第64話 困った再会と困った出会い
課題をクリアしたら、
誉めてほしい
アルドです。
エルフの国のメインダンジョン踏破の報告に、王都 アメリス にある大木で出来たお城に来ましたが、
初めは、大臣さん?と何人かの部下かな?
みたいな方々と面談し、ダンジョンの腕輪の確認をされた。
その次は兵士さんに連れられて、宰相さんと王様の部屋に移動し、
ダンジョンの報告と、
ユリアーナさんの救出の際の話を聞かせて欲しいとの事だった。
何故なら、
「盗賊に拐われ、君が助けたとユリアーナが言うわりに、そのあたりの記憶はないと話す。」
と相談する王様に、
「盗賊に襲われ、そなたに助けられた事自体が作り話では?」
と、宰相さんは考えて「審議」と云う、嘘を見破るスキルを持つ審議官に見せたが嘘ではない。
〈さっき居た大臣の部下も多分審議官だね…〉
しかも、
俺に、嫌な記憶を「消して」もらったとユリアーナさんは語ったり、
それを聞いた審議官も真実と判定したのだが、
人の記憶を消す魔法やスキルなど無いのはエルフの学者に確認済みで益々混乱した王様達は俺の帰りを待って色々と聞きたかった…
という流れで今に至いたります…
「 話すより見ますか?」
と、「記録の水晶」を取り出し提案する。
「それは?」と宰相さんに聞かれたので、
「ダンジョンで拾った記憶を見せる道具です。」
と、俺が説明すると、
宰相さんは部屋の隅でやり取りをメモしている女性の部下を見ると、部下は頷いた。
〈あの人も審議官だね。〉
と確信しながら俺は、
「ショッキングな映像が流れるから、心臓の弱い片や身内以外(特に男性)には見せたくない」
と告げる。
そして、部屋に残ったのは、王様と宰相さんそれとメモ担当の審議官の女性に女性騎士が一人だった。
さっそく、拐った盗賊を縛り上げアジトに入り女性が酷い姿にされ繋がれていたの時の記憶を映し出した。
女性騎士はあまりの事に気を失い倒れる。
王様と宰相さんは、涙をためて映像を睨んでいる…
フルポーションを渡してミレディさんにまかせて、俺が盗賊をぶん殴ったあと、ユリアーナさん達の記憶を濾しとり、
盗賊のリーダーに移したところまでを、
上映した。
宰相さんは膝から崩れ泣き出し、
倒れた女性騎士は他の騎士に運びだされ、
メモ担当の女性は泣くのを我慢しながら仕事を続けた。
そして、王様は唇を噛み締めたのか、流血しながら涙を流していた。
〈暫くそっとしてあげよう…。〉
…数時間後に、何とか会話が出来る状態になった王様に感謝され、〈あの状態〉から回復するポーションは存在するのか?
と質問されたので、アイテムボックスからフルポーションを一本取り出し渡した。
エルフの伝承にフルポーションは有るが、ダンジョンに行く冒険者自体が少ないエルフの国ではダンジョン産出のフルポーションは長年見ていないらしい。
その代わり創薬技術が、他国より有るためハイポーションは他国より潤沢と、宰相さんが説明してくれた。
「それを娘に、何の見返りも期待せずに…。」
と、王様はブツブツ言ったあと、再び、
「貴重な薬を娘の為に使った方くれたこと改めて礼をさせてくれないか?」
と、言ってきたので、
「アイテムボックスに何ダースも有りますし、いざとなれば作れますから。」
と言ったら宰相さんが驚きながら油が切れた機械みたいにギギギッとメモ役の審議官を見た…
そして、ゆっくりと頷く審議官を見て
宰相さんが「アルク薬師長を呼べ」
と叫ぶ…
〈あちゃー、イベント発生ですか?〉
面倒臭いから嫌なんだよね…
と、うんざりしながら待つこと数十分…
メガネの偉そうなエルフのおっさんがやってきた。
おっさんは、
「で、どれが私の孫ですかな?」
と言ってきた。
パパさんのパパさん?かな
なんか、目付きのキツイ性格悪そうな感じの面構えでパパさんとは大違い。
〈決定!パパさんは母さん似でした。〉
と、アホな感想で眺める俺を
宰相さんが紹介したら、
品定めをするみたいに上から下まで見たあとに、
「ふん! ドワーフの娘と出て行ったが…こんなドワーフの小僧が孫だなどと、認めることなど出来ません。」
と言い出した。
パパさんのパパさんらしいが…
〈俺のママさんを馬鹿にする奴は、嫌い!ナカス!〉
と完全にスイッチが入った俺は、
「お言葉ですが、私は貴方の様な失礼な方に認めて頂きたいとは、微塵も思っておりません。
宰相さんが時間をかけて貴方を呼んだ意味も分かりませんが、私から貴方に用事の欠片もございませんので、
ただ、今は私の父が貴方の様な失礼な人間に似ていない事を神々に感謝するばかりです。」
と畳み掛けてやった。
すると、
「何だ!この生意気なドワーフは、
孫とやらがフルポーションを何本も所持しているから、
息子が伝承に有るフルポーションの製造方法を発見したかも知れないと連絡を受け来てみれば、不愉快極まりない!
帰る!!」
と糞じじいが真っ赤な顔で怒鳴る…
俺は、騒ぐじじいに、
「おうおう!帰れ帰れ!
端からお呼びじゃねーよ!じい様よぉ
散々ドワーフと見下したそのドワーフに作れるフルポーションをお偉いエルフさんは作れないと見える。
因みに、てめぇを見限ったウチの親父も俺が教えた方法でフルポーションが作れたぜ。
〈ダサいプライドで他を見下すより自分の技をみがいてろ!〉
おっと、これは尊敬出来る方のお祖父様の言葉でした。
ではご機嫌よう!またの御目見えが御座いませんことを神々に祈ります。」
と、わざと挑発してやった。
ママさんやドワーフを見下して嫌がらせした張本人だから徹底的にあおり散らかしてやった。
こども…いや孫に言い負かされた糞じじいは真っ赤な顔で怒っていたが…
〈知るかボぉケぇ!〉
俺は、王様と宰相さんにも止めをさす。
「王様、それに宰相さん、
こんな不快な思いをさせるためにワザワザ待たされたのでしょうか?
エルフの国は他者を見下さなければ自分を保てない程に愚かなのでしょうか?」
「なっ…!」益々真っ赤になるじじいに、
穏やかだった俺が豹変し「失敗した!」と青ざめる宰相さんに、
オロオロする王様…
「言い忘れて居ましたが、私は神々の使徒で、学神 メリス 様より、
賢き者に四色の魔法を授ける使命を授かっていますが、まさかよりにもよってエルフが他者を見下す愚かな種族だとは…。
さぞ嘆いておられるでしょう。」
俺は、アイテムボックスから「四色のグリモア」を出して、賢そうな雰囲気を醸し出した。
宰相さんも王様も パッと審議官を見ると、
コクりと頷く
それを見て王様まで青ざめてしまった。
〈やりすぎかな?〉
とも感じたが、パパさんとママさんを虐めたやつを許せる理由がない
あと、こんな奴呼んだ宰相さんも
こんな国を放置した王様も…
嫌なモノは嫌といえる人間で有りたい
そう思う。
〈イジメ、カッコ悪いよ…〉
そんなわけで、俺は、オコです…
それはそれはオコなのです。
宰相のじじいが、
「もう良い、薬師長、下がってくれ。」
とじじいに指示を出し、
糞じじいは俺を睨みながら、
「しかし、宰相殿、それでは…」
と食い下がるが、
「下がれ!と言っている。」
と、宰相のじじいもキレだした。
糞じじいは悔しそうに
「では失礼致します。」
と、最後まで俺を睨み「ふん!」
と鼻を鳴らして回れ右して帰っていった。
〈帰れ!帰れ!〉
愚王様は、
「許して欲しい、我らが愚かだった。
本当にフルポーションの製造が可能ならば、我が友 アルフの手柄としてこの国に戻ってこれるかも…と勝手な考えだった。
許して欲しい。」
と、頭を下げる王様に俺は、
「世の中に気に食わないヤツはいるよ。
あの糞じじいみたいに…
でも、人間性を見ずに種族で嫌うのは違うんじゃないかい?
誰が言い出したか知らないが、それをおかしいとも、違うとも言わなかった国の姿勢も愚かです。」
と…
そして、何も言えない王様に追い討ちをかける。
「俺は、王様に言われた通りメインダンジョンを踏破してきました。
もう、文句は無い筈でしょ?
だから、この足でユリアーナさんを連れて行きます。
ウチの大事な仲間ですし、会いたければコーバ街に来て頂ければ会えますから…
では!」
と、立ち去ろうとすると、
王様がハッとして、
「それは困る、
そなたが、メインダンジョンを踏破したことを貴族達に見せ、ドワーフの娘と一緒に生きると決めたアルフが正しかったと、種族に優劣などないと解らせてやりたい。
頼む私にチャンスを今度こそ友の居場所を守るチャンスをくれないか?」
と、頭を下げるアホ王を見て、怒りがこみ上げてきた。
俺は、
「王様も自分勝手だし他を見下してますよ。」
と言ってやった。
「えっ!」と驚くアホ王に、
「だってそうでしょ、
俺の父がこの街や周辺の村で嫌がらせをされたのは知ってますよね。
そしてこの国を見限った父は名もない村に流れ着きましたが、そこで家族を作り、村の為に必死に頑張り村を発展させました。
今では地竜すら村人だけで討伐する最高の村になりました。
なのに貴方は、エルフの街こそ最上!帰って来れないのは可哀想…と
こんな糞みたいな国、他にはない事も知らずに…。」
と畳み掛けると、
下をむくアホ王とカス宰相
その時、
「アルド様、大丈夫ですか?
お父様入ります!!」
と、ユリアーナさんが執務室に飛び込ん出来た。
「城の外のミレディお姉様から念話で、
〈ダーリンが怒って居るからこの国を滅ぼす前に止めて欲しいデス。〉
と言われて走ってまいりました。」
と…
〈ダーリンて初めて言われたわ!
あと、滅ぼさないからね!!〉
ほら、王様真っ青な顔してるから…
〈滅ぼさないでちゅよぉ。〉
宰相さんは…こりゃダメだ王様より重症だな…固まってる…
俺は、ため息を吐きながら
「ユリアーナさん
用事も終わりましたから行きますか?」
というと、
「はい、久々に戻りましたが別に見るべき所も有りませんし…
でも、アルド様。
私のお母様とそのお友達に合っていただけませんか?」
とお願いされた俺は、
「うん良いよ。」
と、使い物にならなく成った王様達を置いて部屋を後にした。
ユリアーナさんに連れられて中庭でお茶している女性二人とメイドさんの元にやって来た。
女性の一人、ユリアーナさんに似ているお姉さんかと見間違えるユリアーナママが、
「まぁ、やっとお話しが出来ますわね。
ご挨拶が済んだらすぐにダンジョンへ向かわれてしまったので…。
ご挨拶が遅れました。
ユリアーナの母のシルビアです。
娘を助けて頂きありがとうございます。
あと、ユリアーナを貰ってくれるんですよね?
ユリアーナたら貴方の話ばかりなのよ。」
と、
「はい、ウチのメイドさんとして…」
と、話している俺をよそに、
ユリアーナさんが真っ赤になって、
「お、お母様、止めて下さい!」
と言って、
「フフっ。幸せそうで安心しました。
これでも、ずっと心配してましたのよ。」
と、ニコニコしているシルビア様…
〈聞いてる?〉
と心配する俺をそのままに、
「そして、こちらが私のお友達の…」
と、もう一人のご婦人を紹介するシルビアさんだが、
いきなり紹介中に、ご婦人に抱きしめられた。
〈へ?!〉と驚く俺に、
「ご免なさい、」
と言い手を離したご婦人は、
「顔を良く見せてくれますか?」
と、俺の顔を暫く覗き込むと、
「目元と、フフフっ耳の形が全く一緒…」
とご婦人は涙を流した…
〈あっ、パパさんに似ている…。〉
とご婦人にパパさんの面影を見た俺は、
「おばぁさまですか?」
と聞くと、
優しく微笑み、
「おばぁちゃんです。
でも、息子が家を出た理由を後から知った、役に立たない駄目なおばぁちゃんです…
ご免なさい、アルフもだけどルルドちゃんに辛い思いをさせてしまいました。
貴方にも謝らなければ…」
と、涙を浮かべる、おばぁさまに
村で幸せに暮らしていて、妹も居ることを報告した。
そして、おばあさまは
「貴方のおじぃちゃんは、貴族でないが貴族の方々と付き合う事が多くて、
弱みを見せないように必要以上に意地をはってしまい馬鹿な判断をしました。
薬師の一族の長など捨てれば良かったのに…。
でも、そんな見栄っ張りが、アルフが家を出てから元気がなかったの。
でも貴方がこの国に来ていると聞いてなんだかソワソワしていたのよ…。」
と涙を拭いながら語るおばぁさま…
「だから、許してなんて言えない。
けど、余り嫌わないであげて欲しいの。」
と…
おばぁさま…。
もう…遅いんやでぇ…。
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