第11話 息子の素性暴露大会
玄関を開けたら、クロネコの飛脚便が届き
プチパニック中の アルド です。
「お久しぶりだニャァ。元気にしてたかニャ?」
ニャパっと笑顔で聞いてくる以前の駄菓子屋の土下座猫が、
今は、ねじりハチマキに手紙箱を担いで立っている。
〈あの時の黒猫が、何故…?〉
と、思ったのも束の間…動物の本能的な何かが働き、
パパさんとママさんに気づかれてないのを確認してから、
黒猫をヒョイと抱えて、
家からも井戸からも離れた背の高い薬草がメインの薬草畑の向こう側、
〈ウォール何か 〉の壁面そばを目指しダッシュしていた。
「な、何するニャ?」
騒ぐ黒猫に
「一旦黙ろっか。」
言葉に殺気をこめて言う、俺。
「はいニャ!」
とだけ答えて固まる猫で、
成長したとはいえ、ドワーフボディーの男の子、
ドッタドッタと頑張って目的地に到着する。
猫をポンと降ろし、一旦家の方を確認
〈ヨシ!見えにくいよなココ。〉
と安心したところで、
少し体制を低くして、
「何しに来たの?」
と、小声で聞くと、
「お手紙を届けに参りましたニャァ!」
と、元気いっぱい答える猫に
「わぁ!声がデカイ!」
と焦り、咄嗟に猫の口元を〈ムンズ〉と掴んで、
「静かに。両親に気付かれちゃうだろ。」
と改めて小声で告げる俺…
猫は、〈あっ、そうなの?〉みたいな顔をしてから、
スッと俺に肉球を見せたかと思うと、ムニュと空間を揉んだ?
俺が不思議そうにしていると、
「防音の魔法ニャ。
コレで大丈夫ニャァ!
隠蔽のスキルも使っとくニャ?
…それより、お手紙ですニャァ。
サインか判子を頂きたいのですニャァ。」
流れる様な対応だ。
こいつ、プロだな…
「えー、さ、サインで、」
と俺が答えると、手紙箱から伝票とペンを取り出して、
「えっと、ココの空白の所にお手数ですがお名前を頂けますかニャ?」
「えっ、はい。
えーっと、前世の?それとも今世?」
との質問に恐縮しながら猫が、
「出来れば前世で、あっ!フルネームでお願いしますニャァ。」
はい、サラサラっと。
まさかまた、このやり取りをするとは思わなかった。
「はい、ご苦労様です…。
!!じゃないよ!!?」
と、何かゴソゴソ作業をするクロネコの首根っこを摘まむ。
習慣とは恐ろしい…
思考ゼロでも宅配便のこのやり取りが出来てしまう。
が、よくよく考えたら疑問だらけだ。
「なんで居るの?」
キョトンとするクロネコは、
「お手紙を届けにニャ?」
と、首をかしげながら答える。
俺は、少しイラつきながら、
「そうじゃなくて、誰から何をって…」
と説明を求めると、
〈あぁ、ソッチ。〉みたいな顔をした猫が、
「神様達と勇者 天野 勇 様よりお手紙を預って参りましたニャ。
それと、商神様から伝言ですニャ。
ステータスカードに勇者の協力者って一文を隠し称号にするのを忘れてしもぉたのじゃよ。
両親やその周辺、勿論お前さんの師匠も知ってしまっておるのじゃよ。
すまんのうぉ、許せよぉ~
ですニャ。」
と…
俺は膝から崩れ落ちた。
〈あれ、俺以外にも読めてたんだ…〉
全部話さなアカンタイプのやぁ~つだよ…。
伝言を伝え一仕事終えて、鼻唄まじりで手紙箱をゴソゴソし何通かの手紙を取り出す。
「お納めくださいニャ。」
と、手紙を俺に渡したのち、
クロネコはまた何もない空間をムニュっと揉む。
「魔法を消してっと。
有り難うございましたニャ。」
と、帰ろうとするクロの首根っこを再び強めに〈ムンズ〉と掴む
「うニャ。」
と言って無抵抗になるクロネコ…
〈あっ、猫と一緒でココを掴むと大人しく成るんだぁ。〉
などと感心しながら家にクロネコを〈プラン、プラン〉っと運ぶ俺、
「な、なにをするのニャ?」
焦りながら聞くクロに、先程より殺気を込めて
「黙れ小僧。
お主あれで帰れると思ったか?」
と、精一杯ドスのきいた声で話す。
黙るクロ…尻尾がお腹のほうにクルンとしている。
俺は、家の玄関を開け、大きな声で、
「パパさん!ママさん!
お話したい事がございます。
お集まりください。」
と、叫ぶ。
「何事か?」とパパさんもママさんも手を止め玄関に集合し、
息子が猫を持っているのを見たママさんは、
「どうしたの?飼いたいの」
と聞いてくるが、パパさんは違った。
「精霊様ですか?
!!アルド、すぐに降ろして差し上げなさい。」
と、焦っている。
クロネコさんは飛脚でもサービスドライバーでもなく精霊らしい…知らんけど。
「そんな事より大事なお話が在ります。」
そう伝えると、パパさんが
「とりあえず、一旦精霊様を降ろして、座って話そうか?」
と、いうわけで、
〈第一回 ドキドキ 息子の素性 大暴露大会〉
が開催される事になりました…
「告白する!」
と、心に決めたが…
どんな反応をされるか、正直怖い…
4人がテーブルに着き、ママさんがお茶を入れてくれている。
静かに気不味い空気だけが漂う。
気遣い上手なパパさんが見兼ねて切り出す。
「アルド、話したいことはなんだい?その精霊様のことかな?」
と、優しく聞いてくれる…
俺は、覚悟を決めて。
「パパさん、 ママさん。実は僕…。
いや、俺は…前世の記憶があるんだ。」
…。
?おかしい、反応がない。
チラッとママさんを見るとお茶を〈ズズッ〉とすすっている…
そして、パパさんはウンウンと頷いて納得してる。
ついでに猫はお茶をフーフーしている。
〈猫舌か?〉
…いやいや反応わい?!
と、ツッコミを入れそうになる俺に、
ママさんが、お茶を置きながら、
「それは知ってたわよねぇ。パパ?」
と、しれっと答える。
「えっ!」と驚く俺に、
パパさんまで、
「うん、そうだろうなぁーとは思ってたよ。」
と、答える…
〈嘘…だろ…〉
思考が追い付かないままの俺が、
「いつから?」
と聞くと、
考え込むむパパさんは、
「いつから?って、言っても、アルドが赤ちゃんの頃から、
聞き分けの良い子だなとは思ってたけど、成長するにつれて違和感と云うのか、ターニャちゃんとかとは大分ちがうなぁ~て思ってたんだよね、ママ。」
と言う。
するとママさんが、
「そうよね、アルドは必要以上に気を使ったり、言葉遣いも大人びていたりするから
〈育てるの楽だなぁ。〉
くらいだったけど、
ステータスカードを見た時、〈勇者の協力者 〉って書いてあったのを見て、ママもパパもビックリするより納得しちゃった。」
と、暴露するママさん。
「そうだよ。
ママと話し合って、フリューゲル様に相談したんだ。」
パパの言葉に、
〈村長にもバレている…だと…〉
と驚く俺に、
「フリューゲル様ったら、色んな方に声をかけて会議を開いたりしたのよアルドの事で、」
〈えっ 、なにその会議!〉
と更に驚く俺に、尚も明かされる真実…
「フリューゲル様は王都や色々な所から勇者様の情報を集めて、
勇者様は異世界から降臨されるらしい
だから、「勇者の協力者のアルド君も異世界から来た使徒様だぁ!」って、
神父さまやシスター、勿論シルフィーさんも知ってるわよ。」
と、ママさんの爆弾発言で、
〈オワタ。もう全て終了です…〉
と、ダメージを負うも、
受け入れられていた事に、嬉しく成る…
しかし、本当は二人がどう思っているのか?
と、同時に不安にもなり、
俺は、
心を決めて、
「でも、二人は、気持ち悪くないの?
自分達の子供の中身が、オッサンなんだよ。
ママやパパより年上かも知れないオッサンなんだよ。!?」
と、胸の内をさらけ出す…
その言葉を聞いて、首を傾げて考える両親…
「いや、全く…ママは?」
「考えたことなかったわぁ」
と、両親が答える。
〈ん?〉
と、あまりの薄い反応に固まっている俺に、
パパさんが、少し聞きづらそうに、困った顔をしながら、
「アルド、前世のも含めて何歳になるんだい?」
と聞く…
「えっ?」っと驚きやられるながらも、
「44歳で死んでしまって、今6歳だから、
ちょうど50歳…かな…」
と答える。
一瞬の沈黙の後…
二人が爆笑する。
「フフフ、50ですって若いわぁ。ねぇパパ。」
「アハハハ、まだ子供だよね。ママ。」
〈えっ?えっ?〉
と、プチパニックになる俺に、
パパさんは、
「ハハハ、すまんすまん。
ところで、アルド、ママは何歳だと思う?」
〈飲み会のクイズか?!〉
と、思いながらも俺は首を傾げる…
その姿を見たパパさんは、
「わからないだろ?
なんと96歳だよアルドの倍ぐらいだよ。」
と暴露する。
〈えぇ!〉と俺は、驚くが、
ママさんが膨れっ面になり、
「なによ、パパなんか160歳だからアルドの三倍以上なんじゃないの。」
と、更なる暴露を…
もう驚き疲れた俺に、
パパさんはニコニコしながら、
「ママはドワーフで、200歳ぐらいまで生きるだろうし、
パパはエルフだぞ、300歳まで生きるんじゃないかな?」
と話す…
そして、
ママさんは俺に近づき、そっと顔を覗き込み
泣きそうな笑顔で、
「アルドはママの可愛い子供よ、どんな魂でも、どんな大変な使命が在っても、全然関係ない!
大好きよアルド。」
ママさんはそう言って、俺を椅子ごとギュッとしてくれた。
パパさんも
「たとえアルドの前世が千歳以上のハイエルフだったとしても、そんな事、嫌いになる理由にならない。
大好きだよアルド。」
と、言って、パパさんもそっとママさんごと俺を抱きしめてくれた。
暖かい、体が…心が…
二人の優しさと愛情が伝わってくる。
知らぬ間に、ポロポロと泣いていた。
滲む景色中で、ママさんもパパさんも泣いていた。
あぁ、この二人の子供に生まれて良かった。
今最高に幸せです。
ババァのガラガラはあてに成らない…
〈この幸せのどこが残念賞なんだよ…〉
親子で、暫し抱き合い涙していると、
「終わったかニャァ?」
と、茶を飲みながら、言ってくるクロネコ…
〈うっせえ!ぶち壊しだわ!
てめぇは、冷めた茶でもすすってろ!〉
と、心の中で悪態をつく俺だった。
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