第54話 コーバで待つ師匠を目指して


予定より大分遅れた出発に成りましたが、巻き返す勢いで街道を南へと進み、シルフィー師匠の待つコーバの街を目指している…


なんせ馬車は不眠不休で走れるシルバーさんに道はマップスキルでバッチリなキッド君が御者だし、索敵も出来るから盗賊や魔物も楽々倒せる。


〈寝てても進むので、快適な事この上ない。〉


もう、王国の端の街まで来ました。


〈どんなRPGでも初めての街では情報収集だ。〉


と、買い物ついでに店屋のおばちゃんに最近の話題を聞いたり、街のおすすめを聞いたり…


あとは、掘り出し物を物色する。


マイステア周辺でスキルカードが良く出ると噂がこの街にも入っているらしい、

「兄ちゃんも冒険者ならダンジョンの神様の〈大地の女神様〉に祈れば良い宝箱に出会えるらしいよ。」

と店の高齢なお姉さんに教えてもらった。


〈よし、良い感じに広がってるな…〉


と、噂の広がりに満足し馬車に戻った俺は、ミレディさんに念話をイゴールさんに繋いでもらい、

作戦が順調なことを知らせた。


言い忘れていたが、


普段から私的に念話を使いっぱなしのミレディさんの念話スキルがレベルMAXになり、


〈登録人数最大27人〉


範囲 :

〈外線〉個別対象なら世界中可能、

〈内線〉100メートル以内であれば複数対象に使用可能。

※便宜上〈内線〉〈外線〉と呼んでいる。


内線と外線の併用可能。


スキル保持者を介して登録者同士の相互念話が可能。


になったので、


ファルを制作中にゴーレムチームみで、イゴールさんのベルベット…じゃなくてマスタールームにお使いに行ってもらった。


シルバーさんにミレディさんが乗り、キッド君は、キバさんに乗りメインダンジョンへ。


ミレディさんのアイテムボックスに一旦皆で入って、俺の腕輪を着けたミレディさんが認識阻害の指輪で俺になりすましてダンジョンへ…


ちなみにサインはコピーしたみたいにそっくりなのを普通に書いていた。


〈ゴーレムはすごいね。〉


町の情報収集も済んで、物資も追加で購入し再度馬車の旅を再開した。


今夜はマイステアからコーバまでの一番の難所、山岳地帯を越えなければならない。


〈明るいうちに難所を越えたい…〉


シルバーさんが引くシルフィ号にゆられ山岳地帯の細い道を進む…


すると、ミレディさん経由の念話がキッド君からはいる。


「ご主人様、進行方向に敵25、裏にも同数囲まれました。


…すみません。」


といわれ、俺もサーチで確認する。


〈隊列組んでるから盗賊だね。〉


俺はキッド君に、


「気にしなくていいよ。相手は〈こそこそ〉するプロだからむしろこの距離で気づいてエライ!」


と言っておいた。

マップを再度確認すると、入り口と出口が狭い広い場所で待ち構えている様子、


馬車の窓からファルを飛ばし、上空から俺の鑑定を共有スキルでリンクさせて敵の鑑定を行った。


『サルーン・ド・ヴェルタ』

〈サルーン盗賊団、頭目 〉


と、面倒臭い名前が出てきた。


マイステアの兵士さんが追い払ったらしいけど、追い払われた先が此処らしい…


〈捕まえとけよ。〉


と悪態をつきながら、敵の状況を偵察しているファルさんの視界を共有してもらっている確認すると、


入り口と出口が一つずつで、ぐるりと岩壁の〈待ち伏せするにはもってこい〉のひらけたポイントに、ご丁寧に壁の上に弓使いも配置している。


そして、


「アルド様、ミレディとの念話が繋がりました100メートル圏内です。


ご準備を」


と、ファルからの報告が入った。


俺は、「仕方ない!」と討伐作戦を開始する。


キバさんに馬車から飛び降りてもらい「気配消し」スキルで広場の入り口の外で待機してもらい、


ファルさんは上空で待機、弓部隊の対応を任せる。


ミレディに認識阻害の指輪で貴族令嬢になってもえば、準備万端だ。


とりあえず皆には、「殺しちゃ駄目だよ。殺すならスキル濾しとったあとだよぉ~」と念をおして作戦が始まった。


広場に入ると真っ赤な服装の男が馬に乗り仲間数人と道を塞いでいる


キッド君が馬車を止めると、


頭目の男が


「日暮れ時に急いで居られるところ失礼する。


何処かの金持ちの馬車とお見受けする…


大人しく全てを差し出せば命までは取らない!」


と、言っているサルーンには、バッチリ〈虐殺者〉の称号がある。


〈略奪ついでに村丸ごととか殺してるんだろうな…〉


と、思いながら俺は、ミレディさんをエスコートし馬車を降りる。


キッド君がシルバーさんと馬車の連結を外す。


馬車をアイテムボックスにしまったあとでわざとらしく


「ゴーレムよ、お嬢様を守れ!」


と、それっぽく言ってみた。

俺を庇う仕草のキッド君とシルバーさん

それを見たサルーン達は、


「ぎゃはは、カモだぜ。」

「荷物持ちのガキと令嬢だぜ。」

「ゴーレムか?ミスリルなら売れるぞ。」


などと口々にに言っている。


「頭ぁ、令嬢は頭が楽しんだ後回してくださいよぉ」

とか、

「頭、ガキはオイラが貰うぜ。ぐへへ」

なども聞こえてきた。


アホな盗賊が〈勝ち〉を確信し広間に集まったのを確認すると、


俺やミレディに注目が集まるなか、


〈もう、許せない〉


とばかりに、ファルさんに作戦開始を告げる。


すると、


「ぎゃやぁぁぁぁ!」


と、次々に弓を持った男が、一人、また一人と崖の上から降ってくる。


〈何だ?なんだ!!〉


と慌てる盗賊の上をスカイウォークで飛び越え出口を塞ぐシルバーさんと、


入り口から逃げようとしても彼方には専用の忍刀を咥えた乗れるタイプの忍者犬キバさんが盗賊のあしをズタズタにして誰一人通していない。


自棄になりミレディさんを人質にする作戦に出た盗賊にミレディパンチが炸裂。


といっても手加減パンチだが…


キッド君に腕を射ぬかれ武器すら持てない者の叫び声が木霊す異様な光景に、震え上がる者、怒り狂う者様々である。


正直鬱陶しくなった俺は、最終兵器の出動を命じる。


「ファルさん!」


と呼び、グランユニットをアイテムボックスから出すと、


「了解」


とだけ答えたファルさんが、片ひざをつき待機姿勢のグランユニットの頭部に飛び込む。


そして、


グランユニットの瞳に魂が宿る。


「うぉぉぉぉ!


機動巨人・ファルグラン!!」


と、ファルさんが名乗りをあげる…


〈カッコええ。〉


もうね、あとは作業です、作業。


白旗上げた盗賊団から、「身ぐるみ」と「スキル」に「MP」にしようか?と、思ったが、


〈五十人からの盗賊を運ぶのは面倒なので気絶は止めよう〉


となり、さてどうしたものか?と考えていたら、

ゴーレムチームからアイデアがでた。


「殺して首だけが楽デス。」… 却下


「ご主人様、腕力をなくすのは?」…保留


「主よ、生き埋めにして騎士団を呼びましょう。」 …うーん保留


「ご主人、縄で縛って歩かせる!」…おっ、保留にしておこう。


「アルド様、経験値を濾しとりレベルを下げた後、縄をうち、歩かせて騎士団にひきわたせば良いのでは?」


はい、採用!

ミレディさんの意見意外が、上手くまとめられた良案でした。


盗賊の「身ぐるみ」と「スキル」と「経験値」を濾しとり、


素っ裸に縄をうち、人としての尊厳も奪ってやった。


〈アイテムボックス持ちのスキルを濾しとったら馬車二台分程の中身がドバッと出てきたのには驚いたが…〉


裸に縄で縛られて、頬を赤く染めハァハァしてたヤツがいたが、あえて無視した…



一味を連れぞろぞろと、サルーン盗賊団のアジトに到着した。


現在俺たちは、素っ裸の大名行列を引き連れ、誰も使わなくなり放棄された砦にはいる。


留守番の盗賊三人もキバさんが〈麻痺〉させて倒し行列の後ろにふらふらのままで並ばせた。


アジトの財宝も押収し、


「よし、一件落着!」


と思ったが、


アジトの奥からすすり泣く声がした…


ミレディさんと声の方に向かうと、小部屋があり、中に鎖に繋がれた女性が二人…可哀想な姿で押し込められていた。


俺は、ミレディさんにフルポーションを、二本渡して二人を任せる。


部屋を出た俺は、気付けばサルーンをぶん殴っていた。


…危うく殺すところだった…


縄で繋がれた一味数名ごと吹き飛び、壁に叩きつけられた瀕死のサルーンに、


ポーションを数本出してキッド君に渡し、


「ぎりぎりで生かしといてくれ」


とだけ頼む。


俺は、彼女達にどれくらい前から此処にいるか聞き出し、捕まった日からの記憶を了解を得て濾しとった。


二人分の辛い記憶のカードをサルーンに渡し「割れ!」と指示する。


しかし、顎を砕かれ、歯もまばらになったサルーンは〈フルフル〉と首を横に振り拒否したが、


俺は再度、「割れ!」と感情無く命令する。


強張った顔でカードを割ったサルーンは、涙を流し、叫び、動かなくなった。


一点を見つめて、うわごとの様に、


「すまん、許して、すまん」と繰り返している。


嫌な気分だ…


女性二人をシルフィー号に乗せシルバーさんとミレディさんに任せる。


荷車を出してサルーンを乗せ一味の者に引かせる。


〈この荷車サルーン盗賊団しか乗せたことないな…〉


と、しょうもない事を考えながら、


裸の大名行列は丸1日かけて、王国の北西に位置した貴族領の領都についた。


まぁ、領都と言っても小さな町だ。


門番の兵士さんの話しでは、

保護した女性がこの街の領主の娘だそうだ。


娘が保護されたと聞きつけ、

領主が屋敷から兵の詰所まで駆けつけた。


そして、その領主は、逢ってびっくりあの油田顔の元文部大臣のおっさんだった。


おっさんは、俺を見るなり土下座をしてきた。


〈止めなよ娘さんが見てるぜ…〉


油田はザーネ子爵さんと言うらしい。


〈初めて聞いたよ…〉


俺は、ザーネ子爵に報告をして、サルーン盗賊団と押収品や身ぐるみを渡した。


娘さんが過ごした状況とフルポーションと俺のスキルを使い心と体の傷は癒したが、


〈一月以上盗賊団に拐われた娘として世間の目から守ることが大事だと〉


と告げて、後の事はザーネ子爵に任せて町を出た。


しかし、


もう一人の女性はハーフエルフさんで、帰る場所がないらしいからコーバまで一緒に行くことにした。


はぁ、疲れた。

シルフィ師匠成分がエンプティだ。

早くコーバの街で補給しなければ!!

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