第106話 運が無いだけの男
気がつけば、真っ白な空間にいた。
光りが差し込むと云うよりは、
全体的に明るい…
うん、見たことが有る系の景色の中で、
見たことの有る者が並んでいる。
ダリア様、これは何の会場ですか?
と聞く俺に
「あの夜から49日経っています。」
と答えるダリア様、
「シジュウクニチですか、ミスティルにもその文化があるんですね。
あぁ、いよいよあの世に行って神様に最後の審判を……?
あっ!もう来てるのか。」
とブツブツ言っている俺に、
「アルド君大丈夫よね?
魂の欠片は全部集めた筈よ…。
嫌だ私、失敗しちゃった?」
とオロオロするダリア様にダザール様が
「母上、大丈夫ですから落ち着いて下さい。
アルド君も復活したてで混乱しているだけだから!
ねっ。アルド君!!」
と、圧力たっぷりに語ってくる。
「はぁ。まぁ?」
と、力なく答える俺に、
「ほら、だから言ったでしょ母上。」
と、マザコンが騒いでいる。
「まぁいいか。」と辺りを見回すと
〈学神様〉〈技能神様〉〈武神様〉〈商神様〉に、クロそれに、〈狩神様〉に…魔神のお二方と、
亀吉くんを抱きしめて泣いているシロちゃんがいた。
「ダーリン!」と駆け寄り抱きつこうとするのを〈狩神リバー様〉が止める。
「シロだめだ!」と怒るリバー様に
「だって!」と、泣き出すシロちゃん
〈?何事ですか?〉
と首を傾げる俺…
リバー様は、
「アルド君は今剥き出しの魂だけだから触ったら砕けてしまうよ!」
とシロちゃんに説明していた。
ダリア様が、
「リバー君の眷属のお嬢ちゃん、亀さんを貸して頂けるかしら?」
と聞くと、シロちゃんは「はい」と返事してダリア様の前に〈亀吉くん〉を チョコん と置いた。
ダリア様が亀吉くんに手を置くと、
背中のモニターに二人の神様が写し出された。
知ってるジジィと知らないジジィだ。
知ってるジジィが話しだした。
「小山 隆史(おやま たかし)くん、お久しぶりです。
前回は自己紹介していませんでしたね。
私は〈来訪神〉一年に一度氏子の家を訪れる 年神 の一人じゃ、
そして、こちらが〈ダリアさん〉のお父上〈サトゥルヌス〉様じゃ。」
と来訪神様 (知ってるジジィ)が、サトゥルヌス様 (ダリア様パパ)を紹介した。
ダリア様パパは、
「大丈夫かの?地球ではワシのイメージ悪いんじゃから、怖がられんかの?」
と何かを心配しているダリア様パパに、
「大丈夫じゃろうて、ワシのいる日本では、〈サトゥルヌス〉と言ってもピンとこんはずじゃから。」
と、言って安心させようとする爺さんに、
「そうかのぉ。
えー、アルド君じゃな、
この度は、娘の件や婿の事、孫の事も合わせて本当にスマンかったの。
娘の世界の発展ばかりを気にして、娘の気持ちを無視しておったワシの責任じゃ、許してほしい。
今その世界は孫のダザールに任せて、娘が補佐をして治めている。
元主神はもとの世界に返したし、
消された男神は時間を遡り保護した。
言い忘れたけど、ワシ、時間の神様だからのぉ。
木星の神様とかサタンとか、子供を食べた神様と勝手なことを言われているけど、時間の神様だからの!
娘は食べちゃいたいくらいに可愛がるがの!
食べたとか絶対ないからのっ!!」
と、騒いでいる…
あぁ、息子に将来とって代わられるとのお告げを信じて息子を食べたって言われてる神様かぁ。
と俺は、モニターを眺めながら思い出していた。
ダリア様パパは、「ゴホン」と咳払いをしてから話を続けた。
「〈異世界追放処分〉の元治癒神とその娘も無事に健全な心と体を取り戻したが、罪は罪、
三人仲良く生まれたての新しい世界の統治をさせておる
残すは、勇者とアルド君なのだが、
勇者はアルド君の処遇が決まるまで、ミスティルの魔王城で整地や街道の整備をしておるのだ。」
とダリア様パパの説明が終わった。
そして、
知ってるジジィが提案してきた今回の迷惑料は
1、地球で、かなり良い人生で記憶なし
2、ミスティルで最高水準の人生で記憶なし
3、ミスティルで即転生、レアガチャの一般転生で記憶あり
4、ダリア様の神力で魔族に受肉、タイプはランダムで記憶ありで、成人年齢でリスタート。
ただしスキルなしでレベル1
の4つだった。
うーん、
1と2は論外、
3は運ゲーになるのでパス。
シルフィーちゃんも待ってくれているから
4かな?
スキルはスキルカードが有るし、
レベルは上げりゃ、問題ない。
うん、そうしよう。
「ダリア様、四番のコースをお願いします。
地上で婚約者が待ってるので、地球に戻るのも赤ちゃんになるのも無しでお願いします。」
と、宣言した。
シロちゃんが「よがっだよー」と泣き出した。
「皆と…何年でも待とうねて言ってたけど、
寂しそうだっだがらぁぁぁぁ」
と涙腺が崩壊したシロちゃんをリバー様がヨシヨシしている。
ダリア様は、
「良いのですか?レアスキルや生まれるランクを引きなおせなくても…」
と念を押すが、
俺は、
「姿は変わってしまいますが、奥さんの待っているなんて、最高の人生です。
唯一の不満は、〈運がないだけ〉ですので…」
と、俺は誇らしげに語った。
が、周りの反応が微妙だ、
?あれ、俺変なことでも言った?
と考えていたら、亀吉くんから続きの映像がながれた。
知ってる爺さん神が
「いい忘れてたけど、アルド君の妹のアルルちゃんなんだけど、
あの子、転生者だから。」
と、ビックリ発言が飛び出した。
「君が死んだ次の日に、デートの約束をしていた瓶底メガネのお嬢さんじゃが、
友人に頼みこんで、友人の結婚式で見かけた小山くんとデートの約束をしたが、すっぽかされたと思い、やけ酒の後マンションの階段から転落死してしもうたのじゃよ。
小山君のアフターフォロー対象者じゃったので要望を聞いたら
〈小山君と会いたい〉と熱望して、ミスティルに転生することに成ったのじゃが、
そちらの元主神が、嫌がらせに小山君の妹に転生させてしもうての…
しかもアルド君には婚約者だの、女性をワラワラとはべらせ…
泣きたくもなろうて…」
と、言っていた。
〈あぁ、それで会う度に泣かれたのか…〉
と、納得すると同時に、
〈って嫌な予感がするぞ!〉
と感じる俺に、知ってる爺さんは続ける、
「まぁ、4番のコースを選ぶじゃろうから、晴れて魔族に転生するので、アルルちゃんとの血縁関係はなくなったのじゃから、嫁にしてやて欲しいのじゃよ。
お前さんの両親も再びパパ、ママと呼べるのじゃよ。
頼むぞい。」
と言っていた…
〈小川 博子(おがわ ひろこ)さんも死んじゃってたんだ…
なんかごめんね…〉
と、心の中で謝る…
すると、シロちゃんが、
「ダーリン、あたし達は、既に会議で了承済み案件なの。」
と教えてくれた。
俺は、
「そ、そうなんだぁ」
と冷静を装うが、驚いていた。
そして尚もモニターから映像が流れる。
ダリア様パパが、
「ウチの娘が君に惚れたらしいから、そのうち嫁にしてやって欲しい…
まぁ、国王様だし嫁が沢山居ても構わないだろ?
あれの後だから、思いっきり甘やかしてあげて欲しい頼む。」
と爆弾発言を食らった。
ダリアさまは左手の薬指の〈経験の指輪〉を見せて照れている。
ダザール様を見れば、
「母上良かったですね。」
と言っている。
ややこしい…一旦図で説明して欲しい…
と思うが、ダザール様は、
「母上には、ここ数千年苦労をかけたから、幸せになって欲しい。
エルザに婚約を誓う〈腕輪〉を送ったのだろ?
互いにパパと呼び合いましょう!」
と言われた。
〈余計にややこしい…〉
しかし、
シロちゃんを見ると、ゆっくり頷く…
〈決定事項のようでした…〉
そんなこんなで、受肉とあい成りましたが…
魔族のドワーフの成人になりました。
見慣れたズングリボディーに前とかなり近い顔、違う所は耳がエルフでなくなった事と、
知らない間に嫁候補が増えまくったこと…
まぁ、生き返るんだから、
良いのかな…?
死んだつもりで諦めて、全員ひっくるめて〈幸せ〉にするのが、つぎの〈使命〉なのかな…
などと考えている…
こうして、俺の神々の使徒として振り回される2度目の散々な人生が終わった。
長かった様で、クソ長かった、短い人生が終わり、やっと穏やかな?生活が始まるようです…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます