第15話 旅立ちの前の最後の夜
今日は、週に一度の市場が立つ日です。
つまり、明日にはこのキャラバンの馬車に乗り出発です。
あっという間の二週間でした。
バタバタはしましたが、二週間で、出来る事は少なく、
ロルフ先生に2回狩りに連れて行ってもらい
角ウサギを3羽と、跳ね鹿を2頭を手にした。
ロルフ先生は経験値が要るだろうからと、毎回トドメを譲ってくれた上に、
「仕留めたヤツの取り分だ!」
と、売った分を全部くれたので、今では、
小銀貨が30枚と大銅貨18枚
を所持している。
落とさない様にアイテムボックスの中だ。
シルフィー師匠が、スリ対策に成るからお財布は常にアイテムボックスが望ましいとアドバイスをくれた。
ちなみに
鉄貨 = 1円程度 (余り使われない)
小銅貨 = 10円程度 (お釣の常連)
大銅貨 = 100円程度 (市民の味方)
小銀貨 = 1,000円程度 (1枚でギリギリ安宿)
大銀貨 = 10,000円程度 (田舎で家が借りれる)
小金貨 = 100,000円程度 (見たことない)
大金貨 = 1,000,000円程度 (見ずに終わるかも)
十枚毎に両替可能なので、31,800円程持っている計算になる。
そして、今日は村で過ごす最後の日…
明日には馬車で辺境伯領の領都を目指す。
なので、
旅の支度をするために市場に来たのだ。
もちろん、パパさんとママさんと一緒に…
始めに、
シルフィー師匠の店で、罠用のロープと鉈を購入する。
店に到着すると、
シルフィー先生が、見た目が同じ鉈を三本持ってきて、
「どれも同じ値段、小銀貨五枚です。
さて、アルド君ならどれを買います?」
と質問してくる。
俺は勿論 「鑑定」を使って三本を見比べる
左の一本だけ、「名工ドドルの業物の鉈」
と、結果がでた。
俺は
「左を下さい。」
と告げると、シルフィー師匠は、
「大正解、卒業試験合格です。」
と言いって、
今、絶賛ギュッてされています。
〈幸せです…師匠…〉
今日は気を使ってか、まだママさんストップが入らないので、幸せが長続きしております。
満足されたようで、〈ギュッ〉を終了したシルフィー師匠がルンルンで、
「で、アルド君、この鉈の鑑定結果は?」
と聞いてくるので、
「名工ドドルの業物の鉈です。」
と答えると、ママさんが、
「親父の作なの?」
と、驚く…
〈えっ?〉
と、俺も驚くが、シルフィー師匠が、
「そうでーすアルド君のお爺ちゃんの作品です。」
と教えてくれる。
ママさんが申し訳なさそうに、
「シルフィーさん今は流石にそれを買う余裕は…」
と、師匠にいうと、
「ナニを言っておられるのですか?商人が一度値段を付けてお客様に出した商品を安く勉強することは有っても、高くすることは有ってはなりません。
小銀貨五枚です。ロープはサービスになります。」
と、師匠が宣言する。
パパさんも、ママさんも深々と頭を下げている…
〈凄い物だろうけど、鑑定で定価は出ないからなぁ。〉
と考えながらも、
俺もシルフィー師匠にお礼を言って次は市場に向かう。
旅に出るにあたり、
せめて、ショートソードと皮の胸当ては欲しいところだ。
防具の露店に着くとロルフ先生が待っていた。
「坊主、いよいよ明日だな。大将注文してたヤツをこいつに合わしてくんな。」
と、いうと店の人が俺にスポッと皮の鎧を着せていく。
「良く似合ってるぞ、俺からの餞別と云いたいが、坊主の獲物の皮を鞣して作ってもらったモンだ気にせず使え!
どうせすぐ金持ちに成るだろうが、それまでの繋ぎにはなる、加工賃だけ餞別だ!」
と、言いながらも、ウルウルしているロルフ先生…
鑑定レベルが上がり、〈こっそり鑑定〉が出来る俺は、皮鎧を鑑定した
〈ファイアリザード皮を芯に使った跳ね鹿の皮鎧〉
と鑑定結果がでた…
ロルフ先生の自慢の獲物、昔一匹だけ倒すことが出来たファイアリザードの皮を芯に使っている!
俺は、先生の心遣いに感謝をしながら、
「有り難うございます、ロルフ先生。
この鎧と一緒にお役目頑張ります。」
と伝えると、ロルフ先生は、
「おうぅぅ、がんばぁれぼぉぅぅぅ。」
とカッコ良く右手を上げて去っていくロルフ先生…
背中どころか全身で泣いていたが、見ないであけた。
本当にありがとうロルフ先生…
背中が見えなくなり、パパさんとママさんと一緒にお買い物の続きだ。
ちなみにこの鎧の件はパパさんもママさんも事前に知っていた様子だである。
採寸したみたいにぴったり過ぎるもの…
続いて、
武器の露店の前ではフリューゲル様が執事のトンプソンさんと共に待っていた。
「アルド君、待っていたよ。
武器の一つも持たせずに子供を送り出したとなれば村の恥じだからな、受け取ってくれ!」
と、言っているが、
〈えっ?どれを?〉
と思ったら、ここ、露店ではない!?
村の武器庫なのね。
そんな事を思っていたら、トンプソンさんが、
「失礼します。」
と、腕や足の長さを計り、物凄い手際で5つ武器をテーブルに並べた。
ショートソード
鉄のハンマー
弓と矢
ナイフ
そして、ナニやら紋章の入ったガントレット
最後のガントレットを鑑定したら
「命のガントレット」
「亡国の王からの友情の証」
「使用者のHP、微回復効果」
と結果がでた。
俺は、
「フリューゲル様の思い出の品ですね。」
と聞くと、寂しそうに笑うフリューゲル様は、
「あぁ、一緒に連れて行って欲しい、私と親友の思いも…」
と、俺の肩をポンと叩く…
「有り難うございす。」
と頭を下げて、俺はガントレットを装備して、
「一緒に頑張って来ます。」
とフリューゲル様に答えた。
アイテムボックスに他の武器をしまっていると、
トンプソンさんが、ナニやら箱を持ってきた。
「アルド様、村の皆からです。」
と、教えてくれた。
箱の中身は、
ターニャちゃん一家から鋼のスコップ(ターニャママの自慢の逸品)
バセル神父からは小型テント(教会の有難い魔よけの刺繍があり高性能。シスターの思いが一針一針こもっている。)
〈これは、ほぼシスタークリステラからだな。〉
トンプソンさんからは、古いバンダナ(鑑定をかけると、義賊のバンダナ 速さにプラス5の補正)と、地味に凄いが、義賊の辺りが気になる。
そして、
ママさんのサブウエポンの投げ斧
パパさんからは、各種ポーションセット
だった…
俺は振り向きパパさんとママさんに抱きつく。
そして、村の皆もありがとう…
村で過ごす最後の夜、
俺はパパさんとママさんに挟まれて寝た。
挟まれてるというか、ママさんに抱きつかれて眠った。
幸せな気分と、たまにくる締め付け…
目が覚めてママさんの顔をみると眠りながら涙を流していた。
パパさんはほとんど寝ないで、赤子の時のように背中をトントンしていた
〈とっとと強くなって使命を果たして戻ってこよう
一日でも早く!〉
そう思いながら優しい締め付けと振動に、ゆっくりと眠りに落ちていった。
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