第61話 ダンジョンの黒い悪意

皆様お疲れ様です…アルドです。


お仕事に、勉強に、家事に、なにをするにも、やはり休憩は必要だと思うんですよねぇ~。


そんな訳で70階層の転移陣部屋でキャンプ中ですが、

本日はお休みにしたいと思います。


ミレディさんがワクワクしながら「記憶の水晶」を持っていますが、俺に記録のスキルがないので却下したら、


「あんまりデス!

続きが気になっているアニメが有るのデスが!

マスター。

早く記録スキルを手に入れるデス。」


と、お休みの予定を崩されご立腹のミレディさんが、ファルさんとキッド君に、


「記録スキル最優先で探すのデス。」


と真剣に指示している。


ファルさん、キッド君

何かゴメンね…。



さて、本日は、


「ドキドキ!俺による、俺のための、俺のスキル何とかしようぜ大会」を開催します。


〈ぱちぱちぱちぃ~デス。〉


はい、そこのゴーレムチームの皆さん娯楽が減ったからって、念話で勝手に参加しない。


しかし、参加するなら〈いいアイデア〉を頼みます。


と考えると、


「はーい」と、良いお返事がくる。


俺は、スキル図鑑を出して皆で見ようとするが、一冊を6人で読むのは難しい。


悩んでいると、キッド君が


「そうか!」と言ってスキル図鑑を端から端まで記録し「記憶の水晶」で映しだす。


「ご主人様、これで皆で見れます。」


と、解決してくれた。


〈おぉ、賢い!撫で撫でしとこ。〉


と撫でられて、


「えへへへっ」と嬉しそうなキッド君を見て闘志を燃やすミレディさん…


では、今あるスキルカードとスキル図鑑で有用な組み合わせや複合スキルを獲得したいと思います。


ファルさんとキッド君が「共有」と「同期」のスキルでスーパーコンピュータと化して何計算しだした。


「はい、主、質問です。」


「はい、シルバーさん。」


質問に手を挙げたシルバーさんにビシッと指名して発言を求める。


「主とキッド君をファル殿経由で共有すれば、主の鑑定スキル等も使えるのではないのですか?」


俺は、質問をうんうんと頷きながら聞き、


「良い質問です。

えー、ファルさんの「共有」は1対象のみ使用可能です。この場ありスキルの又貸しは出来ません。

ちなみに「同期」はゴーレム同士で威力を発揮するスキルらしく俺とは視界等の限られたものしかリンクできません。」


と答える。


〈そうですか。〉としょんぼりするシルバーさんに俺は、


「いやいや、ナイスな着目でした。

シルバーさんに拍手!」


〈ぱちぱちぱちぃ~〉と拍手を送った。


次は、対抗意識を燃やしたミレディさんが、

「マスター、ここに「繁殖力」のスキルカードが在ります。これを使って…

今から繁殖をするデス?」


「却下です。」

なんで上目遣いで疑問形なんだよ。


そんなやり取りの中でも、

キバさんは我関せずで俺の横でお腹を見せて「撫でて」アピールをしている。



などとやっていたら、キッド君とファルさんのデータ解析が、済んだらしく


「アルドさま、まず「博識」スキルで、記録のスキルを、持つ魔物が見つかりました。このダンジョンの中で数百年前に冒険者が残したデータに、「ライブブック」と云う魔物が、「記録」「飛行」のスキルを、保持していたと在ります。」


へぇー、「ライブブック」ねぇ。

漫画が読めそうな名前だな…


とのアホな感想をよそに、ファルさんが続ける、


「アルド様、宝箱の鍵を針金で開けてみませんか?」


と…


〈なんで?〉


と、首を傾げる俺に、


「宝箱を自力で一つ開けると〈鍵開け〉が生えます。

すると、アルド様の〈開拓者の夢〉に作用し〈トレジャーハンター〉に変わり、〈簡易罠感知〉〈罠外し〉〈簡易探索〉が、使用可能に成ります。」


と、教えてくれた。


〈おぉ、凄い〉と感心して聞いていると、


すると、キッド君が、


「では、ご主人様、上の城で見つけた鍵付き宝箱を出しますね。」


と、ゴロンと宝箱をアイテムボックスからだした。


「え、なんでそんなもん持ってるの?」


と驚く俺に、


キッド君は、


「見つけたは良いのですが、鍵はご主人様のアイテムボックスでして、仕方なく持って来ましたが、出すタイミングが無くて…。」


と…


そうだったんだ。


「ごめんね。気を使わせたね。」


と俺がいうと、


「いえいえ、では、早速」


と、言って頭をかくキッド君。


俺は、鍛治の工具箱から針金をだして、ゴソゴソやりだす。


「ご主人様、爆発の罠付きですのでご注意を…。」


と、今になりキッド君が後出し情報をくれた…


ビクッとなり冷や汗が湧き出す俺と、


俺の横で寝そべっていたキバさんが、

「よいしょ」と立ち上がり愛妻号の中に…逃げた。


あれ?皆さっきより遠くない?

ミレディさんフルポーションなんか持ってどうしたの?


〈ふぇーん。怖いよぉー。

やりたく無くなったよぉー。〉


と騒いでいると、


すると、シルバーさんが、宝箱の蓋を

「ポフッ」と前足で押さえ、


「主よ、蓋が開かなければ罠は動かないのだろ?

押さえているから頑張ってくれ!」


と励ましてくれた。


「うん、頑張る!」


と、男前シルバーさんのアシストもあり、


かれこれ、一時間近くゴソゴソやって何とか開けれた…


そもそも、〈見本の鍵〉が手元に有ることに気付くのがもっと早ければ、十分程度で開けられたはずだが…。


ピロリンとお知らせがきて、更にもう一度ピロリンと鳴った瞬間に、

宝箱の罠の状態が透視したかのように分かる。


ナイフを出して罠を外すと、


無事に宝箱が空いた。


フルポーション一本

ハイポーション十本


が入っていた。


うーん…「ありがとね!!」


宝箱の中身にガッカリしながらも、


無事に罠担当という〈個性〉を手に入れた俺は、皆とダンジョン下層へと挑むのであった。


そして、

71階層に到着すると、レンガ造りの建物の内部の様なフロアを探索している。


罠のことなら〈おまかせ〉になり、


皆の…というか、特にキッド君とファルさんの手を煩わして、何とかパーティーの中で居場所を見つけましたが、


そう、見つけましたが…。


〈そもそも、このダンジョン罠が少ない…〉


つまり、出番が少ない!


お荷物感が俺の周りで〈マイムマイム〉を踊り出す。


いけない…集中だ集中!!


そんな事を考えていたら罠感知に何かが引っ掛かった。


「キッド君、そこに罠がないかな?」


と聞く俺に応える様にキッド君がサーチをするが、


「うーん、ご主人様が言った通り何か有りそうですが、罠や宝箱では無いのでハッキリはわかりませんね。」


と…


〈えー、キッド君が分かんないなら誰も分かんないじゃん。〉


でも、気になるんだなぁ…


と気にしていると、


「アルド様、もしやトレジャーハンターの能力で直接でなく間接的に、

〈何かの仕掛け〉

に反応しているのではないでしょうか?」


とファルが推測する。


〈えっ、なにそれ、カッコいい〉


俺の特殊能力の手ごたえに、


「よ、よし、とりあえす調べるね。」


と、ワクワクしながら壁や床をペタペタしてみた。


すると、壁のレンガの一ヶ所が、ユルい事を見つける…


「おぉ、こいつ動くぞぉ!」


と、興奮しながら動かしたレンガの奧にチェーンの付いた輪っかがあった。


〈これ引っ張って良いヤツかな?〉


と考えていると、後ろのゴーレムチームから念話で、


「マスター、引っ張ってみるデス」

「ご主人様にお任せします。」

「主よ、男は度胸です。」

「ご主じぃ~ん、はやく、はやく」

「アルド様、すぐさま危険はなさそうです。」


皆が「行け!」と言っている…と、思う…


〈うん、いっちゃえ!〉と決めて俺は、


「アルド、行きまぁ~す!」


と、鎖付きの輪っかを力一杯引くと、


〈ズゴゴゴゴゴ、ガチャン!〉


と音がした…


〈何処かで鍵の開いた音がした〉的な何かだ!


と、ワクワクは最高潮になるが、


しかし、


皆で周りを見回すが何も変わっていない。


暫く探したが、なにも見付からなかったので、先を急ぐ事になった。


〈しょぼん…

何かのイベントかと思ったのに…なにも…なかった…だと…〉


俺は、なにかモヤモヤしたままダンジョンを進んだ。



結局、75階層と76階層の間のセーフティーエリアに来て…しまった。


実は、何処かに何かが待っていると期待していた自分をぶん殴りたい…「考えが甘い!」と…。


そんな事をを考えながらブツブツ言っていたら。


「ご主人様。」


と、キッド君が呼んだが気付かなかった…すると、


「ごぉしゅぅじぃぃんさぁまぁぁ!」


と空気が震える程の声で呼ばれた。


「うわぁぁぁぁ!」


〈ビックリしたチビるかと思った。

いや、正直ちょっと出ちゃった…〉


心臓がドッキン、ドッキンしている俺をよそに、


「初めて使いましたが凄いですね音魔法レベル2…気をつけて使わなくては…」


キッド君がなにか言っているが、耳がキンキンして聞こえない。


ミレディさんが念話で、


「キッドが何か見つけたそうデス。」


と教えてくれた。


キッド君に念話で


「何が有ったの?

それと、キンキンするからあんまり近くでしないでね…それ…」


というと、


ペコペコしながら説明を始めるキッド君。


なんでも、下りの階段が二本あるらしい。


一本は普通階段で、

もう一本は最近壁が動いて現れた形跡がある階段があると…


〈えっ、うそ、

あの仕掛けはここに繋がっていたのか!?〉


ごめんよ、あの時の自分。

さっきは、ぶん殴ろうとしたことを謝るよ…


過去の自分に謝罪しながら、


皆で会議の結果、出てきた形跡のある階段を下りることにした。



長い長い下り階段の先は、大きな図書館の中だった…


目の前に受付がありメガネ姿の小麦色の肌のギャル?がいた。


「扉が開いた音がしましたが、まさか人がお越しになるとは驚きなのですわ。」


と…


〈ギャルが喋った…〉


と驚きながらも、〈あれ?この感じ知ってるぞ〉…となり、


俺は、念話でキッド君に


「鑑定よろしく。」


と頼むと


「スミマセン、ご主人様、〈魔族〉としか分かりません。」


との報告が返ってきた。


〈了解、キッド君より強い魔族さんね。〉


俺はギャルのお姉さんに、


「少しお尋ねしても宜しいでしょうか?」


と、丁寧に語りかけると、魔族のお姉さんが、


「宜しくてよ。」


と、返してくれた。


〈良かった話を聞いてくれるらしい。〉


俺は、


「ありがとうございます。

私は、アルドと申します…失礼ですが、お姉さんのお名前を伺っても?」


と聞く俺に、


「ウフフフフっ

お姉さんねぇ…

そう、お姉さんはこのダンジョンのサブマスターでダークエルフのディアマンテと申しますわ。」


と、何故か上機嫌のメガネ黒ギャルのディアマンテさん


「で、ディアマンテお姉さんはここで何を?」


と、話し合いで協力が得られればと思い、フレンドリーに進める。


すると、ディアマンテさんは、


「お姉さんはね、ここ知識の部屋の番人で司書をしてるのですわよ、


〈アルド君〉でしたわよね。


君は一体こんなダンジョンの深層に何をしにきたのかしら?」


と、ニコニコのディアマンテさんから質問を頂いたので


「はい、神様達のお使いで…」


と言った瞬間に俺の頬を風魔法が駆け抜ける…


そして、切れた頬を血が伝う。


「ブチッ!」とキレかけたが、グッと我慢し


俺は、


「お姉さん?

いきなり何をなさるんでしょうか?」


と、低姿勢で伺う。


すると、


「可愛い坊やだと思いましたが、あの糞主神の使徒だったのね…危うく騙されるところでしたわ!」


と、激オコの黒ギャル。


「あのー。話を聞いて頂けませんか?」


と辛抱強く語りかけるが、


「問答無用!」


と攻撃してくる。


俺は、攻撃を避けつつファルさんに念話で、


「キッド君とリンク繋げてファルさんが鑑定して。」


と頼むと、


「心得た」


と言ってすぐに、


「鑑定」

『ディアマンテ レベル 160』

〈魔族 (ダークエルフ) 〉

「知識の行使」「記録」「サブマスター」「不老不死」


と、出ました。


との報告が入った。


おう、ギリギリ。

ファルさんがほねほねザウルスとか倒してレベル上がってなかったら鑑定はじかれてたね。


でも、記録持ってるね…


〈パクってやろうかな?〉


などと思いつつ、


俺は、この失礼な黒ギャルを懲らしめることにした。


知識が大好きな、人の話も聞けない、

態度の悪い 「本好き」にダメージを与えてやるのだ。


キッド君に念話で


「封入の矢の火と水のヤツまだあったらヤツの周りでない本に撃ち込んで。


皆も本に攻撃して!


ファルさんはグランと、合体してマジックバリアで時間を稼いで。


宜しく!!」


一斉に図書館の本に攻撃をしかけるゴーレムチーム。


ファルグランさんは俺の前に現れ盾に成ってくれている。


濾過スキルを使い濾過ポイを出す。


大きさ 1.2メートル

継続時間 一時間


濾過膜A 指定枠1 「下着」

濾過膜B 指定枠2 「スキル」「MP」

パッケージ あり


発動!


濾過ポイを具現化する間のほんの数秒間で、ディアマンテさんは発狂し、なんだか「きーきー」言っている。

だが無視をして本を攻撃するゴーレムチーム、


攻撃された本のうち何冊かが飛び立つ。


えっ!飛んだ?


すると、キッド君がデカい声で


「ライブブックです。」


と言う


俺は、ディアマンテさんに見えるように、ライブブックを濾しとると、MPが空になり〈飛行スキル〉も無くなった〈動かぬ本〉にして叩き落とす。


すると、


「マスター。

そろそろ許してあげるのデス。


流石に号泣してるのにこれ以上は心が痛いデス。」


と、ミレディさんからドン引きの念話がはいった。


濾過ポイからスキルカードを回収した後、泣き叫ぶ黒ギャルのもとへ…


「うあぁぁぁぁん!

悪魔ぁぁぁぁ。

罪のない本を…本…を ひっく、


虐めることないじゃないのよぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!」


と叫ぶディアマンテさんに、


俺は、


「人の話も聞かずに攻撃するような

司書を殺る為には手段を選んでいられません。

そして、手加減もしません!!」


と告げて、司書の黒ギャルを濾しとってやった。


MPが無くなり白目で失神しているノーパン黒ギャル…これはこれで…。


と思ったら、ミレディさんにツネられた。


ロープでスマキにして座らせ、濾しとった下着を本人の前に並べてから、MPカードを鼻先で割って起してやる。


「う、うーん」


と、言って起きた途端に騒ぎだす黒ギャルは、


「貴方達は、なんて非道なことを!」


と、うるさく喚きだした


「うっさいわ!黙らんかい!!」


そう言って俺は落ちている本に斧を

「ザクッ」っと突き立てた。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」


声にならない悲鳴が黒ギャルから上がる…


スマキにされ涙をポロポロ流すディアマンテさんに、俺自身心が痛むが、畳み掛ける。


「いきなり仕掛けて来たのは、ディアマンテさんだよね?」


と俺が、問いただすと、


「でも、それは貴方が、」


と反論する黒ギャルに、


「黙ろうか?」


と、言いながら目の前の下着をチョイチョイと指差す。


ハッとして黙りこむディアマンテさん…


いや、俺もここまでしたく無かったよ。

本当だよ。ちょっと頭に来たけど…。


「やっと話せますかな?」


と俺が、聞くと、


真っ赤な顔で小さく頷く黒ギャルに、


「神様のお使いを頼まれて、ダンジョンを踏破し始めたけど、色々聞けば、〈神様同士で話し合ってくれ案件〉らしいから、話し合える御膳立てを頑張ってるのよね俺ら!」


と話しをし、


はぁー っと、ため息をつき


「いいから、まずダンマス呼んで。」


と、しゅんとなったディアマンテさんに注文する。


「はい、私のスキルと下着を返して頂ければ、直ぐにでも…。


それとも、下着はもう俺のコレクションだから無理と言うのであれば…」


というディアマンテさんに、


「人聞きが悪い!大人しくお話できるなら返すよ!」


と怒ってみたが、


〈もう、ごめんって…ちょっとやり過ぎた…かも…〉


と、少し反省する俺が居た…

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