第6話 スキルの確認と内緒の会議


昨日スキルを貰い、〈ウォール何か〉の片隅で実験を開始しようとしています。


〈右ヨシ、左ヨシ!〉


パパさんは薬作ってるし、ママさんは森へ木こりのお手伝い…


〈俺はこっそりスキルの実験だぁ!〉


まず、鑑定から。


薬草畑の薬草を見ながら…


〈どうする?〉


「鑑定。」


と、唱えてみるが、


〈えっ何も起こらない…?〉


ステータスカードは手に集中したから…!〈目〉か!?


と閃き、


もう一度、「鑑定 」と唱える。


すると、


ピロリン と軽い電子音と共に薬草の回りに文字が見える。


……。見えるが読めない!!


ミスティルの文字なのね。


〈早急に文字のお勉強だな…〉


気を取り直してアイテムボックスだ!


〈ウォール何か〉際の小石を手に持ち


「アイテムボックス!」


と、唱える…


シーンと静まりかえる庭先で、小石を握りしめ、

ヒッソリとたたずむ三歳児がそこにいた。


〈なんで、使えない?〉


うーん?

と、首を傾げて考える。


ステータスカードは手に集中でしょ…

そして、鑑定は目でしょ?


〈アイテムボックスはどこよ!?〉


手じゃないの?


その後庭先で足や腹筋、お尻の穴などに力を入れながら

何度も「アイテムボックス!」と叫ぶ姿を

パパさんとママさんにも目撃され、泣きたくなるほど恥ずかしかった。


お願いだから近所には内緒にしてほしいです。


うん、間が悪いのは運気の数値のせいだな多分…。



ー その日の夕食 ー


パパさんとママさんは、昼間の俺の行動を思い出しながら、〈決して笑うまい!〉とプルプルしていた。


「ふっ。アルド、

ふふっ。ひぃるまのことだけど、ふひっ


パパおねがい!」


「もう、ママっ笑ったら、ムフっ

か、可哀想じゃなふふふっ」


〈もう、笑えば良いと思うよ…〉



その後、


〈はい、ひとしきり笑われました!!〉


お尻に力を入れながらの「アイテムボックス!」がツボらしく、


「ウンコでも収納するのか?」


と思ったそうです。


笑いきった二人は落ち着き、


〈師匠の説明をしてくれた。〉


この村では代々師匠的な人にスキルの使い方を習う伝統があるらしい…


家族や親戚などの小さなコミュニティーで、同じスキルの先達から使い方やコツをおそわるそうだ。


アイテムボックスについては、村の商店の店主シルフィーさんがレッスンしてくれるらしい。


エルフのお姉さんだが、村一番のご長寿なんだって


〈エルフ恐るべし!〉


シルフィーさんは、商人の職業スキル持ちだから近日中にシルフィーさんの都合に合わせて手ほどきを受ける予定になった。


二人に鑑定は使えたが、字が読めないと伝えると、ビックリしていたが、村長のフリューゲル様の家で読み書きを教えてくれるそうだ。

ちなみに、ターニャちゃんも通って居るらしく、午前中だけで昼には帰ってくる。


学校と言うより塾だな…


そこに来週から通うことになる。


濾過については、所持者も記述も無く

パパさんもママさんもお手上げらしい…


まぁ、良いけど使えなさそうだしね。




ー その夜アルドの両親は悩んでいた ー


息子のステータスの異常さとスキルの多さや加護はまだしも、勇者の協力者の一文が一番の悩みであった。


使い方の解らない珍しいスキルもきっと勇者を助けるためであろう…


親としてあの子の力を正しい方向へ導けるだろうか?


悩んた二人は、村長さんに相談する事を決めた。


決めた後に…

尻に力を込めてからの「アイテムボックス!」

で、再び爆笑するのであった。



翌朝、


笑い過ぎてクタクタな朝を迎えたアルドの両親は、

アルドをターニャちゃんの家族に預け、

早速村長のフリューゲル様のお宅を訪れていた。


フリューゲル様は魔族領と隣り合た国の小さな領地を任された元貴族様で、魔王軍の進行で国を亡くしたが、


領民や戦争で焼け出された魔族の方々も連れてこの村まで落ち延びたのが20年ほど前らしい。


中には魔王軍に家族を殺された者もおり、

「何故敵まで連れて行くのか!?」と不満も出たが、


「確かに、魔王軍は憎いが、魔族全てが敵ではない!」


と、皆を説得して、纏めあげた凄腕の貴族様だ。


他国に嫁いだ姉を頼り、この 〈果ての村〉 の隣…


と言っても馬車で3日のブライトネル辺境伯領に暫く身を寄せていたが、やはり他国の辺境伯領でも魔族への風当たりは強く魔族と一部の領民を連れてこの 果ての村 に来たのだとか…


その頃はシルフィーさん達10人ちょっとしか住んで居ない集落だったが、一気に100人くらいまで人口も増え、村として発展し始めたそうだ。


村長と言っているが空白地を開拓したので、領主でも良いと皆は口にしているが、


「シルフィさん達が受け入れてくれたから、私は 果ての村 で頑張れた。領主などおこがましい。」


と、今もあくまで村長として頑張ってくれている

信頼出来る人物だ。



夫婦は息子 アルド の件を包み隠さず村長に相談した。


ステータスの事も

スキルの事も

そして、

勇者の協力者の事も


ついでに、尻に力を込めて「アイテムボックス!」


の事も全て打ち明け相談した…


数年前に移住してきたアルドの両親も実の家族より信頼している村長にあんな面白いことを黙っておくはずがない。


娯楽の少ない田舎だから…


そして、全て話して笑ったのちに、村長が、


「あい、解った。

アルド君は、多分何かしらの使命を持った子供なのかもしれない。


あの子の成長が、いつか現れる勇者様の助けとなるのであろう!


魔王討伐は死んでいった我が騎士達、

守れ無かった妻や息子の供養にもなる…


是非協力させて欲しい。」


と答えてから、


村長は何通かの手紙を書始めた。


書き上げると封筒にロウをたらし封をすると直ぐ様フリューゲル様に長年仕えている、執事のトンプソンさんを呼び手紙を渡すと、トンプソンさんは軽くお辞儀を済まし風の様に馬で何処かへ向かって行った。


とても初老の男性の身のこなしではない…


村長の提案で今夜、アイテムボックスの師匠になるこの村の知恵袋のシルフィーさんと、スキルの事や神託の記述が在るかも知れないので、バゼル神父とシスターのクリステラさんにも同席を願い、


第一回 アルド君 会議を行いましょう。


との運びとなった。




一方その頃…


今朝はパパさんとママさんがお出掛けの為、ターニャちゃんのお家に来ている俺は、


ターニャちゃんも読み書きの塾がない日なので、


朝から二人で遊んだり、ランドコッコの餌やりを手伝ったりと忙しくしています。


流石にターニャちゃんとのおままごとは、見た目三歳、中身は50手前のオッサンには中々心にこたえるので、「ランドコッコが見たい。」とグズってみせて早めに切り上げた。


ランドコッコの餌やりが終わりターニャママが、


「ターニャちゃ~ん、アルドくぅ~ん、お茶にしますよぉ~。」


と、お茶に誘ってくれたのだか、お茶請けに出てきたのが、卵たっぷりのタルトの様な甘い焼菓子と、今朝ママさんからターニャママへと渡った


お尻に力を込めて 「アイテムボックス!」のくだりだ。


勿論ターニャちゃん一家は爆笑でした。


ちなみに、家族会議の結果、

俺は、初期スキル アイテムボックス の普通の男の子で通す事が決定しているので、アイテムボックスがばれても良いのだが、


〈わざわざ言わなくても良いじゃん。ママさん…〉


俺が、顔を真っ赤にして、


「穴が有ったら入りたい。」


と呟いたら、ターニャママが


「あら、だったら上手な穴の掘り方教えましょうか?」


と成り、お茶の後にお昼まで、


〈ターニャママ直伝、スコップde穴堀り講座!〉


が開催された。


俺の中に在るドワーフの血が騒ぐ騒ぐ!


〈めちゃくちゃ楽しかったです。〉


泥んこで、お昼に家に帰ったら、お昼ご飯前にパパさんに井戸の横で丸洗いされる結果になってしまった…

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