第25話 ヤバいお薬に手を出した
お茶で儲けた翌日、俺は、
朝からお茶の売店として活動した。
アイテムボックスに時間停止がついたので、
あの後、ヤカンを複数購入して、茶葉に合わせて、三パターンのお茶を用意しておいた。
時間停止のおかげで、
いつ作っても熱々を提供できる。
仄かに甘いが苦味とコクがあるもの。
ガツンとした苦味とキレのある後味のもの。
花のような香りにほどよい甘味の残るもの。
茶葉により入れ方を変え濾過スキルで濾しとる。
今までならここまで、
ここからがマックスマグマなんです。
濾過ポイに残った甘味や苦味やコクの成分を
やぁー!っと
半分だけ戻したり、他からもらって来たりして、味を調整し、
〈凄く繊細な作業を繰り返し〉
レシピを確立し、毎朝冒険に向かう冒険者達に一杯大銅貨一枚で、提供している。
水筒には大銅貨二枚で提供しどちらも無くなり次第終了とした。
準備は大変だが、俺の貴重な収入源となっている。
1ヶ月蓄えだけで生活するのは、心にダメージだったから有り難いね。
さて、昼を過ぎて、本日のメインイベント、
実験のコーナーです。
そして、
やって来ました。
創薬ギルドぉ~!いぇーい、パチパチパチぃ。
入り口の扉をくぐると、あちらでメガネのエルフの職員さんが薬品を混ぜていたり、こっちでは犬獣人の職員さんが鼻をクンクンさせて、買い取りの薬草の選別をしていたりと忙しそうだ。
俺はギルド内にある販売窓口に向かおうとするが、
買い取り窓口の、職員のお姉さんに声を掛けられた。
「薬屋さん、
いや、今は熊殺しさんかな?
どうしたの?内緒で採集クエスト行ったの?」
と聞かれた。
俺が、
「いやいや、
違いますよぉ。
それに変なあだ名で呼ばないで下さいよぉ。
今日は、こちらで、創薬セットと、低級のポーションを沢山買おうかなと、あと、薬草も何種類か欲しいかな…」
と、告げると、
職員さんが、「薬師の真似事かい?」と訪ねるので、
「はい、父が薬師でしたので、怪我で仕事が出来ないので、暇潰しもかねて、ポーションが作れないかな?
と、思いまして…」
と、俺がいうと、
職員さんは感心して、
「子供に憧れられる、良いお父さんだろうね。」
と言っている。
俺はパパさんが誉められて嬉しくなり、
「はい、熊に殺られそうな時に救ってくれたのが父が作ったポーションでしたが、全部使ってしまって今はこの一本だけです。」
と、パパさんのキュアポーションを見せた。
職員さんは、ポーションを手に取ると、
「おー、見事なキュアポーションだね。
さぞ、名の知られた薬師なんだろう。
君のお父さんは…」
と、聞かれるが、
「さぁ?村の中で薬師は父だけでしたし。
私も町には最近来たばかりなので、わかりませんね。」
と俺が答えると、
「よし、私が何を買ったら良いかアドバイスしてあげよう。」
と一緒に売店に来てくれた。
俺にでも扱い易い道具を揃えてもらい、
必要そうな薬草類を数束と、最後に「サービスだよ」と、創薬の教本をオマケしてくれた。
ただ、お姉さんに
「低級や、失敗したクズポーションを沢山買うのはなぜ?」
と不思議がられたから、
「もし良いのが出来たら詰め替えて、駄目なら採集の時などの切り傷用です。」
と、ごまかしておいた。
稼いだばかりの小金貨が出ていったのは厳しいが、成功したら今後の冒険が変わってくるから頑張ろう。
と心に決める。
創薬ギルドを出る時に職員のお姉さんに、
「お父さんみたいな立派な薬師になってね。
頑張れ!」
と、応援された。
やっぱり、パパさんが誉められるのは、凄く嬉しい。
〈俺、パパさんみたいになれるように頑張ります…〉
さて、
創薬ギルドからまっすぐ宿に帰って来て、
部屋に入り鍵をかける。
早速、お姉さんにもらった薄い本〈創薬の教本〉を読むと、
内容は案外簡単だった…
ライフポーションだが、薬草を加熱しながら、
〈薬用溶媒液〉とやらで煮る。
〈薬草から薬効成分は加熱しないと溶け出さないが、薬効成分は、熱に弱くその火加減が出来を左右するらしい。〉
出来た〈溶液〉にゆっくり魔力を流し定着を促す。
必要な魔力量は出来上がった溶液によって変化するため経験がモノを言うみたいだ。
パパさんのゴリゴリは薬効成分が溶け出しやすくする為かぁ。
〈納得…〉
要は薬効成分は熱に弱いが、煮ないと成分が出てこない。
〈うんうん〉
薬用溶媒液は、家にも植えてあった背の高い薬草を煮出して瓶に詰めて涼しい所で半月寝かした物の上澄みを使用する…手間だな…
〈創薬ギルドで販売もしているみたいだな…かうか?〉
薬効成分が溶け出た物に魔力を流せば出来上がるらしい。
〈理解しました!〉
パパさんはこんなシビアな匙加減をしていたのか。
〈尊敬。〉
では、そんなパパさんが見たら何と云われるか分からない、
〈掟破りな実験に移ります!!〉
パパさんゴメンなさい、だって思いついちゃったんだモン。
さてさてライフポーションは薬効成分と薬用溶媒液と魔力で出来ているから、
まずは、
アイテムボックスから、
低級ライフポーション (いっぱい)
クズライフポーション (山ほど)
バケツ × 2
創薬セット
を取り出して、
バケツの口サイズに濾過ポイを作る。
「濾過!サイズアップ。 具現化時間延長 」っと、
直径30センチ〈魔力3追加〉に具現化時間約一時間〈魔力10追加〉で制作
一枚目 「魔力」を指定、
二枚目は「薬効成分」を指定
重ねてバケツの上にセットして、
〈はい!ドーン。〉
低級とクズのライフポーションをドバドバっと
一つ残らず濾過ポイの乗ったバケツに注ぐ…
一枚目の濾過ポイに濾された魔力が少し光りながら空中に霧散する
〈何か、もったいない…〉
二枚目の濾過ポイには凄く細かい粒子の粉がある。
〈薬効成分だな〉
下のバケツの水を鑑定先生お願いして、
鑑定すると、
「酸化した薬用溶媒液」とあった。
〈ヨシっ!!勝てそう。〉
創薬セットから薬皿とスプーンそれにビーカーを用意して、
慎重に薬効成分を薬皿にスプーンでかき集め入れる
邪魔なので、濾過ポイを消す
〈手こずるかもしれないから長めに魔力こめたが無駄になった…〉
改めて濾過スキルで同じ大きさの濾過ポイを作る
指定は、「酸素」 と 「ゴミ」 を指定し、
未使用のバケツに乗せる
そして、「酸化した薬用溶媒液」をそこへダバダバする。
出来た液体を鑑定!
「薬用溶媒液」
ジャジャーン、やったね!!
ゴミをゴミ箱にポイして、ポイも消す。
〈さあここからだ!〉
ビーカーに薬用溶媒液を200ml入れる。
薬皿から薬効成分を耳かき一杯位入れてみる。
そして、鑑定先生に再度お願いして、
鑑定しながら、ゆっくり、ゆっくり、
魔力を流して行く…
「薬効成分溶液」
まだ、行ける
「薬効成分溶液」
もっとかな?
「薬効成分溶液」
失敗かな?
「ハイポーション」
〈…できた!!〉
出来てしまった。
俺は、ポーションの空き瓶を空いているバケツに詰めて
一階の共同キッチンに急ぐ、
アイテムボックスから鍋を出して、瓶を煮沸消毒した。
乾いたらアイテムボックスにしまい片付けて自室へもどり、
ポーションの空き瓶にロートでビーカーからハイポーションを移し変える。
出来てしまった二本のハイポーションをアイテムボックスにしまう。
〈パパさん、ママさん、ついにお薬に手を出してしまいました…〉
と、暫し感動を噛み締めたのちに、
今度は100mlの
薬用溶媒液に残り全部、
耳かき二杯半ちょっとを全部入れる。
ビーカーに魔力を鑑定で確認しながらながす。
しかし、
なかなか「薬効成分溶液」の鑑定結果から変わらない。…
〈ヤバい、ちょっとお眠になってきた。〉
おれは、
ヒヤヒヤのチキンレースを制して、
「フルポーション」が出来てしまった。
そう、出来てしまったのだ。
ビーカーから空き瓶に詰め替えて、
アイテムボックスにしまう…
そして、
バケツごと薬用溶媒液をアイテムボックスにしまった所でダウンした。
お休みなさい。
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