第35話 マイス様からの手紙

いきなりクロネコさんがきた。

クロネコの飛脚便だが、いつもと違う…


なぜ、肩口が青一色で、他が青と白の横縞のシャツを着ていた。


「わざとだろ!」


と、俺が某宅配業者のユニフォーム風な事を指摘すると、


「何がかニャ?」


と、しらばっくれる猫は、

手紙箱を降ろしながら入ってくる。


〈なぜ、飛脚の会社に寄せるのか?

お前のアイデンティティーはクロネコよりも飛脚側なのか?〉


などと、考えていたら


「ニャァは、猫ニャ、

寒いのは嫌いだから、服くらい着るにゃ!」


と、抗議された。


〈そ、そうですか…〉


そんなことをよそに、クロネコは淡々と仕事を始める。


「本日は、アルド様にお届け物ですニャァ。」


と、告げて伝票とペンを渡してくる黒猫


「技能神 マイス 様より小包と、アルド君のご両親より伝言を預かっていますニャァ。

ここの白い余白にサインをお願いしますニャァ。」


俺は、伝票に小山 隆史 とかいた…

この名前を書くのも何年ぶりか。


そんなことを思いながらでも、身体は問題なく受け取り作業をこなしている。


「確認しますニャァ


はい、確かに!こちらの荷物をどうぞニャァ。」


と、小包を渡してくる。


小包を受けると、


「つづいて、伝言サービスニャ!」


そう言うと、信託で使われたオハジキの色違いをだして、


「つぎは、こちらにサインを今世ネームでお願いしますニャァ。勿論ミスティル文字ニャァよ!」


俺は、アルドと書き、受け取ったそれに魔力を流す。


すると、


空中に映像が写しだされる…


〈パパさをとママさんだ。〉


「アルド、元気ですか?

お役目、大変だけど無理せず頑張ってね。


さて、前々から誘ってくれていたコーバの街ですが…


二人とも行けません。


なぜなら、



ママのお腹に赤ちゃんが居るからです。

もうすぐお兄ちゃんになるんだよ


会いには行けないけど…会いに来てね。

待ってるよ。」


と、言って、


フッと映像が消えた


なぜか、涙が出てきた。


久々に見る両親の顔、パパさんは頑張って喋ってたけど、ママさんは、下手に喋ったら泣きそうなのか、変な笑顔で固まっていた。


心配させたくないんだろうな…。


お兄ちゃんか…。



〈…よし!がんばるぞ!〉

格好いいお兄ちゃんになってやるからな。



ひとしきり家族の愛に包まれて

お兄ちゃんになる感動を噛み締めていたら、



「終わったかニャァ?」


と首の辺りを掻いているクロネコ…


〈ブチっ!〉っと血管に負荷がかかる…


「おまえ、そう云うところやぞ!! えぇ!?わかってる?」


と怒る俺に、


黒猫は正座をして、今まさに土下座猫へと進化を…


「土下座はいらんのじゃ!見飽きたわい!!」


と追撃をかける。


すると、黒猫は土下座の途中で動きを止められが、他のレパートリーが無い様子…


〈あんなに綺麗な土下座を身につけたのに、

見飽きた…だと。〉


みたいな顔で、黒猫は真っ白になっていた。


俺は、呆れて、


「で、もう良いから、なんで帰らないの?」


黒猫に聞くと、


ヤツは、


「技能神様にお返事もらって来るように言われたニャァ。」


と…


〈分かったよ。〉


と、俺は、アイテムボックスから沸かした後に濾過ポイで調整したオリジナルブレンドのお茶をクロネコに出して、


「ちょっとまってて。」


と告げると、


フーフーと、お茶を冷ましている猫を他所に、マイス様からの小包を開けて、中の手紙を読んだ。


『よぉ!元気か?


濾過スキルはレベルMAXまで上げれたか?

あんまり役に立たないスキルならガチャからぬこうかな?

と考えていたが、上手く使う方法を探し出してくれたんだってな。


感謝する。


アルド君の濾過スキルをどうにかして強くする方法を考えた結果がこれだ!

小包の中には、濾過スキルをアップグレードするスキルカードと、そのスキルに相性ばっちりのスキルカードを商神からもらってきたから合わせて使ってくれ。


あと、学神が喜んでいたぞ、頭の良くなった信者が、学神様が我らに賢者様をつかわせてくれた。

ありがたいと拝むものだから神力が溢れてお肌がピチピチだと、


小包の中の本は、賢くなった者達なら悪用しないだろうと、アルド君に託すらしい。


〈四色のグリモアだ。〉


お前の神器だ魔力を流すと与えたい者に火・水・風・土の四種類の魔法のスキルが与えれる。

レベル1だがな…

コートニーと云う熱心な信者には是非に頼みます。

と念を推されたゾ。




そして、ここからが本番なんだが、


ワシは、今回の主神様の決定に手放しで賛成出来んのだ…


そもそも、ダザールの小僧が神なのに地上に居るか知ってるか?


母ちゃんに会いたくて地上に降りたダザールに神界に戻ることを禁止したからだ、

神々のルールで、神は、もし地上に降臨する場合、神力は神界に残して、人として降りなければならないってのがある。


たが、ダザールの母ちゃんは、地母神様で、大地と、ダンジョンの神様だ…


会いに行くには力がいるだろうが…


考え無しなダザールも悪いが、母ちゃんに会いたい年頃の子供にルールを守って大人しく我慢しろ、てのも酷だろ?


ちなみに、地母神様は、夫婦喧嘩の末に名前を剥奪され神界より地に落とされたのだ。


主神様は数年で頭を冷やすと考えていたけど、

地母神様は弱っていく自分ではメインダンジョンを維持出来ないと世界中にサブダンジョンをお作りになり、管理者として魔族を沢山作られた。


自分の残った力のほとんど全てを使って…


元々の神の能力で、魔族は作れたが、名前がない神はスキルを授けてやれない…


スキルの無い魔族を可哀想に思ったダザールの小僧がスキルを与え、

新たに副神のエメロードの嬢ちゃんとガイラのヤツをひきいれて、神界から信託を与えながら魔族の国を作った。


母ちゃんには会えなかったが、ダザールは母ちゃんの作った一族を守ることで母ちゃんと繋がってる気分で居たんだ。


しかし、


主神様は自分に懐かずに母ばかりを気にするから多分焼きもちじゃないかと思うが、


主神様が魔族を滅ぼすと言い出した事がある。


そのときに、ダザールは我慢してた糸が切れたんじゃないかな?とワシは思っておる。


ダザールは魔族を守ってやりたい、母ちゃんに会って話したい一心で地上に降りたのだ…


まぁ、長くなったが、今回の大地ごと、つまり懐かなかった子供と嫁を別宅に放り出すみたいなことをワシは認めたくない。


この話を知ったアルド君の意見を聞きたい。


技能神 マイス 』


…あぁ、重たい…読むんじゃなかったよ…


よその夫婦喧嘩の仲裁じゃないか!


でも、ダザール君とやらもある意味気の毒だな


まぁ、戦争に虐殺は許せんが、


………。


面倒臭いが、全員の意見を聞かなきゃ駄目だな。


地母神様とダザール君 だね…


メインダンジョンの踏破に神様二人に謁見…やること増えてない?

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