第43話 何でも試して見よう
ドワーフの国まで無事に戻る事が出来た。
ドワーフの国のメインダンジョンから、お爺ちゃんの工房のある街は、
「マイステアの街っす」
と、タンパさんにシルフィー号に揺られ帰る道中で、色々教えて貰った。
鍛治屋が沢山あり煙が立ち昇る職人街と、
そんな職人の作品を扱う商人街…
そして、
各種ギルドや議会の建物が集まる中街で、構成されている マイステア の街は、五年に一度選挙で街の代表を決めているらしい、なんとも進んだ体制の都市だ。
ドワーフは、街を作ること自体が珍しく、
〈気に入った土地で、気に入ったヤツと住み、気に入った仕事をする。〉
みたいなタイプが多い。
どこの国にもドワーフ族の親方が仕切る工房が有るのはその為らしい。
ダンジョンからタンパさんと、一緒に数日過ごして
途中の夜営時に、鉱石と宝石の仕分けを手伝って貰った。
内訳は
鉄が大部分を占め、
魔鉱
〈魔力の通りが良い黒い天然の鉱物、人工で再現可能〉
ミスリル ※ミスリルゴーレムのボディーを省く、
〈魔力の通りが、もの凄く良い軽い鉱物〉
アダマンタイト
〈凄く固いが、かなり重い赤っぽい鉱物〉
オリハルコン
〈固くて、軽くて、粘りがあり優秀だが、加工が大変〉
金、銀、銅 に、
魔水晶、ガーネット、ルビー、オパール、エメラルド、サファイア
等であった。
タンパさんに魔鉱について訪ねると、魔鉱や魔力が通りやすい武器には特性を付与出来るらしい。
鍛治レベルにもよるが、「切れ味上昇」や「頑丈」等の定番の物から、
中にはスキルカードを使って付与すると、属性攻撃等も付与できると言っていた。
〈嘘、付与とかって…俺の鑑定さんそんな情報はなかったよ?〉
と、ビックリして、よくよく聞くと、
「そこまで分かるのは、職業スキルが有る、鍛治師や商人ぐらいだ。」
と、タンパさんが教えてくれた。
鍛治師には、〈武具鑑定〉という、武具のみの鑑定スキルが、
商人の鑑定スキルには、扱う商品が解る〈商品鑑定スキル〉が、それぞれあり、
どんな付与が付いているか?とか、
何個付与が付けれそうか?が、鑑定できるとのことだった。
それを聞いた俺は、その手で、アイテムボックスから鍛冶スキルを出して使用した。
「いらない!」って言ってごめんね…
と鍛治師の職業スキルに謝っておいた。
タンパさんの説明では、
鍛治レベル3で武具鑑定が生え、
鍛治レベル4で下級付与スキルが、
鍛治レベルMAXで上級付与スキルが貰えるとタンパさんが語っていた。
そして、
タンパさんは、現在鍛治レベル4で、
「あと一息でMAXっす。」
と、自慢げに話してくれた。
そんなこんながありつつ、お爺ちゃんのドドル工房に着きました。
「ただいま戻りました。お爺ちゃん!」
と俺が声を掛けると、また破壊音と共に髭モジャのお爺ちゃんが表れ、
「無事じゃったか?心配したぞ!」
と俺を上下にブンブン振る
〈いや、酔うから、酔うから!〉
と慌てる俺を散々撫で回し、
そして、タンパさんをチラリと見て、
「おう、帰ったか?仕事しろ」
とだけ言った。
可哀想なタンパさん…
俺は、気の毒に思い、
「お爺ちゃん、ダンジョンでタンパさんに会って、一緒に採掘してきたよ。」
と、タンパさんの頑張りんサラッと報告するが、
「お前だけ、アルドと仲良くしおって。仕事しろ」
と逆効果だった…
〈タンパさん、ゴメン…〉
俺は、お爺ちゃんに仕分けしたミスリルとアダマンタイトそれにオリハルコンの入った袋を渡して、
〈これで軽くて丈夫な防具を作って欲しい〉とおねだりをすると、
「お爺ちゃんにまかせとけぃ!」
とノリノリで、了解してくれた。
俺は、鍛治レベル上げもしたかったので、
「お爺ちゃん、ダンジョンで鍛治師のスキル貰ったの」
と告げると
「でかした!」
とまた俺を上下させる
〈吐くぞ、いいかげん!〉
と、心中で抗議つつも、
「じゃあ、お爺ちゃんが一から教えてやるからな。」
と、ニコニコのお爺ちゃんを見て我慢した…
俺は、改めて、
「お願いします。じぃじ師匠。」
と呼ぶと髭モジャの顔の周りにお花が咲き乱れ、
「うぉい!ドルル、お前は今日から工房長になれ!」
と叫ぶお爺ちゃんに、
〈なにごとか?〉と、ドルル叔父さんが出てきて、
「装備が出来るまでは頑張るんだろ?約束したじゃないか。」
と、こめかみを押さえてため息を漏らす叔父さんに
お爺ちゃんは、
「バカ野郎!じぃじ師匠はアルド専用になるんじゃ!
あとは、お前が頑張れ」
と、騒ぎ、
更に〈はぁ?〉となる叔父さんに、
俺が、
「ダンジョンで鍛治師のスキルを貰ったから…」
と、叔父さん報告すると、
暫くポカンとしたあと、ジワッと涙を浮かべ。
「よがっだなぁ~、ほんどぉぉぉにぃ!」
と俺の頭をワシャワシャする叔父さんは、
「親父!最高の鍛治師にしてやんなよ、あとは任しとけ!」
といって、わっはっはと嬉しそうに工房に戻って行った。
あとで、タンパさんが、
「ルルドの姐さんに鍛治師スキルが無くて、
〈家業の手伝いも出来ない役立たずだから…〉
と…そんな事ないのに…姐さんは出て行ったっす。
親っさんも、若もずっとその事を気にしていたっす。
色々あったけど、姐さんの息子さんに鍛治を教えることは、親っさんの夢だったろうし、若は、家族がやっと揃った気分じゃないでしょうかね?」
と、鼻を啜りながら話してくれた。
じぃじ師匠が、
「アルド、部屋の用意が出来てるから、今日は風呂に入って休め。」
と言ってくれて、修行は明日からとなった。
翌日から鍛治士見習いとしての1日が始まった。
朝は早くから、じぃじ師匠がソワソワしながら工房でごそごそしている。
〈師匠を待たせるのは弟子の恥!〉
と、着替を済ませ、腰のベルトにアダマンタイトの金槌を差して、工房へ向かう。
「じぃじ師匠、宜しくお願いします。」
と、元気に挨拶をすると、
「よし、アルドよ。
まずは鍛治師の基本鉄インゴットを作るぞ!」
と言って、俺は、じぃじ師匠の工房の端に建っている離れの工房を借りて鍛治のいろはを教えてもらうことになった。
鉄などのインゴットを作る際は、
粘土に、大山脈の火山地帯にいる マグマかたつむり の殻を粉にしたものを混ぜて練り上げた〈素焼きの壺〉に鉄鉱石をパンパンにして鍛冶釜戸に入れ、炭等に火力を上げるために、空気を送り高温にして、溶かして作る方法と、
業者に頼みデッカイ溶鉱炉で溶かしてインゴットにするやり方がある。
今回は、一つ目の「るつぼ」を使って鍛治釜戸で溶かす方法を教えて貰う事に成った。
じぃじ師匠は空気を送る「フイゴ」をゆっくりと何度か動かし
「やってみろ。」
と言い俺と交代する。
俺は、フイゴを前後に押したり引いたりしてみる。
フイゴは押す時も、引く時にも空気を鍛治釜戸に送り込む、石炭が赤い色を通り越し、白い炎が揺れる
〈暑い暑すぎる…〉
熱気と戦いながらも、〈るつぼ〉が高温になり光る様な白い色に焼けている。
「この色を覚えとけ。」
と、じぃじ師匠がポイントを教えてくれる。
「よし、アルド、取り出して少し冷ますぞ。」
と指示を受け、汗をかきながら〈るつぼ〉を取り出した。
あれ程あった鉱石が、お饅頭ぐらいの量になって「るつぼ」から出てくる。
すると、じぃじ師匠が、
「アルド、出来た鉄から不純物を取り除くぞ。」
と言って、鉄の塊をヤットコではさみ鍛治釜戸にいれる。
じぃじ師匠が鉄の色を見て指示を出してくれて、
釜戸から取り出し金床でアダマンタイトの金槌を使い叩く。
何度も繰り返ししっかりした鉄を作るのだが、
じぃじ師匠が首をかしげて、
「不純物がほとんどないのぅ?」
といっている。
〈そりゃ万物濾過で濾しとった純度100の鉄だから…〉
と思う俺をよそに、
じぃじ師匠は、出来た鉄に魔鉱の粉をまぶして半分に折り込む。
「アルド、あとは勘でこの作業を繰り返してみろ、回数は任せる」
と、いきなりの難題を与えられた。
俺は、、鑑定を使いながら、鉄に粉をかけて折り曲げ、叩いて馴染ませる作業を繰り返す…
何度か繰り返した時に鑑定先生が、
〈魔鉱鉄〉に変わった事を教えてくれた。
じぃじ師匠に、
「出来ました。」
と出来上がった合金をみせると、
「なんと、一度でやりよったわい!」
と驚きながら喜んでくれた。
次はその合金を包丁の形にしていく。
不格好だが俺の第一作目が完成した。
じぃじ師匠は翌日その包丁に柄をつけてくれ、
「初めてで、ここまでできるとは思わなんだ。」
と頭をワシャワシャと撫でてくれた。
数日練習を見てくれた、じぃじ師匠は、
「よし、あとは鍛治レベルが上がるまで、アルドが好きな物作ってみろ。
ワシはアルドの防具を作る事にする。
鍛治レベルが3になったらミスリルの加工を教えてやる。」
と言い残したじぃじ師匠は、離れの工房をあとにした。
じぃじ師匠に防具用に採掘してきたミスリルとアダマンタイトそれにオリハルコン…それと、鉄と魔鉱の半分は渡してある。
今手元に有るのは、鉄に魔鉱、ミスリルゴーレムの体と、金・銀・銅 が少量…
うーん、何が出来る?
と、悩んだが、〈まずは情報収集だ!〉
と、俺は離れの工房の中の書物や本工房の資材置き場の各種合金を鑑定先生に頼み、効果と配合比率を調べる…
しかし、〈記録のスキル〉で、メモ要らずである。
〈受験やテストの時に欲しかったよ…このスキル。〉
そして、最終的に作りたい物が決まった。
が…今は我慢して、鍛治レベル上げを頑張る。
必要そうな物から、ナイフや鍬、スコップにツルハシや鍋を合金で打ち上げ、
すぐに鍛治レベルは2となる。
前世の知恵を記録スキルで引き出しながら、
アイテムボックスにある鋼装備を使い、
テレビでみた日本の鍛治職人の技を真似して、
例のモノを作っていく…
一本目は酷いものだったが、
何本か打つうちに、形になっていった…
そして、最新作が自作の鞘に納まった時に、
ピロリン
と、報告がなり、手元のそれに鑑定を掛けると
「無名の刀」
「攻撃力 250 付与スロット 1」
「アドル作の刀」
と、鑑定がでた。
〈付与スロットが見える!〉
鍛治レベルが3になったのだ。
〈やったね!〉
次の日の朝ごはん時に、
「じぃじ師匠、鍛治レベル3になりました。」
と報告したら、じぃじも叔父さんも食べてるモノを吹き出した。
「アルド、本当に?まだ一週間だぞ?」
と叔父さんが聞き直す。
「アルドやこの一週間で打ったものを見せてみぃ!?」
と、じぃじ師匠がいうので、
包丁から順番にアイテムボックスから出していく…
スコップやツルハシは、
〈ほうほう。〉
と、感心して見ていた二人がだが、
刀が並びだすと声を失っていた…
「アルド?これはなんだ?」
声をハモらせ聞いてくる、お爺ちゃんと叔父さん。
「刀ですけど、研ぐのが下手くそで上手く出来ないんだ。」
と報告すると、
「刀?」と聞き返す叔父さん…
じぃじ師匠は、
「アルド、これを研いでみて良いかな?…ワシが…」
と聞かれたので、
「やったー!お願いじぃじ師匠、本当の性能が判らないから困ってたんだ。」
と答えると、じぃじと叔父さんは2人して工房に移動し、
「あーでもない、こーでもない」と思考錯誤したらしく、
一時間以上経ってやっと工房から出てきた。
じぃじ師匠は、グイッっと顔を近付けて、
「アルドよ、これで試し切りをしてくれんか?」
と真剣な顔でお願いされ、
その手には、研ぎ上がった白鞘の刀が握られていた。
〈近い、近いって!じぃじ…〉
じぃじ達に引っ張られ工房の裏庭に行くと、
そこには魔竹が束ねて立ててあった。
「さぁさぁ。」
と二人に急かされて、
「じゃあ、やりますよぉ~」
と俺が刀を構える。
皆が息を呑む中で、自分の剣スキルと前世の記憶から、〈なんちゃって居合切り〉を、披露する…
片ひざをつき、腰を落とした状態から
抜刀しながら斬り上げてみた。
〈…一本たりとも斬れていない…だと…〉
俺は、余りの恥ずかしいさに、
「ありがとうございました!」
と、刀をじぃじ師匠に渡して、
離れの工房へと…
逃げた。
俺が居なくなってから、
静かに魔竹が斜めにズレ落ちた事を俺は、知らなかった。
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