第53話 新たな仲間と新たな出発

あぁ、外って良いよなぁ~。


「空気が旨い!」


シルバーさんの引くシルフィー号に揺られ、

一度マイステアの街にもどり、武器や防具のメンテナンスと食材の買い出しや不要品の販売を行う。


旅の資金集めもしながら、


いずれ名前が知れ渡る予定のママ女神の信仰を集める下地作りも行う。〈イゴールさんのアイデア〉


ダンジョンアタックで飽和状態の要らないスキルカードを世の中にばらまく〈大地の女神〉の加護のお陰で手に入ったという噂話をそえて…


すると、スキルカードは高価で売り買いされるため、ダンジョン探索の戦利品としては〈大当たり〉の部類である。


そんな、戦利品を手に入れたい冒険者達がこぞって祈るようになる。


「スキルカードを下さい…大地の女神様…」


と…


名前がないうちは、祈りはママ女神には届かないが、人の癖みたいなものはなかなか変わらない。


「頼むぜ!大地の女神様。」


と言って開けた宝箱に目当てのカードが入っていた冒険者は、次回からも験を担ぎ祈る。


そんな第一回目を作るための下地作りをしている。


しかし、宝箱にスキルカードがなければ駄目なのでは?と思うだろうが、


その点は抜かりなく用意してある。


ダンジョンマスターの〈イゴール〉さんとその手下の〈ベノン〉に任せてある。


ちなみにだか、ベノンはあのあとみっちり叱られて心を入れ換えたそうだ。


しかし、アホは死んでも治らない…。


俺は、いつか〈やらかす〉からと忠告したのだが、イゴールさんが、


「ダンジョンにパンチが足りないと、勝手に中層に水龍を配置するアホですが、三千年私に仕えてくれているヤツなので。」


と頼み込まれて釈放してやった。


ちなみに、サブマスターのスキルは返してやったが、〈呪い系スキル〉は没収しておいた。


代わりに魔物から濾しとった〈毒系〉のスキルを〈よく分からない物も含め〉ゴッソリとプレゼントしておいた。


今では虐められると臭い汁も出せる立派なサブマスターとして頑張っているだろう…


そんな二人に俺のアイテムボックス内の、当たり障りの無さそうなスキルカードを渡しておいたのだ。


定期的に管轄内の宝箱に入れたり、ミミックに預けるらしい。


あとで聞いたのだが、ミミックを倒しても魔石が出ないのは実は〈倒していない〉からなのだ…


ダンジョンマスタールームにミミック君の巣がありマスターに預かったアイテムを持って人の目に着く場所に移動してダメージを受けたらアイテムを手放し転移で戻るお仕事をしていたからなのだ。


…知ったときはビックリした。


イゴールさんは、


「インパクトのある撒き餌です。ダンジョンは、魔物を倒す冒険者が来てこそですから…」


と語っていた。



冒険者ギルドで不要な素材の買い取りを依頼し、スキルショップでスキルカードを


「大地の女神様のおかげで豊作でした。」


と言って結構な枚数売り払って…


さぁ、資金も出来たし、大地の女神イメージアップキャンペーンも出来た。


〈ちなみに、メインダンジョンを踏破した事はまだ秘密にしている。


ガキが踏破したと成れば悪目立ちするし、運良く80階層の転移陣しか使っていないので、誤魔化せている。〉


あとは、食材を買って帰ろうかな?


と、食材を何ヵ月分も買ったのち、あることを思い出した。


1ヶ月近くダンジョンに入りっぱなしで、改めて作りたいものが出来事を思い出した俺は、色々なアーティファクトのグズやジャンク品を扱う骨董通りに来た。


アーティファクトは昔の錬金術師が作った今は再現の困難な技術の結晶だが、作ることに意義を求め、使いどころがわからない物も多い。


そんなアーティファクトだが、

ジャンクとはいえスキルが付いてる物がある…


世界で俺だけ、このゴミからでもスキルが濾しとれるのだ。


色々なものを鑑定を使いながら探す。


時間をかけてようやく見つけた。


「魔石カイロ」

「魔石を利用し暖がとれる」

「加熱スキル」「温度設定スキル」


あったよ。


「店主さんこれ下さい。」


と俺がいうと、店主が愛想良く微笑む。


「まいどあり、まだ動くからね。

大銀貨三枚だよ。」


俺は、それくらい払えるが、ここでもう一声を引き出すのは、こういう店のマナーだと思う。


「えー、店主さんオマケしてよぉ」


と、甘えると、


店主さんは〈困ったなぁ〉の表情だが、流れるような動きで、何かを手に取り、


「兄さんは、小さい妹か弟は居るかい?」


と店主が聞く、


俺が、


「もうすぐ産まれるよ。」


と告げると、店主さんは〈ニカッ〉っと笑い


「ならバッチリだ!。


今ならそのカイロにこの壊れてくるくる飛び回るだけになった伝書鳥を付けよう。

目的地にもいかないし録音も駄目だが、

部屋を飛び回って、赤ちゃんをあやすのに持ってこいだよ。」


と…


〈よし!買った。〉


むしろ鳥がもっと欲しいくらいだが…。


なぜって?


付いてるのよ…〈飛行〉のスキルが…。


買い物を終えた俺は、ドルル叔父さんが代表になった工房に戻ってきて、


離れの工房をまた借りて、あるものを作っている。


〈簡易の風呂だ〉


魔石カイロから〈加熱〉〈温度設定〉スキルを濾しとり、猫足の湯船を作り魔石を入れる箱を取り付ける…


それに、スキルカードの〈加熱〉〈温度設定〉を獲得し鍛治スキルで湯船に付与し、

アイテムボックスから適当な魔石をだし箱に詰める。


〈完成!〉


と、喜ぶのもソコソコに、湯船に水生成で水を溜めて、そして風呂を起動してみる。



加熱スキルでみるみる温度が上がり、良い湯加減になった瞬間〈温度設定〉のスキルを発動させて、今の温度を設定させた。


〈魔石が続く限り、水さえ入れればいつでもポカポカだ…〉


そして、俺は〈ウキウキ〉しながら早速ひと風呂浴びる…


「あぁあぁぁぁぁ。」


唸り声をあげて湯船に浸かる俺…


ドタドタと足音が近付き、

そして、勢い良く離れの工房の扉が開けられる。


「マスター!大丈夫デスか?!」


フルメタルなメイドが扉を蹴破る勢いで入ってくる。


ついでに急に走り出したミレディさんを心配して、工房の女性チームも雪崩込んできて、


「あらあら」とか「おやおや」とか言いながら風呂のチェックと風呂に入ってる俺のチェックを穴が空くほどしたあと、


「アルドちゃん後でおばちゃん達も入るから宜しくね。」


とか、


「なんなら一緒に入るかい?」


などと言いながら出て行った。


「本当に女将さん達は、マスターの裸を堪能していいのはワタシだけデスのに…」


と怒るミレディに、


「ミレディさん?」


と、声をかける俺…


「はい?マスター。」


まるで何事もなかったようなミレディさんに


「ダンジョン意外は念話、オフろうか?」


と優しく提案する俺に、


「断固拒否しマス。」


と、言い残し逃げた…


〈アイツは…〉


と呆れながらも風呂を楽しみ、


その後、ドルル叔父さんも話しを聞きつけ風呂に入りにきて、


この風呂をドルル工房の名前で鍛治ギルドに登録したいと言ってきたから、工房長の就任祝いでプレゼントしておいた。


じつは、〈加熱〉〈温度設定〉のスキルは鍛治師に生えやすいスキルで、生産の目処が立ちやすいとのことだった。


〈沢山儲けてね。〉


叔父さんに年に何台かはシルフィー商会に卸してくれる約束もしてくれたからシルフィー師匠も喜んでくれるだろう。


〈先に一台パパさんとママさんに買って帰ろう。〉


そして、


次に作る物が完成したら、皆でコーバの街に行くことにする。


〈大移動になるな…。〉




ー 数日後 ー


俺は、現在ドルル叔父さんと工房の男衆で、

大工事の真っ最中である。


本当は、作りたいものがあるのだが、工房の裏の庭に、女将さん命令で井戸を掘っている…


井戸の堀りかたは簡単、


まず、井戸が欲しい場所に簡単な櫓を組み、滑車で俺を吊り下げます。


そして、ロープの反対側をゴーレムチームに任せて、


「ピットホール」


念話で「二メートル下げてぇ~」

と言うと、ゴーレムチームが俺を地下へと下ろす。


を繰り返し水が染みだして来たらラストのピットホールをして地上へ、


工房の石材加工が得意な数名が井戸に入りに穴の壁を補強する。


3日もせずに立派な井戸が出来上がる。


ドルル叔父さんに「記憶の水晶」で手押しポンプを説明して制作を手伝って貰った。


叔父さんはこれも鍛治ギルドに登録したいと言ったが、


〈残念、既に俺の名前で登録してあります。〉


「作って売る度に俺に小銀貨三枚程度払ってね。」


と、俺が告げると、「それでも良いから作る」と叔父さんは言っていた。


〈確かにマイステアではまだ見てないな手押しポンプ…〉


さて俺は、女将さんからの依頼の品を作成していく…


〈薪釜の風呂だ。〉


女将さんから、


「お風呂に初めて入ったらもう水浴びや体拭きだけには戻れない。」


しかし、


「一人づつでは魔石が勿体ない。」


なんとかしてくれとの依頼があったのだ。


ミスティルの人は「着火」がつかえるから薪さえあれば火が誰でも起こせる。

ならばと、魔鉱鉄で二~三人入れる湯船をつくり錆びない様にミスリルでコーティングする。

湯船の側面の一面に、穴を二ヶ所底と中程の上下に開ける。

その穴にU字に曲がった熱に強いパイプを付ければ出来上がり。

あとは井戸にポンプを取り付け隣に湯船を設置し鍛治釜戸と同じ耐熱レンガで焚き口と煙突を作り、男衆が小屋を建てれば完成です。



なんという事でしょう…

匠の手によりただの裏庭が、立派な井戸付きのお風呂になりました。


脱衣室に換気用のスライド式の格子戸もついた快適なお風呂で…って、女将さん達早速水を湯船に入れ始めたよ。


まぁ、気に入って頂けた様子で何よりです。


〈やっと自分の仕事が出来る!〉


と思ったらドルル叔父さんがやって来て、女将さん命令で、俺の名前で鍛治ギルドに特許を出すように言われたと、しょんぼりしてやってきた。簡易の風呂は、お貴族様向きでかなりの稼ぎになる。

それを甥っ子からただで貰ったのが女将さんにバレたらしい。


工房長の就任祝いですと言ったが、甥っ子から貰う物にしては、「貰いすぎだ!」とコッテリしぼられたそうだ。


女将さんに


「薪風呂の特許はアルドで申請して、多分ドドルじいちゃんが面倒を掛けてる妹のルルドちゃんに鍛治ギルド経由で送金出来るように手続きをしてこい!」


と、なり鍛治ギルドに赴く事になる。



全ての手続きを済ませて、工房に戻り


離れの工房で鍛治仕事をはじめると仕事着姿のドルル叔父さんがやってきて、


「面白い事の匂いがするからまぜろ」


と、手伝ってくれた。


まだまだ知らないテクニックが有って勉強になる。


大変助かる助っ人の登場で予定より早く一ヶ月ちょっとで仕上がったのが、


『オリハルコンゴーレム (SR) レベル 160 』

〈隼タイプゴーレム〉

「飛行」「自然修復」「魔力吸収」

空きスキルスロット 5

固有スキル「演算」「博識」「共有」「同期」


と、スーパーレアゴーレムだけ有ってミレディさんの指揮官的な能力だけではなく参謀のような知識高い系のゴーレムさんだ。


「演算」は、緻密な計算がハイスピードで行え

「博識」は、鑑定の上位互換キーワード検索が可能

「共有」は、登録した者とスキルやデータを共有可能

「同期」は、登録してあるゴーレムフレームを自身の体として使える。


この肩のりサイズのオリハルコンの隼に1ヶ月以上も費やしたのではない…


〈隼〉自体は2日で完成したが、本人から、


「アルド様、ゴーレムフレームの作成を希望します。」


と言ってきて、


俺が、


「ゴーレムフレーム?」


と聞くと「共有」でイメージや、データを送ってきた。


拡張ボディー?追加パーツ?


とりあえず…〈ロボ〉だった。


本来ならデカイ外付けゴーレムにインして活動し、ヤバくなれば体を捨てて新しい外付けゴーレムにインすればまだ戦える物騒な技能だが、俺とドルル叔父さんは、大いに興奮し、一ヶ月でゴーレムフレームを完成させた。


『オリハルコンボディーのゴーレムフレーム』


関節部や骨組にアダマンタイトを使用し、


ミスリルで粘りと軽さを与え肉付けをした物を土台に、オリハルコンで厚く外装を張った最高傑作「自然修復」と空きスキルスロットを9 も持つ自由度の高い機体である。


完成したのでゴーレムチームに御披露目と名付けを行う。


隼タイプゴーレムの名前をファルコンから取って、「ファル」と命令した。


デカいゴーレムフレームは、「グランユニット」と名付ける。


そして「ファル」が「グランユニット」と合体した時は「ファルグラン」と呼ぶことに決めた。


「私の名前はファルに決まりました。皆様宜しくお願い致します。」


とゴーレムチームに挨拶をすると、


ミレディさんが新しいゴーレムが隼の姿に〈ホッ〉としている…


はて?と首を傾げていると、


「マスターが新しいゴーレムを作ると聞いて女性型だったらと心配していたのデス。


マスターの嫁のミレディなのデス…〈ファル〉デスね…宜しくお願いしマス。」


と、左手の薬指のリングをファルに見せていた。


ファルが、


「アルド様の奥方でしたか!」


と言っていたから、


「違う。」


と俺は、〈ピシャリ〉と否定をしておいた。


念話で、「ヒドいデス」と言ってきたが、ファルが「念話ですねこれは便利」と早くも念話に順応していた。


キッド君やシルバーさんにキバさんも

ミレディさんの念話ルームでファルさんとワイワイしている。


仲良くなれたみたいで何より…


やっと出発できる。

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