第85話 急な旅立ちと急な展開

久々に一人でダンジョンに来ています…


と言っても、ダンジョンの腕輪で最下層まで直通だし、特に大変な事は無く、



「くっださぁ~いなっ!」


と、俺はボスラッシュを1往復〈 パッシュん 〉させて、200枚近いメダルを手に入れ、


〈ダンジョンショップ 大地の女神 本店〉へとやって来た。


「はーい」


と明るい声がして、ゴーレム姉妹の長女のサラさんが店の奥から出てきたが、


可愛いオレンジ色のメイド服のような制服を着ていた。


「あれ? 可愛いの着てるねサラさん。」


と俺が言うと、


奥からマウカルさんが飛んできて、


「サラちゃん、気をつけて!

アルド君はゴーレムでも魔物でも奥候補さんにしちゃうんだから!」


と、確かに自称〈女房〉のゴーレム娘は一名仲間にいますが…魔物は居ません!


〈プンプン!〉まぁ、フェンリル娘は一名おりますが…あれは聖獣さんです!!


「マウカルさん過保護が過ぎますよ。」


と俺が抗議すると、


「そうです、お父様。恋愛は自由ですわ。」


とサラさんが…


〈いや、そうではなくて…もう、スルーしとこう…〉


と、半ば諦めた俺は、


「欲しいスキルが有るのですが?」


と、本題に入る。


すると、


「お探しのスキルの名前は分かりますか?」


と、サラさんが聞くので、


「伸縮」「自動調節」だと答えると、


ほほ、ノータイムで、


「アルド様、〈伸縮〉がメダル1000枚と、〈自動調節〉がメダル800枚。

合わせ1800枚になります。」


と、サラさんが教えてくれた。


〈全部記憶してるのか…凄い、

そして、

高い、たかい、タカイっ!!


なんですか?


足元をルッキングですか?!〉


と、ガックリする俺に、


「聖剣や神器につけるスキルだからね…

高いよねぇ。」


と、マウカルさんが同情してくれた。


「稼いで来ます。」


と言い残して上の階層に上がって行く俺に、


「用意しておきますね、お気をつけて。」


と手をふるサラさんだったが、


「はい、終了です。」


とお見送りを強制終了させるマウカルさんを背中に感じながらメダル稼ぎに向かう。



ボスのリポップには約六時間を要するのでボスラッシュは割が良いが待ち時間が無駄になる。


90階層のボスをダッシュで目指し、

折り返してきてボスラッシュで最下層へ、ダッシュで95階層下のセーフティーエリアで仮眠して、


を繰り返す。

1セットで270枚程度、2日かけて6セットこなし、

元の200枚も合わせて、やっと1800枚を超えた。


〈やっと終了した…何が辛いかって…戦闘よりも移動と階段の昇り降りだよ。〉


とクタクタになりながら、

改めて最下層のダンジョンショップを訪れる。



「サァ~ラァ~さん。」


と呼ぶと


「はぁ~あぁ~いっ!」


と、店の奥から聞こえた。


〈ノリが良いな…サラさん。〉


と思っていると、


サラさんがトレーを持ちながら店の奥から現れた。


「お待ちしておりました。アルド様」


と俺の前に商品をならべ、


俺は、「ジャラリ」とメダルの入った袋を出した。


サラさんは


「確認しますね。」と言うと、サササッっと手早く数え終わり、


「1906枚 なので、106枚のお返しです。」


と会計を済ませ、サラさんからスキルカードを受けとる。


〈なかなか大変だったけど何とか手に入った…〉


と安堵した。


〈さて、帰ってアクセサリーを作る…?

いや、街作りで大変な横で鍛治仕事もアレだから…


作って帰るか!〉


と、決めた俺は、


「サラさん、邪魔にならないこの階層の端の方をしばらく貸してくれる?」


と聞くと、


「構いませんよ、何をされるのですか?」


と、興味津々なご様子のサラさんに、


「ウチの女性陣にアクセサリーを作るんです。

すぐに済みますから。」


と俺がいうと、


「すぐなら見てて良いですか?」


と、サラさんが食い付く。


「別に構いませんけど、そんなに面白い物でもないですよ…いいんですか?」


と、サラさんに言ってから店の裏手の広場に鍛治セットを出して、ミスリルとミスリル金でシロちゃんとエルザさんのアクセサリーを作る。


エルザさんのは、腕輪にシルフィー工房で以前カットしてもらったルビーを埋め込み、


四色のグリモアで魔法も使えるから、〈追跡〉〈必中〉を付与した物を作るとして…


問題はシロちゃんだ…ミスリルではシロちゃんパワーに耐えられるか心配だ…


〈耐久力上昇〉を付与したらイケるかな?


しかし、〈伸縮〉と〈自動調節〉も付与するから空きスロットが3は要るな…


ペンダントぐらいではスロットが稼げるかな…少し豪華な首飾りにするか?


等と考えていたが、


結局、シロちゃんへのプレゼントも〈腕輪〉にした。


〈同じ物では芸が無いというなかれ、〉


コイツは、とても人間には装備出来ない大きさの〈馬鹿デカい〉サイズの腕輪だ。


〈まぁ、粘土細工みたいなものだからそんなに手間では無かったが、これだけミスリルを使えば空きスロットが3以上は有るだろう…〉


と満足しながら鑑定をかけると、〈空きスキルスロットが5〉も有った。


「さて、どうするかな?」


と悩んだ末に、


〈自然修復〉と〈耐久力上昇〉に〈重さ軽減〉を付与し、

仕上げにアダマンタイト金槌で〈伸縮〉と〈自動調節〉を付与した。


「完成!」と成った。


〈正直シロちゃんはゴーレムと違い、装備の出来ないフェンリル状態でも本人にスキルカードを渡せば特に制限なくスキルモリモリに出来るし、壊れ難くて軽いだけで…良いよね…〉


小一時間眺めていたサラさんが、


「良いなぁ、良いなぁ。」


と腕輪を見つめていたので、俺は〈それならと〉


ミスリル金で腕輪を作り前に加工してもらったきりアイテムボックスの肥やしと化していた工房でカットてもらった宝石を取り出して、


「サラさんどれが良い?」


と聞くと、「これ。」と、一粒のサファイアを選んだので、それをの腕輪に埋め込み『サラ』と刻印し魔力を流した。


鑑定


「サラの腕輪」

空きスキルスロット2


と出た。


〈まぁまぁだな。〉


俺はサラの腕輪にスキルを付与し、


『サラの腕輪』


「剣 レベル MAX」

「盾 レベル MAX」


が完成した。


俺は、


「はい、サラさんにもプレゼントだよ。」


と腕輪を渡すと


「いゃったぁ~!」


とサラさんは喜んでくれた。


「妹達には内緒にしますね。」


と、ルンルンで店に戻るサラさんと交代で、


「アルド君、娘に何をしたんだい?」


ぬっと、片付け作業中の俺を覗き込むマウカルさん…


「うわぁ!心臓に悪いですよマウカルさん…」


と、俺が抗議すると、


「アルド君?」


と、ウレロさんまで店の奥から現れた…


『アルドは逃げようと試みた。』


『ウレロAにまわりこまれた。』


『アルドは逃げられない。』


『マウカルAの疑いの眼!』


『アルドはうまくかわした。』


『ウレロの「モニターで見てたわよ」のセリフ。』



〈クリティカルヒット!〉アルドは負けた…


結局、贔屓はダメと、


シラ・スラ・セラ・ソラの腕輪も作る事になった…


そして、


何故かメダル2000枚を手に入れた。


初日に言ってくれたら作ったのに…ボスラッシュ往復しなくても済んだよ…2000枚って…


〈ホントに間が悪い…〉


因みに妹の腕輪には武器スキルと魔法 レベルMAXを一種類づつ付与しておいた。


2000枚と手持ちの106枚のメダルで、〈状態異常耐性〉のスキルカード(300枚)を七枚交換した。


〈レベルが上がれば状態異常無効になるらしいから俺も含めて女性陣に渡しておいて損はないな…


特にシロちゃんは呪われた過去があるから…〉


と、ショッピングも終了し皆のもとに戻って来た。



早速プレゼントを渡すと、エルザさんは、腕輪を装備して、水魔法を木に向かって試し撃ちしていた。


そして、自分が作っておいて何だが、


洗面器サイズの腕輪が、ケモ耳少女の腕のサイズに〈シュッ〉っと縮み、シロちゃんの腕におさまった。

そして、フェンリルに戻っても子犬サイズになってもジャストフィットの大きさに、ちゃんと成っている。


〈凄いな…〉


と、俺が驚いていると、シロちゃんは、


「パパァ~!」


と空に叫ぶと、いつもの様に、


「なんだぁ~い?」


と、リバー様が答える。


キャッキャと喜びながら、


「パパぁ。腕輪もらっちゃったぁ。エヘヘっ」


と照れながら報告するシロちゃん、


「良かったでちゅねぇ~。

シロちゃんが幸せならパパも幸せだよぉ。

アルド君これからもシロちゃんをよろしくね。

じゃあ、体に気を付けてねぇ」


と言い残して通信が終了した。


シロちゃんは空に向かって手を振っている。


そのあとルンルンで女性陣チームに腕輪を披露しに行くシロちゃんだが、


シロちゃんが行った後で、


エルザさんが、


「あの~、先ほどのは…?」


と、恐る恐る聞いてくる。


〈まぁ、いきなり声が聞こえるからビックリするよね。〉


「ごめんね、ビックリした?

あれは人族の神様で狩神リバー様だよ。


シロちゃんのパパさん?…になるのかな?」


と言ったら、エルザさんは急に


「良がっだ…ひぐ、あだしだけじゃながっだぁぁぁぁぁ。」


と泣き出した。


〈えぇぇぇぇっどうしたの?〉


と驚く俺に、


「神の…グスっ…神の娘と言われて友達も少なかったがらぁぁぁあぁぁぁ!」


と…


〈おーよしよし…〉


と、ガチ泣きしてしまったエルザさんの肩をサスサスしながら慰めた。


〈神様の家族にもそれなりの悩みが有るんだね…〉


と感じていると、


エルザさんが、


「私、皆さんと仲良く成れるでしょうか?


こんな年上の女が、若い女性の中に入って…話が合うかも不安です…」


と弱音を吐いている。


〈魔族領でも箱入りの姫だったし、腫れ物扱いで同年代の友達もいなかったのか…


知らない人族の街だし…いくら魔族も住んでいるとはいえ不安だよな…〉


と、同情したが…


〈ん?年上…?〉


と気になる俺は、


〈エルザさんって25歳だったよね…?


若いよね…シルフィーちゃんは勿論、シロちゃんに至っては勝負にも成らない…俺ですら魂的には半分以下だよ…〉


と、考えながら、俺はエルザさんに優しく、


「後で皆に聞けば良いけど、エルザさんは女性陣の中でも一番若い!

そう、俺よりも…むしろ、若過ぎだよ。


困った事が有ったり、不安になったら〈お姉ちゃん〉って甘えとけば良いよ。」


と、伝えると、


キョトンとしているエルザさんに、


「帰りたかったら直ぐに言ってね。


お家の方々に相談しないで来ちゃったし、心配じゃない?」


と、俺が聞くと、エルザさんは、


「フフっ、父上に相談なんか要りませんよ、久々に出来た娘なだけで、私は第75王女ですから…」


と、笑っている。


えっハーレムなの?

と、一瞬考えたが〈久々に〉が気になる俺は、


「ダザールさんはお妃様が多いの?」


と聞いたら、エルザさんは、


「本人は、


奥さんを看取るのはもう嫌なので、長年独り身を続けていましたが、


〈お妃が居ないのは不味い〉と、百年ほど嫁は断っていたのに、お前の母上に押しきられたのだ…

百年ぶりの家庭も悪くないがな。


と語っていました。」


と、地上の魔族の神様の話しを聞かせてもらった。


〈あぁ、数ではなく期間が長いのね。〉


と納得する俺に、


エルザさんはニコリと笑い、腕輪撫でながら、


「私も〈お姉様達〉に見せてきます!」


と小走りで出て行った。



などといったプレゼントイベントが有ったのちに


女性陣チームから、


「さっさとダンジョン踏破して、全部終わらしてシルフィーさんとの結婚式をしますよ。


でないと、候補組に順番が来そうに有りません!


早速明日からダンジョンに行ってくださいね。」


と家を追い出されたしだいです。


〈シルフィーちゃんまで笑顔で…


俺は、シルフィーちゃん一途なのに…王都では、とある劇団のせいで、女を地方から集めるエロ伯爵みたいな扱いだし…劇団を訴えてやろうかな…〉


と思いながら、


女性陣チームに〈状態異常耐性〉のスキルカードを渡し、


バトラー達〈新・ゴーレムチーム〉には「経験の指輪」を渡して、女性陣チームの、レベル上げとメダル集めをお願いし、


俺は、ゴーレムチームとリザードマンの国に向かう事にした。


武神 ラウド 様から魔族からリザードマンの国を守れ!と言われてたが、


魔族が一時停戦してくれているのなら大丈夫かな?


リザードマンの国にも力が貸して欲しいけど、書簡とか何にも用意してないし…


〈よしジーク様に相談だな〉


「ミレディ、ジーク様に念話お願い」


と言うとすぐに、


「アルド君元気かな?」


とジーク様の声がした。


おれが、


「女性陣チームに、〈さっさとダンジョンを踏破して〉と追い出されたところです。」


と、報告すると、


「アルド君は、すでにシルフィー嬢だけではなく女性陣の尻に敷かれておるな…


押しきられて嫁が増える未来が見える…つぎの公演の演目に事欠かないな。」


と爆笑するジーク様に、少しイラっとするが、


〈グッ〉と堪えた俺は、


「リザードマンの方々に協力を仰ぎたいのですが、書簡も何も用意してなくて…


何か良いアイデアありませんか?」


と、ジーク様に聞くと、


「いらん、いらん。

リザードマンは基本的に政治など殆どせん。


協力させたければこう言うと良い。」


ジーク様は「コホン」と咳払いして、


「古の習わしにより王と語らいに来た!」


と…


〈なんだ、その呪文は?〉


と、思うが、ジーク様は、


「門番にでも言えば、すぐに王と会えるぞ。


あとは、アルド君の力量しだいだから、

頑張ってくれ」


と教えてくれて、


「では、終わったら楽しい報告を待っておるよ。」


と言って念話をおえた。


〈まぁ、王様と会えるのなら何とかなるよね。〉


などと、気楽に考えて、シルバーさんの引く〈飛ぶ馬車〉でリザードマンの国の王都〈 プラウド〉 に半月掛けてたどり着いた。



街の入り口で冒険者カードを見せてから入ったが、火山地帯のそばで温泉が湧き、朝市などが並ぶ活気の有るの街だった。


ゴーレムチームは街の外で、一旦待機してもらい、


マップスキルで王城を目指して歩いているが、やっぱり温泉が気になり、


今から〈謁見〉かもしれないから小綺麗にしておこう!


〈うん、そうしよう。〉


と、ひとりで決めて、温泉を満喫してから昼過ぎに王城にたどり着いた。


ジーク様の言うとおり、


門番さんに、


「古の習わしにより王と語らいに来た!」


というと、


門番さんは、「開門!かいもぉぉぉぉぉん!」と走り出して、


「王に知らせよ!10年ぶりの挑戦者が、現れたと!!!!」


と、騒いでいる。


〈へ?何事ですか…〉


と首を傾げる俺だったが…




色々ありまして、


今、ナウで、闘技場にて


「放出系スキルなし」

「ダメージ系スキルなし」

「魔法なし」

「武器、防具なし」

「目潰し、金的なし」


オープンフィンガーグローブの


「フルコンタクト」

「絞め技、関節技あり」

「技スキルは体術のみあり」


の プラウド ルールによる勝負をするらしい


…俺…。


目の前ににはムッキムキのリザードマンの王様が準備運動をしている…


なんで、なんでよぉぉぉぉぉぉ!

ジーク様のあほぉぉぉぉぉぉぅ!

こんなことなら教えておくれよぉぉぉ…


教えて…おくれ…よ…?


あれ?…あの野郎…狙ってた…?…


マジか!ハメられた…


ジークのおっさんに〈ズッポシ〉ハメラレタ!


…恨みます…


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