第31話 さらば!禿げマス…

〈あぁ、腰が痛い!〉


この世界の馬車の乗り心地に、大変不満のある

アルドです。


昨日夕方にダンジョン支店を出発して、1日揺られて、

やっと、領都アサダの冒険者ギルドに着きました。


窓口の職員さんに経緯を話し、支店からの報告書を渡す。


暫くしたらお金を持ったギルマスが窓口にきた。


〈なぜ?ギルマス自ら??〉


と、思っている俺に、


「ワッハッハ、


報告書読んだぜ、アルドはよっぽどだな。


レッドベアーもボムトレントも普通は出ないぜ!」


と、ご機嫌な禿げに対して、


運が無いことを痛感してへこむ俺…


「まぁ、しょげるな!

おかげで、薬草採集以外のたった2回の遠征で、C級になったヤツは俺は知らないなぁ…


最速じゃないか?」


と、笑うギルマスに、


過去の熊を思いだ更にしへこむ俺は、


「早くメインダンジョンに入れるようにと、駆け足だったけど、入るのが目的ではなく攻略が目的なことを再確認しました。


ダンジョンのスライム相手に手こずったんですよ。

レベル差があるのに、剣が、当たらなくて…」


と、深刻そうな俺に、


ギルマスは、


「アルドは、どうしたい?」


と、聞いてくる。


「どうとは?」


と、漠然とした質問に質問で返すしかなかった。


〈うーん〉と唸りながら考えた、ギルマスは、


「レベルが上げたいとか、つよい装備が欲しいとか、

使えるスキルが増やしたいとか…かな?」


とのギルマスの言葉に考えを整理する俺…


技が少ない、


魔力はおおいが魔法は土魔法を手に入れたばかり

遠距離手段がない、


濾過をはじめレベルを5にしたいスキルがあるが中々上がらない…


考えたら問題だらけだった。


ギルマスに洗いざらい相談してみる。


するとギルマスは、キラリと頭と歯を輝かせながらニカッっと笑い


「そりゃ山籠りしかないだろう。

町に居たんじゃ色々煩わしいだろうから、


男が強くなるには山だ山!」


という、


アホっぽい理由だが、確かにそうだ。


技をおぼえて、

スキルを上げたのちに、


ダンジョン攻略する。


うん、そうする!


しかし、鍛えるにしても知識がない…

俺はギルマスに、


「スキルや技の事について書いた本とかないですか?」


と聞くと、ギルマスは


「領都にはないが、王都にはスキル屋があるぞ、

バカ高い値段でダンジョンで出たスキルカードを売り買いしている国営の店だ。

そこに、スキル図鑑って本があったぞ

それも結構な値段だったが、国が発行してるから信頼出来る代物だ。


技の辞典ならおれが持ってるのをやろう。

ちょっと古いが内容に変わりはないだろうよ。」


え、くれるの?


「嬉しいです、でも良いんですか?

貰っちゃって…」


と、喜ぶ俺に、ギルマスが優しい顔になる。


「俺もA級冒険者だったが、怪我で引退した…


悩みに悩んで、悩み抜いたが、諦めてギルドに就職して今やギルマスさ、生活するぶんには支障はないが、剣はもう無理だからアルド君に使って欲しい。


ちょっと待ってろ。」


そういって、ギルマスはギルドマスタールームから古い図鑑をもってきて、


「ほら、使ってくれ。」


そう言って俺にさしだしてくれた。


俺は、それを受けとりアイテムボックスへ

そして、代わりにアイテムボックスから小瓶をだして。


「有り難うございます…代わりにこれを。」


と差し出す小瓶


「なんだ?」


不思議そうな顔の禿げ


「いいから、ギルマスと同じ、


〈ほら、使ってくれ。〉ですよ。


さぁさ、グーっといっちゃって!」



禿は何だか判らないが、その小瓶の液体を飲み干した…


そして、


その日、禿げはアイデンティティーを失った。


死んだと云っても言い過ぎではない…



目の前に赤髪でロン毛のワイルド系オヤジが立っていた。



さすがフルポーションだ。



ー 翌日 ー


昨日冒険者ギルドで、突如ギルマスの個性が死んだと云う悲しい事件がありました…


ギルドの宿で1泊して起きた俺は、


朝ごはんもそこそこに、

冒険者ギルドマスターのマルゲル さん?だったかな?


まぁ「元ハゲ」が迎えにきて、


理由もわからず、ドナドナされて、領主の館に向かう事になりました。



館に到着すると、


ブライトネル夫妻


大司教様


各ギルドマスター

冒険者 元ハゲ マルゲルさん


創薬 パパさんの教え子 ヤザムさん


治癒 治療が痛かった 爺さん(名前しらん)


商業 ビックリの再会 ジャックさん


それと俺


この、8人で会議となった。


今までの報告がてら、今後の予定を話すこととなる。


事の発端は、元ハゲに毛が生え、面白がったトネルお兄様が情報を集め始める。


毛生えの原因がフルポーションと分かり、最近「果ての村」の名前で、王様に献上されたのもフルポーションだと気付き、


創薬ギルドマスターが、アルド君の父親とも知り合いだから、「果ての村」と「フルポーション」のことを訪ねるために、昨晩呼び出す。


ヤザムさんは、聞かれたら喋るつもりだったから、

濾過ポイ濃縮製法を話す。


すると、


ビックリしたトネルお兄様は、緊急会議を召集…


〈ごめんね巻き込まれた方々。〉


と、まぁ、こんな感じらしい…



トネルお兄様が、


「皆、朝からご足労願い、あいすまん…

昨日、冒険者ギルドマスターが変わった。

アイツはもう居ない。」


と真剣な顔で話す。


すると、マルゲルさんが止めに入り、


「領主様冗談がすぎますぜぇ

正真正銘マルゲルです。カツラでもありません。」


と、毛を引っ張りながら話している。


商業ギルドのジャックさんが、


「なんだ、残念です。

腕の良いカツラ職人を見つけたのなら教えて欲しいと思ってましたのに。


では、治療薬をヤザム様が作られたのですか?」


との質問にヤザムさんは、


「作ったかぁ…そう言うのであれば、作ったのはアルドだ、


ただ、作ったのが毛も甦るフルポーションってことだな。」


と説明する。


黙ってた爺さんが、


「フルポーションが作れるのですか?

是非治癒師ギルドにも一本分けていただきたい。」


と、騒ぎだし、


ジャックさんが、


「ウォーム様ズルいです、商業ギルドにもわけていただきたい。」


と、駄々をこねる。


〈ウォーム様っていうのか…〉



などと騒ぐ皆に、ブライトネル様が、


「そのフルポーションだが、私も昨晩聞いたのだが、アルドくんが、なんと。クズポーションをあつめて生成したらしいのだ。」


と、発表する。


ジャックさんと、ウォーム様が、

「えっ!?」と声をもらすが、


一瞬考えたジャックさんは、


「濾過 のスキルの効果ですか?」


と聞く。


今度は、ブライトネル様とヤザムさんが驚き、


「知っておったのか?」


とジャックさんに聞く、


ジャックさんは、


「三年以上前に我が商会の会長より、濾過スキルの発動方法をはじめ活用された文献などを調べて欲しいと依頼がありました。


可愛い弟子のために…と、


商会を上げて調べましたが、詳細がわからず。

そんな未知のスキルのをもつのが弟子が〈アルド君〉です。


そのアルド君が、未知の製法を使うのであれば、その未知のスキルも関係していると思い至っただけです。」


との説明を、


ニコニコ顔で聞いていたリーダお姉様は、


「ウチのアルド君は、凄いのよ。


あと、アルドくん敷物ありがとね。」


と、自慢気だ。


俺は、その言葉に、


「喜んでいただけたら嬉しいです。リーダお姉様。」


と親しみを込めて答えると、


「うふふふ」と更に満足そうなフリーダ様を見て、


ハテナ顔のマルゲルさんが、


「いつからアルド君はフリーダ様の弟に?」


と呟く


しかし、すぐに〈ハッ〉とした元禿げマスターが、


「このたびは、クリステラさまとアルド君のご婚約、

誠におめでとうございます!」


と、祝いの言葉を述べる。


だが、


その言葉を聞いた大司教が、


「なんですと!クリステラちゃんが?!

聞いてませんぞ!!」


凄い勢いで、領主に問いただす大司教さま…


あれだ、ステラお姉さんのおじぃちゃん的ポジションなんだろうな大司教…。


ブライトネル様は、


「落ち着け、落ち着け。


クリステラはアルドと婚約しておらん。


村で、アルドが、シスターをしているクリステラに懐いてくれていて、ステラお姉さん と呼んでいたから、


クリステラがお姉さんなら、クリステラの兄妹とも兄弟であろう?となぁ。」


と、言いながらこっちに視線を送るブライトネル様に俺は、


「はい、トネルお兄様。」


と、返事をした。


各自なんとなく理解し、その後も話し合いが続いた。


まず、濾過スキルで、フルポーションが作れることをどうするか?との議題


これからの魔王軍との戦争が予想される信託が降りたいま、ポーションの製造備蓄は急務だが、

使徒のアルド君を使ってよいのか?


クズポーションを集めるにも領内だけでは限りがあること。

薬用溶媒液の再生は現在喉から手がでる勢いの夢の機能である。


とのことだったので、


俺は、


「じつは、先日ダンジョンに入り自分の弱さを痛感しました。


マルゲルさんの勧めで、山籠りをして、スキルと技をのばそうかな?と考えています。


私の使命には期限があります。およそ十数年後には、成し終えていなければなりませんが、


私は身体的に成長するこの数年間は、レベル上げやスキルのマスターに使っても良い…と言うか、そうするべきだと考えました。


濾過スキルも、技術神様よりレベル5 にするようにと言われています。


自分のポーションの備蓄にもなるし、余剰は各国に回して魔王軍との戦いに備えて貰えば、勇者天野君も助かるかと…」


と、言った瞬間、大司教が、立ち上がり


「アルド様、なぜ、まだ降臨されておられぬ勇者様をご存知なので!?」


と質問してきた。


〈あっ、やっべ、言ってないか…〉


俺は、全てを説明することにした。


「私は… 俺は、

異世界で勇者と共に死んだんだけど、


神様が天野 勇君に勇者をお願いして、残った俺は、おまけでミスティルに来ました。


しかし、


魔王との戦いが大掛かりになるから…と、主神様に役目を与えられまして…


なので、


勇者とは、神界で会って面識が有ります。」


との説明を、


大司教が真剣な顔でメモをとっている。


そして、俺は、


「で、これからのだけど、まず、王都で、スキルの図鑑を買う。


スキル自体は高いらしいから。

自分で取れる物は取るけど、無理そうなのは売ってたら買えるようにお金も貯めたい。


だからポーション作るのは賛成です。


ただ、幾つか備蓄に回したいだけで、あとはポーションも薬用溶媒液も売って、

出来たお金で装備やスキルを整えて、合間にレベルをあげたいです。」


との意見をいうと、


皆賛成してくれ、


そして、方針がきまった。



王都の郊外の人目の付かない場所を拠点として、ポーション製造にあたる。


濾過は俺しか出来ないが、鑑定がある程度使えれば製造は可能である(ヤザムさんが信用できる人を見つけてくれる)ので手分けしてポーションを作成する。


クズポーションの回収と運搬は(ヤザムさんが創薬ギルドを通じて許可、ジャックさんや師匠の商会のネットワークで運搬は可能)


を軸に俺の山籠り?というか、資金集め計画が動きだした。


それに先駆けて、教会と辺境伯の紹介で、使徒として国王さまに謁見して、極秘にポーションの件の了解をとらなければならないらしい。


〈いやだ、嫌だ!面倒臭い!!〉


とゴネていたら、


「スキル図鑑は王都にしかないから。」


と、トネルお兄様になだめられ、


「スキル図鑑は高いからお金貯めなきゃ!


だから行かない!」


と言ってくい下がる俺に、


ジャックさんが、金貨の袋をドンと机にだして、

アルド様のアイデア使用料が有りますので。


と、ポケットから鼻眼鏡を出して装着する

鼻の下のカイゼル髭が横に、


〈プピィ~~!しゅるるるる。〉


と、伸び縮みする…


〈合体させた?〉


と驚く俺…


なんでも、


工房の親方達がノリノリで作って売れているらしい、


プリン工房も領都と王都に一件ずつ営業しているそうだ。



だけど、


王様なんて面倒臭い…スキル図鑑通販したい。


しかし、俺のお願いは聞き入れられずに、三日後に出発となった。

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