第23話 謹慎生活の開始

皆様こんにちは、

冒険者宿に軟禁中のアルドです。


まぁ、軟禁と言っても、町の外など、冒険に出掛けては駄目なだけで、町の中は自由に出歩いて良いと言われています。


なので、


〈長期休暇〉と思って諦める事にしました。


さて、昨日のギルドでのバタバタが終わり、ギルマスに連れられてこの宿に来たのですが、


ギルド経営の宿で、部屋は前の〈角ウサギ亭〉よりかなり広く、ベッドとテーブルがあるし、各階に、トイレもある。


一階には、共同の調理場(自炊派の冒険者用)と、広い食事スペースがあり、自分で作った物や屋台で買ったものをたべることができる。


〈まぁ、ほとんど酒盛り会場として使われるが、〉


それと裏には井戸があり井戸の側にある釜戸でお湯を沸かして、体を洗えるシャワールーム的な個室が五つほど並んでいる。


そして、


お値段なんと角ウサギ亭の倍!

1泊なんと小銀貨三枚 (3,000円)である。


一週間まとめて払えば、

7泊分がなんと大銀貨二枚(20.000円)で、


一月まとめてなら、

なんと定額、大銀貨六枚(60,000円)と、

更にお得になるからほとんどの冒険者は、

一月契約のアパートみたいな感じだ。


風呂、トイレ、キッチン共同のワンルームが六万円は高そうな気がするが、掃除をしてくれるお手伝いさん込みと思えば激安である。


体も洗いさっぱりして、改めてギルマスと部屋でお話です。


「アルド君、無茶しないでくれないかな?

ブライトネル様や大司教様にも報告をしたら、

ぶちギレられたよ…


大事なお役目があるのに死にかけるとは、ギルドは安全にサポートも出来ないのか?と…」


と、禿げた頭が、こぼれ落ちそうな程項垂れている。


「そんなにですか?…すみません。」


と、謝る俺に、


素直に謝ると思ってなかったのか驚くギルマス…


〈俺だって悪いと思えば謝ります。〉


〈ゴホン〉と咳払いをしたギルマスが、


「まぁ、分かればいい…

アルド君の鎧、あれにファイアリザードの皮が使われて無かったらヤバかったかもな…」


と、教えてくれた。


〈ロルフ先生に感謝だな。〉


俺が、ロルフ先生を思い出しながら、


「狩りを教えてくれた先生からの餞別です。」


と、いうと、


へぇ~、と感心するギルマスは、


「なるほど、格上のやつに無謀に挑む馬鹿かと思ってたが、

罠に絶対の自信があったからの行動か…。


お前の先生は一流の罠師なんだろうな…


しかし、罠に掛かってるとはいえ無茶が過ぎる。」


と、改めてお小言を貰い、


「はい…」


と言って、しょぼんとする俺を見て調子が狂うギルマスは、


「反省してるならいいんだよ。


それとお前は、D級に昇格だ。」


と、発表され、


えっ?と驚く俺に、


「C級の魔物を

しかもソロで倒したヤツがE級な訳がない!

かといって目立つのは嫌いだろうから、D級で押さえておいたんだぞ!


しかし、ランクアップは謹慎明けだ。」


というギルマスに、


俺は、


「はい、有難うございます。

気を使っていただいたようで…」


と素直に頭をさげると、


ギルマスは禿げた頭を掻きながら、


「調子がくるう…


お前さん本当にアルド君か?


それとも、頭部に激しい攻撃でも受けたか?」


と心配している…


〈失礼な…〉


と、少し膨れているが、


気になる事が一点ありギルマスに、


「あと、ここの宿代は…?」


と聞いてみと、ギルマスは笑いながら、


「気にするな、キノコの代金からさっ引くから


熊だけじゃなく馬鹿みたいな量のキノコ持ち込みやがって、

あれだけで、半年くらいこの宿に住めるぞ!」


と、言われホッとした。


その後ギルマスは、


「完治するまで大人しくしておけ。」


と言い残して帰って行った。




翌日、キノコの代金を受け取りに朝から冒険者ギルドに向かうと、


窓口でタイラーさんが対応してくれた。


中々の金額だった。


初めて自力で小金貨を手にした。

小金貨をくれた時のトネルお兄さんの笑顔がよぎる。


タイラーさんが


「レッドベアーは確かにアサド周辺の森を住み家にしていますが、雨の森に出てきたなんて話しは今まで聞いたことが在りませんよ。


ついてませんでしたね。」


と…


〈やはり、俺は運がないらしい。〉


お金も受け取りに帰ろうとしたら、ギルマスに呼ばれた。


〈お小言かな?〉


と、少し緊張しながら、ギルマスの部屋に通された。


ギルマスに、


「アルド君どうぞ座ってくれ。」


と席に促される。


ギルマスは、深刻な顔で、


「実は、レッドベアーの件なのだが…」


と、切り出す…


「なんでしょう?」


と聞きながら〈ゴクリ〉と唾を飲み込む俺に、


深々と禿げた頭を下げるギルマス…


「ギルドに譲ってくれないだろうか?勿論適正な値段を払う。」


〈えっ、別に良いけど…それだけ?〉


と思いながらも、一応、


「訳を伺っても?」


と聞く俺に、すまなそうにギルマスは


「今回の件を報告した時に

ブライトネル婦人がアルド君の大手柄の記念に毛皮を買い取り敷物にしたいと仰られ、

大司教は大司教で、アルド君が倒した熊の魔石を教会に飾りたいと…。


アルド君も熊の素材を何かに使いたいだろうが、すまない!」


と、再び頭をはげる、いやさ、下げるギルマスに


「それならな、お金も要りません。私からの贈り物ですと伝えてください。」


と、俺がいうと、


えっ?という顔をするギルマスに、


「そうですね、タックルボアとレッドベアーの皮と魔石意外の使える箇所は買い取りをお願いします。


その中から、皮の加工をして敷物にする代金と、

魔石を納める箱を作った代金を差し引いていただけますか?


って、マヒダケや毒を使った肉は使えないと思うから足りるか心配ですが…。」


と、言うと、


ギルマスは、


「アルド君は、本当にそれでいいのか?


死ぬ思いまでして倒したのに…。


まあ、肉はキュアポーション使えば毒性がなくなる、コストが掛かる分安くなるが、

それでも皮と魔石の加工賃を抜いても阿保ほど余るぞ。」


と、教えてくれた。


〈良かった足りるらしい。〉


俺は、〈なんだ、それだけか。〉とホッとして、


「では、それでお願いします。」


とお願いした。


俺的には、経験値が貰えれば良かったので全く問題ない!


ギルマスにあとの処理を丸投げ…いや…お願いしてギルドを出た。



一仕事終わったから街にくり出す為だ。


まずは、防具屋を探し壊れた皮鎧の修理をたのむと、一週間くらいで仕上がるそうだ。


〈1ヶ月休みなので、問題なしだ!〉


次は武器屋で、ルルドとまほーく と 鉈の メンテナンスを依頼する。

刃こぼれもなくササっと研いで終わった。


予定の殆どが終了してしまった…


しかし、


1ヶ月暇なので、濾過スキルの訓練用にお茶セットや各種茶葉を購入する。


アイテムボックスは優秀だ買い物が手ぶらで楽チンである。


その後に食材や調理器具を買い込み自炊の用意をする。


最後に紙とペンを探す。お茶の銘柄と濾過ポイのパターンのメモに使う為なのだが、


町に来てこんなにゆっくり買い物したのは初めてだな。


と、しみじみと感じていた。


楽しいな。

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