第50話 ダンジョン下層域での出逢い
じゃいアントの巣に潜り70階層を目指しているのだが…
ムッとする熱気がまだ残る巣穴を歩きながら、
大量の魔石を誘爆させて…ちょっとやり過ぎたかな?
と、反省しつつ進む。
サーチをかけると数ヶ所に鉱物の採掘ポイントがあるが、少し掘り返すと、
〈鉱物資源がアツアツだぜ…〉
と誘爆の威力を改めて思い知る。
〈これは、当面採掘しなくても鉱物はたりそうだな。〉
と思うくらい皆でワイワイと採掘を楽しみながら穴の最下層に到着し、辺りを見回すと、
そこには、ドーム型の空間が広がっていた。
たぶん、女王蟻の玉座の間だったのだろう、ひしゃげた馬鹿デカい王冠がドロップしていた。
ドロップした上で女王自身の魔石の誘爆でひしゃげたのだろう。
鑑定すると
「壊れた女王の冠」
と、結果が出た…
一応仕舞っておいて、他に何も無いので突破しようとしたが、サーチすらしていないと思いだしサーチをしてみると、
玉座の裏に隠し部屋が有った…
敵の反応も無いので皆で入ってみると、
〈宝物庫〉だった。
大粒の宝石、鉱物の山そして宝箱が3つ
宝箱に鑑定をかけると
「ダンジョンの宝箱」
「弓矢の罠」
「要ダンジョンの宝箱の鍵」
「ダンジョンのレア宝箱」
「麻痺毒の罠」
「要ダンジョンの宝箱の鍵」
そして、ミミックだ。
ミミックは、普通の索敵にはかからないらしい。
念話で皆に通達し、気づいてない振りで近づき「せーの」でボッコボコにした。
パッシュん
と消えたが魔石は出ない、その代わりスキルカードが落ちていた。
スキルカードは鑑定をかけなくてもアイテムボックスに入れればリストの名前から内容がわかるから便利だ
『短距離転移のスキルカード』とリストに名前が出た…
〈何ですと!!〉
俺は、アイテムボックスからカードとスキル図鑑を取り出し、チェックした。
『短距離転移』
レベル1 :1メートル程度ズレる
レベル2 :5メートル程度移動する
レベル3 :100メートル程度移動できる
(身体に触れている他者ごと移動可能)
レベル4 :目視出来る500メートルの範囲移動可能
レベルMAX:マップスキル等で確認出来る場合見えない場所にも500メートルの範囲で移動可能
スキル図鑑さんの話しでは激レア有能スキルらしいので、
すぐさま取得した。
そして、宝石や鉱物をアイテムボックスに仕舞ったら、いよいよ宝箱を開封する
〈ダンジョンの宝箱の鍵〉の出番だ。
まずは、弓矢の罠の宝箱の鍵を開けて宝箱の裏側にまわり、裏から箱を開けた。
〈ビョン!〉と矢が誰も居ない方向へ飛んでゆく。
中身は指輪だった。
鑑定
『認識阻害の指輪』
〈使用者の姿を誤認させる〉
〈任意で発動・停止が可能〉
うん、良さそうな物だな。
ほい、次
と思ったら、ゴーレムチームが、キャッキャと騒いで開封していた。
大当たりの様だ。
『ゴーレムハート (スーパーレア) レベル 160 』
よっしゃあ!
おらぁ、わくわくしてくっぞぉ!
スッゴいの作ってやろう。
蟻さんがコツコツ集めたであろう、アダマンタイトやオリハルコンがアホほど手に入ったし、フッフッフ。
もうルンルンで70階層の転移陣に向かった。
良いものが続いたが、転移部屋の宝箱は激ショボだった。
『フルポーション ×6』
アイテムボックスに何ダースもあるし、ゴーレムチームには使えない…
まぁ、もらっておきますよ…一応…
「はい、どうも!ありがとう!!」
今日は余り疲れてないけど、何も作らすゆっくり休もう。
…と思ったが、新たなゴーレムの構想を考えなかなか寝付けないのであった。
さて、71階層に来ました。
ダンジョンの下層域と呼ばれる70階層より深い階層である。
一番深いサブダンジョンでも、80階層で、最難関サブダンジョンも踏破目前の深さだが、ここはメインダンジョン、ここから100階層迄が本番と言われており数多くの手練れが命を散らす。
〈多分、最年少記録更新したんじゃないかな?〉
…そんな魔境に降り立った訳だが、
あからさまに様子が違う。
サーチしたマップが広い広い。
彷徨く魔物にフル装備個体が混じる。
殺意の質が段違いだ。
経験の指輪(流石に指は無理なので腕輪)をつけたキバさんが、気配消しからの不意打ちの水龍の牙で倒していく。
ドロップ品に装備品が混じる様になったくらいが大きな変化で、ゴーレムチームは安定して下層域も問題無く進んでいる。
ゴーレムチームのレベルが全員100を越えボス意外の階層の魔物に安定して勝てる様になっている。
順調だが…〈絶対何かある!〉
と、サーチを使いだだっ広い階層のを調べる。
すると、今までに無いおかしな事が起こっている…
サーチで見える赤い点が少し濃い赤色の点に接触しては次々に消えていく。
絶対ろくでもない事が起きていると感じ、ミレディに念話を送り、ゴーレムチームと会議をする。
しかし、マップで確認をすると下り階段に行くには、どう転んでもソレに遭遇してしまう。
すごく嫌だが、その濃い赤い点の主と戦う事になったのだ。
濃い赤い点がいる回廊を覗きこむと一匹の魔物が武器を振り回し他の魔物を殺している異様な光景だった。
鑑定をかける。
『ブラックミノタウロス レベル180』
〈状態: 狂乱〉
〈突進〉〈身体強化〉〈斧 レベルMAX〉
ヤバいやつだ。
このフロアの敵の二倍近いレベルがある。
何かしらの状態異常だが…。
少し気になり振り回している戦斧を武器鑑定すると、「狂乱の呪い」の文字が有った。
やつは、あの戦斧の呪いで、手当たり次第周りの魔物を倒して、レベルアップしている様子、寿命か何かで死ぬと、リポップしてまた戦斧を拾うと呪いで暴れるを繰り返しているのだろうか?
ただ言えるのは、油がノリノリの最高な状態だろう、レベルといい身体の切れといい…。
〈全く運がない…。〉
育つ前か、老衰間近に遭いたかったよ…
俺は、少し憂鬱になりながら、
「みんな作戦会議だ!」
と集合をかけて、
「とりあえず武器は呪い付のだから、触らないこと。これ絶対!
キバさんはウォーターカッターで黒牛さんの目を狙って。
キッド君は封入の矢の〈電撃〉で黒牛さんの武器側の腕を狙って
ミレディさんは指示役と、盾で二人を守って。
シルバーさんは俺を乗せて上空で待機。
おれは濾過ポイアタックで黒牛さんを狙う。」
と、作戦を立て黒牛さんとの戦闘に入った。
まず、不意打ちスキルに期待して、
キッド君とキバさんが狙い射つ。
キバさんの攻撃は、たまたまか…はたまたレベル差なのか?
黒牛さんの目蓋を切り裂いたのみだったが、片目の視界を奪うことには成功している。
そして、キッド君は、黒牛さんの右腕を吹き飛ばし戦斧を落とす事に成功した。
〈順調だ。〉
しかし、順調に思えたその瞬間、黒牛さんは左手で戦斧を拾い上げミレディさんに斬りかかる。
盾で受け流すミレディさんだが、圧倒的にパワー負けしている。
片目の視界が無いのと、右腕が無いので何とか暴れ黒牛さんの猛攻を耐えている今のうちに、
急いで何とかせねば!
俺は、焦りながら濾過ポイを用意する。
濾過スキル
濾過膜A 指定枠1 〈魔石〉
濾過膜B 指定枠2 〈呪い〉〈MP〉
パッケージ あり
発動!
濾過ポイを構え、シルバーさんのスカイウォークと加速で黒牛さんに向かうが、
当の黒牛さんは、左手一本でミレディさんを追い込んで、
キッド君が水龍の守を発動しバリアを展開しミレディさん達を守っており、
黒牛さんがバリアごと三人を倒そうと、戦斧を上段に構え「チャージ」を発動して力をタメている。
〈ヤバい、ヤバい!いくぞ!!〉
と、俺はシルバーさんから黒牛さん目掛けて飛び降り、そのスピードのまま濾過ポイでヤツの全てを濾しとった。
〈パッシュん〉
と消える黒牛さんの目が少し安堵の色を帯びていた…まるで、やっと悪夢から覚めたように…。
魔石と立派な角そして戦斧を残して後口の良くない戦闘は終了した。
ポイに残るスキルカード隣に、一枚、紫色のカードが混ざっていた。『狂乱の呪い』…。
はじめてこの世界に〈呪い〉が存在するのを確認し、凄くいやな気分になった…
ダンジョンを下れば下るほど、この世界の深く暗い部分に引き込まれる気分になる、それほど敵意や悪意に晒され続ける事は、得体の知れない魔物のように俺の精神に襲いかかる…
しかし、今の俺には仲間がいる!
なんと心強いことか。
改めて仲間に感謝し、
皆とならばダンジョンを踏破できる!
と、確信した。
ブラックミノタウロスより強い魔物に合うこともなく80階層に到着した。
ボス部屋の大きな扉を押し開けると、今までとは違う空気の〈ボス部屋〉だった。
明らかに生活感のある部屋でお茶を楽しむ男性が一人…
そして、80階層のボスは…
喋ったのだ。
「いゃぁー、ようこそいらっしゃいました。
この階層を任されて三千年近く初めてのお客様が、子供とゴーレムとは、いささか残念です。
地上の事を聞きたかったのですが、ガキではろくな会話は無理でしょうね。」
と…
〈失礼なヤツだ、よし!シバこう。〉
と、心に決めて、
〈まずは鑑定先生、宜しく!〉
と鑑定をかけると、
『魔族 ベノン レベル120』
〈ダンジョンサブマスター〉
「呪詛付与」「呪いの爪」「不老不死」
と結果が出た。
〈なんか、嫌なスキルがあるな。〉
と、思うが、コイツが狂乱の呪いの元凶だろう…
俺が納得するのを他所に魔族は、
「ゴーレムに頼って来たみたいですが、ガキはすぐに帰りなさい。
お前の様なガキをマスターは待っておられない。
話のわかる冒険者なら私が案内して、マスターの元まで行くのですが…。」
と、自分に酔っているのか、ムカつく…
はっきり言ってこいつ嫌い。
ミレディさんが念話でずっと。
「この癇に触るゴミを早く殺るデス!」
とお怒りだ。
俺は、表向きは、丁寧に話しかけてみる。
「貴方は誰ですか?私はアルドと申し…。」
と、自己紹介の途中で
「あー、うるさいうるさい!
あなたは、お呼びでは無いのですよ。
神に選ばれたものしか興味がないのです。
いまなら初めてのここまで来れた強運に免じて見逃してあげましょう。
さっさと消えなさいガキ!」
念話でゴーレムチームに「待て」を指示しながら、同時に濾過ポイの準備をする。
ボソッと「濾過」
1.5メートル
濾過膜A 指定枠1 「MP」
濾過膜B 指定枠2 「スキル」「ダンジョンサブマスター権限」
パッケージ あり
「発動」
自分に酔ってベラベラしゃべり続けてている〈魔族〉野郎に、濾過ポイが現れるやいなや魔族に被せる。
〈なっ!〉と驚くが、一瞬で魔力が根こそぎ霧散し気を失う魔族。
俺は、ポイを解除し、スキルカードと金色の「ダンジョンサブマスター権限」をアイテムボックスにしまう。
濾しとれた事に驚くと同時に、今になりコイツの態度にしっかりと怒りをおぼえた…
「シルバーさん、お仕事お願いします。」
との俺の呼び掛けにシルバーさんが答える。
「主よ、何なりと!」
と、駆け寄るシルバーさんに、
「悪いけど、このアホ咥えて上で待機して、
合図したら、ぶち落として。」
お願いを聞いたシルバーさんが、
「心得た!」
と、アホを食え舞い上がる。
俺は、濾過ポイを新たに作りなおす。
濾過!
2メートル
濾過膜A 指定枠 1 「身ぐるみ」
濾過膜B 指定枠 2 「運気」「腕力」
パッケージ あり
発動
と、出来上がったポイを水平に構え、
「シルバーさん、よろしく!」
と、合図を出すと、
〈ポトリ〉と気絶したまま落ちてくるアホの尊厳を主に濾しとってやった。
〈素っ裸〉で倒れている〈運なし〉〈へなちょこ〉のアホ魔族の出来上がりである。
少し満足した俺をよそに、
ゴーレムチームが鼻唄まじりに何かをはじめている…
ミレディさんがボス部屋の手頃な石柱をアイテムボックスにしまって戻ってきて、
目の前に出す。
シルバーさんが、アホの頭を〈かぽっ〉と咥え空中に飛び、柱の所に行く。
キバさんは、ロープを咥えミレディさんと一緒にアホを柱にグルグルと縛りつける。
〈あれ?キッド君は?〉
と思ったら何処からともなく薪をあつめてアホの足元に薪を組み始める…
ミレディさんは鼻唄を歌いながら、MPカードの数値の低そうな物を一枚アホの鼻先で割ると、
魔力が少し戻り覚醒するアホは、
「う、うぅん…。
ん!?なんですか?これは!!」
と騒ぎだす。
すると、ミレディさんは、
「黙るのデス!この色んな所がミニチュア魔族が!そのアホ丸出しの口をとじておくのデス」
と、ピシャリと叱る。
〈うん、ミレディさん確かに彼のおつむの中身もオデコの角もミニチュアだろうけど、それ意外の一部地域のミニチュアは放って置いてあげて。〉
と思うが、
アホは続けて、
「貴様ら私がこのダンジョンのサブマスター、ベノン様と知っての態度ですか?恥を知りなさい!」
と、騒ぐ…
〈会話にならないな〉
と呆れていると、ミレディさんがキッド君に
「もう、火を着けるデス。」
と指示をだす。
俺は、慌てて、
「待て待て待て。判断が早い!」
と、ストップをかけて、
コッホンと咳払いをしてから話を始める。
「えー、先程の挨拶の続きですが、私はアルドです。
神々の依頼で、メインダンジョンに来ています。
最下層のダンジョンマスターに用がありまして、サブマスターとやらには特に用がありません。
失礼な態度を取られたお礼に、魔族のベノンさん、貴方の「身ぐるみ」「スキル」「サブマスター権限」「運気」「腕力」それと人としての「尊厳」を奪いました。
話しや対応によってはお返しするかも知れませんが、返答によっては〈さようなら〉になります。」
と、俺が話すと。
「何を偉そうにガキが吠える、私は不老不死だ脅しなど恐れぬ!」
と…
アホだ、「スキルを奪った」って言ってたよね…俺…。
と、更に呆れていると、
ミレディさんが痺れを切らして、
「アホ魔族!良く聞くのデス。
もう、お前は、不老不死でもなければサブマスターでもない、力もなく運もつきているデス!
マスターの話を聞く気が無いならもう、火を着けマス。」
と宣言し、アホがようやく慌てだす。
「ちょ、ちょっと…話をしましょう。
マスターの所に案内する…いや、させてください。」
と…
俺は、ため息をつき、
「ベノンさんよぉ。
マスターとやらは下にいるんだろ?
どうせ…
勝手に行くから案内は結構それより…。」
と言って俺は、呪いの抜けた戦斧をゴロンとアホの前に転がし、
「これに呪いを付与してミノタウロスを縛り付けてたのはお前か?」
と、聞くと、
「はい、確かに千年ほど前に強い魔物を作り出す実験で…」
と白状する…
〈あぁ、黒牛さんは千年苦しんだのか…。〉
と、哀れに思うと同時に、急にこのアホに関わる事すら嫌悪感を覚え、
「ミレディさん、あとは任せたよ。」
と、言って立ち去ろうとする。
「マスター、承知したのデス。」
と返事したミレディさんは、キッド君に
「お仕置きの時間デス!」
と告げる。
指示を受けて、薪に火を近づけるキッド君…
「ちょっと待ってくださぁーい!」
と…お仕置きタイムはいきなりの
「ちょっと待ったコール」に阻まれた。
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