第8話 練習する息子と会議する親
初めての読み書き教室から自宅に戻り、夕食までの間に鑑定をしては文字表を使い鑑定結果を読んでいく、
幸か不幸か鑑定結果は簡単な文面なので、文字を読む練習には最適だ。
ピロリン
「石」
「とても固く当たると痛い」
「食べられません」
…。
鑑定スキル的にはつかえるのかね?
この情報量で…
そんな事を何度か繰り返したら疲れたのか、
夕方前にはクッソ眠たくなってきた…
夕飯をモグモグしながらウトウトしてしまう。
見かねたママさんに促され
半分自動(ママさんが手伝い)で歯磨きと着替えを済ませ…る直前には夢の中だった。
おやすみなさい。
アルドが眠った夜遅くに、アルフとルルドの夫婦は、村長宅まで、暗い夜道を旦那のアルフが使ったライトの魔法を頼りに進んで行く。
そう、〈アルド君会議〉に参加するためにだ。
会場には既にメンバーが集まっていた。
村長のフリューゲル様
果ての村 の知恵袋 シルフィーさん
バゼル神父
シスタークリステラ
そして、アルドの両親 アルフとルルド
の6名が会議のメンバーである。
「遅くなりました。」
謝りながら、 夫婦共に席に着く
「いや、皆先程集まった所だ、気にせずともよい。
其れより、アルド君は?」
との村長フリューゲルの質問にアルフが答える。
「昼に帰って来て食事を済ませてから、庭の隅で鑑定のスキルの練習をしていた様子です。
庭の地面に、
〈石 〉や 〈とても固く当たるといたい 〉 や 〈 食べられません〉
などと書いてありました。
色々な物を鑑定していたためか魔力切れをおこして夕食の最中に眠ってしまいました。」
その報告を満足そうに聞く村長に、
「フリューゲル様のお陰でアルドが字を頑張って練習しております。
フリューゲル様に頂いた文字表を自慢げに見せてくれました。」
頭を下げる夫婦。
村長は満足げに頷き、
「その事も含めて報告をしたいので、始めようではないか。」
と言って、咳払いをしてからフリューゲル様が話始めた
「えー、皆に集まってもらったのは昨日手紙に書いた通り、こちらにいるアルフさんとルルドさん夫婦の子供で、先日祝福を受けたばかりのアルド君についてだ。
夫婦からの報告では、ステータスカードに効果が判らないスキルを含めて初期スキルが3つと加護が1つ、まぁ、コレは職業スキルを受けている者のほうがスキルの数的には多いし、稀ではあるが加護の保持者も居るので、予想の範囲内である。
が、しかし、〈勇者の協力者〉との一文が有ったそうだ。」
フリューゲル様の言葉にバゼル神父が
「疑う訳じゃないが、本当なのか?
勇者様と云えば魔王様に唯一勝てる人族だろ?」
「なんじゃバゼルよ、友の俺の言葉が信じられないのか?
それとも何か、魔王様の敵はお前達の敵か?」
フリューゲル様がバゼル神父を見つめる。
「おいおいおい。
こえ~顔で此方を見るなよ。
確かに俺ら魔族は魔王様を尊敬してるよ。
大昔にこの世界で肩身の狭い魔族を哀れんで、主神様に掛け合い魔族の神様に成ってくれた優しいお方だ。
他の神様と違い実際に地上で自分勝手なヤツが多い魔族を束ね、千年以上掛けて魔族の領土を広げ守ってくれた方ではあるが、ここ数十年ちとヤンチャが過ぎるのも確かだ。
魔族達も基本主神様を信仰している。
俺もそうだ。
主神様が息子にお灸を据えるた為に、勇者を召喚するのに何一つ文句はない
むしろ、目を覚ましていただく良い機会だと思う。」
腕を組み、フンスとため息を一つもらすバゼル神父は、
「で、フリューゲルよ、お前の目から見たアルド君はどうだった?」
と、フリューゲル様に問い掛ける。
「皆にも聞いて欲しい、アルフさん夫婦から話のみで実際にこの目で、勇者の協力者の一文を確認したわけではない…
しかし、本日初めて授業に来たアルド君を確認し確信した。
彼は間違いなく使徒だ。
〈何かしらの使命を負って産まれて来た!!〉と…
なぜなら、今日の授業… いや、その前に文字の表を見ただけで、その意味を理解した。
其れに止まらず、持ち運び出来るサイズの文字表が欲しいと言ったのだ。
そして、先程報告が有った様に、自宅にてその表を用いて鑑定のスキルを使っていたと…
この様な子供が、只の子供であるはずがない!
いち早く知識を付けねば成らない大きな使命がある。
そう確信しておる。」
拳を握りながら熱く語るフリューゲル様
一同固唾を飲んで見守る。
そして、ほんの一瞬の静寂…
ハッと我に帰ったのか、フリューゲル様がちょっぴり赤くなり拳を下げる。
そして、わざとらしい咳払いをしたのち話を続けた。
「えー、そう言った事で、ここに集まった皆に協力をお願いしたい。
まずはシルフィーさん。」
いきなりの指名て戸惑うシルフィーさんは、
「私ですか?」
と確認をとる。
フリューゲル様は、
「はい、アルド君の初期スキルが3つもあるのは、そのスキルが無いと使命が果たせないからだと思っておる。
なので、シルフィさんには、まず〈アイテムボックス〉スキルの師匠に成ってアルド君を導いてほしい。
使い方が解らず、色々と試行錯誤していると聞いておるの、で…プッふ」
と、思いだし笑いを噛み殺すのに必至なフリューゲル様…
夫婦はもう免疫がついて来たのか、小刻みに震える程度だった。
小首を傾げるシルフィーさんは、
「スキルの指導ならお任せ下さい。
にしても、〈色々と試行錯誤〉が気になりますね。」
と、答える。
プフっと吹き出しそうに成るフリューゲル様は、
「うむ、会議の後での。」
とだけいって、ハードルを上げない辺りフリューゲル様はお話上手なようだ。
そして、会議は続き、
「シルフィさん有り難う。
つぎに、バゼル神父とシスタークリステラには、教会経由で勇者様や使徒様についての神託や記述が無いか。
あと、アルド君の効果不明の〈濾過〉のスキルの情報を調べてほしい。
お願い出来ないだろうか?」
と、頭を下げるフリューゲル様…
あわてて夫婦共に立ち上がり頭を下げる。
バゼル神父は、
「よせやい!
協力するに決まってるだろぉ。
まぁ、魔族の教会に勇者様の神託が降りるとも思わないから頑張るのはシスターだと思うがな。
俺は俺で心当たりを探すから、よろしくシスタークリステラ。」
と、シスターにウィンクするバゼル神父
少し呆れた素振りのシスターだが、直ぐに真面目な顔になり
「お任せ下さい。
近日中に辺境伯領の領都に在る大教会に赴き資料を漁ってきますわ。」
…そう言って微笑むシスタークリステラに
「皆の協力感謝する。
アルド君を…使徒様を正しく導くため、何卒よろしく頼む。」
再び深々と頭を下げるフリューゲル様
夫婦も
「息子を宜しくお願い致します。」
と頭を下げる
そんな感じで、アルド君会議は和やかなムードで閉会した。
その後の試行錯誤発表会はさらに盛り上がったのは言うまでもない。
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