第9話 師匠が可愛い過ぎる件

毎日の繰り返し勉強の結果、


表が無くても大体読める様に成りました。

と、云っても、異世界にもあるのね…


〈め〉 と 〈ぬ 〉 とか

〈ね 〉と 〈わ 〉みたいなヤツ


慣れてきた頃に引っかかるよ…


まぁ、大変でしたが、自分のなかでは、平仮名、片仮名、ミスティル仮名みたいに自然に染み込んできています。


ただ、漢字もないから何を読んでも字数が多い

例えばコレ


庭に生えている草を引っこ抜き


「鑑定。」


ピロリン

「雑草」

「特に利用されていない草」

「食べられる」


と頭の中ではこうなるが、

スキルが目に写すのは、


「ざっそう」

「とくにりようされていないくさ」

「たべられる」


と、若干長く読み辛いくて、

初期のファミコンのロープレのテキストみたい…

漢字は凄いと痛感した。



さて、本日は読み書き教室がお休みの日、

週に一回辺境伯領の町から馬車で行商人がやって来る。


シルフィーさんの店に発注品を届け、


その後に村長さん所の広場や集会スペースで市場が立ち、村が賑わう。


村人もこの日は森など遠出の予定は入れずに市場でシルフィーさんの店に無い商品(専門的な道具や武器や防具)を買ったり、自家製の作物を売ったりして過ごす。


注文も可能で、1~2週間後にお手元に届くのだが、前金がいる上にほんの少し割高になるのだが…


因みに、この時市場で売られた商品で、リクエストが有るものはシルフィーさんの厳正な審査ののち、シルフィーさんの店に新商品として置かれる場合があるらしい。


その場合は送料はシルフィーさんのお店持ちなので、割高にはならない。


バゼル神父が、以前市場で手に入れた王都で人気のお酒をリクエストするも、厳正な審査の結果、


「酒癖の悪い人にお酒は売りたくない」


との理由で、却下となっていた。


〈お気の毒様です。〉


夕方で、市場は終了となり、

行商人達は集会スペースで一泊して翌朝に辺境伯領に帰って行く。

帰りの馬車には希望者は運賃を支払い乗せて貰える乗り合い馬車も兼ねている。


そんな理由から、市場が立つ日とその翌日は教室が使えないのでお休みなのだ。


読み書きをマスターしても暫くはコートニー君みたいに自主勉強のために教室へ通う予定ではいるのだが、


なんと明日の午後から三歳の子供に二つ目のお習い事だ。


〈パパさんとママさんの英才教室の子育て方針なのかしら?〉


という冗談は置いておいて、


ついに、シルフィーさんにアイテムボックスの使い方を教えてもらえる事になったのだ。


〈ひゃっほい!〉


やっと謎が解けるゾイ!!


今日は早く寝ます。


休みだから調子に乗って 鑑定 使いすぎて、


眠たい眠たい。


パパさんに聞いたら、


魔力はじわじわ自然回復するど、スッカラカンまで使うと、全ての機能をオフにして、急速回復を始める…急速回復するには寝ないと駄目らしい。


明日のアイテムボックスのためにしっかり寝よう。


お休みなさい。



そして、次の日…


〈清々しい朝…〉


午前中は魔力を使わずに過ごす予定です。

今日は市場の次の日なので、読み書き教室は休みです。


シルフィーさんは行商人と次回の仕入れの打ち合わせで午前中は忙しく、


午後からのアイテムボックス修行に成りました。


なので、午前中滅茶苦茶暇です…

仕方なく、お家の食卓で大人しく板に炭を使い字の稽古です。


テレビとかで子供が問題集にチャレンジする系のCMが頭に流れる。


…甥っ子や姪っ子がの顔が一瞬浮かんで、少しおセンチな気分になってしまった。


そして、気が付けばお昼、ママさんがターニャちゃん家で鶏小屋の修理の手伝いから戻り、お土産にもらった卵が我が家のランチです。


主食のじゃが芋と卵で作ったオムレツ?キッシュ?

みたいな中々ボリューミーなランチでした。


ご飯を食べたらパパさんとママさん一緒にシルフィーさんの家までレッツお出掛け!


と、言ってもシルフィーさんのお店は村の一等地で広場のすぐ隣、村長さんの家とほぼ一緒の距離なので、

食べてすぐの三歳のドワーフボディーにはこたえる距離には変わらない…


〈軽くお腹が痛い、食べ過ぎたかな?〉


少し食べ過ぎを後悔しながら、三人揃って目的に地到着して、


俺は、元気いっぱいで、


「ごめんください、シルフィーさん

アルドと申します今日は宜しくお願いします。」


と、店のなかにいるシルフィーさんに向け店先から挨拶してみる。


すると店の奥から、


「おやおやぁ、上手に挨拶出来たわね。お家でパパやママと練習したのかな?」


と、ゆっくりと優しく語りかけながら、出てきたシルフィーさんが、微笑みかけてくる…


シルフィーさんの問いに、両親は揃って首を横にふっている…


〈あれ?ヤバかった?

流暢に喋り過ぎたかな?

どうしよう。〉


焦っていると、


「まぁ、フリューゲルさんの教室ではもっと大人びた会話をしてたらしいから、驚きはしないわ、アルド君。」


と…


!!読み書き教室で…って…ヤバい、文字が読めそうだから興奮して油断してたぁぁぁ、

どうしよう?

今からキャラ変は不味いだろうかな?


と固まっていると、


「まぁ、そんなに考え込まなくていいよ、


君はアイテムボックスの練習に来たんでしょ?


細かい事はグルグルポイして早速始めましょう。」


というシルフィーさんに、


「宜しくお願いします。」


と両親が頭を下げる。


「お二人とも、大げさだから、アイテムボックスの練習なんて、大変じゃないのよね、実は…」


と話しはじめるシルフィーさん。


えっ?

俺があれだけ頑張って駄目だったのに、

簡単…だと…


と更に固まる俺…


「お二人もそこに座って見てると良いわ

本当に直ぐだから。」


と、シルフィーさんに促され、店先のベンチに座るパパさんとママさん、


そして、俺の前に来て少し屈むシルフィーさん


〈色っぽい〉…が、今はそれどころではない、集中、集中!!


そして、シルフィーさんが、そっと俺の手を取る…頑張れ集中だ!!!


するとシルフィーさんは、


「はい、アイテムボックス。」


と、言っておれの手の上に小箱を乗せる


〈ほへ?〉


と、アホ面をしている俺を見て、


クスクス笑うシルフィーさんは、


「ビックリした? ジョーダンです。」


と、微笑む…


〈馬鹿野郎!惚れてまうやろ!!〉


とドッキン、ドッキンしていると、


「緊張は解けましたか?リラックスですよ。


手の上の箱に意識を向けて下さい。


そして、その箱に魔力を注ぐイメージで、


はい、スキルを使ってみて。」


シルフィーさんに云われるまま俺は、


「アイテムボックス。」


と唱えると、箱が シュン っと音もなく消えた。


〈えっ?〉


と驚く俺に、


「はい、おめでとう無事にアイテムボックスのスキルが使えるようになりましたぁ。ぱちぱちぱちぱちぃ。」


と、拍手をしてくれるシルフィーさん…


〈口でもぱちぱち言っているカワヨ。〉


ボーッとしていると、シルフィさんが


「さあ、アルド君さっきの箱を取り出してみよう!」


と、言われてハッ我にかえりシルフィーさんに、


「取り出すのは、どうすれば良いのでしょうか? 師匠。」


と、たずねると、


シルフィーさんはお花が咲いたような笑顔で、


「あら、いやだ師匠だなんて可愛いわ、ギュッてしちゃう。」


と…


はい、只今絶賛ギュッてされています。


幸せです。

パパさん、ママさん

僕を産んでくれて有り難う。

ついでに商神の婆さんもサンキューな。


と、色んな幸せに包まれていると、


「あの~シルフィーさん?」


と、見かねたママさんからやんわりストップが入った。


〈 残念…〉


シルフィーさんは、練習の続きを始める。


「取り出し方は、出したい物をイメージしながら手で掴む感じで、はい!」


と、シルフィーさんの指示通りに、


「アイテムボックス。」


と唱えると、右手はさっきの箱を掴んでいた。


「はい、良くできました。

では、箱を開けてみてください。」


と、師匠の指示通りに箱を開ける。


すると、


中には革紐と何かの種?で出来た首飾りが入っていた。


「師匠、これは?」


と聞く俺に、師匠は、


「はい、師匠から弟子へのプレゼント…かな。

確か鑑定も出来るんでしょ?見てみて。」


「はい、師匠」


と答えて、首飾りを手に持ち


「鑑定。」と、唱える。


ピロリン

「神木の種の首飾り」


「使用者のMPに プラス10% 補正 」


「この状態では食べられません」


〈!?食わねよ!!〉


毎度、毎度、何でも食おうとしてるみたいに…


しかし、10%補正とはものすごい。


「師匠、良いのでしょうか?

10%の補正って、大事なものなのでは?」


と、不安になりたずねると、


シルフィー師匠は、


「はい、私が家を出る時に母から貰った宝物ですよ。」


〈えっ、!〉益々貰っていいの?


「だったら…」と言おうとすると、


シルフィー師匠はゆっくりと否定して、首飾りを俺にかけてくれた。


「母から、貴方の守りたいと思う人に渡しなさい

この首飾りはエルフの御神木の種から出来ているから、新しい芽が大きく育つ為の御守りですよ…


と言われた品物です…」


と、語りながらシルフィー師匠は俺の頭を優しく撫でた後、軽く〈ポンポン〉としながら、


「私は立派に育っちゃいましたから、

次ぎは、アルド君の番ですよ。」


と…


何故だか涙か溢れてきた。


「師匠、大事な物を有り難うございます。

きっと、立派な大人に成って、胸を張って次の世代に渡せる様に心がけます。」


そう言ったらまたギュッてしてくれて、

そのあと、顔が近づく…


チュウか?チュウなのか?

どうする?どうぅすぅるぅぅ俺ぇぇ?!


と焦っていると、


するとシルフィ師匠の顔は耳元に近づき、小さな声で、


「んで、弟子君の中身は何歳なのかな?」


ばれ…て、る…だと


と、焦るが…俺は、観念して、


「40代後半…だったり…して」


とバラすと、


シルフィー師匠は、プッと吹き出し、


「うんうん、そのくらいじゃないとしっくり来ないよ。


うん、若い若い、私にしてみたらそんなのまだまだ子供よ。」


と、肩をパシパシされている…


俺は、


「あの~師匠、両親には自分で話したいのでご内密に…していただけないでしょうか?」


とお願いすると、


「大丈夫、大丈夫、私からは言わないし、

今も防音の魔法使ってるから。」


と、教えてくれた。


えっ、

「防音ですか?」


と聞く俺に、師匠は、


「商人には聞かれちゃ不味い商談が付き物よ。」


とウィンクを飛ばす…


〈もう、師匠は、気を抜くとすぐ可愛いから!〉


と思いながらも、


なるほど、確かにパパさんとママさに

「お~い。」と体を動かさず声を掛けたが反応がない


〈凄いな魔法。〉


などと感心しながらも、


楽しいシルフィーさんの訓練が終わり、あとは繰り返し使っていればレベルが上がり、容量が増えたりスキル名を言わなくても発動させれる様になるらしい。


なんとシルフィ師匠は鑑定も持っているらしく今度はそっちも訓練してくれる約束をしてくれた。


〈いやっほぅ。〉


師匠のお陰でスキルの問題が大きく前進した。


しかし、今日は色々あって精神的にお腹いっぱいだ


お昼のランチもボリューミーだったので、物理的にもお腹が張っている…


師匠にお礼を言って家に帰る前に、広場の奥の公衆トイレに行きたいとパパさんとママさんに言ったら、それをシルフィー師匠も聞こえたらしく


「広場の奥は少し遠いから、店のお客様用トイレを使って。」


と勧められた。


ありがたく使おうとしたら、

師匠が、


「アイテムボックスにウ○コ仕舞わないでね。」


と言われた。


〈まさか?!〉と思い両親を見ると、


パパさんとママさんが急いで顔を反らす。



〈アイツらまたか?またなのか?!〉


庭先でしていたアイテムボックスの練習が師匠にも伝わっていることを知り、


トイレのなかで顔を真っ赤にして恥ずかしさに悶え苦しむ俺であった。

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