第17話 神託の価値と俺の決意

お貴族様の馬車は乗り心地が良いですね。


幌馬車ほど揺れません…


パカッポッコ と暫く揺られていたら、大きなお屋敷に着き、玄関先を見ると、


「お帰りなさいませ、旦那様。」


と、メイドさん達が並んでいる…


〈わっ、メイドさんだよメイドさんがいるよ。

俺、とある喫茶店で養殖のメイドさんは見たことはあるが、


野生のメイドさんは初めてだぁ。〉


と、呆けていると、


「メイドが珍しいかね?」


と尋ねるブライトネル様。


俺は、アホみたいに、


「はい、村には居ないもので…」


と、答えたら、


「わっはっは。あんまり熱心に見ていると、一緒に来たクリステラが、拗ねておるわい。」


と茶化すブライトネル様に


「拗ねてません!」


と抗議するステラお姉さん…


〈仲いいね。〉


屋敷案内され、大きなテーブルがある部屋に通された。


テーブルには既に涼やかな女性が座っていた。


スッと立ち上がり


「クリステラちゃん!元気でしたか?」


というと、ステラお姉さんは、


「はい、フリーダ様もお変わりなありませんでしたか?」


と言って、キャッキャと再会を喜んでいる二人、


〈あぁ、知り合いなのね。〉


そして、ひとしきり喜んだ後に、

見馴れないエルフ耳のドワーフボーイに目を向けたご婦人が、


「アナタ、もしかしてこちらが?」


と聞くと、


「あぁ、そうだ、

詳しい話はお茶をしながらしようではないか。」


と、ブライトネル様はそう言って、手元のベルを鳴らす。


「オーダァー!」のヤツのだ、

本当に使う人いるんだ…


等と感心していると、メイドさん達がテキパキとお茶の準備を整える。


あっという間にティータイムの始まりです。


「さぁ、用意も出来たので改めて、

私が、この地域を収める


エドワルド・ツー・ブライトネルだ。

辺境伯などという、面倒臭い仕事をしておる。


そして、こちらが妻の」


と紹介されると、涼やかな女性ニコッと微笑み、


「フリーダです。

どうか宜しくお願い致しますわ。


使徒さま。」


と…


〈えっバレてるの?〉と、顔に出てしまう俺…


「ふふふっ、弟のフリューゲルがいつも手紙に書いておりますので、存じ上げております。」


と、教えてくれたが…


〈え、どうなるんだ?…何がどうなる?!〉


と、焦る俺に、


「安心してくれたまえ、この街でその事を知る者は我々や大教会の大司教と各ギルドマスターと限られた人間だけだ、


義弟のフリューゲル殿同様に頼りにして欲しい。


我々の町はあなた様に全面的に協力させて頂きます。」


と、宣言するブライトネル様に、


「はい…」


と返事をするのがやっとだった。


お茶を一口飲んだあと、ブライトネル様は、


「妹のクリステラは知ってるので、使徒様の…」


と話しを続けるが


妹?…!


「妹ぉぉ??!」


と、思わず声をあげてしまった。


ブライトネル様は、


「なんだ、話してなかったのか?

母は違うが、私の歳の離れた妹だぞ。私に似ておるだろ?」


〈わかるかよぉ!〉


俺はステラお姉さんを見つめて、


「ステラお姉さんは貴族なの?」


と、聞いた俺に、ステラお姉さんは、


「わたしは、わたし!

アルド君の、味方のステラお姉さんよ。

それ以上でも、それ以下でもないわよ。」


と、宣言する。


それを聞いて、


「わっはっは。


これは良いぞ!クリステラがお姉さんなら私は差し詰め、

〈エドお兄さん?〉いやいやこれでは何処にでも居て面白くない…


よし!〈 トネルお兄さん〉だな。


あはは、いいぞいいぞ!


フリューゲル殿に自慢してやろう。」


と、上機嫌なブライトネル様


すると、


「ズルいわ、

私も仲間に入れて欲しいわ。


クリステラちゃんがお姉さんでアナタがお兄さんなら、


わたしだってリーダお姉さんがいいわ。」


と言って膨れるフリーダ様、


「わっはっは。

愉快愉快、家族が、増えた気分だ。


使徒さま、お役目が、無事におわれば、クリステラを本当にもらってやってくれまいか?

いっそ、本当に家族に成りましょう。

わっはっはっは。」


などと笑っている…


よし、ここは、いっちょ乗ってやるか。


「お二人に自己紹介をさせて頂いても宜しいでしょうか?


私は、果ての村 アルフとルルドの息子で、アルドと申します。


少し縁があり、主神様よりお使いを頼まれただけの普通の子供です。


村ではステラお姉さんに良くしていただきましたので、どうかお二人も私を家族と思って頂けるのならば、〈 アルド〉と呼んでください。


トネルお兄様、リーダお姉様。」


と、伝えると、


ブライトネル様が感心して


「なんと、聡明な…」


と、呟く…


フリーダ様も、


「フリューゲルが手紙で書いていた以上ね。


〈使命〉を〈お使い〉だなんて…ふふふっ。


決めました。リーダお姉ちゃん、アルド君のためなら頑張っちゃう!」


と、何かを決心した模様…


「ズルいです。アルド君のお姉さんは、私!〈ステラお姉さん〉なんですからね!」


膨れるステラお姉さん


〈あぁ、この兄弟は仲が良いな。〉


和やかなお茶会も終わり、領主であるブライトネル様と今後の事を話し合った。



まず、神託を大教会に届ける事と、


冒険者ギルドに登録すること。


ダンジョンなどの情報が欲しいことなどを告げる。


おおよその事はフリューゲル様から聞いてはいたが

情報が集まるまで領都で冒険者として活動して、


レベルをあげ、

メインダンジョンに入る資格のがあるBランクまで、ランクを早めに上げる予定だ。


魔王軍や敵の協力者に勘づかれないように目立たない行動を心がけることなどを再確認し、



長旅の疲れを癒すため、ブライトネル様の計らいでお屋敷に一泊する事となった。


翌朝、野生のメイドに起こして貰うという、地球でも中々無い経験を味わった。


その後、


お屋敷で朝食をとり、ブライトネル様の馬車で四人揃って大教会へと向かう。



立派な教会の中は、村とは比べ物に成らないくらい立派だった…


〈お金在るんだろうなぁ〉


などと考えていたらこの教会の偉いさんが出てきて、


シスタークリステラが報告を行い、


そして、大司教様に神託を渡す。


大司教様は、何かの祈りを捧げた後に神託に魔力を流す。


すると、


あの神託が流れる…


大司教は振り向き机の引き出しから、ゴトッと机の上に金貨の詰まった袋を出し、


「使徒さまに神々と教会からです。

神託の代金としてお納め下さい。」


って、


〈えぇ、ドウユウコト?〉


金は天下のまわりもの。といいますが、前世も今世も、

天下の一部地域を除く場合の一部地域に住んでいた

貧乏に慣れている俺は、


いきなり金貨ジャラつかされても訳ワカメです。


聞けば、大司教にも神託が降りて、


「使徒を一人送りました。

勇者の神託を持ってきた者に聖金貨10枚渡して下さい、

極秘の任務を与えた少年です。


人生をかけて、ミスティルのためにメインダンジョンを全て攻略する使命を与えています。

その子の人生を教会で買ったと思ったら安いでしょ?


お願いね。


追伸 教会でその子のサポートしてあげてね方法は任せます。

今から忙しく成るので、神託もあまり出さないから、

全力で、ヨロシク。」


との内容だったそうです。


軽いなノリが!?


主神様、お金よりチートスキルが欲しいです…


在りがたく貰うにしても、凄い量


大司教様に、金貨10枚のはずでは?

と、多い事を聞けば、


「聖金貨10枚ですので、大金貨100枚に成ります

その他の教会からの寄付もあわせて、大金貨160枚在ります。」


聖、金、貨?

なにそれ?食べたこと無い。


えっ?10まいが大金貨100…!


なに、大金貨の上位通貨が在ったんだ。


知らなんだ…。


お金をもらってから、

大司教様に、

俺が使徒であることをくれぐれも内緒でおねがいする、


「何かあれば相談にきますのでヨロシクおねがいします。

では、お勤めに行って参ります。」


と大司教告げて大教会をあとにした…


お金はアイテムボックスにいれてあるが、

なんだかドキドキしてキョロキョロしてしまう。


小市民だな…


その後、俺は、

ブライトネル様の馬車の中で悩んでいた…


そして、暫く悩んだ末…決めた。


そして、ブライトネル様とフリーダ様それとシスタークリステラにお願いをする事にした。


「トネルお兄様、リーダお姉様、ステラお姉さんにお願いが有ります。」


ブライトネル様が真剣な顔になり


「なんだい?アルド…」


と聞いてくる。


俺はアイテムボックスから金貨の袋を取り出して三人に差し出した。


「私のワガママを叶えて頂きたいのです…」


と、切り出す俺に、フリーダ様が心配そうに、


「何でも言ってみて。」


と、俺を見つめる。


俺が、


「私には大事な家族がいます。」


というと、シスタークリステラが、


「アルフさんと、ルルドさんよね?」


と聞いてくる。


俺は、


「はい、でも其だけではありません。

両親は勿論ですが、村長のフリューゲル様をはじめ、師匠も、先生も監督も、神父様も、あの村の全員が家族なのです。


しかし、村には木の壁しかなく、コレから勇者召喚に対抗すべく力をつけた魔王軍や魔物がいつどこを攻めてもおかしくはない状態です。


守るべき領民がいるブライトネル様にお願いをするのは筋違いかも知れませんが、


このお金をすべて使って構いません。


どうか、わたしを家族と思って頂けるのであれば、あの村を、


わたしの家族達を守るお力添えをお願いをします。」


深々と頭を下げる俺


ブライトネル様が震えている

怒らせてしまったのかも…


フリーダ様も膨れているし、


シスタークリステラは涙目だ…


不味い、どうしよう。

と焦る俺…


するとブライトネル様が少し涙声で、


「馬鹿野郎!!


お兄ちゃんに頼むのに、なに他人行儀な事をいってるんだ!


アルドは、人生を捧げて…こんな小さいのに試練に挑むんだ。


心配事のなんか全部まかせろ!…遠慮するな!!


私達も家族なんだろ?


はいっ!


やりなおしっ!!」



と、言った声は少し震えていた…


怒らせてしまったのではなく心配してくれていたんだ。


なんだか村の皆が頭によぎる…


あぁ、ここにも大事な家族ができたんだ。

〈もう、安心だ。〉

そう思えた。


俺は改めて三人にお願いをした。


「トネルお兄ちゃん、リーダお姉ちゃん、ステラお姉ちゃん…


お願いです。


このお金で、村に壁を作って。

頑丈な壁を…

家族が安心して暮らせるように。

悪いヤツが来てもだいしょうぶな様にして下さい。


足りないと思うけど…


でもお兄ちゃんとお姉ちゃん達が頼りなんだ

お願いします。」


と伝えると、


トネルお兄ちゃんは胸を〈バン〉と叩いて、


「任された!!

弟のお願い一つ叶えられなくて何が辺境伯だ!!!


元々あの村の全員、私を頼って来た者達だ…


魔族の何のと気を遣い出ていったが、今度は許さない!


アルドの家族は私の家族だ!


〈しっかり面倒を見てやるから覚悟をしておけ〉


とフリューゲルの意地っ張りに伝えておけクリステラ…。いやステラ。」


という、


その言葉にステラお姉さんが、


「はい、トネルお兄様」


と返事をする。


そんな中で、リーダお姉さんが心配そうに


「でもアルドちゃんお金全部無くなるのよ?大丈夫?」


と聞いてくる。


俺は、


「大丈夫だよ、


だって、冒険者になるんだもん。


心配が無くなったから、

うんと頑張れるから、絶対大丈夫っ。」


と答えてた時に、馬車がお屋敷に着いた。



俺は、


「お兄ちゃん、お姉ちゃん達。


あとは、よろしくお願いします。

僕はこのまま、冒険者になってお役目を果たします。


どこにでもいる冒険者になって…」


もう、会えない訳じゃないから

また会えるから…


「行ってきます。」


そう言って馬車を降りる俺に


トネルお兄ちゃんが、


「餞別だ!」


と自分のポケットから小金貨をだして

投げてよこす


「弟にお小遣いやるのはお兄ちゃんの特権だ

もらっとけ!!」


と手を振り送り出してくれた。


俺は、


「ありがとうお兄ちゃん、お姉ちゃん達、

頑張ってきます。」


走り出す。


〈さよなら、行ってきます。〉

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