第89話 センスが終わっている

皆様こんにちは、

開いた口が塞がらない

アルドです。



なぜなら、メインダンジョンの最下層に神殿が有ったのですが、


旗の代りにフンドシが掲げられ、


後ろ向きの御神体の武神様の像にもフンドシが絞められている。


フンドシ教の総本山にやってきました。



グレイスさんが


「武神様を祀る神殿でございます。


そして、この神殿の主、ダンジョンマスターの〈カノンさま〉でございます。」


と、紹介され、


神殿の奥の扉が開き魔族の少女が入ってきた。


そして、


「冒険者よ、武神 ラウド 様を崇めよ!」


と先端にフンドシが結んである杖を掲げた。


俺はグレイスさんに、


「武神様のみを崇拝する宗教の施設ですか?」


と聞いてみたら。


「いえ、マスターの趣味と性癖の結晶です。」


とのことでした。


〈何が何やら?〉


グレイスさんが、


「このダンジョンが出来てすぐに、ラウド様がお忍びで腕試しに来られた事が御座いまして、


私の待つ90階層に単身乗り込まれ、


〈武器も、防具も使えぬのならこの身1つで戦うまでだ!〉


と全てを脱ぎ捨ててフンドシ姿で挑んで来られたのをモニターで見ていたダンジョンマスターの性癖にぶっ刺さり、


それ以来、ラウド様の食い込んだフンドシを崇める宗教の教祖の様になってしまわれました。」


と教えてくれた。


〈お気の毒な…ラウド様。〉


カノン様とやらがなにやらラウド様の像の尻に向けて祈りを捧げている最中も、


「私も、戦いの後にはあのフンドシの舞を踊る決まりになり…なんとも…」


と苦々しい表情のグレイスさん…


〈あんなにノリノリで尻をプリプリンとリズミカルに振っていたのに?〉


そして、ヤバい性癖の少女カノンさんは、


「くい込みを崇めよ!揺れ踊る尻を崇めよ!」


と…


〈あぁ、この女、性癖終わってるな。〉


と、呆れながらも踏破の証をもらい転移陣の登録を済ませて、


他のダンジョンマスターと念話をつなげて状況を説明して協力をお願いした。


カノンさんが、


「えー面倒臭い。」


と露骨に渋ったが、グレイスさんの、


「母神さまが復活されたら神界の神とお付き合いする機会が増えますなぁ、


もしかするとラウド様の勇姿が見れるかも知れませんなぁ」


と白々しいアシストに、ガッツリ食いついたカノンさんは、


「そうだのぅ!


ラウドさまが地上に降りる機会が上がるかもしれんのぅ


わらわの千里眼で地上のどこでも見れるが神界は覗けぬからのぅ」


と協力してくれる事になった。


ミレディさんの念話の登録にカノンさんを入れておいたが…今後まともな会話が出来るかな?…と少し心配しながらダンジョンをあとにして、地上へと転移した。



俺たちは最後のダンジョンに向かう為に一度俺の領地にもどる事にした。


なぜならシロちゃんのダンジョンの腕輪がないと妖精の里のメインダンジョンの80階層に潜れないからだ。



しかし、

シルバーさんの空飛ぶ馬車で飛んで戻る最中にミレディさんが、


「このままでは、ノエルさん達を追い抜いてしまいマス


馬車で長旅をして戻ると後から出発した我々が先に到着していたら、

乗せてくれても良かったのに…

となるのデス」


うーん、一旦コーバに行ってダニエルさんと、ヒラリーさん、それとフレアちゃんを乗せてから帰るかな。


よし、そうしよう!



空飛ぶ馬車は約1ヶ月かけてコーバの街に着き、ジーク様に少し文句を言いに行ったが、


王都の劇場の最新のチラシを渡された。


『少年伯爵 アノル の世界嫁取り旅行紀』

『お陰さまで期間延長決定!!』


と、書いて有った。


〈もう、帰りたい…〉


と、心をポッキリと折られてしまった…


俺が、


「ジーク様、俺もう、領地に引っ込みます。

屋敷の皆も連れてかえります。


もう、虐めっ子のジーク様のいるコーバには帰りませんサヨナラ。」


と部屋を出ようとしたら、


「お兄ちゃんに挨拶してから領地に帰るんだよ~。」


とジーク様にトドメを刺された。


〈グフッ…いつか泣かしてやる…〉


と、負のパワー〈本人のイメージです〉を送りながら部屋をあとにし、


騎士団の詰所にまわり、騎士団長に挨拶をしようとするが、


ここでも団員に、


「団長、弟の少年伯爵様が嫁取り旅行から戻られて団長に挨拶に来ましたよ。」


と、弄りに弄られ倒していた。


「お、おう、」


とぎこちない団長さんに、


「えー、この度ジーク様の策略でお父上とガチンコ プラウドファイトをけしかけられて、見事王座を渡されそうになり、断ったら妹さんを一旦預かる事になりました、あなたの妹さんの保護者的なポジションを望んでおります。


不服ならば、文句はジーク様に、もしもこの街でクーデターを起こすなら全力で協力いたしますのでヨロシク!


なんなら今からジーク様に古の語らいでも仕掛けにいきますか?」


とまくし立てたら、


「妹の事嫌い?」


と、心配そうに聞く騎士団長さん…


「ノエルさんは嫌いではないですよ、あまり話せませんでしたが、むしろ好ましく思っています。」


と俺が言うと、


ホッとする騎士団長に、俺が、


「しかし、今回のジーク様のやり方には少し思うところがありますので、今から数年がかりで嫌がらせをしてやろうかと考えています。」


と、宣言すると、


騎士団長さんは違う心配が膨らみ、


「ジーク様が何かしたのは理解したが、

お手柔らかに頼むよ…

一応、アレな所もあるけど、

オレの恩人なんだよ…


将来〈お兄ちゃんに成るかも知れない〉俺からのお願いだから。」


と、おどけて見せて俺の怒りを鎮めようとする騎士団長さんに、


「大丈夫ですよ、

ちょっと、旧帝国領を全部魔王軍に返してもらって、全部俺の領地にしてシルフィー商会の施設も研究施設もそちらに移設するだけですよぉ。


ノエルさんに会うのなら騎士団長もどうです?


騎士団丸ごと引き抜きますよ。」


と、笑顔で伝えた。


すると、騎士団長はため息をつき、


「うん、アルド君がマジで怒ってるのは解った。

後でジーク様にオレからも言っておくから思い止まってほしい。


コーバはアルド君とシルフィー商会で成り立っているので頼む、支店機能は残してくれ、頼む!!」


頭を下げる騎士団長に、ヤバい怒り過ぎたと反省し、


「あははは、じょ、冗談ですよ。」


と言って逃げ帰り、屋敷の皆を連れて、砦の街まで帰ることにした。




いい加減、俺の領地の領都の名前決めなきゃね。

〈砦の街〉では、格好がつかない…



そして、数日後…


今、俺の領地の領都〈アルドニア〉の農業区画にある、実家に来ています。


〈アルド伯爵の領都でアルドニア…安易だが、良い名前が決まりました。〉


そして、街の成長にも驚いたが、


子供の成長はもっと凄い…


妹が喋るし、歩くし、俺を見て「嫌ぁぁ!」と、泣きます…

女性陣チームもゴーレムチーム達ともキャッキャと遊んでいるのに、俺は未だに抱っこは勿論まともに顔すら見ていないかも知れません。


〈悲しいです…〉


因みに妹はパパさん似です…


それだけでも、良かったよ…俺が、ママさんの遺伝子を色濃く受け継いだから、パパさんが家族で少し浮いてたのよ…これで2対2でバランスが取れたよ…あははは…


と、何とか自分の心のバランスを保ちつつ、


パパさんとママさんに別れをつげて、

とぼとぼと、知らない間にアルドニアに建てて貰ったコーバの街と同じ作りのお屋敷に帰ってきた。


ただ少し違うのは、ドアノッカーがリアルな熊からテディが輪っかを咥えてる形の物に変わってるくらいである。


「コン、コン、コン」


とテディのドアノッカーを使うと、


「はい、どちら様でしょう?」


と、フレアちゃんの声がした。


「只今もどりましたぁ。」


と俺が言うと、


「旦那様、今扉を開けますね。」


と、扉を開けてくれ、


「お帰りなさいませ旦那様」


と言って出迎えてくれるフレアちゃんに、


「お客さんの居ない時はアルドでいいよ、フレアちゃん。


旦那様ってなんかくすぐったいからね。」


と俺が言うと、


「ウフフ、伯爵様になってもアルド君は変わらないね。

でも、私もプロのメイドさんですので、出来る限り、きっちりさせて頂きますわ、

旦那様。」


と、ニッコリするフレアちゃんに、


「では、早速だが工房に行くからお茶をたのむよ フレア。」


と当主ぶってみる俺に、


「ウフフ、あとは威厳さえ有れば世界一の旦那様なのですがね。」


と、フレアちゃんが笑っていた。


「威厳ねぇ?


よし、早くお茶を用意しろぉ

遅れたらお尻ペンペンだぁ。」


と言いながら屋敷の工房に向かった。


〈威厳と言われても、良く解らないや…〉


工房で「記憶の水晶」で味噌や醤油の作り方を調べる。

確か日本の首都みたいな名前のグループの番組で作ってたよね。


と記憶を引っ張りだして、


レシピを発見する…


大豆 = 未発見

塩 = ある

米麹 = なにそれ?


無理…なのかな?


でも、大豆は欲しい!

枝豆食べたい。

豆腐なら作れるが…醤油が無いから冷奴はむりかなぁ?


と考えていたら、


ワゴンを押してフレアちゃんが工房入ってきて、


「旦那様、お茶のご用意が遅くなり申し訳ございません。


どうぞ。」


と後ろをむいてお尻を付き出した。


「ん?なに?」


と俺が聞くと、フレアちゃんは


「お尻ペンペンですよね、遅れたら。」


と笑顔で言ってきた。


「えっ、わ、わざとゆっくりしたのは対象外としましゅっ!」


と、俺は焦りながら宣言したのだが、あまりのテンパり具合に自分でも吹き出してしまい二人して笑った。


さぁ、笑って元気も出たから、


〈よし!大豆をさがそう。〉


と、気合いを入れて、旨いご飯を食べる為の第一歩を踏み出した。


〈あまりのんびりもして居られないからな…〉


ダンジョンショップが本命だが、メダリアの市場も回ってみるかな。


と屋敷から出ようとしたら、バトラーがダニエルさんとホールで作業をしていた。


「ダニエルさん、バトラー、何してるの?」


と聞くと、


「シルフィ奥様とミーチェ奥様が街の計画会議からお戻りに成られる時間ですのでお茶の準備をしております。」


とダニエルさんが教えてくれた。


〈そっかぁ、街の事を丸投げしてるから気まずいな。〉


早めに出掛けようかな?…


「ダニエルさん、バトラー、シルフィちゃんとミーちゃんに、うんとサービスしておいてね。


俺出掛けて来るから。」


と、〈逃げてしまおう〉と玄関へ向かうと、


バトラーが、


「御主人様どちらへ?」


と聞いてくる。


嘘はつけないから、


「ダンジョンショップに買い物に…」


と、白状すると


「こちらを。」


と袋を3つ渡してきた。


「ノエル奥様達のレベル上げの際に手に入った分のメダルでございます。


一袋千枚入っておりますのでお使い下さいと奥様方から預かっておりました。」


と説明してくれた。


〈有り難うね皆、逃げようとしてごめんね…〉


と心の中での詫びていると、


バトラーが、


「あと、シルフィー様から伝言でございます。


メダリアに逃げるのなら冒険者ギルドに寄るように、いい加減アルド君がA級冒険者にならないと皆も申請に行けないんですからね。」


との事でした。


〈バレてる。逃げる事バレてるよ…〉


俺は、変な汗をかきながら、


「解ったよ」


と、平静を装い翼膜のマントを装備して、


逃げた。



そして、

メダリアの街に来て、初めて冒険者ギルドに入ると、なかなかの広さの施設だった。


窓口にの列に並んでいると、


「やっと来られましたか、アルド君…いやアルド様だね。」


と、言われて振り向くと、

アサダの初級ダンジョンの冒険者ギルドの支店長のジムさんがいた。


驚きながらも、


「ジムさん、お久しぶりです。」


と俺が言うと、


「覚えていてくれましたか。」


と、ジムさんは、ホッとしている様子だった。


俺は、


「どうしてここに?」


と、素朴な質問をしたら、


「アルド様の領地に冒険者ギルドが出来ると聞き移動願いを出したんです。


おかげさまで、支店長から晴てギルドマスターになれ、奥さんも貰う事が出来ました。」


と目をうるうるさせるジムさん。


そういえば、狙ってた女性職員が、寿退社したんだったね…


「おめでとうございます。


で、奥様はどの様な方で?」


と俺が聞けば、ジムさんはキョロキョロと、辺りの職員さんを気にして、


「昇級申請も行いますのでマスタールームへどうぞ。」


と、小声で囁いたあと、奥の部屋に連れて行かれた。


部屋に入ってすぐにジムさんが、


「では、ギルドカードを」


と事務手続きを始め、


ジムさんは、作業をしながら、


「実は、アルド様もご存知の者が私の妻なのです。」


とのセリフに頭をフル回転させるが誰か解らない。


「どなたです?」


と俺が、降参して聞けば、


「私の後輩で一時は直接の部下だった女性です。

アルド様のおかげでメダリアの街のシルフィー商会の隣の一等地でお茶に合うお菓子を売るお店を出店させて頂いております。」


というが…


〈全く解らん…〉


俺が、考えている間に作業を終えたジムさんが、


「こちらを。」


とAと書いてあるカードを渡しながら、


「覚えてませんかぁ…」


と、ガッカリしているジムさん…


そして、ヌルッとA級になった俺に


「メインダンジョンの受け付けをしてたのですがねぇ」


と呟くジムさんの言葉に、


〈!!あの受付嬢か!!〉


ピンときた俺が、


「もしかして、報告書を泣きながらかいた?」


と聞けば、


ジムさんは、なんとも云えない笑顔で、


「妻からはチビりながら書いたと聞いております」


と…


〈うん、知ってたよ、知ってた上であえて濁したのに…〉


俺は、話題を変える為に、


「なぜ、彼女がジムさんと?」


と質問したら、


「昔ちょっとありまして、たまたまこの街で再会して、アルド様の話で盛り上がっているうちに、子供が出来まして…」


と、真っ赤になりモジモジしだすジムさんだが、


〈いや、いや、いや!俺の話で子供が出来る訳ないだろう?


どんな事しながらお話してたんでしょうか?!〉


と思いながらも、


「お子さんもおめでとうございます。」


と俺が若干ひきつりながらお祝いしたら、


「あとで店も見てやって下さい。

あの時漏らしながら書いた報告書のボーナスで買ったお店ですから。」


とジムさんに勧められた俺が、


「お店の名前は?」


と聞くと、ジムさんは、


「お茶とお菓子の店 モレシャンです。」


と答えた。


〈あの受付嬢のセンスよ…まだシャンだから良かったが、ションならば、まんまの名前じゃねぇ~か?!〉


俺は、確認の為に


「モレ…〈シャン〉…ですか…」


と聞くと、ジムさんが苦笑いしながら、


「あの時の感動と喜びを皆に届けたい…との思いらしいですが…〈ション〉を思い止まってくれて、本当に良かったです。


まぁ、人には聞かせられない命名秘話ですので…」


と…。


ジムさんは、まともな感性で良かったよ…


〈この後、この足で店に向かう〉


とジムさんに伝えて冒険者ギルドをあとにした。



〈A級に成った感動など微塵も感じないほどの衝撃的な話しを聞いてしまった…〉


と、良く解らない感情のまま大通りを進み、お洒落な黄色い屋根の可愛いお菓子屋さん〈モレシャン〉に着いた。


〈命名秘話を知った後では屋根の色も違う意味合いを感じる…〉


と、もう軽い気疲れを覚えながらも、店に入った俺は、甘く優しい香りに包まれた。


そして、


「いらっしゃいま…せ… !アルドさま!?


お待ち申し上げておりました!!」


と少しお腹の膨らんだあの時の受付嬢がカウンターから出てきた。


「動いて大丈夫なの?」


と俺が聞けば、


「生まれるのはもう少し先なので大丈夫ですよ。


でも、アルドさまに会えた悦びで赤ちゃんも出てきちゃうかも知れませんね。」


と怖い事を言う。


〈あまり興奮させると本当に産みそうなので帰る事にしよう〉


と、決めて、


「子供が生まれて、バリバリお店に出れる様になったらお菓子のレシピをプレゼントするよ。

元気な赤ちゃんを産んでね。」


と店を出ようとしたら、


「うっ…出ちゃうかも…

アルドさまがいっぱい買ってくれないと何かが出ちゃう!」


と、冗談を言ってきたが、


〈前科があるので、冗談では無いかもしれない…〉


と、不安に成った俺は、クッキーなどをごっそり買ってから店を出た。


「またのお越しを職員一同お待ちしております。」


と、店の外まで店員さん達にお見送りしてもらいながら、


〈ちょっとお買い物のつもりが、大出費になってしまった…。〉


と、少し後悔しながらダンジョンへと向かった。

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