第27話 新たなる発見

皆様おはようございます。

今日も元気に謹慎生活中の、アルドです。


唯一の失敗は、濾過ポイを使って、


〈インスタントティー〉を作ろうとして、


失敗しました…


予想ではサラサラの粉が出来て、お湯をいれたらあら不思議、お茶の出来上がり!


の予定でしたが、


いざ、濾過ポイを確認すると、緑の紙状の何かが出来ている。


念のためコップに入れてお湯を注ぐ。


なかなか溶けないんだなぁ~、これが。


こんなものは駄目です。


よくよく考えたら、いつでも着火で火が起こせて、水生成まで使えるのが基本のミスティルの方々が、インスタントを欲しがるかが疑問だ。


買った茶筒達もしばらくは、アイテムボックスの肥やしになります。


かといって、休んだ言い訳に言った「研究中」のセリフを信じて、期待してくれている冒険者もいる。


〈なんとかせねば。〉


と困り果て、お高そうなので足を運ばなかった、領都で一番の商会に来ている。


もう、何もかも高そう…


店員さんも揃いの制服でビシっと決まっていて、店の雰囲気に圧倒される。


が、市場や露店では見ない商品が沢山ある。


解らない場合は、鑑定先生がマンツーマンで教えてくれるので安心して高級店にもトライできる。


因みに、お金は、お茶販売分だけでは不安だったので、


手元に残す分を省いたポーション類を売ったら、高級店にもビビらずに来れる額になった。


大金貨様のパワーは凄い


店を回ってみたら、ありました。


この王国の東にある村の特産品 「紅茶」とでました。

少しお高いが、一般的なお茶の三倍ぐらい、買えない額ではない。

勿論即購入決定だ。


ミスティルはなんと言うか、物流だけはシッカリしている。

辺境伯領から、さらに辺境の村にも、砂糖や塩なんかもちゃんと入ってきていた。


シルフィー師匠の店だって品揃えも良かったし、週に一度の行商人のキャラバン隊も良くできたシステムだ。


店を見て回っていると、店員が「何かお探しで?」と話しかけてきた。

俺は服屋などの店員の接客苦手党の党員である。

その上、高級店だ、緊張でチビりそう…


〈まぁ、高級店に子供が一人で来てたら、不思議がって話しかけるわなぁ…〉


と、緊張している俺に、スーツ姿のお兄さんは、


「失礼ですが?

お客様はアルド様でよろしいでしょうか?」


と、聞いてくる。


〈えっ?〉


と、驚くが、


「あっ、はい。」


と、答えると、


スーツのお兄さんはペコリと頭を下げて、


「私、シルフィー商会アサダ支店を任されております。


孫のジャックです。」


そう言ってニコッとゼロ円スマイルを押し売りしてくる。


が、しかし…


シル…シルフィー商会?!…孫…うそだ、ウソだ、嘘だぁ!!


シルフィー師匠が子持ち、いや、孫持ち…だと…


ショックだ!なぜか凄くショックだ!!


まぁ、あんなに可愛いし、長い人生、惚れられた数など、宇宙望遠鏡で見つかる星の数ほどあるのは予想していたが…


よし、今日は帰って寝よう!


うん、そうしよう。


などと考えていると、


「アルド様、こちら会長からです。」


と一通の手紙を渡してきた。


まだ、師匠の孫だと決まった訳ではない…


恐る恐る開けてみる。


旦那との馴れ初めやラブラブエピソードが書いてあれば、


泣きながら数日引きこもる自信が、


〈俺には、ある!〉


見たくない!が、シルフィー師匠から手紙なら見たい!


師匠成分が明らかに足りていない!


俺は覚悟を決めて手紙を読む…


『大好きなアルド君へ。』


〈し、師匠だぁ…。〉


『アルド君が村から出た後で、頼むのを忘れていてお手紙を書きました。

だって、急だったし、寂しかったんだモン。』


〈クゥ~っ!〉


『今君に手紙を渡した ジャック君は、私が育てた孤児たちビーン君とノリスちゃんの子供なの。


ビックリした?』


と…


〈ん?…孤児?…〉


『旅先の街で、シルフィー協会が有ったら寄ってみてね。


他にも各地に育てた孤児たちの家族にお店を任せているから、「本店の村からきました。」とでも言えば、アタシの可愛い弟子のアルド君だと解ると思うから、


追伸、異世界の知識で儲けさせてくれる約束忘れてるゾ。


ジャック君と相談して、ワクワクするものを世界に届けましょう。


アルド君に出会ってから、後の事は皆に任せて、世間から離れて隠居するのが私と皆の為だと思って居たのに…


もう一度「世界を巻き込んだ商売がしたい!」と思ってしまいました。


責任とってよね。


では、体に気を付けて、活躍期待しています。


あなたのシルフィー師匠より。』


読み終えた俺は、在ることに気が付く…


〈あれ、これは…涙?


嬉しさと、安堵。圧倒的安堵!!〉


そして、俺は今考えていた。


〈いろいろなアイデアを出しては、シルフィー師匠を困らせてしまうのでは…〉


だが、同時に俺は、確信した!!


「それでいい!」とぉぉ!!!


シルフィー師匠を巻き込み世界が驚く様を〈特等席〉で見せてあげるのだぁぁぁ!!


と、どこぞのギャンブル狂の脳内ナレーションみたいに考えてみた後、


ジャックさんに手当たり次第アイデアを伝えた。


識字率を上げる為のカルタのようなもの、

オセロに、

けん玉やおはじき…

サイダーやプリンなど、


何個もアイデアをだした。


果ては、鼻眼鏡や吹きも戻しまで提案した。


ジャックさんは大いに食い付き、

「何か店の物で作れませんか?」

と言ってきた。


この店は新鮮なミルクとランドコッコの卵に砂糖

そして手頃な器も売っていた。


〈プリンだな。〉


前世の知識(甘いもの好き)と今世の料理スキルで美味しいのを作ってやる!


早速商会のキッチンで料理をした。カラメル後のせタイプの蒸すプリン〈固くてシッカリした、お中元の水羊羹の隣にあるタイプのヤツ〉を作った。


ビックリしたのは、上の棚に氷入れて冷気で冷やすタイプの冷蔵庫があった。


氷は北に向かうキャラバンが仕入れて来るらしいアイテムボックスの時間停止機能様々だね…


冷している間に他の物を作る事にする。


何故かジャックさんが吹き戻しに食い付く


店の中から薄く丈夫な紙を探し、貴族のご婦人が口の辺りの化粧を落とさないためにミスティルにもストローがあった。


あとは、針金だが、魔物素材で代用した。


自作一号の糊が乾いたらしいので、ジャックさんが試してみる。


〈ぶぴぃぃ!しゅるるる〉


と、吹き戻りが元気に伸び縮みする


「ぎゃっはっは。」


と、大喜びのジャックさんは、何かを思いつき、

店の職員さんの前まで、パイプを燻らしながら歩く紳士の風貌で近づき、


キリッとした顔のまま、


〈ぷぴぃぃ!しゅるるる〉


とやる…


現場は大爆笑である。


ジャックさんには笑いのセンスがあると確信した。


なにが興味を持たれるのか…わからない。


異世界!ふしぎ発見。だな…



ひとしきり遊んだジャックさんは、笑い過ぎて化粧が崩れたと膨れている女性職員さん達とプリンを試食したら、


美味しい、美味しい。


と気に入ってくれた様子で、機嫌も良くなり何よりだった。


ジャックさんにレシピ等のメモを渡したら、


「おまかせください。」


と、言ってきた。


〈なにをまかせたのやら?〉


少し疑問は残るが、シルフィー商会で、

紅茶と新鮮なミルクを買ってかえる。


宿屋で、新商品の試飲会をした。


「チャイ」だ、


お茶好きのいかつい冒険者には「うまいが、甘い」と不評だったが、


女性冒険者からは絶大な支持をえた。



翌日、


新商品の「チャイ」いかがっすかぁ~


と、朝のお茶販売を続ける俺であった。

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