第7話 はじめてのお勉強

早朝、


俺は、異世界に来て初めてのお勉強に向かう、


しかも、ターニャちゃんとお手て繋いでランランランで、


〈やって来ました!村長の家です。〉


村で一番大きな家だが、面積の半分くらいは公民館スペースである。


小さな村でそんなに距離も無いのだが、三歳のドワーフボディーには、ちょっぴり堪える道のりだった。


〈体力も付けねば…〉


ターニャちゃんに引っ張られながら、集会広場を抜けて、門をくぐり村長宅に入っていく。


まさに地域の公民館だ、〈果ての村 〉の住民が全員入れる程度の広さがある。


入って右側の壁には、本棚が有り沢山の本が並んでいる。


ミスティルにも植物紙があるが、この村で生産しておらず、隣の辺境伯領から購入している為に、紙はまだまだ高級品らしい…


勿論紙を使った本も、〈高級品〉であり。

村人の財産として、誰でも閲覧出来るが貸出厳禁ルールである。


真ん中は、空間が取ってあり集会スペースかな?


左側の壁際に長机が幾つか並んで、図書館の閲覧スペース的な場所で読み書きのお勉強もソコでするようで、子供達が集まっている。


〈まぁ、集まると言っても自分も含め6人だが…〉


小さな村だから顔見知りばかりなので、緊張はない。


イスに座ると前の壁に村の木工職人さん作のミスティル文字表がある。


何だか神社の絵馬のように、同じ大きさに切り揃えられた板が、規則正しく並んでいる。


村に子供はもう少し居る、

しかし此処に居るのはほぼ3~5歳くらいの子供達だ、

保育園的な意味合いも兼ねている…


6歳以上は家の手伝いをし、

8歳以上は辺境伯領に在る初等学校(2年制)に行く。


まぁ、家からは通えないので、下宿や寮生活だ。


因みに、この国の学校は免許制みたいな制度に成っており、

8歳で入学するが、年四回ある卒業試験にパスすれば、年齢に関係なく進学できる…


が、裏をかえせぱ卒業試験に合格するまで進学出来ない。


初等学校を卒業して初めて商店や職人の見習いとして働いたり、弟子入りしたり出来るそうだ。

15歳で成人を迎える迄に中等(2年制)と高等(3年制)

を卒業していれば、お城や大手に就職も夢ではないらしい。


ギルド職員や各領地の文官など、運動に自信がある者は、入団試験にパス出来れば晴れて門兵や騎士団にも入れるチャンスがある。


そして、


最悪何も卒業出来なくても〈冒険者ギルド〉には入れるから日銭は稼げる、実家で農業をするのなら卒業していなくても構わないかもしれない、


ただ「文字位読めて足し算引き算位は知っておきなよぉ。」


的な流れだ。


現在フリューゲル様の読み書き塾に来ているのは、


俺と、


お隣のターニャちゃん


俺より半年お兄ちゃんの 魔族のダーム君


ターニャちゃんのままごとフレンドの 犬耳のフレアちゃん


実質の塾生はこの4人で、あとは


入学前にガッツリ勉強して飛び級を狙っている勉強大好きなハーフエルフのコートニー君 7歳


町の学校に入学したが、魔族だからと通学はせずに卒業試験をぶっつけ本番合格を目指すダーム君のお姉ちゃん

ミームちゃん 9歳 (ダーム君のお目付け役も兼任)


以上である


さてさて、授業が始まるまえに少しでも文字を覚えよう!


と、壁の文字表を眺める。


〈えーっと、縦が5マスで横が10マスっと…〉


あれ?

これって…?!


五十音表か!?


えっ、それなら文字を覚えるだけで、解決するのでは?


いやいや、そうとは限らない落ち着け俺。

まずはフリューゲル様に聞こう!


もし俺の予想が当たっていたら文字表の写しさえ有れば

フッフッフ

鑑定が使えるゾイ!!


そんな事を考えているとフリューゲル様が入室された。


すかさず俺は、


「はい!フリューゲル先生。」


ビシッと手を上げ質問をする。


フリューゲル先生は突然の事でビクッとはしたが、


落ち着いた声で、


「どうしました、アルド君?

初めての授業で緊張しましたか?

トイレならば…」


と、話すフリューゲル様

しかし、興奮している俺は止まらない


「いえ、フリューゲル先生に質問と、お願いがあるのですが。」


不思議そうな顔をしながら


「質問とお願いですか?どうぞ。」


許可が出たので、俺は興奮気味に、


「はい、有り難うごさいます。


ではフリューゲル先生、前に貼ってある表は右側から縦に母音のあいうえおで、横にあかさたなはまやらわの順でしょうか?」


先生は、えっ!?

っという表情をしたが、なんとか踏みとどまり


「えぇ、その通りです。

予習してきたのですか?偉いですね。


しかし、この表の他に濁音や半濁音が…」


勝った!完全勝利だ!!

コレなら表にある文字を覚えるだけで、

英語を片仮名で読み書きするようなものだ。


スペルを覚える必要がない!


〈ありがてぇ~。〉


数字も一緒だし勝ったよ。

待ってろ鑑定スキル!色々調べてやるからな。


「先生、そこは大丈夫そうなので、一つお願いを聞いて頂けますか?


持ち運べる大きさで、その文字表の写しが一部いただきたいのですが、可能でしょうか?」


と、お願いする俺に、


しばし、変な空気が流れる…


そして、先生も生徒もポカンとしている…


フリューゲル先生は唾を飲み込んだのち、少し上ずりながら


「か、可能ですよ。

私が書いてあげましょう。」


と、答えてくれた。


俺は、ぺこりと頭を下げて、


「有り難うごさいます。先生!」


と言って、ニコリと笑ってみせた…



〈やった!万事解決だ!!〉


と、浮かれていた俺は、周りからも浮きに浮きまくっていたのにもその時は気が付かなかった…

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