第62話 裏切りの罪と罰


ダークエルフを引き連れて、ダンジョン最下層を目指しているおります…


ディアマンテさんにスキルと下着を返還し、ダンジョンマスターに連絡をしてもらうが、


「老人に階段はキツイから、若者が頑張って来てくれないかな?」


と、全く動く気配がないダンジョンマスターと、泣きながら一冊一冊丁寧に本を拾っては、

「なんとヒドイ」とか

「この恨みは晴らしてあげるからね。」

と物騒なことを言っている黒ギャル…


〈腹が立ったとは言え、ちょっとやり過ぎたかな?

とは、感じてるのよ…いやホント…〉


俺は、ミレディさんに預けてある雑貨から紙の束と鞣し革…あとは、シルフィ商会の新商品のインクと万年筆をセットでディアマンテさんに渡す。


すると、


「私に書き写せと?何年掛かると思ってるの? 馬鹿なの?ねぇ馬鹿なの?」


と突っ掛かっってきて、


「自分も魔法ぶっ放してただろ?」


と、俺が抗議すると、


「私は良いの!!」


と、駄々っ子みたいなことを言ってくる。


ダンジョンマスターは、ディアマンテさんに、


「まぁ、最下層までかなりあるから君も本の修復がてら降りて来なさい。

ダンジョンポイントをちょっとだけなら使って良いから。」


と、〈ダンジョン内限定の通話スキル〉とやらでダンジョンマスターから言われると、ポイントを使えるのと解ったディアマンテさんはルンルンである。


「さぁ、行きますわよ、新しい本が待ってますわよ。」


と…


俺が、


「ん?〈修復がてら降りてきてポイントを使う〉のになぜ新しい本なんだ?」


と聞くと、


ディアマンテさんは、


「私には記録のスキルが在りますのよ。


その気に成ればここにある全ての本を書き写せましてよ。」


と、自慢気だ…


〈なら最初から文句を言わずにやれよ…〉


と呆れながらも、わがまま黒ギャルのディアマンテさんと最下層を目指すのだか、


なんと、


図書館から下り階段を進むと80階層のボス部屋の前に出た。


〈ボスとの戦闘か?〉と思ったら、ディアマンテさんが、


「ちょっと待ってて下さい。」


と言ってボスの首が四つの蛇の方へ進み、何かを話した後


「話が付きましたわよ、さぁ下に向かいますわよ。」


と歩き始める…


〈説得…してくれたのかな?〉


と思いながらも、ボスの横を〈失礼します〉とばかりに横切り、転移陣部屋に入ると、いつもと違う点が有った。


〈宝箱がない。〉


キョロキョロしたあと登録だけ済ませていたら、ディアマンテさんが、「ここの宝箱はボス撃破報酬ですよ。初回のみですので一期一会ですわよ」


と教えてくれた。


〈倒して無いからかぁ…仕方ないな。〉


と理解し階段を降りる。


81階層は神殿がある湖だった。


ディアマンテさんが、ボスは話が通じるが、通路の魔物は私やマスター以外は襲って来るから気を付けつてと言っていた。

倒して良いか?と聞いたら1日も経てば〈リポップ〉するとのことで、気にせず濾して、パッシュんさせていった。


86階層に進むと5階層ぶち抜きシリーズのボス部屋


ワイバーンが群れで飛ふ螺旋回廊を下っていく

90階層まで下りると小ぶりな城が建っていた。

城からワラワラとリビングアーマーの部隊が現れたのち、城自体が動きだした。


キッド君に鑑定を依頼したら、


『キャッスルジャイアント レベル120』

「鉄壁」「土魔法」「マジックバリア」


守備特化の〈城巨人〉だ!


〈これは骨軍団より大変そうだが…〉


と思っていると、


ディアマンテさんはリビングアーマー部隊に「この人たちはいいので持ち場に戻って下さい」と言って返した後で、城に何やら話して、


「皆さん行きますわよ。」


と、俺たちを転移陣部屋に連れていく。


〈あれぇ~?…ボス以外は会話が通じないのでは?〉


俺は、先程のディアマンテさんの行動に違和感を覚えつつ、念話でキバさんにあることを頼んでおいた。



91階層に入ると、そこには巨大な迷路が待ち構えていた…

しかしこちらには、キッド君のマップスキル レベルMAXがある。


迷うことなく突き進み、


敵を倒しつつ、99階層までついに来たのだが、


ディアマンテさんは最下層が近づくにつれて、ご機嫌になり、


「ムフフフフフ」と時折笑っていた…


そして、


迷宮を抜けて100階層に到着すると、


そこは、起伏も何もなくまっ平な大地とひたすら広い空間に真っ黒い龍がいた。


そして、ディアマンテさんは、


「サモン80階層、90階層のヌシ」


と叫ぶと、四つ首の蛇と、城のジャイアントが呼び出された。


不適な笑みを浮かべたディアマンテさんが、


「ふははははっ!

可愛い本達を傷つけた報いを受けなさい!!


泣いて謝っても許さないのよ。」


と…


〈やっぱりだ…。

はぁ~結局…結局なんだよ!

まぁ、ヤルだろうと思っていても、

実際やられると、

心にダメージを負ってしまう…〉


黒ギャルの罠で、


一つの階層に三体の階層主が現れた。


念話で、ファルとキッド君に鑑定を依頼すると、


『ブラックドラゴン レベル 150 』

「飛行」「ドラゴンクロー」「ドラゴンブレス」

〈黒い龍鱗の効果で魔法無効〉


黒いのは、魔法無効の火力高めだな…


『四色のヒドラ レベル 110』

「再生」「火魔法」「風魔法」「水魔法」「土魔法」と首により使える魔法属性と耐性が違う…


〈ヒドラのゴム皮の効果で物理耐性 大〉

と、胴体部分でさえこの性能…


〈カラフル蛇は、物理耐性の魔法使いか…〉


厄介だな…


で、さっき見た、レベル120の


城巨人だ。


「鉄壁」「マジックバリア」「土魔法」


の壁魔物だな。


さてと、


ボス達の鑑定の間ずっと黒ギャルは、


「ギャハッハッハ

本たちの恨みを晴らしてあげる。

階層主達!

あのガキと人形達を痛め付けて、愚かな行いを後悔させて…」


と、ギャーギャー五月蝿く騒いでいるが、


「ガブッ」っとキバさんの麻痺噛みつきが決まりその場にへたりこむ。


念話で、


「キバさん、ご苦労様。」


と連絡を入れると、しっぱを振りながら、


「ご主じぃ~ん、誉めて、誉めて!」


と走ってきた。

俺は、「よぉ~しよしよし!」とばかりにワシャワシャしてやりながら敵を見ると、


いきなりサブマスターがやられ階層主達は「どうする?」みたいにお互いを見合っている。


俺は、この隙にゴーレムチームを退避させ


100メートル 継続時間 10分


濾過膜A 指定枠1 「MP」

濾過膜B 指定枠2 「スキル」「固さ」


パッケージ あり


発動をして、そのまま叩きつけた。


キラキラと魔力が霧散する…


ミレディさんが、


「うわぁ~、綺麗デス。」


と喜んでくれた…しかし俺は、


〈勿体ねぇ~〉と思いながら〈光のイリュージョン〉を眺めていた…


濾過ポイを消し落ちてるカードを拾う…


〈あっ、メガネひねくれ黒ギャルのは別で保管しよう…〉


ということで、


魔力抜けで失神中の階層主と黒ギャル…


ミレディさんに黒ギャルの回収と拘束を依頼し、


失神中の階層主に「経験の指輪」を着けた代表者が、順番に討伐していく。


蛇はシルバーさんが魔法でボコボコにしてパッシュんさせ、


城巨人はキバさんが普通にボコした。固さが無いから〈噛みごたえが無かった〉と、ボヤいていた。


そして、


ラストは黒いドラゴンをキッド君が華麗にパッシュん させて、レベル上げも完了となる。


デカい魔石と蛇皮と大量の黒龍の鱗がドロップしており、

それらをキッド君にしまってもらい討伐完了!



はい、ここからが本題です…


糞ギャルの成敗を始めますが、


ミレディさん?なぜ右手と右足、左手と左足の膝と肘を結んで…ついでにどこから持ってきたの?この木の棒は…


棒の端と端に手足を縛られ、ラジオ体操第二で〈一時停止〉された様な格好…


〈何、この特殊な拘束方法は?〉


と少し引きながらも、


縛られ白目で泡を吹いて失神している黒ギャルを眺め、


〈ここまで来ると無いな…〉


と思っているとミレディさんから、


「早く作業に入るのデス。」と叱られた。


だいぶ腹が立ったから「身ぐるみ」濾しとって人としての尊厳を…

とも思ったが、女性なので許してやった…


以前〈ベノン〉とかいうサブマスターから濾しとった〈呪い系のスキル〉を取得し、この姿のまま〈全身痒くなる呪い〉や〈下痢をする呪い〉等をかけてやろうか?

とも思うが、〈呪い系〉のスキル持ちに成るのが嫌なので諦めた。


しかし、その代わりに、


「シルフィー商会の新商品『油性ペン』!」


と、お腹の辺りにアイテムボックスを出して、ごそごそしながら、ダミ声で取り〈ペン〉を取り出す。


工房の親方衆にも大評判、書きやすい、滲まない、そして、消えにくい逸品である!


これで、黒ギャルのマブタに目を描いて…


「プププっ」


と笑っていると、


その後ゴーレムチームも、この黒ギャルに腹を立てていたらしく、代わる代わる油性ペンで制裁を加える。


眉毛や髭の定番は勿論


胸元に「不要品」


おでこに「拾って下さい」


最後にこめかみに血管浮き出たみたいな怒りマークを描いて


アイテムボックスにある数値の少ないMPカードを鼻先で割ってやると、

ゆっくり目覚める落書きギャル…


〈ハッ〉として動こうとするが、ミレディさんの特殊な拘束と麻痺で思うように動けない。


「下着は取らないで!」


と、黒ギャルが叫ぶ…


俺は、


「取るかぁ!むしろ黒歴史をプレゼント中じゃい!」


と怒鳴り、


キョロキョロ辺りを見回して確認する黒ギャル


「私をどうする気よ!ほどきなさい!」


と、モゾモゾ動くが特殊な拘束のせいで、あられもない格好に成っていく。


えぇい、動くな!それ以上は倫理委員会が許してくれなくなる!


と願いながらも俺は、


「動くな!

オレ、オマエ、ナカス!

オマエ、オレタチ、ウラギッタ!」


と言って念のために図書館から拝借してきた一冊の本に油性ペンで、「キュキュっ」と落書きをした。


「いやぁぁぁぁぁ!やぁめぇてぇぇぇぇ。」


と発狂するラジオ体操ギャル…


〈効いてる、効いてるぞ!〉


と、手応えを感じながら、


「さぁ、次はこのページの(ち)と(ん)以外の文字を全て!!


消してやろうかぁ?」


と俺は、


〈小説っぽいこの本のクライマックスを二種類の文字だけにする!〉


と脅してみた。


すると、黒ギャルは泣き出した…

謝りながら、引くほど号泣していた。


会話が成立しないくらい泣いている…

ドン引きするゴーレムチームが俺を白い目で見てくる…


〈って、君達もこっちがわだよね?〉


と抗議をするが、

らちがあかないから、荷車を出してもらい黒ギャルを〈ポイ〉っと乗せ、

キバさんがパトラッシュスタイルでダンジョンマスターの所まで運んでくれた。



ドナドナされながら号泣している姿に罪悪感が芽生えるが、

流石は、シルフィー商会の工房作品、あれだけ濡れても落書きが消えていない…感心した。

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