第95話 戦争へ向かう運命

正直勘弁して欲しい…


まだ足場もしっかりしていない街に攻め込もうとするのは…


敵はベルガーさんからの報告で、魔族の兵士約千人に、従魔部隊約五千…合わせて六千の軍勢らしい…


〈果ての村〉時より多いじゃないか!


我が方は、国王陛下からレンタル中の国境の壁の守りの兵士300名と、


アルドニア在住の元帝国兵士さんが数十名


…正直戦争に成らない…


しかし、ウチのファミリーメンバーは単独でダンジョンボスを倒せる猛者が揃っている。


籠城戦をすれば凌げるかもしれないが、


街に被害が出るし、時間もかかる…



アルドニアの主要メンバーを集め、

ダンジョン通信のモニターを展開し、

ミレディの念話で各国の要人達に外線を繋ぎ、


再び会議を開く…



皆で悩みに悩んだ末に…旧帝国領の帝都に集まる魔族を俺達が出陣して蹴散らす事にした。


〈城ゴーレムが暴れるにはアルドニアは狭いからね…〉


駐屯騎士団からは、


「壁が在るから別動隊が来ても我々が町の入口は守ります。」


と言ってもらったし、


〈果ての村〉のチームも「帝都取り戻す!」


と気合い十分だ。


しかし、何故、急に攻めて来たのかが解らない…ベルガーさんも、魔族の皆も母神様の復活に賛成していたと言っていたのに…


と会議の席で悩むしかない俺…


「情報が無さすぎる…」


と、呟くしか無かった…


しかし、その声を聞いて動いたのは、誰在ろう、


フンドシ教の教祖カノンさんだ。


「どれ、ちょっと覗いてやるのじゃ」


と千里眼で敵陣営の様子をみてくれている様子…


〈この人は性癖は終わっているが、仕事はできるんだよな…〉


と、感心しながら結果を待つと、


カノンさんが、


「お、おぉ…成る程…」


と、目を閉じながら唸り、


そして、


「これはだめだ、〈洗脳〉じゃな、

集まりつつある兵士が言っている事が、一緒すぎるのじゃ。


〈姫を取り戻せ、神の使徒を殺せ〉


と、うわ言の様に唱えておる…」


と、教えてくれた…


が…洗脳…誰が…何の為に…


と謎が深まるばかりだった。



しかし、この状況を打開する者が現れた…


そう、


「ニャーが来たからにはもう安心ニャァ」


と…


久しぶりのクロネコが黒くて四角い大きめのリュックを背負って現れたのだが、


急に入って来た部外者を排除しようとバトラーが動くのを、


「ストップ、ストップ!


知り合いの宅配業者だから!」


と止めるのがやっとだった。


クロネコは首もとにナイフを突き付けられて、半泣きで、


「ニャんでこんな酷い目に合わないといけないニャァ!


ニャ~が何したっていうのニャァ!!」


と、騒いでいるが、


〈色々したからなぁ~…コイツ…〉


と思っていると、


「お届け物に来ただけニャのに…」


と、俺が直ぐに助け無かったのにショックをうけて、完全に耳もしっぽも〈ヘニョン〉と成ってしまったクロネコに、


「はい、はい、お届け物ね…


バトラー…解放してあげて。」


と、バトラーに指示をだすと、ようやくナイフの恐怖から解放されたクロネコが、


「まったく、真っ当に働いているだけニャのに…」


とふてくされながら、リュックを降ろしてビリビリとマジックテープの蓋を開ける…


〈ナニかと思えばウーバーか…遂にコイツの本業は登録制に成ってしまったのか…?〉


と、毎度毎度、違う衣裳に呆れつつ見ていると、クロネコはいつものように伝票を渡して来たのでサインを書いて返す。


「本日は主神様から伝言だけニャァ」


と言って、いつものオハジキみたいなヤツを渡してきた…


「嫌な感じしかしないな…」


と呟くと、


「ニャーの方が〈嫌なかんじ〉ニャァ…」


と、先ほどの歓迎に対しての不満を言ってくる。


クロネコは、


「今日は別にお返事いらニャいらしいから帰るニャァ!」


と、プリプリと怒りながら帰っていった。


そして、俺はクロネコを見送った後、


皆が固唾を飲む中で、例のオハジキに魔力を流すと、


オハジキから光りが溢れだし、


もう、嫌悪感しか湧かない主神の声が聞こえる…


「やぁ、アルド君、


〈約束通り、ダンジョンの踏破〉をしたようだね。


おめでとう…で、良いのかな?


まぁ、君が裏で〈こそこそ〉してるみたいだけど、…もう、アルド君との契約は終了したから、魔族が攻めて来るけど、助けてあげないよ。


どうしても助けて欲しかったら、次のお願いを聞いて貰うからね。


アルドニアって言ったっけ?


当面は戦場になると思うけど頑張ってね…


せいぜい苦しむと良いよ…じゃあね。」


と、ムカつく内容だった。


魔族はどうも〈主神〉の策略で、戦争へと向かう者と、勇者の脅威から守りを固める者とに分断されたようだ…


会議のモニターからディアマンテさんが、


「アルドさん、魔族の皆さんの〈洗脳〉にも、あの主神が絡んでいますわ!」


と怒りの声をあげる。


俺も怒りたいが、念話網で話を聞いていた各国の要人チームも、主神の所業に業を煮やし、


「挙兵してアルドニアへ馳せ参じる!」


と、言ってくれた。


俺は、各国の要人チームへ、


「アルドニアに来てくれるのは有難いですが、


戦争はとりあえず、〈俺達だけ〉でまずヤッてみます。」


と伝えると、


リザードマンの国〈ダイト国王様〉から、


「何故だ!、数からしてリザードマンの国に攻めてきた兵数ほどではないか、


我々が加勢すれば、押し返す事も出来るはず!」


と言ってくれ、


ジーク様も、


「半月…いや10日くれたら、コーバの騎士団と、王都の騎士団とで駆けつける!」


と、必死で止めてくれた…


しかし、


俺は、


「多分、全面戦争になれば、主神は、


〈戦争に参加した誰か〉や〈その家族〉の願いを聞くという口実に介入してきます。


主神は、手段を選ばず動いているという事は、焦っている裏返しでしょうし、


これで、俺みたいに何かしらの約束をさせられ、良いように動く〈勇者天野君〉でも召喚されたらマズイ事になります。


一応、特別何かなければ、あと一年程は、勇者召喚は無い予定ですが、ミスティルの危機という口実を与えたくないのです…」


と伝えると、ジーク様達は、


「ぐぬぬっ」と、苦い顔をしている。


すると、イグニス様が、


「旧帝国に集まっている魔族も被害者…力で磨り潰すのは私も少し違うと思う…


しかし、アルド君…勝算はあるのかい?」


と聞いてくる。


俺は、


「全員を助けられる自信は…あまり有りません…


しかし、負けてやる気は微塵も有りません。」


と、素直な気持ちを伝えた。


すると、ラドル様が、


「了解しました。


我々は、大地の女神の使徒〈アルド〉様の留守を守る為にアルドニアに駐屯兵を送ります。


アルド様の後方はしっかり守っておりますので、危なくなったら退却して下さいませ。


以前の会議では、魔王城まで行かねば大地の女神の復活も難しいとの事でしたので、


旧帝国を奪還すれば、そのまま魔王城を目指して頂き、アルドニアに駐屯させた我国の兵士を旧帝国まで進めて、旧帝国の守りをさせます。」


と、提案してくれた。


武力の無い妖精族以外の国々は、アルドニアに駐屯兵という名目で助っ人を送ってくれる事になり、


俺達は少数の人間と

魔族の軍勢六千との戦争に向かう事に成った。



さて、


俺達は戦争に向けての準備を始めた。


ここから魔族の前線基地に成っている旧帝国まで半月の距離、そして、魔王城ら旧帝国まで1ヶ月半ほどの距離が有るとエルザさんが言っていた。


ベルガーさんの話しでは過激派の本体が魔王城のある街から出発したのが数日前…少なくとも完全に体制が整うまで1ヶ月以上ある…


となると、やることは1つ


出撃するメンバーのレベル上げだ。


ウチの貴族チームで、


ジェイムス子爵は留守を任せようとしたのだが、


「私も行きます!

帝都の隅から隅まで知り尽くしております!!」


と、何がなんでもついてくるらしい…


ならば、することは1つだ。


ウチの数少ないメンバーのレベリングと、


スキルの獲得をしてもらう予定だ。


何せこちらには〈ダンジョン間転移〉の能力があり、


ダンジョンならば好きなダンジョンの好きな階層に飛べる。


そして、ダンジョンマスターはこちらの味方、


レベル上げに最適な階層にも作り変える事も可能…


経験値が高い魔物ばかりの階層を作ることも出来る。


そして、


俺が指定したダンジョンマスタールームも〈ダンジョン扱い〉なので、


〈カーン〉さんの中にマスタールームを設定すれば、俺がいればダンジョンからカーンさんに転移も可能となる…


つまり、〈カーン〉さんさえ単独で旧帝国まで到達すれば、転移で直接行けるので、ギリギリまでレベル上げや、装備の制作が出来るのだ。


メインダンジョンマスターに連絡をして、


マイスティアのダンジョンの


80階層から下のダミーマスタールームに繋がるエリアを丸々レベリング用の訓練フロアにしてもらい、


ミレディとキバとシルバーさんに引率してもらい


ジェイムスさんとエドさん親子をはじめ、旧帝国の騎士や兵士の方々20名


フリューゲルさんと帝国避難組の有志15名


ロルフさんと、〈果ての村〉弓チーム名10名


トンプソンさんとその仲間?の元義賊3名…ってトンプソンさん以外の二人は普通の村人のおっちゃんだと思ってたよ…


この約50名が…


と思っていたら


コートニー君が


「師匠!私も連れて行って下さい!」


と言い出した。


しかも、一緒についてきた五名も一緒に…


コートニー君に、


「街を守る為に残ってくれても…」


と提案すると、


「両親や村の人々…そ、それに惚れた女性を守りたいのです…」


と、後半ボソボソ言って聞こえなかったが、


〈惚れた〉というキーワードが聞こえた俺は、


「誰?」


と、興味津々で聞いてみると、


コートニー君が、真っ赤な顔で、


「アーシェ嬢…です…」


と言っていた。


〈フッフッフ、俺の予想通りだな…

村に居る頃より、コートニー君には散々『シルフィーさんこそ至高にして究極』との俺の思想を受けた彼の性癖に、シルフィーちゃんの姪っ子のアーシェちゃんがブッ刺さらないはずがない…〉


俺は、満足そうに微笑みながら、


「これは、益々負けれなく成ったな!」


と皆に気合いをいれた。


そして、キッド君にはスキルカード集めをテディとピピンちゃんとのチームで動いてもらう


ただ、アイテムボックスを持っている者が居ないのでキッド君用に、じぃじの工房に助っ人に来たタンパさんに頼んで、ヒドラのゴム革製のウエストポーチを作ってもらい手持ちのアイテムボックスのスキルカード五枚と〈自然修復〉つきの超国宝級の〈四次元ウエストポーチ〉を作ってもらった。


そして、女性陣チームとファルさんは、メダリアダンジョンで、シルフィーちゃんがスキルの濾しとりと、皆でレベル上げに、メダル集めを行ってもらう事になった。


町の守りはコーベーオ男爵夫妻…〈田んぼの管理の為に〉だが…


「ついて行きます!レベル100以上有ります!。」


と言ったのを


「食糧補給係をお願い。」


と、言って残ってもらった。


そして、アーシェちゃん達が、


「アルド様、シルフィーおば様、街の運営はお任せ下さい。」


と言ってくれたので、安心して任せる事にした。


そして、アメリスダンジョンの最下層の大空間のボス部屋に、


〈トパーズ〉さんと〈ディアマンテ〉さん親子に頼んで、


ランパートゴーレムの4人

〈ゲート〉

〈バリス〉

〈キャスター〉

〈ナニカ〉


と一緒にバトラーとグリフ君とでボス周回をお願いする。


あのデカイゴーレムと云えど〈ゴーレム〉で有るために、〈アイテムボックス〉に収納出来る。


このチームは〈濾過〉を持って居ないので、


力と技で真っ向勝負をしてもらい、運良くドロップした素材を回収してもらう事にする。


〈ディアマンテさんなら他の階層のボスも最下層に召喚出来るし持ってこいだね。〉


とりあえず、〈経験の指輪〉はミレディさんのチームに預けて、


俺は、カーンさんに乗り込み旧帝国を目指す事にした。


勿論、カーンさん経由で各地のダンジョンに飛び皆をサポートする予定だ。


イグニス様に連絡して、爺さんにアホほどフルポーション作ってもらってアメリスダンジョンの受け付けに預けてもらってもいいな…


俺のダンジョンの腕輪をバトラーに渡せばアメリスダンジョンの最下層と地上の行き来も出来るし…


チャンネルアルド作戦は一旦お休みしてもらって、じぃじの工房に防具を注文しよう。



領地より先に住民を強くする事に成るとは…


でも、やるぞ!

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