第45話 散歩と名付けと修行

マイステアの街の外にキバとお散歩です。


サブマップでサーチをかけ赤い点を目指して、


「とってこぉーい!」


と指示を出すと、尻尾を振りながら楽しいそうに走りだしては、

「麻痺噛みつき」で麻痺させた魔物を咥えて帰ってくる相棒…


〈楽しい!〉


痺れている獲物を鑑定し面白いスキルがあれば濾過ポイでスキルカードにし、スキルだけ奪いキバに止めを頼む。


〈キバのスキルとレベル上がるかな?〉


牛の魔物から「スタミナ」「加速」のスキルを奪い

キバが止めを差した時にピクッとして俺を見ている。


〈ん?なんだ…?〉


と思っていると、


キバはお座りしながら尻尾を振る…


〈あっ!鑑定先生ぇ~出番ですよぉ〉


とキバに鑑定をかけると、


「ミスリルゴーレム (コモン) レベル 51」


「麻痺噛みつき LV2」「自動修復 LV-」


〈やったーレベルもスキルレベルも上がる。〉


と、喜ぶが、気になる項目が…


「HP 1,018 / 1,018 MP 186 / 650」


〈このままだと魔力切れに成るな…〉


キバは付与された〈自動修復〉でHPは回復するけど、MPは、回復しないんだなと、理解した俺は、アイテムボックスからMPカードを二枚、キバに差し出し


「ほれ、食え。」


と渡すと、キバはバリバリとご褒美のジャーキーの様に噛った。


すると、


魔力が満ちたようで満足そうに尻尾を振る。


俺は、〈いい子だ〉とばかりに頭を撫で、


「帰るか!」


と街道へと向かい歩き出した。



キバと山道から街道に差し掛かったとき、馬の嘶きと人の悲鳴が聞こえ、


慌て声の方に走ると、荷馬車が盗賊に襲われていた。


何とか助ける為にキバに、


「キバ!」


と、言っただけで、相棒は走りだし盗賊を麻痺させる…


〈賢いやつだ。〉


俺は駆け寄り、血を流し倒れている夫婦?にハイポーションを飲ませ、


傷が癒えるのを確認し、


血を流し倒れる馬を見るが手遅れだった。


そして、


俺は、怒りを覚え…その怒りのまま!


対盗賊用濾過ポイを作る。


濾過膜A、〈身ぐるみ〉からの、

濾過膜B、〈スキル〉〈MP〉

パッケージあり


で、盗賊から、身ぐるみと将来スキル意識魔力切れと、ついでに尊厳を刈り取る。


素っ裸で気絶中の盗賊にロープをかけスマキにし、ついでに鑑定をかけていくが、10人の盗賊全員の称号に〈人殺し〉や〈サルーン盗賊団〉との記載がついていた。


しかし、盗賊の中にはサルーンと言う名前の人物は居なかった…


〈親分は別にいるのか…〉


と思いながらも、


〈10人だけで荷馬車ごと盗むのかな?〉


と考えながら濾しとったスキルカードを確認すると、


〈アイテムボックス〉が有った。


〈なる程ね、馬を殺しても荷馬車が奪える訳だ〉


と、納得しつつ、


名前をメモし、アイテムボックスから出したシルフィー商会の職人さん作の軽くて頑丈な荷車にスマキの盗賊を乗せていく。


行商の夫婦の倒された馬をアイテムボックスに入れて道を開け、

夫婦に、〈馬をどうするか?〉と尋ねると、


「埋葬したい」



との希望なので、スコップで穴を掘る。


〈ピットホール〉では埋め戻す土まで無くなるので人力で頑張るしかない…


〈まぁ、穴ほりスキルの上位複合スキルがあるからへっちゃらなのだが〉


暫くして、


馬を埋葬し終え、アイテムボックスから馬タイプゴーレムを出し、夫婦の荷馬車に繋ぐ。


行商の夫婦は、はじめこそ驚いていたが、大人しいゴーレムにすぐに安心した様子だった。


俺は、馬ゴーレムに、


「道なりにゆっくり街の入り口まで荷馬車を引いて欲しい。」


と、伝えると、馬ゴーレムは頷き夫婦を乗せた馬車を引いていく。


〈馬ゴーレムの名前も早く決めてあげなきゃ。〉


と考えつつ、


俺が、荷車を引っ張り街に向かおうとしたが、


キバが馬ゴーレムに張り合って、


〈ご主人。引っ張るっす!〉


とばかりに持ち手を咥える。


俺は、ロープを使い、キバと荷車を固定してやる…


パトラッシュスタイルが完成し、

ご機嫌に荷車を引っ張るキバの後ろを追いながら街に向かう…


〈運んでいるのがオッサンなので、可愛さ半減だな…〉


などと思いながら、オッサンが荷崩れしないように見守りながら、街に着くと、

街の兵士に盗賊を渡して夫婦と共に報告を行う。


〈サルーンと盗賊団らしいが、サルーンは含まれていないのでどこかにアジトや仲間が存在する可能性が高い〉と伝えておいた。


ちなみに、担当してくれた兵士さんは、俺が捕まった時に親身になってくれた人だったが、


裸スマキでピクリともしない盗賊を見て、


「死んでない?」


と恐る恐る俺に聞いてきた。


「寝てるだけだよ。」


と俺が答えると、


「何で裸?」


と聞いてきた…


〈忘れてた!〉とアイテムボックスから盗賊の〈身ぐるみ〉を出して、


「提出しときます。」


と、兵士さんに渡しすと、

次は、銀色のメタリックな犬を指差し


「これは?」


と聞く。


〈口下手か!!〉


と、軽いツッコミを心の中で入れつつ、


「ドドル工房作のゴーレムで、相棒」


と俺が答えると、


「へぇ~。」と納得していた。


兵士の詰所から出ると夫婦が待っていて、馬ゴーレムを返してくれた。


しかし、夫婦の馬はもう居ない…


〈あっそうだ!〉


と、俺は思いつき、


夫婦に、暫く待つよう伝えて冒険者ギルドの厩舎からポチとタマを引き取ってきた。


夫婦にポチとタマを預ける事にしたのだ。


買わせてくれと夫婦は言ったが、ポチとタマは寂しそうな顔をするので、


夫婦に、


「新しい馬を買うまでどうぞ使ってください。


大陸中央の王国の王都近くに〈コーバ〉という街がありますので、そこか、各地に有るシルフィー商会のどこかの支店に預けて頂ければ大丈夫ですので。」


と、俺から〈シルフィーさんか商会の人〉宛の手紙を夫婦に渡し、


ポチとタマに別れを告げ


「またな…頑張ってこい!」


と二頭の首をポンポンと優しく叩く…


ポチとタマは「ブルルッ」と小さく鳴いて、頭を何度も下げる夫婦を乗せた馬車を引いて旅立った。


門の側で見送る俺と、キバと馬ゴーレム…


兵士のおっさんが、


「これも?」


と、馬ゴーレムを指差すので、


「そっ。」


と言っておいた。


〈口下手だなやっぱり。〉



そして、

工房に帰り…現在


〈スッゴク責められています。〉


「ズルいデス!ズルいデス!不公平デスっ!!」


ずっとこの調子でご立腹なのは、女性型のミスリルゴーレムさん…


「えぇ…?」


〈なにが?なぜ俺に!?〉


と首を傾げる俺に、


「確かに、私達は、

〈マスターからスキル付与が受けたい〉と、

わがままを言ったのデスが…言ったのデスが…。


あんまりなのデス!!


キバは名前もマスターに付けてもらい一緒にお散歩まで行ったんデスよ。」


と…


えらいご立腹は、解ったが…


〈ん?後ろの二人も頷いてるから、喋ってないだけで、同意見かぁ~…


って、馬タイプの君は後半一緒だったよね?〉


などと、考えていると、


「兎に角、マスター!

我々は、マスターに一日も早く鍛冶スキルの〈レベルアップ〉と、〈スキルの付与〉、

そして、速やかな〈名付け〉を要求しマス。」


と、我が社の組合が、要求を出してきた…


俺は、〈降参〉とばかりに両手を挙げて、


「わかったよぉ。


本当は、スキルが揃ってから洒落たスキルにちなんだ名前を付けたかったが、今現在が呼び辛い。


よし、名前付けるぞぉ並べぇ~っ。」


と言って、

並ぶ三体はワクワクしながらこっちを見ている。


〈まずは、女性型さんだね。〉


パッと見は、あれ、片腕が取り外し出来る赤い服の宇宙海賊さんの話に出てくるアノ方みたいなのよね。


アノ方みたい。…アノ方み…たい?


! ミ…レディ ! よし〈ミレディ〉さんに決定。


俺は、彼女の手をとり、


「決めたよ。君の名前は ミレディ だ。

よろしくねミレディ。」


と伝えると、


〈…反応ない、ダメだった。?〉


と心配する俺に、

ミレディは神に祈るかのような姿勢になり、


「マスター、よい名前を付けていただき嬉しいデス。


ミスリルゴーレムのミレディ、


誠心誠意マスターにお仕えさせていただきマス。

今後ともよろしくデスわ。」


と言ってくれた。


〈さて、次は馬タイプかな?〉


ミスリルコートで銀色の馬。

うーん、安易になら シルバー だけど…

よし、〈ハイヨーっシルバー!〉って出来るし、これで行こう。シンプル イズ ベスト!


俺は、馬型のゴーレムの前に行き、首を撫でながら。


「お前の名前は、シルバーだ。

移動は君が頼りだ…任せたよシルバー。」


と伝えると、


コクンと頷くシルバー…


「シルバーは、

〈よい名前をありがとうアルジ〉

と、申しておりマス。」


と、ミレディが通訳してくれる。


〈最後は、子供タイプゴーレムくんだな。〉


彼にはサポート役をお願いしたいんだが…

ミレディ、シルバー、キバ、

濁点が後半に有る皆と〈お揃い〉にしてあげたいな。


う~ん、子供、こども、キッズ

う~ん、キッズ…。キッド?〈キッド!〉

決まった。


俺は、子供タイプゴーレムの前に行き肩に手を置き、


「君の名前は、キッド だ。

君には、俺のサポート役をお願いしたい。

大変だと思うがよろしくね。」


と言うと、


キッドは、任しとけとばかりに自分の胸を〈トン〉と叩く。


「〈ゴシュジンサマ、任せてください〉

と、申しておりマス。」


と、ミレディさんが通訳してくれた。


〈予想通りだった。〉

案外意志疎通が出来るし、通訳まで居るので安心だ。


さて、ゴーレムチームの名前が決まったのだが、

続けてミレディさんが、


「では、マスター。

名付けは無事終了しましたが、

〈鍛冶スキルがまだデス。〉


今から離れの工房で鍛治を頑張るデス!」


とミレディに急かされ工房に移動し、


魔鉱鉄のナイフ

魔鉱鉄のショートソード

魔鉱鉄の斧


と…監視のもと手当たり次第に打ち続け、


数日経って、〈段々様になってきた〉と満足する暇も亡いぐらいに、


〈素材を使いきれ!〉ぐらいの勢いで、


脇差し

トンファー


と、作り続けて…


〈ピロリン〉


と、電子音の様な音が頭の中に響く…


〈おぉ…お知らせだ…〉


できるかな?と、不安に成りつつも、


「鍛治スキル」


と、唱えると、アイテムボックスのリスト風の〈付与スキルリスト〉が頭に浮かんだ。


「付与スキルリスト初級」


切れ味上昇 (斬撃の威力が上がる)


耐久力上昇 (壊れにくくなる)


武器速度上昇 (武器を振り抜くスピードが上がる)


重さ軽減 (ハンマーなど威力そのままで軽くなる)


命中率上昇 (投擲武器や弓の命中率があがる)


衝撃上昇 (ハンマーや斧のノックバック率が上がる)


武器破壊効果 (打ち合った武器の耐久力を削る)


インパクトアタック (ヒットの瞬間に加速)


〈おぉ、これは凄い。〉


と、俺が一人で感心していると、


「マスター、手が止まっていマス。」


ミレディさんの激が飛ぶ…


「ハイ、頑張ります」


と俺は、アイテムボックスから残った金属を出して

鍛治仕事を続ける…


アイテムボックスに、金や銀、それに銅もあったので、


〈るつぼ〉に金をいれ溶かし金塊を作り、

その金に柔らかいままのミスリルを等量まぜ、アダマンタイトの金槌で、火を入れては叩き、叩いては火を入れるを繰り返し、

仕上げに魔鉱の粉をまぶしては折り曲げ、火を入れてを

鑑定先生を使用しながらくりかえす。


「金とミスリル」の表記から


「魔鉱ミスリル金」に変わる。


説明文には、


〈魔鉱を繋ぎとしたミスリルの性質の金

粘土の様に使え、魔力を流すと硬くなる。

ただミスリルと違い再び柔らかくはならない〉


と出来たが…


思っているモノを作るには…ダメだ足りない物がある、


〈買い物にいくしかない。〉


との結論に至り、


「はい、ミレディさん、材料の買い出しに行きたいです。」


と、元気良く聞いてみる俺に、


「夕方までだけデスよ。」


ミレディさんから許可がでました。


ダッシュで商人街に向かい、アクセサリー店でアイテムボックスの中の宝石類を売り、カットされた宝石を幾つかと、チェーンなどのアクセサリー作成セットを購入する。


洋服店に行き目当ての服を購入し、


本屋で魔物素材に関する本を購入する。


革加工店で、

アイテムボックスから魔物の皮を何種類か出して〈なめし〉を依頼し、


ついでに馬具一式も購入する。


靴屋でクツを購入し、ようやく工房へ帰る。


〈充実した午後だった。〉


と、しみじみ思いつつ、


夕食後、再び鍛治仕事に入る前に皆にプレゼントを渡す。


ミレディさんには、丈夫で動きやすい店長オススメのメイド服とお洒落な黒い靴


キッドくんには英国の少年のような吊りズボンスタイルにキャスケットを被り革の靴を手渡す。


シルバーには馬具一式


キバには首輪と真っ赤なスカーフをプレゼントした。


皆喜んでくれた様子で、


ミレディはメイド姿で掃除を始め、


キッドは英国風の姿でキバにリードを付けて工房周りを散歩と云うかパトロールしている。


シルバーは「鞍を付けて」と鼻で俺を鞍の所に押していく…


仕方がないから鞍と手綱をセットすれば、


ご満悦で、次は乗れとグイグイしてくる。


「ちょっとだけだよ」と乗ってみると、


思いの外楽しくて暗く成るまで乗っていた。


ミレディさんにバッチリ叱られたのは言うまでもない…。

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