第19話 初めての採集クエスト


ギルドの一悶着が終わり建物を出ると、

なんと、エドさんが待っていたのだ。


「心配で結果を聞かないと、気になって飯が旨くない!」


だって…


どうして、ミスティルにはイイ人が多いんだろう?


俺から報告を受けたエドさんは、


「これで、飯が旨くなったから一緒に食おう!」


と、行き付けの食堂に案内してくれた。


外見は少しボロいけど、中は活気のあり、俗に言う旨そうな町中華っポイ雰囲気の食堂だった。


エドさんは、入るなり


「親っさん、いつもの二人前ね。」


とだけ告げる。


〈いつものとは?何のナニ?〉


どんな料理かも分からないまま待つこと数分、


「あいよ。」


と、親っさんが、野菜と肉がゴロゴロ入ったポトフみたいなものと硬いパンを持ってきた。


エドさんが、親っさんに


「はい、二人分。」


と、小銀貨を渡す。


「エドさん、払うよ!」


と、俺が言うと、


「子供が気を遣うな、冒険者に成ったお祝いだ。

喰ってみろ旨いぞ。」


と、笑ってくれた。


ミスティルに来て、初めての外食は、凄く旨かった。


〈また来よう。〉


そして、


お腹も膨れ宿を探そうとすると、

エドさんが別れ際に、駆け出し冒険者御用達の宿を紹介してくれた。


『角ウサギ亭』


と、看板に書いてる…なんとも駆け出し冒険者をターゲットにした名前だ…


と思って入ったら違った。


大将が牛獣人で女将さんが兎獣人の夫婦経営、

角担当の大将に、兎担当の女将さんの宿だった。


個室にベッドだけの素泊まり宿で、

一泊、小銀貨一枚と、大銅貨五枚


〈1500円かぁ…〉


でも、一週間先払い…七泊分ならば、大銀貨一枚に成る。


〈つまり一万円〉


大銅貨五枚お得なので、一週間先払いで頼み、小銀貨十枚を渡すと、


女将さんが、


「まいどありぃー。ごゆっくりどうぞぉ」


と元気な声を聞きながら105と木札の付いた鍵を片手に部屋番号を探していた。


まあ、木造二階建ての小さな宿だからすぐ見つかる、


気分的に疲れて、ポトフで満たされ

もう、今日はなにもしたくない。


と、ベッドに横になり考える。


運気が上がってもまだ足りない様だし…


レベルを上げるか?


それともランクを上げて討伐クエストか?


いやいや、武器スキルが生えるまで、採集か、アイテムボックスでお使いクエストかな?


等とグルグル考えていると、


とあるモノを思い出した。


〈偽商神様からの手紙に入っていたカード!〉


と、アイテムボックスのリストを確認すると、


スキルカードと書いてある。


「アイテムボックス」


と、唱えて取り出し、鑑定をかけると


『スキルカード 〈マップ〉

全世界の地図情報を網羅

カードを破ると発動し一番近くの者のスキルになる』


と鑑定結果が出た…


〈使うか!?〉


と一瞬考えるが、


〈いや、止めておこう〉


と、思い止まる…


何故なら、この角ウサギ亭は、

めちゃくちゃ狭くもしかしたら、一番近くの者が隣の部屋の住人に認定されるかもしれない…


いや、俺ならありえる!


〈明日にしょうか…うん、今日は寝よう。〉


と、固くて薄っぺらい板のベッドに横になる。


そして、


翌日、バタバタと扉が開き先輩冒険者達が動きたす音がする。


俺も装備を整えてギルドへ向かう。


ギルドの側の通りには、大銅貨一枚で食べられるご飯屋台が立ち、なかには大銅貨三枚の弁当も売っていた。


麦粥の様な朝食(スープに麦を入れたオジヤみたいな)をたべて、お弁当(パンに色々はさんだサンドイッチみたいなもの)

を買って、


冒険者ギルドに入る。


昨日のバタバタを目撃した先輩たちが、


「新入り頑張れよ」とか

「災難だったな。」とか言ってくれる。


先輩ガチャは当たりかもしれない。


クエストボードを見るが、Fの依頼がない。

困っていたら、昨日の男性平職員のタイラーさんが声を掛けてきた。


「アルド様ですね。窓口までよろしいでしょうか?」


訳も分からず、三番と書かれた窓口に案内される。


「アルド様、昨日は失礼しました。


ギルマスが新人冒険者への説明をしていなかったそうで申し訳ありません。


ギルマスも、

〈ベテランの雰囲気だったから忘れてた!〉と、

わけの分からないことを言っていましたが…


なんとなく解りました。


とても、うちの子供と同じ年とは思えません。」


と、笑顔で話している。


〈子供いるの?二十歳過ぎくらいなのに、

6歳の子持ち?

…兄さん中々やるねぇ〉


などと、思っていたら


ドサッとファイルを取り出した。


タイラーさんはファイルを俺に見えるように開きながら


「えー、Fクラスの依頼は、猫探しや、溝掃除など、希な場合以外は、常時クエストばかりです。」


ペラペラとページをめくりながら、


「薬草類は全て、10本一束で依頼達成です。薬草の種類や形の確認は、二階の図書室で確認できます。」


と説明してくれた。


〈図書室あるんだ。〉


と、感心する俺に、タイラーさんは、


「一つ上のEランクまでならば依頼が受けれますが、失敗した場合の違約金もワンランク上になるので、注意して下さい。」


と説明を続ける。


〈この人やっぱり仕事が出来る。

なぜ、昨日一発でタイラーさんの窓口に当たらなかったのか…〉


と、思いながらも、


タイラーさんは、


「なので、アルド様は、目当ての常時クエストを確認していただければ、窓口で依頼予約などせずに、採集等に向かって頂けます。


何かご質問は?」


と説明を流れる様に終了する。


俺は、少し考え、


「魔物を取るのに罠を仕掛けては、ダメですか?」


と、質問すると、


うーんと考えた後に、タイラーさんは、


「子供冒険者のいる草原には、角ウサギ位しかいませんから、殺生能力のある毒や、弓の罠でなければ特に禁止されていまはせん。


あと、ボアなどの罠に落とし穴を使う場合は底に針山は止めて下さい、間違って落ちたら大変ですから、穴だけでお願いします。


あと、開けた穴は埋めることも忘れずに。


くくり罠程度は引っかかるヤツが間抜けだと云うことです。


なお、取った獲物はクエスト関係なく買い取れますが、クエストを予約せずに取った獲物はランクアップ対象外になりますので注意してください。


あっ!角ウサギは常時クエストですので、」


と教えてくれた。


〈解りやすい、多分昨日禿げに説明されても無理だったかもしれない。〉


パラパラと常時依頼に目を通し、

俺は、初のクエストに出掛ける…


ギルドの玄関に向かおうとすると、タイラーさんが、


「薬草の種類や生えている場所の確認を図書室で…」


と心配して声を掛けてくれたが、


俺は


「ご心配なく。薬草の知識は父にミッチリ教えて貰いましたから!」


と振り向かずに出て行く。


Fランクの採集依頼はどれもこれも、毎日見ていた物ばかり、


勝った。

完全に…。


パパさんありがとう。

俺、やります!



と意気込み草原にやってきました…


この町に来てから、

初めての壁外に出たわけですが、


ギルドカードって便利ですね。


当日の出入りが、サインだけで無料なんです。


ササッとサインをして歩いて20分位の所にある草原に来ています。


離れた所にパラパラと10歳ぐらいの先輩が薬草類を取っています。


パッと見た感じ数種類の薬草類が広範囲に点在するターゲットを採集する前に俺は、

近くの石に座り、昨晩から気になっていた事を実行する。


「アイテムボックス」


と、唱えて取り出したるは、〈スキルカード〉とやら。


俺は手にするやいなや


「えい!」


と、へし折り開封してみる。


ぼゃっと体が光り


ピロリン

ピロリン


と、お知らせが二回鳴った?!


慌て辺りを確認し、近くに人がいない事をチェック!


そして、


「ステータスカード」


と唱えてカードを確認する…


数値は全く変わっていないが、


あった。


スキルの欄に


鑑定(+)


マップ


この二つの変化があった。


俺はカードに鑑定をかける


すると、


鑑定(+) レベル 4

(無言での発動可能 人物鑑定の精度向上)

(追加、マップスキル併用にて簡易サーチスキル発動可能)


マップ レベル 1

(スキル使用時に脳内に精密な地図が表れる 範囲はレベルにより変化 〈サブマップ〉視界の隅に周辺情報を映す。効果時間はレベルにより変化)


と、あった。


〈よし、早速試そう!〉


と、俺はガントレットをアイテムボックスにしまい

かわりに袋とスコップをを装備した。


そして、辺りを見回し一本の薬草を見つける。


スコップで根っこごと掘り返す。


実はこの薬草の薬効成分は根っこに多い。


掘るのは大変だがそうしないと勿体ないことになる、薬草もダメージ、収入にもダメージ、出来上がったポーションの質も低下、良いことなしである。


そして、多分サブマップだよな…


初めてのスキルだか、シルフィー師匠の教え通りに、


〈効果の出る所に集中すれば…〉


だから視界の隅にサブマップを出すのだから、


〈目だ!〉と確信して、


「サブマップ」


と、唱えると、視界の左上に、〈簡単に鉛筆で描いた道案内程度の地図〉がでた。


そして、手に持った薬草に鑑定の〈簡易サーチ〉を使うと、鑑定したモノと同系統の物の反応を探るらしく、


サブマップに緑の点が幾つか表れ、


自分が動くとマップもスクロールしていく、


点が中心に来たら、目の前に薬草が有った…


〈便利だな簡易サーチ能力…〉


と、感心しながら、


採集の繰り返しを一時間ほど続けたら、サブマップが消えた。


かなり集まったので、次は薬草袋とスコップをしまい、

新しい袋とナイフを装備する。


そして足元にある毒消し草をナイフで刈り取る。


この毒消し草は繁殖力は弱いが、根っこさえ有れば復活する草だ。


そして〈簡易サーチ〉をして一時間ぐらい、サブマップの効果がなくなるまで刈り取りつづけた。


お昼休憩をはさみ、


午後は、防虫草〈野宿作業のお供〉や、


上薬草〈数は少ないが、高価。効き目も強い〉


の採集や、


あと、たまたま見つけた角ウサギに完全装備で戦いを挑んでみた。


しかし、罠にかかってないアイツがあんなに強いとは。


てこずりはしたが、


〈主にスピード負けが原因〉


なんとか討伐し、木に吊るして血抜きをする。

地面の〈血溜まり〉もちゃんと穴を掘って埋めてきた。


スライムが来ちゃうからね…

〈ロルフ先生の教えです。〉


血抜き処理が終わった角うさぎをアイテムボックスにしまう。


「よし、罠仕掛けとこう。」


三ヶ所に小型罠を設置し本日は終了とする。



門でサインをして

テクテクとギルドまで行って、


報告カウンターで、クエストの報告し、


アイテムボックスからポイポイとでてくる薬草類がパンパンの袋たち…


冒険者ギルドにある創薬ギルドの買い取り窓口の職員さんが呼ばれて確認をしてくれた。


「君はこの薬草の採集方法を誰から?」


と聞かれて自信たっぷりに


「父です。」


と答えた。


創薬ギルドの職員さんは、


「この量と品質なら創薬ギルドに直接売りに来るといい、薬草類の目利きが出来る職員が多いので、確認も早いから。」


と…


〈早いのは有りがたいけどランクを上げたいのよね…〉


と、思い俺は、


「ランクを上げたいので、此方に持ってこようと思いますが、駄目ですか?」


というと、


「それは、心配ないよ。

この冒険者ギルドの薬草類の常時依頼は創薬ギルドが出してるから、どちらでチェックしてもポイントは入るよ。」


と、説明してくれた。


〈あぁ、それなら安心〉


「それでは次回から沢山とれたら創薬ギルドに行かせていただきます。」


と答える俺に、


「それがいい…で、君の名前は?」


と聞かれ、


「アルドです。」


と、職員さんに答える


「じゃあ悪いけどアルド君、数が多いから暫く時間を貰うよ


一時間くらいしたらまた来て。」


と言われた。


〈一時間ね、了解


よし、買い物に行こう。〉


「分かりました。お願いします。」


と言って出発しようとすると、


「あっ、アルド君忘れてた!

角ウサギは確認したから解体窓口に回ってだって」


と、呼び止められた。


〈あぁ、取ったねウサギ、忘れてた。〉


解体窓口にまわり、角ウサギを提出する。

角や、肉に毛皮、小さな魔石も今は要らないから全部換金する。


支払いは、薬草と一緒らしいから買い物へ…



罠用の細いロープや太いロープ、収穫用の袋、水袋や調味料を買って、冒険者ギルドに戻る。


薬草のチェックが終わっており、


今日の売上が、なんと大銀貨二枚と小銀貨六枚になった。


26,000円である。


〈異世界…夢があるなぁ〉


買い物で少なくなったおサイフ、

〈トネル兄さんのお小遣いは大事に取ってあり使う予定はない〉が潤ったので、


エドさんオススメのお店に今日も行く、


すると、


なんとエドさんは今日もいた。


仕事帰りらしい…


隣に座り昨日のポトフと肉の串焼きを注文する俺に、


エドさんが、


「豪勢だな、初依頼はどうだった?」


と聞いてきたから、


「大銀貨二枚と小銀貨六枚になりました。」


と報告したら。


エドさんは飲んでいたエールを吹き出した。


〈えっ、普通じゃないの?〉

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