第49話 新たな装備と様々な敵


今、55階層と56階層の中間地点にある休憩ポイントに来ています。


「ここを今日のキャンプ地とする。」


と、宣言し、アイテムボックスからシルフィー号を出して車止めで固定すれば、寝床は完成。


俺は、テーブルと鍛治仕事セットを出して皆にプレゼントを作っている。


マイステアのアクセサリーショップで購入したカット済みの宝石やアクセサリー作成セットを出して、クラフト開始です。


以前工房で作ったミスリルの性質の金で、〈腕輪〉と〈ドックタグ〉と〈ネームプレート〉を作成し、


腕輪にカット済みの宝石ん埋め込み固定する、腕輪にミレディの文字を刻印してから魔力をしっかり流して完成。


鑑定をすると、

『ミスリル金の腕輪』

〈空きスキルスロット 3〉


と出たのでアイテムボックスから、モンスターハウスで手に入れた「魔力吸収」を取り出し修得し、

鍛治スキルでソレを腕輪に付与して、一丁あがり。


続いて、ドックタグに小さく加工された魔水晶を一粒埋め込み、キッドと文字を刻印し魔力を流して硬化させて、チェーンと留め具をつけたら完成。


鑑定

『ミスリル金のドックタグ』

〈空きスキルスロット 1〉


セーフ!スキルスロットが有った。


空いているスロットにこちらも「魔力吸収」を付与して出来上がり。


三つ目はネームプレートにキバの文字を刻印して硬化させる


鑑定

『ミスリル金のネームプレート』

〈空きスキルスロット 〉


これにも「魔力吸収」を付与して完成。


最後は

シルバーさんの装備している前に作ったミスリルのハミを外の空きスキルスロットに、「魔力吸収」を付与して、


余ったミスリル金でネームプレーとを固定する鋲を作る…余分に幾つかの作ってシルバーさんの鞍も飾ろうと思いついてササッと仕上げて鍛治仕事は終了した。


この〈魔力吸収〉はサンドマンから濾しとったスキルで、ダメージを与えたり、倒したりした相手から魔力を奪い、MPを回復させるスキルである。


自然修復と魔力吸収が有ればゴーレムチームはHPとMPの心配が減る…


本当に首まで砂に埋められたが…五匹だけでも俺が、倒したからである…


〈凄いぞ俺…負けるな俺!!〉


と昨日のサッパリ役に立てなかった自分を励ましながら、最後に俺も「魔力吸収」を覚えた。


「はーい、皆さん集合お願いします。」


と、各自作業をしているゴーレムチームに集合してもらう。


まずは、シルバーさんの鞍を外し、先ほどミスリル金の鋲でデコり、ハミと合わせて再度シルバーさんに装着させながら、


「俺からのプレゼントだよシルバーさん。」


と、声をかける。


その言葉を聞き


〈主よ、有り難く頂戴する。〉


とシルバーさんさが念話答えて軽く頭を下げる。



次はキバさんの首輪付の犬用の鞍を外し、首輪部分にネームプレートを魔鉱鉄の鋲で止め、鞍のところにミスリル金の鋲で少しデコって完成させてキバさんに装着し、


「キバさんにもプレゼントだよ。」


と告げると、


〈ご主じぃん、ありがとぉ~。〉


と、食い気味にお礼が念話で届き走りまわって喜んでいる。


つづいてキッド君にドックタグを首に付けてあげた。


「キッド君、いつもお手伝いありがとう…感謝の印です。」


と普段のお礼も添えてプレゼントをすると、


〈ご主人様、勿体ないお言葉ありがとうございます。

大事に致します!〉


と、普段より元気な返事が念話で返ってきた。



最後にミレディさんの腕輪を左腕にと、手首を軽く支えて持ち上げる…


〈何で経験の加護の指輪を左手の薬指にしてるの?〉


と気が付き、指輪を見ながら考えている俺に、


「この指にしかサイズが…ダメみたいデス。」


と、言い訳をするミレディさん…


「嘘だよね…神器だよサイズ自由自在だろ!」


とツッコむと、


ミレディは、少し強めに、


「夫婦は左手の薬指に指輪をはめると女将さんから教えて貰ったのデス!」


と、居直る…


〈誰が夫婦だよ…〉


と思っていると、その俺の心を読んだミレディが、あからさまにテンションを下げて、


「ワタシは奥さん失格デス…」


と、いじけている…


俺は、少し頭痛を覚えるが、


「まあ、ゴーレムチームを束ねるリーダーで俺の〈女房役〉ではあるな。

これからもよろしくな、ミレディさん。」


と、言ってミレディさんの左手に腕輪をはめる。


すると、


「おまかせ下さいマスター!私の愛はアナタだけの物デスわ。」


と、言うと俺の肩に手を置き、

チュッとした…


いや、実際に「チュッ」と言った。


〈まぁちょっと変な所もあるが、こういうところが可愛い、頼りになる女房役だよ。〉


と、呆れていると、


「いやデスわ!可愛い女房だなんて、恥ずかしいデスわ。」


と、くねくねしだす。


〈うん、言ってないし、念話は絶対オフらないんだね。〉


ミレディの念話には、〈何かしらのフィルター〉が有るのかも知れない…


それと、


「ひゅーひゅー」とか「お幸せに」とか「お似合いです」とかのガヤ念話は、


この際無視することにしよう。



皆にプレゼントを渡して、〈鍛治セットを片付けようかな?〉と思ったが、不意にこの前宝箱から出た〈技能神 マイス様直筆の本〉を思い出した。


「鍛治セット出してるから何か作るか?」


と呟き、アイテムボックスからマイス様の本と、内容に魔石が使われる物があったから魔石の入った袋をジャラっとだした。


本をめくり「魔石のスキル封入方」を見ながら作ってみる。


魔石にオリハルコンで封入印を刻む?


〈刻むオリハルコンの工具からつくらなければ駄目だな…〉


と理解し、


「業務連絡でぇーす。もしかしたらここでもう一泊しまぁーす。」


と俺が言うと、


〈はーい。〉と念話が帰ってきた。


それから俺は、オリハルコンの彫刻刀とオリハルコンのノミを作り


マイステアの街で沢山買った鉄の矢を改造し封入印を刻んだ魔石と合わせて、「封入の矢」を丸1日かけて大量生産した。



翌日になりアタックを再開したダンジョンの56階層は飛行系の魔物が飛び交う天井というか空がある大空間。

マップで確認すれば吹き抜け設計で一番底が60階層。


つまり5階ぶち抜きのボス部屋で、

壁際に螺旋状の道が下まで続いている。


サーチをすれば下にデカイ赤い点があるので、遠距離が得意なキッド君メインで作戦を開始する。


〈封入の矢〉の刻印に人差し指を当て指先からスキルが出るイメージで俺が、「放電」を5本、「電撃」を5本、ミレディさんに「水龍撃」を5本にスキルを唱える。


たぶんボスはこのフロアを縦横無尽に飛び回るタイプのボスだ、飛び回る前にキッド君が叩き落とせれば楽に討伐出来るかもしれない。


「さぁ、キッド君!

〈封入の矢〉で、やぁ~っておしまい!」


と、指示をだすと、キッド君が〈鷹の目スキル〉と〈気配消し〉〈不意打ち〉と合わせた水龍撃の矢を打ち出す。


すると、


矢は、俺たちの侵入すらまだ知らずに、下の60階層でのんびりしているであろうボスに向かい急降下していく…


そして、〈カッ〉っと光が見え、


数秒遅れて、


「グギャアァァァァァァアァァァァ!」


叫び声がこだまする。


すると、キッド君が念話で報告をくれた。


「ご主人様、お知らせ音が凄いです。」


と…


〈へっ?〉っと驚き俺は、再度サーチをしてみた。


すると、赤い点は既に無くなっていた…


〈一撃…だと…


封入印の矢…これは凄い拾い物かもしれない。〉


と思いつつ、敵も居なくなってしまったぶち抜きの5階層分、やる事がないから時折採掘をしながら60階層まで移動する。


デカイ鳥の巣の中に大きな魔石があり、シルバーさんのスカイウォークで巣の中に上から侵入し魔石を拾う。


十畳ほどある巣に一体どんな敵が居たのか今は知る術がない。


転移陣の部屋に入り宝箱を確認する。

『ダンジョンのレア宝箱』

〈罠無し〉

〈鍵不要〉


ん?レアですと?


と、一緒驚きながらも、今回の功労者、キッド君に開けて貰う事にした。


〈ご主人様、いいんですか?〉


と、恐縮しながら開けた宝箱には。

台座に乗った水晶玉が入っていた。


「おしえて!鑑~定~先生ぇ~。」


『記憶の水晶』

〈水晶に手をかざしてイメージすれば、その事にした関した使用者の記憶を投影する。〉


おぉ、凄い…のか?


とりあえず一度試してみる。


俺は、前世の事をイメージして、水晶を発動させた。


一度発動したら違う物事を投影しない限り、ずっとイメージしなくても、使用者は魔力を流すのみで、再生・一時停止などレコーダーみたいな機能を使用し説明が出来る親切設計だった。



俺は、

「異世界から来た男」講座をゴーレムチームにしたのち、第二部「旅立ちと目的について」の説明を行った。


ゴーレム達からの「異世界はどんな所ですか?」等の質問に、街並みや旅行で訪れた地方、テレビの映像などを投影した。俺の記録スキルと相性が良くて臨場感の有る映像を流す事が出来た。


その後、映画を一本流してみると、

ゴーレムチームは大興奮!


俺は、


〈全部終わったら映画館やっても食って行けそうだな…ただし、音が無いから無声映画か活弁士が必要だけど…〉


と考えながらセーフティーエリアで眠りについた。



翌朝、ミレディさんの料理の音で目が覚める。


初めのうちはミレディさんのアイテムボックスが小さい為に食材は俺が管理していた。


しかしミレディさんのアイテムボックスのレベルが上がり、「時間停止」も付いたので、食材の一部を渡してある。


「これで、マスターを起こさずに朝食が作れマス。


〈アナタ、起きて!ご飯よ~。〉


が出来るのデス!」


と喜んでいた…〈また、要らない知識を…〉


アイテムボックスの急な成長をみて、「経験の指輪」は凄いと感じながら、


相変わらず、鼻唄を歌いながら朝食を作っているミレディさん、昨日の映画のテーマソングを繰り返しながら楽しそうだ。


〈まぁ、俺が鼻歌程度のレベルでしか再現出来なかったのが原因の一つではあるが…〉


そしたら、念話でキバさんもつられて歌いだし、キッド君とシルバーさんもノッてきた。


大合唱である。


ゴーレムも鼻唄歌うんだ。

と感心しながら起きることになった。



さて、準備もばっちりで、61階層に突入するとそこは…花畑だった。


あれ?死んだのかな?


と、一瞬思ったくらい、キレイな花が咲き乱れていた。


そこに、蝶々や蜂が楽しそうに飛び回っている…って、


遠近感おかしくないか?


こっちに近づく蜂や蝶々は、大型犬サイズに見えるがまだ距離がありまだまだデカくなる模様。


鑑定先生!


『ジャイアントデスビー』

〈集団行動〉〈致死毒〉〈加速〉


『街殺しの翼』

〈絶滅の粉〉〈吸血〉〈加速〉


デカイ蜂と物騒な名前の蝶々達だった。

また、俺だけピンチのやつだ。

ゴーレムチームに毒は効かない…。


その間も「加速」でぐんぐん近づく蜂と蝶々


「打ち落とすぞ!!」


と、叫びながら久しぶりに使いう火魔法のファイアアローを打ち出す。


キッド君が「封入の矢」で狙い打ちし、ミレディさんもアイテムボックスから鋼の弓を取り出し応戦し、キバさんは、ウォーターカッターで遠距離から攻撃している。


なかなか全滅出来ない虫達から離れる為にシルバーさんが俺を乗せて上空へ駆け上がる。


尚も続く攻撃に数を減らしていき、

遂にキッド君の封入の矢が最後の一匹の眉間に決まり、〈パッシュん〉 と消えた。


俺はサーチをかけたが赤い点はもう無かった。


まさか、入ってすぐにあんなボス並の大怪獣軍団と戦うとは思って無かった…裏をかかれた気分だ。


〈うーむ、ダンジョンは奥が深いな。〉


今後どんな意表を突く仕掛けがあるか分からない、改めて気を引き締めて先に進んだ。


サーチしてから、キバさんやキッド君の不意打ちと、


空を飛ぶ敵にペガサスナイトかな?と思うくらい様になっているシルバーさんとミレディさんペアが奮闘してくれる。


皆のレベルも

ミレディ 136

キッド 104

キバ 95

シルバー 76


と着実に強くなっている。


ミレディさんに「経験の指輪」をシルバーさんに渡してくれと頼んだら、


「マスター。左手の薬指が寂しいデス。

愛の証が無くなって力がでないよぉ~。

新しい顔、ではなく指輪を希望しマス!」


俺は、昨晩65階層下のセーフティーエリアで、『それいけ!な、空飛ぶパン』のアニメを見せなければ良かった。


と後悔しながら、ミスリルとミスリル金で、洒落た指輪を作りミレディさんに渡すとまた、「ちゅっ」と声に出すタイプの ほっぺにチュウ をもらった。


虫階層を抜けて、66階層に入る。


前回の事があるので真っ先にサーチをかける。


この草原の階層にデカイ穴が有り、穴の側に二匹のデカい蟻がいるだけだった…


〈デカい蟻二匹か…?〉


と、少し拍子抜け感があるが、


とりあえず蟻を鑑すると、


『門番じゃいアント レベル 60』

〈警戒〉〈警報〉〈誘導〉


と、あからさまに戦闘要員ではないスキルと名前…


俺たちは、階層入り口の草むら隠れて作戦を練る。


出入りは一ヶ所で、変な名前のデカい蟻がいて、

蟻の巣は地下へと続いている…


前は、5階層ぶち抜きのボス部屋だったから多分ここは、5階層まるごとボス付のモンスターハウスだな。


と予想を立てた。


穴蔵に入って5階層分戦い続けるのは正直しんどい…


う~んと悩んで、会議の結果作戦が決り、実行に移す。



キッド君とキバさん組が片方を不意打ちで撃破し、

もう一方はミレディさんとシルバーさんチームが大騒ぎして仲間を呼んでから撃破。


俺は、巣の出入口より倍くらいデカイ濾過ポイを持続時間6時間に設定


濾過膜A 指定枠1 「魔石」

濾過膜B 指定枠2 「スキル」「MP」

パッケージ あり


の濾過ポイを作成し濾過膜Aを下にして重ねて置いておく


念の為に、邪魔にならない所に、土魔法の「ストーンフォール」で岩をだしてアイテムボックスにしまい、濾過ポイの縁の上にアイテムボックスからそっと置くと「じゃいアントほいほい」の完成である。


ミレディさんたちが門番をいい感じで泣かしてから討伐したみたいで、巣の中からガサガサ聞こえては、


〈パッシュん〉


の繰り返しである。

暇になったゴーレムチームは濾過ポイの側で武器を持って待機はしているが、記憶の水晶で以前見た映画を皆で観ている…なので、活弁士は不要である。


俺は、映像を再生した後に、マイス様の著者を読んで知識を広げている。


しかし、その間も


尻の下の巣は多分パニックだろう…


迎撃に出た兵隊達が次々と魔石になり落ちて来るのだから…。


暇潰しで見ていたが、マイス様の本に面白い物が載っていた。


『魔石誘爆印』

〈一つの魔石にこの印を刻めば周りの魔石も誘爆を起こす。

爆発的威力があるが、誤爆の危険を避けるため、個別に保管が望ましい。〉


と…


俺は、オリハルコンの彫刻刀をだして、暇潰しに「誘爆の魔石」を作成してみた。


かれこれ五時間、パッシュん 音も止み静かに成った。


映画を観終わったゴーレムチームを集めて作戦の仕上げにうつる…


ミレディさんとキバさんとキッド君は一度上り階段まで退避してもらい、


俺が濾過ポイを外したら、シルバーさんが「誘爆の魔石」に魔力を流して巣の中に投下し、


俺を乗せて退避の手順だ。


では、開始!


カードでパンパンの濾過ポイの上の方を外しカードを回収、アイテムボックスに仕舞ったら濾過ポイを消す。


シルバーさんは咥えた〈誘爆の魔石〉に魔力を流し、


その間にシルバーさんの鞍に跨がる俺…


コンコロコンと〈誘爆の魔石〉を落とし走り出すシルバーさん。


退避し振り向くが何も起こらない。


「あれ?失敗かな。」


と呟いたとたんに、


地響きが鳴り、巣穴の方から火柱が立つ。

遅れて爆発音と熱風が俺達を襲う。


シルバーさんが、自分の右足の指輪(馬等の偶蹄目は一本指で立っているから足首っぽいのが指先)を見つめながら。


「主よ、神器とは凄いですな。」


と、鳴り止まないお知らせに驚いていた。

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