第18話 冒険者としての始まり
冒険者ギルドにやって来ました…
やっとです…
いや、
感動的に走り出したは良いのですが、
ギルドの建物が分からずに、途方に暮れていたことは、辺境伯様ご一家には内緒にして下さい。
たまたま、非番の騎士のエドさんが、〈迷子の子供〉かと声を掛けてくれて、今、無事に冒険者ギルドに来ています。
カウンター越しで、受付のお姉さんに、「登録したい」と、告げる。
すると、ダルそうに、
「僕、字が書けるかな?
お父さんとお母さんは今日きてるのかな?
僕だけだと、字も読めないから、依頼もとれないよ。
今日は帰りなさい。」
と、ろくにこちらも見ないままで、シッシっと手を動かす。
〈ピキ!馬鹿にされた。〉
と名札に〈イリッサ〉と書いてあるケバい女に怒りを覚え、
〈オレ、オマエ、キライ。〉
と、俺の中の野生が、そんな事を思っていると、
「うぉい、嬢ちゃん!
そりゃないだろ、子供とはいえ男が腹くくってギルドまできたんだぞ。
格好を見ても本気とわかるだろぅ?
それによ、小さいガキでも出来る仕事はあるんだろ?
代筆したり読んでやるのもギルド職員の仕事だろうが!!」
と、代わりに怒ってくれたのは、エドさんでした。
俺は、二人の間に入り、
「ありがとうございます。エドさん。
すいませんえーとイリッサさんですね。」
と、エドさんに一旦落ち着いてもらおうとする。
ギョッと一瞬するが、
すぐに嫌な笑みを浮かべたイリッサさんは、
「誰ですか?このドワーフのガキに私の名前教えたのは?
わかってるんですからね、名札読めるふりをさせて登録させようだなんて、
嫌だ嫌だ、喰うに困って冒険者に成るのは良いですが、職員の手を煩わすガキが増えるのは迷惑なの、
解る!?迷惑!!!」
と…
はぁ~、うんうん、
知ってる、運が悪いアレだな…。
面倒臭いのに当たった。
こんだけ人数いる受付でハズレを引くんだな俺
レベルが少し上がり、やっと運気も少しアップしたが、まだ低いらしい…
そう、低い俺が悪いのだが…
〈オレ、オマエ、ユルサナイ!〉
と、俺の本能が目を覚ます。
しかし、一足先に、
「おい、嬢ちゃん!何なんだその態度は…」
と、イリッサとやらに噛みつくエドさん。
「エドさん、もう良いです。」
止める俺に驚くエドさんは、
「諦めるのか?」
と、俺に聞く…
俺は、ニコッと笑って、
「ありがとうございます。
僕のために怒ってくれて。」
と、頭をさげると、
イリッサが吠える。
「ほら、ガキも諦めたんだからもう良いでしょ。
邪魔よ、帰った帰った。シッシっ」
と、勝利を確信し挑発するイリッサにエドさんは再び、
「てめえ!」
と、ヒートアップする。
俺は、エドさんに抱きついて抑えながら、
「エドさん!落ち着いて。
こっからは、俺の戦いだから。」
と、宣言すると、
「応…」と我慢してくれたエドさん…
俺は、エドさんが落ち着いたのを確認さした後に、
〈オレ、アイツ、ヤッツケル!〉
と騒ぐ俺の中の獣を解放した!
俺は、イリッサの前にでて、
「イリッサさん。
アナタの対応はギルドとしての総意でしょうか?
飢える子供の受け皿も担うのが冒険者ギルドではないのでしょうか?
えぇ?!イリッサ・ファン・コンフィートさん
28歳よぅ
大体解ったと思うがこれは鑑定スキルだ
つまり、俺は字が読める…。」
パクパク鯉みたいなイリッサさんを他所に、
テーブルのメモ用紙に、
「イリッサとやらの態度が目に余る!」
と、サラサラっと字を書き、
隣のテーブルの受付、タイラー と名札の付けた男性職員に、
「果ての村から茶髪のエルフ耳のドワーフな子供が来ているとギルマスにこのメモを渡して下さい、タイラーさん」
と指名して依頼をする。
名前を呼ばれて反射的に動いてくれたタイラーさん…
〈仕事が出来る人だな…あの身のこなしは…〉
と、感心しつつも、
「さあ、どうするイリッサさんよぉ、
あんたは、見た目で面倒だとふんで確認もせずに追い返す
そんな仕事が許されているのかこのギルドは?」
と、詰め寄っていると、
バン!と奥の扉が開きガタイの良い禿げた厳ついオッサンが入ってくる。
「何てめーら、手ぇ止めてんだ!
裏が詰まってんだろ!!
イリッサてめえは謹慎だ荷物まとめて親父さんとこに帰って暫く頭を冷やせ!」
と、怒鳴る禿げに、
イリッサが真っ赤な顔で怒りながら、
「何でですか?わたしが何を…
そのガキがわきまえないのが悪いのよ!」
と、ヒステリーを起こしてキィーキィーと甲高い声で騒ぐ。
今度は禿げが怒りだし、
「前々からてめぇは、問題ばかり起こしやがって、昔世話になた親父さんの娘だからと目を瞑ってきたが、もう辛抱ならねぇ、
タイラー、親父さん呼んでこい!
メル!前から調べてたイリッサの帳簿持ってこい!
ダン!イリッサの馬鹿を閉じ込めとけ」
建物内の冒険者に禿げが頭を下げると、
「騒がせて申し訳ない。
職員は窓口業務に戻ってくれ。
それと、」
と言って、こちらに近付く禿げ…
すると俺にも見事な禿げ頭を下げ、
「大変申し訳ありません奥でお話を…」
エドさんがポカンとしている…
俺は、状況を見て、
「エドさんありがとね」
と、エドさんに礼を述べて厄介事から離そうとする。
ハッとしたエドさんが、
「坊主一人で大丈夫か?
付いていってやろうか?」
と心配するエドさんに、
「大丈夫だよ。
僕のためにごめんね
お休み楽しんで。」
とエドさんに別れをつげる。
これ以上巻き込むのは悪いから…
俺は、エドさんに手をふり、
禿のギルマスに促され別室へ入ると…
ギルマスが扉を閉めて鍵を掛けるとすぐに、
「申し訳ございませんでした。」
と、平謝りの禿げ
「私、アサダの町の冒険者ギルドのギルドマスターで、
マルゲルと申します。」
と、ほとばしる汗を飛ばしながらペコペコと頭を下げている。
じつはもう、うんざりしている俺は、
「良いですよ、ギルマスが悪い訳じゃないから。」
ため息混じりで話すと、ギルマスが、
「先代のギルマスの娘なんですが、あのイリッサという職員は…
親父さんの名前を盾に態度は悪いし、冒険者をバカにしてトラブルになるし、金は横領するしで…」
と、説明する禿げに、
完璧うんざりな俺は、
「あの!
私になにか関係ありますかそれ?
ギルド内で片付ける事案ですよね…
なんですか?
私は膿出しのネタに使われたのですかね。
大変不愉快です。」
と、怒ると、
真っ青になるマルハゲではなくマルゲル
「そんなつもりは有りませんが、
結果的にそう成ってしまい申し訳ない
どうか、許して欲しい。」
と汗を更に吹き出している。
ため息をつく俺は、
「だから、ギルマスが悪い訳ではないから良いと言ってるでしょ…
俺は冒険者登録して、宿を探してゆっくりしたいの」
とだけ呟く。
オロオロするギルマスが、
「いやそれでは、使徒さまの…」
と、言い出した瞬間…
〈プチん〉と、堪忍袋の尾が切れる。
「その呼びかたを二度としないで頂きたい!
俺は冒険者登録をしてレベルとランクを上げたいの
ダンジョンに入る為に!
無理なら他の町に行きますので、結論を早くお願いします。」
と、言い放つ。
更に焦る禿げは、
「では、私の権限でCランクから…」
と言い出す…
〈話しにならない!〉
俺は、更に冷たく、
「目立ちたくないの、Cランクもらっても俺はそんなに強くないの、コツコツ強くなりたいの
やらなきゃならない事があるから!!」
と、告げると、
パクパク鯉みたいな禿げに、
トドメとばかりに、
「そんな、権力を行使ばかりすると、イリッサみたいに勘違いするよいつか…
早く!
登録してくれるの?くれないの?」
と、結論を求める俺に、
ハッする禿げマスターは、
部屋の鍵を開けて大声を上げる。
「すまねぇ、メル来てくれ〈登録セット〉を頼む!!」
と言ったギルマスが俺の前に座り直し、
「大変お待たせしました。
お手数ですが、ステータスカードの提示をお願いします。」
と、仕事モードになるギルマスに、
〈スッ〉と手を出して、
「ステータスカード」
と、唱える俺…
ギルマスにカードを渡すと、扉がノックされる。
禿はステータスカードを確認しながら、
「メルか?入いれ。」
と、振り返らずに答える。
扉を開けて職員のお姉さんが台車を押して入ってきて、
「失礼します。
ギルマスどうぞ。」
と、石板のようなものをギルマスに渡すと、
「ありがとう。業務にもどってくれ。」
と言って、作業しながら片手をスッと挙げるギルマスに、
「はい、失礼します。」
と、去って行くお姉さん…
〈メルさんとやらも仕事が出来るね…〉
と感心しながら、いよいよ、俺が仕事の出来ないイリッサとやらを引き当てた確率を恨む。
ギルマスは、
「待たせたな、アルド君」
「転写!」
と、唱えると、
石板が光りステータスカードの隣にもう一枚カードが現れた
現れたカードには、
アルド、 6歳、
レベル 5
ランク F
とだけ書いてあるカードだった。
「カードを返す。」
と言って、
二枚のカードを渡してくるギルマス。
それを受けとると、
「お待たせしました、アルド君、
ようこそ、冒険者ギルドへ
ギルドを代表して、君を歓迎する。」
と、握手を求めるギルマスと、ギュッと固い握手をかわす。
「ヨロシクおねがいします。」
と、俺が言って、ようやく冒険者に成れた…
〈やっと、終わった!〉
もう、早く宿を取って寝たい…。
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