第4話 異世界生活のスタート

〈さぁ、やって来ました異世界!〉


産まれたのは良いけど、意識がすぐに遠のくし…

喋れないし、動きづらい。


お腹が空いたら、元気良く泣いてみると、


ママがミルクをくれる。


〈…幸せ…〉


視界が鮮明でない為に顔は良くわからないが、

優しく話しかけてくれる両親?…


ただ、ママさんのミルクの後の背中トントンが、若干力強い気がするが、一旦置いておこう。


たまに聞こえる優しい歌声と上手な抱っこは、多分パパさんであろう。


草原みたいな香りをさせ、巧みなユッサユッサを繰り出して、

俺は、あっという間に寝てしまう…


しかも、オムツ替えも上手だ。


ただ、二人の声は聞こえても、話す〈言葉〉は理解出来ない…


〈これは大変だ、初めましての外国語を覚えるのと同じだな、異世界言語スキルとか…〉


等と考えるが、


〈三歳までスキルも何にも無いのか…〉


と諦めて、


〈地道にやろう。〉


と心に決める。




ー 数ヶ月経ち ー


首も座り、

寝返りも絶好調!

まだトイレは行けないからオムツ生活で地味に心をやられる。


しかし、そんな生活の中で、視界がハッキリして、今迄よりも沢山の情報が集まるように成った。


まず、我が家は木造の藁葺き屋根的な小さな家で、

パパさんとママさんと俺の三人暮らし


そして、パパさんは薬草などでポーション等を作る薬師のようだ、狭い家の隅で何かグツグツしたりゴリゴリしている。

あと、たまに魔法で何かをしているのか?ボャッと光る事がある。


見た目は、金髪ロン毛をポニーテールにしている

眼鏡が似合う優しそうな青年である。

耳が尖っているのが気になるが此方の人間のスタンダードを知らない為に断言はできないが、エルフっぽい


エルフだと良いなぁ~


〈ハーフエルフかぁ…俺…〉


続いてママさんは、ズングリボディーの肝っ玉かぁちゃんタイプで、基本的に優しいのだが、


作業が荒いのが玉に傷のコゲ茶色のおかっぱ頭で筋肉ムッキムキの豪快ウーマン!


俺をおんぶしながら、片手でデッカイ斧を振り回し薪を割っていた。


多分だけど、ドワーフなのかもしれない…


あれ?エルフとドワーフは仲悪いとか良くある設定じゃない?

ミスティルでは違うのかもね…


だって、凄くラブラブだよ?


兄弟すぐ出来ちゃいそうな位だよ!


あと、俺の名前はどうも アルド らしい

事有る毎に〈 アルド〉、〈アルド〉と呼ばれるので間違い無いだろう。


ただ、愛称な可能性も有るので引き続き観察だ。


優しくてラブラブなパパさんとママさん…

お金持ちではなさそうだけど、ちゃんと家がある。


〈ドコのナニが残念賞なのか理解に苦しむ…〉


爺さん神、婆さん神…有り難うございます…


最高の家族に囲まれて幸せです。



あと、ウンコやおっぱい等の言葉は覚えました。

まだ喋れませんが…


眠たくなったので失礼します。

パパママおやすみなさい




ー そして、時が経ち ー


皆様こんにちは、アルドです。

もうすぐ2歳に成ります。


異世界ミスティルに来て2年で、大体の会話は理解しました。


ただ、難しい言葉は子供の相手に使う訳もなく、一般的な子供との会話に出て来る単語がベースである。


勿論ベラベラ喋るとパパさんママさんがビックリしてしまうので理解はしているが、


「アバアバ、おやちゅたびゆ」


位の感じでお返事している。


子育てをしたことがないから匙加減が実に難しい。


少し前に些細な事で夫婦喧嘩をしてしまったパパさんとママさんは普段ラブラブで喧嘩馴れしておらず、止め時を見失い険悪だったので、


二人の目の前でヤってやりましたよ!



〈初めてのつかまり立ちを!!〉



わざとぐらつき注目を集めると二人は駆け寄り抱き上げキャッキャと喜びあう

何時のまにか仲直りしていつものラブラブ夫婦に戻っていた。


グッジョブ俺!


タッチのあとはヨチヨチ歩き

何日か家の中をトテトテ歩き木戸から外を眺めるが、外の様子がうかがえない。


何故なら、


我が家の周りには中々しっかりとした壁が取り囲んでいる。


家は小さいが、家の周りに薬草等の畑がありそこを取り囲む塀と云うには荒々し岩と丸太で作られた壁がある。


〈ウォール何か〉だな…


なので、俺の生活範囲と知っている世界は、ウォール何かの中だけになる…


まあ、壁の中だけでもパパさんから薬草の種類や効能を教えてもらったり、ママさんから冒険の話を聞いて其なりに刺激的な毎日である。


因みに、ママさんの昔話からパパさんとの馴れ初めも聞けた。


ママさんはやっぱりドワーフ族出身で、鍛治や鉱物採集のスキルに恵まれなかったが、戦士としての才能に恵まれて冒険者として活躍していたらしい。


とある依頼でエルフの森の近くに来たとき薬草採集していたパパさんと出会ったそうです。


やっぱりエルフとドワーフはそんなに仲良くないらしい

町にいるエルフはそんな事ないけど、根っからの森のエルフは鉄を操る為に火を沢山使うドワーフが気に食わないとの事だ。


〈言いがかりの気もするけどね。〉


エルフの森の近くでママさんは、なんか強い熊の魔物の討伐依頼で、パパさんは薬草採集で何日か顔を合わすうちに仲良くなったそうです。


因みに、パパさんもママさんも


「何かされた訳でもないから種族が理由で嫌いになるなんておかしいよ。」


だって、出来た人間だよ我が両親は…


そして、ある日パパさんが強い熊の魔物に襲われそうに成ったところにママさんが現れて、助けたんだけど、パパさんを庇って結構な怪我をしてしまったらしい。


パパさんはママさんを家に連れて帰り、手当てをしたんだって、


熊の魔物は倒せたからママさんの仲間が依頼達成の報告に帰ったけど、ママさんは怪我で動けないからパーティーから離脱したとのことだった。


かなりの深手を負ったママさんをパパさんが毎日毎日、薬を作って看病してるうちに燃え上がっちゃって結婚を決めたそうだ。


でも、パパさんのお家は森のエルフの族長の系列で、ドワーフ嫌い派閥だった。


「結婚は許さない」と言われた二人は森を出る事に…


しかし、パパさんの実家が中々の権力が有る家なので、周辺の村や町ではパパさんの実家の命令で、


〈嫌がらせ〉されることになり、ママさんぶちギレ!


怪我の事もあり結婚を機に冒険者を辞めて、異種族同士で結婚したり村や町では住み辛い方々が支え合い暮らすこのもの凄い辺境に引っ越したらしい。


ここではパパさんは薬屋さんとして、ママさんは木こりや力仕事の助っ人要員として村に役立っている。


と、色々な話を総合するとこんなところだ。


〈人に歴史ありだね。〉


さてさて、スキルは三歳からだから、


〈やることがない?〉と思っていたら、そうでは無かった。


歩ける様になれば、ご近所を回り挨拶をするらしい。


〈この村ルールかな?〉


村の一員としての顔見せと、三歳のスキル授与に合わせて、村で同系統のスキル保持者に弟子入りをする場合の顔繋ぎ的な意味合いらしい。


〈良くできている。〉


因みに、この村は名前がない、便宜上


「果ての村」


と呼んでいるが、何処の国にも属さない100人程の小さな村だ…




〈それでは、これよりウォール何かの外へ友達100人を目指して調査に向かう!〉


みたいな気分で、


パパさんとママさんと一緒にお散歩に出かける。


まずは、


近所のロルフおじさん、大きなファイアリザードと云う火を吐く大トカゲを一人でやっつけた事がある凄腕狩人らしい、パパさんに傷薬を貰いによくくる人族で、お肉をくれる。


裏のターニャちゃん一家、ターニャちゃんは一歳上のお姉ちゃんで、よく俺のほっぺたを突っつきにくる猫耳の女の子だ。


ターニャパパは養鶏家で鶏みたいな魔物 ランドコッコを飼育している猫耳イケメンである。


ターニャママはウチのママさんと同じドワーフ族で、おっとりタイプの癒し系である。


穴堀や土木作業が得意だが、普段はターニャパパと一緒にランドコッコを飼育している。

ランドコッコは大型犬サイズの鶏で、一回の産卵で十個程の卵を産む繁殖力のスキルのみの基本大人しい魔物だが、ごく稀に気が立って突っつく事があるのだが、


ターニャママは、


「痛いからやめてねぇ~。」


と言いながら大型犬サイズを摘まんでポイっとする。


ドワーフ女性強し!!



前の畑のジェイムスおじさんとマリーおばさんは、農家のご夫婦でアラフォーくらいかな?マリーおばさんは何か上品な奥様だしジェイムスおじさんは何だかビシッと決まっている農夫と云うか騎士の様なオーラがある。

ジェイムスおじさんの育てたブルーベリーを使ったマリーおばさんのジャムは絶品だ。



そんな感じて、何日もかけて


「アルドです。二歳です。よろしくお願いします。」


の定型文を言って村を巡る壁外調査を続けるのであった。

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