第107話 幸せな日常

皆様、お久しぶりです。

魔族に生まれ変わり五年の月日が経ちました。

いかがお過ごしですか?

アルドです。


地上に戻ると、大変な事になっていました。


神様の大喧嘩のお話はテレビゴーレムで多くの人々が知る事になり、


元主神様を殺してしまう大罪から友の勇者を守り死んでしまった俺は、知らぬ間に文化と芸能の神と勝手な役職を与えられ教会に祀られており、相変わらず劇の題材にされているらしい…



方々の教会から俺の問い合わせをダザール様達に祈るケースが続出し、

根負けした神々が連名で各国に復活の日付をばらしてしまったので、


復活の当日、何も知らない俺は、商神様の宝船に乗り、更地になった魔王領の領都に神様達と降り立つのだが、


各国の首脳陣が並び、魔族達に俺の領地の人々が集まり、各国の教会関係者が祈るなか、シルフィーちゃん達が中心に立ち、出迎えてくれた。


ダザール様が、


「全ての種族の民よ、新たな時代の始まりだ、

私が新たなる主神となった。

不服に思う者も居ることは知っている。


しかし、私を崇めなくて構わない。

なぜなら、今回の世界の危機を救い、我ら神々と人々の母、大地の女神 ダリアを永き封印から助けだしたアルド殿が、この度復活した。


神殺しの槍に倒れ、神の位は失くしたが、その魂は新たな魔族の王として生をうけた。


神の力はなくなったが、我が母の心を射止め、晴れてこの世界の主神の父、

義父神となりこの地を治めてもらう。


何もなくなった大地だが、父が何とかしてくれる。


民よ安心して暮らしてほしい。

種族など関係ない国家を作って欲しい


今までのことよりこれからの事を話し合おう


大丈夫だ父がいるから!!」



などと演説をかましたものだから、

ただでさえ国王になり国を任されていたが、魔族領も傘下に入り、リザードマンの国は早々にダザール派に入っていた流れからそのままウチの傘下に入り、


気がつけば世界最大の領土になってしまった。

母神ダリア様のお膝元と言うこともあり、教会の本拠地も置かれた。


それからは建設ラッシュが三年ほど続き、落ち着いた頃にやっと結婚式を上げることが出来た。


出来上がった町で一週間続く大宴会


嫁のシルフィーちゃんと、沢山の嫁候補の女性陣…これまでの人生で一番の幸せな日々…



そして、これを機に世界各国が、傘下に入った。


しかし、妖精族は魔力の濃い土地が見当たらずに傘下に入れず困っているので、早くダンジョングランドマスターに戻って妖精族の国を整備して欲しいとお願いされ、


新婚旅行は皆揃って各地のメインダンジョンになった。


勇者天野君は禊の世界の街道の整備の旅が終了し、今後は俺の国の将軍として頑張ってくれるらしい。


何故か我が家の犬耳メイド フレアちゃんといい感じになっているから、爵位を押し付けて二人に屋敷の留守番をまかせてやった。


俺とシルフィーちゃんと、嫁候補の女性陣に、ゴーレム達は


馬車二台に別れ各地のダンジョンを巡り、レベルをあげ、スキルを刈り取り、

ダンジョンマスターに再会していく。


ダンジョンマスターの連絡網は俺がグランドマスターでなくなってからも生きていて、ダンジョン運営会議が定期的に行われ、居住区として活用中の妖精族の里以外のダンジョンでは、メダルシステムとメインダンジョン内に店舗フロアの設置、ダンジョン毎に販売商品の系統を決めて運営しているので、以前より、冒険者が、ダンジョン内に多く見受けられた。


約一年をかけて再びダンジョングランドマスターになり、


名ばかりの〈神〉から能力の有る〈神〉になった。


ダンジョン踏破で貯まったメダルで知識のグリモアを手に入れて、


「濾過EX」

「神々の知恵」

「鍛治 レベルMAX」


を作り取得した。


俺の新しい国は〈聖アルド帝国〉となってしまい帝都の周りに各地の国の大使館的なエリアが作られた。


リザードマンの多い闘技場や武道教室エリア


エルフの多い創薬ギルドや家具などの木工大工が住むエリア


ドワーフが多い鍛治ギルドや鍛治工房に武器屋が並ぶエリア


獣人が多い肉屋、屋台、皮加工職人などか多いエリア


人族が多い商業ギルドや商会や市場が並ぶエリア


があったが、ダンジョングランドマスターになり、ダンジョンコアを使い帝都の南の一ヶ所に地脈の力が涌き出るパワースポットを作り、妖精族のエリアを整備した。

スイーツ工房や治療院に治癒師ギルドに妖精族の居住区を作った。


街は活気に溢れ、技術者が集まり文化や技術の発展が目覚ましくなっが、


国が発展するにつれて新たな問題が現れた、ベビーラッシュに食料難…


城ゴーレム達に耕作用のクワやスコップ等の城ゴーレム用の農機具をつくり帝都の郊外に一大農業地帯を作り、


コーベーオ農業大臣のもと多種多様な作物が手に入る様になった。



勿論、我が家にもベビーラッシュの波が訪れていた。


前世では絶対に味わえない幸せな日常がそこにあった。




保温タイプの弁当箱に、こめかみを撃ち抜かれ死んだ不運な男は、


慰謝料がわりに運良く転生のチャンスを手に入れたが、


くじ運に恵まれずに辺境にハズレスキル持ちで生まれ、


不運にも神々のいざこざに、まんまと巻き込まれ、

穏やかな幼少期も送れず

旅と戦いの日々にあけくれた。


奇縁から嫁候補が集まり、


貴族になり、やがて領主になる。


そして、ダンジョンを全て踏破し神になった。


神と戦い、


知り合いの勇者に、運がないことに神であるが故に殺されて、


神々からの迷惑料がわりに魔族に生まれ変わった…


やっと穏やかで、幸せな日常を手に入れた男の辛くて楽しい、不幸で幸せな物語…。



城の庭でヨチヨチ歩く息子や娘に付き添い歩く妻やゴーレム達を眺めながら、


一人の妻の


「私もダーリンの赤ちゃんが生みたいデス。」


と、呟くのが聞こえ、


「何とかならないかな?」


と、雲を見ながら知恵をしぼる皇帝の名は、



アルド。


地位も名声も、家庭も手に入れた、


唯一〈運がないだけ〉の、幸せな男…。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

〈運が無いだけ〉ですので ヒコしろう @hikoshirou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ