第76話 進む攻略と知らされる真実

皆様こんにちは、

全力疾走しております!

アルドでぇすぅぅぅぅ!



80階層で、転移陣の登録を済ませて、

シロちゃんは大きさが自由自在なので、迷路エリアでも走り回れる原付くらいのサイズになってもらい、


シロちゃんの背中に乗って81階層から90階層を目指している真っ最中です。


敵も何もまだ〈リポップ〉していなく、ただの迷路だが、マップスキルで問題なく進んでおります。


一刻も早くミレディさんの内線の範囲に入りシルフィーちゃんに説明をしなければ!


今頃ミレディさんから無いことや無いこと等を吹き込まれているはず!


絶対そう!


ワンちゃんに欲情するとか言われてたら…


〈今後の人生がヤバい。〉


人間より寿命が長い種族のハーフだから、長い人生を〈特殊性癖〉と指をさされ生きていくメンタルを俺は持っていない。


「シロちゃん、次の角右ね」


とシロちゃんに指示をだすと、


「了解だよ、ダーリン。」


と答える。


〈ダーリン呼びなのね…お兄ちゃんは何処へ〉


と思いなから風の様に駆け回り、


中間のセーフティーエリアも走り抜けた。


86階層は五階層ぶち抜きエリアだった。


なだらかな斜面が続き一番下にログハウスが見えた。


パッと見た感じはポツンと一軒家だ。


俺は、白い煙が煙突から立ち上るログハウスを指差して、


「シロちゃん、あの家まで急いで!」


とお願いすると、


「ウィリアム様とタマ様の愛の巣です。

このエリアでは魔物のお肉のドロップ率が上がり、食べれる山菜が沢山な自給自足エリアだよ。


近道知ってるから!」


と、そう言ってシロちゃんは、


ポムンっと狼耳の白いワンピースの少女になった。


「何故に少女?」


と、俺が聞くと、


「色っぽいお姉さんにも変身できるけど、コレをするならコレくらいじゃないと。」


と、デカいフキの葉っぱ二枚をナイフも使わず「スパッ」っと茎の部分から刈り取り俺に一つ渡し、


ニコッと笑って、


「こうするの!」


と、葉っぱに座って、坂を滑っていった。


確かに坂滑りは速いし、開けた草原のゾーンは楽しかったが、途中の森ゾーンは死と隣り合わせのデンジャーゾーンでした。


木々を掻い潜り牧草地帯も滑り降りて、家の近くに到着すると、


ミレディさんの念話が入ってきた。


「では、シルフィー様…以上デス」


と〈何かの議題〉で会議が開かれている。


「私としては、ご長寿の仲間が増えるから賛成です。」


聞こえてきたが家まではあと少し距離がある。


「続きまして、ステラさんはいかがデス?」


ミレディさんが、ステラさんにふる。


「問題ありません。私は〈私の意思〉を貫きます。


それより早くリバー様のエピソードトークを聞きたいですわ。」


と、ステラさんも賛成?


「では、お屋敷で待機中のユリアーナ様はどうデス?」


ミレディさんが、ユリアーナさんにコメントを求めた。


「婚約者の方が増えるのは仕方ないにしても、


我々が、アルド様のお側に立てないのは不甲斐ないです。

ミレディお姉様の様に旦那様と共に旅を出来るメイドになりたいですの…」


と…


「旦那様と共に」のフレーズが刺さったのか、


「むフフフフっ


私だけ〈特別なメイド〉で〈一歩リード〉デス…」


と上機嫌で訳の解らんことを言っていた。


ログハウスに着きドアをノックする俺を無視してミレディさんは続ける。


「ミーチェさんは、どうしたいデス?」


食い気味に


「お嫁にもらって欲しいです。」


ミレディさんが「ならば、ライバルデス!」と言ったとき、


山男風のがっちり男性が扉を開けて現れた。


「いらっしゃい、君がシルバー君達のご主人様かな?


えっ!シロさん?

タマちゃんが暴れて困るから封印したって言ってたけどどうしたの?」


驚く男性に


「実は呪いにかかっていまして…

ダーリンに呪いを解いてもらうまで閉じ込められていました。」


それを聞いた男性は、


「ホントの涙を流して、心から謝ったんだよね。


あの封印を解く方法は、それだけってタマちゃんが言ってたからね」


と、優しくシロちゃんを見つめる。


「はい」と頷くシロちゃん…


感動の再会に割って入るミレディさんが、


「初めましてシロさん、

ワタシは、マスター婚約者候補の一人…いや、むしろ〈女房〉としての実績もあるミレディと申しマス。」


と意味不明なマウントを取った。


シロちゃんは、緊張しながら、


「よ、ヨロシクお願いしますミレディ先輩!!」


と、勝手な理由を聞いて、序列を決めてしまったらしいシロちゃんがミレディに頭を下げて挨拶をした。


〈ズッキュン!先輩…せんぱい…センパイ…〉


と、ミレディさんの何かに、ぶっ刺さったようで、

ミレディから念話が漏れ倒していた。


「マスター、家族会議の結果、


ダンジョン攻略や旅に嫁候補も参加したい!


念話スキルがもっと欲しい!


この二点が決まりましたので、ご報告デス。」


報告を済ましたミレディさんはシロちゃんを連れて行った。


きっとセンパイ風を吹かすのであろう。


家族会議って、俺は家族では無いのかな?

会議の参加権もないのかな?


〈うん、よし泣こう…。〉



少し拗ねていたら、


「ご主人様?お帰りなさいませ。


大丈夫でしたか?」


と、隠密系スキルまで使い、こっそりキッド君が心配して聞いてきた。


「まだ解らない。」


と、涙を流しながら笑顔の俺を見て、凄く気まずそうなキッド君に、ウィリアムさんとどんなボス戦だったかお茶をしながら、ご本人も交えて話してもらった。


「90階層の試練は、元サブマスターのハリーさんの一族と鬼ごっこです。」


とキッド君が教えてくれた。


〈鬼ごっこ〉も、気になるがもっと気になるキーワードが、あった。


ウィリアムさんは真っ赤な顔をして、


「私がダンジョンのマスターになってすぐに、タマちゃんがダンジョンを攻略にきて、見事にダンジョンを踏破しまして…


私のマスターになり、ダンジョンで二人で暮らすうちに、どちらからともなく…そのぉ~。」


と、モジモジしだしたウィリアムさんに、


「好きになったんだね、二人とも…」


と俺が、〈オチ〉を言うと、


ウィリアムさんは更に真っ赤になって頷いた。


で、ハリーさんは、ダンジョンが出来たときに精霊の里と呼ばれている妖精族の地方から一族とご近所さんまとめてダンジョンにお手伝いをしに移り住んだ人達の末裔だという。


ダンジョンのサブマスターに成った初代は、不老不死となり嫁や子供が死ぬのを看とるくらいなら看取られて死にたいと…


ウィリアムさんはタマさんにマスター権限を渡し、


初代のハリーさんは、ウィリアムさんにサブマスター権限をわたして、


タマさん、ウィリアムさん夫婦は不老不死になり、ハリーさん一族は、代々、一族の中で一番足の早いものがハリーの名前を継いでいるそうだ。


そんなスピード自慢の一族のトップ3との鬼ごっこをゴーレムチームはあっという間に捕まえたそうだ…


過去ナンバーワンらしいの俊足のハリーさん…と言っても過去に七組程しかこの〈鬼ごっこの試練〉にチャレンジしていないと話していた。


ハリーさんが


「私の代でチャレンジャーが来て良かったです…


前代は一度もやらずに最後を迎えましたのでね。」


と喜んでいた。


そんな、和やかなお話の最中に、


「アナタぁ聞こえる?


アタイずっと下で待ってるんですけど、」


と、元気な声が聞こえてきた。


ダンジョン内限定のマスター、サブマスター間の通話だね


じゃあ、この声は、


「妻がお待ちかねだからアルド君達は急いで最下層に行ってあげて。」


とウィリアムさんが焦る。


ログハウス裏の転移陣部屋から、


急かされながら最下層に向けて出発した。


ゴーレムチームと合流して、このダンジョンに詳しいシロちゃんの加入もあり、サクサクで進んで行く。


そして、やって来ました最下層。


目の前に赤と青の二体のドラゴンが待ち受ける広すぎる空間がある。


俺は立ち止まり、戦いの準備を…


「いいから早くこっちに来てぇ!」


と、大きな声がドラゴンの奥から聞こえる。


「タマ様だ!」


と走り出すシロちゃん


俺たちもドラゴンの間を抜けて声の主に会いに行った。


シロちゃんがじゃれついているのはケモミミのお姉さま


「いらっしゃい、アタイはタマ、このダンジョンのね、マスターを任されているんだけど、そんなのどうでもイイよね。


シロを治してくれて有り難う。」


頭を下げるタマさんに、


「いえいえ、たまたま上手く呪いが払えただけですよ。」


と、俺が答えると、


「呪いだったんだね。


アタイの鑑定でも、兄貴に鍛えられたシロのアホみたいなレベルに弾かれて全く効かなかったんだ。


困り果てて、閉じ込めたんだけど…


えーっと、名前何だっけ?」


と言われ、


〈あっ、名乗ってなかったよ。〉


と気がつき、


「失礼しました。私は…」


と、名乗ろうとした時に、


「タマぁ~久しぶりぃ、


彼はアルド君だよ。


暴れるシロちゃんを無傷で倒した強者だよ。


シロちゃんが惚れたらしいから、嫁に出すことにしたからね。」


と、リバー様の声が響いた。


俺は、


「無傷ではないですよ!

フルポーション二本飲みましたよ!!」


と抗議しながら〈弱いアピール〉をして、〈ダーリン〉から〈お兄ちゃん〉へと戻れないかと足掻いてみた。


「人間がソロでレベル300超えを相手して、生きてるだけで完全勝利、死ぬこと意外かすり傷だよ。」


と、リバー様は語る…


タマさんは「兄貴…」と何か言いたそうなので、暫く兄妹で話して貰おう。


と気を遣い、

俺は、シロちゃんを早速念話で問い詰めているミレディさんを止めようと会話にはいった。


「シロさん、マスターを殺しかけたのですか?」


と、ミレディさんが問いただすと、


「呪いで狂暴になってたから、ダーリンを襲ってしまったんだ…ごめんなさい。」


と、謝るシロちゃんに、


「安心するデス、ワタシも以前のマスターの指令で、侵入者としてマスターを殺そうとしたデス。」


と…


〈えっ、記憶あったんだ!〉と驚く俺をよそに、


ミレディさんは、


「ワタシは悔しいのデス。


マスターに手傷も与えられずに負けたワタシは、弱い、頼り無いヤツと信用して貰えないのではと…不安なのデス。」


と、新人に負けた悔しさを語るミレディさんに、


「ミレディ先輩。」


と、シロちゃんも心配している…


「ワタシは、敵から仲間になったヒロイン枠だったのデスが、シロさんの加入で、枠が被るのデス、しかもワタシの上位互換なのデス。


ワタシの存在が薄くなるのデスぅ。」


と、ミレディさんが立ち位置に不安が有る事を告げるが…


〈それは…ないかな?…盗聴ゴーレム娘枠なので…〉


心配して損した俺は、タマさんとの話会いに戻ったのだった。



結果、


全てを了解してくれて協力をしてくれる事に成ったタマさん夫婦に別れを告げて、コーバの街に帰る道中です。


ダンジョンに入ってすぐは、


〈ここのダンジョンのマスターと仲良くできるか?〉


と、不安だったが、

途中までの「アスレチックスエリア」はウィリアムさんの罠の展示場で、凝り性の性格からどんどん凶悪な罠を思い付いた結果で、後半のエリアがタマさん担当だったらしい。


ダンジョンの中層から「アスレチックスエリア」が消えたのはコレではダメだとテコ入れした結果、下の階層の分まで詰め込んでしまった結果、マップがドット柄になる程の罠エリアが完成したと言っていた。


理解しました。


一人のイカれたマスターではなく、こだわり人間とアイデアマンのタッグで良かった…


〈しかし、再度ダンジョンのテコ入れを提案しておいた〉


ドロップ品で冒険者を呼び込むアイデアとか最高だから…勿体ない…


そんな事を考えながら、

愛妻号でミレディさんと仲良しく話しているシロちゃん達をみていた。


しかし、


ダンジョン行く度に嫁候補が増える…


だが、ハッキリ言う!


〈俺の嫁さんはシルフィーちゃんだけだ!


シルフィーは俺の嫁って書いたノボリを愛妻号にぶっ刺して諸国を巡っても構わない!!〉


ただ…


あと三ヶ所あるのよね、メインダンジョン…


シロちゃんは〈嫁〉というか、〈子供〉を願っている…と、まで話が進んでいる…


〈俺は何も言ってないよ!


作りたいとも、作るとも!!


勝手に話が大きくなる…〉


と心の中でボヤいていたら、


ミレディさんが思い出した様に、


「そうデス!〈話が大きくなる〉でいったら、ユリアーナさんとミーチェさんのお話しが王都で人気デス。」


と、報告してくれたが…


〈お話し?〉と首を傾げる俺にミレディは、


「お忍びの旅の最中、主人公に命を救われ恋に落ちた姫が、

結婚を許して貰いに行った王国で、一族の反対や、貴族の陰謀に巻き込まれ、国を滅ぼし新たな王となるスペクタクルロマンスと、


親の敵の主人公に、命を助けられた娘は主人公に恋をして、

自分達の敵と知った上で、家を捨てて、命の恩人のメイドとして男の側に居ることを選んだ一人の女性の物語の2作品が、


今、王都の劇場で延長公演が決定して、ロングラン上演中デス。」


と…


〈何その恥ずかしい演目は!〉


と驚く俺に、


「安心してくださいマスター。


マスターの名前は、少年伯爵 アノル と偽名デス。


直接劇場に調査に向かったユリアーナさんとミーチェさんからの報告デスわ。」


と…


〈何だよ、脚色が過ぎるよ…

ハズイ、中央国に帰りたくない…〉


と、頭を抱えていると、ミレディさんが、


「大丈夫デス。


来月までの延長公演が終了したら演目も変わるのデス。」


と、報告してくれた。


俺は、少しホッとして、


「なら、暫く我慢したら大丈夫かな…」


と言ったら、


「次の演目は、ドタバタラブコメディ!


〈少年伯爵の 嫁がモリモリ !!〉デス。」


と、次の公演の演目を教えてくれた…



〈何だよその昭和感の有るタイトルは…。〉


もう、マジで帰りたくないよ。

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