった。
出るしかないよね。
「眠りを妨げてしまい、大変申し訳ございません。
転移陣を踏んで飛ばされてしまい難儀をしております。
もし、よろしければお知恵を拝借いたしたいのですが…
ここは何処なのでございますか?」
と、問いかけると神獣様は俺を覗き込み。
「わっふぁっふぁっ。
獣と人が出会ってしまえば、することなどひとつ!
ここは、試しの間…
神の意志がそなたに味方すれば生き延びることも在るかもしれぬ。」
と、立ち上がり軽く前足を振り抜く神獣、
俺は、短距離転移でかわすが、風圧だけで飛ばされた。
「ほう、面白い技を使うなぁ
人間よ、もっと楽しませてくれ!」
と、バトルジャンキーみたいなセリフの
白い山が駆け寄ってくる。
「結界!!」
頼む、何とかなってくれ!
〈ガシィィィン〉
と爪と結界が擦れる音が響く、
怖ぇぇぇぇぇ!…耐えてくれ頼む!と祈るが、
しかし、俺の祈りはどこにも届かなかった様で、
〈バッリィィィィン〉と無惨に割れて消える結界…
「ご主人様の好きなお方の得意技だが、あの方の結界よりも脆いな
まぁ、神々と小僧を比べるのも失礼にあたるがな。」
と、神獣様は喋りながらも攻撃は止まない…
短距離転移や飛び影のスキルでなんとかかわすが徐々に神獣が、スキルに反応出来るようになる。
〈もう、後がない…考えろ、考えるんだ俺!〉
その時、反応が遅れた右の太腿を神獣の爪が撫でた。
ザックリと切られたうえで風圧で飛ばされ大木にぶつかりやっと止まるが、血液も体力も精神力も俺の体から抜け落ちてしまったような感覚に襲われる。
痛みを堪えながら、アイテムボックスからフルポーションを出して飲む…
体力は戻るが、もう戦う気力が少々しか残っていない。
…戦わないが、考える時間は必要だ。
「結界」「結界」「結界」
少し眠くなり魔力が残り少ない事を知る。
「MP」カードを束で噛り割り、
神獣は神々を知っている口振りだった…
誰かの命令で戦っているのなら
あるいは…
考えているうちにも、一枚、また一枚と結界が咬み千切られる。
もうやけだ!
腹をくくった俺は、アイテムボックスからフルポーションと神々の速達便の手紙を持ち
ミシミシと軋む結界の中で準備をはじめた。
濾過
サイズ 200 メートル
持続時間 10 分
濾過膜A 指定枠 1 「MP」
濾過膜B 指定枠 2 「神威」「スキル」
パッケージ あり
と濾過ポイの発動準備をする…
イケる自信はないが、何もヤらずに逝きたくない!
最後の結界を噛み砕こうとしている神獣…
ヤツの犬面が目の前にあり、そして、
〈バリィィィィン!〉
と、結界が砕かれた瞬間に左腕でヤツの牙を受け止め、手紙の束を犬面目掛けて叩きつけた。
「あれ、ご主人の匂いが…」
とヤツの気がそれた瞬間に、
発動!!
と叫び、
手の中から空中にむけて具現化するソレをクンカクンカしている犬ッコロに叩きつけて濾しとってやった。
今までにない光の渦が天に昇り、
ゆっくりと巨体が縮みながら大地に沈む。
激痛に顔を歪めながら、
俺の身代わりになった左腕を生やす為にフルポーションを飲み干す。
みるみる回復する左腕…
装備のほとんどは金属片となったが、なんとか生き延びている…
じわりと〈生きている〉実感と、今になってローンを返済するように〈恐怖〉がじわじわと襲ってきている…
しかし、俺はソコで満足せずに、
気を失い倒れた神獣から、考えれる限りのモノを濾しとりにかかる。
「神威」が濾しとられ五メートルくらいになった犬ッコロに
濾過ポイを消してカードを集め、新たに十メートル程度のポイに
濾過膜A 指定枠 1 「狂暴性」
濾過膜B 指定枠 2 「経験値」「加護」
パッケージ あり
を発動して、
気を失い白目の犬を再度濾しとる。
赤黒いモヤが霧散し、
犬ッコロは子犬になりまだ気絶を続けている。
カードを確認したら加護のカードもあった。
「狩神の愛犬の加護」
何時でも狩神が呼べば近くに転移できる。
狩神がいる限り不老不死。
何時でもお話出来る。
なんじゃこりゃ?
狩神 リバー 様の眷属かな?
とりあえず事情聴取です。
俺は、犬の鼻先で「MP」カードを割ってやった。
〈 面倒臭い事になったかも…〉
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